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倖田來未『SUMMER of LOVE』インタビュー

倖田來未 『SUMMER of LOVE』 インタビュー

なぜ倖田來未は倖田來未になり得たのか?

 ステージ上空に浮かぶベンツのフロントに腰かけた状態で登場。ステージに着地すると今度はランウェイに向けて発進。四方八方から超大量な紙幣が噴き上がり、客席へばらまかれるという、ぶっ飛び過ぎた内容だった全国ツアーを終えたばかりの倖田來未が、その命懸けだった同ツアーや自身プロデュースのイベント【a-nation island ~Koda Kumi 15th Anniversary Premium Live ~】、そしてサマー・コレクション・アルバム『SUMMER of LOVE』の話を通じて、なぜ倖田來未は倖田來未になり得たのか? その理由を浮き彫りにしてくれた。

上空からベンツで登場「倖田來未にしか出来ないでしょ?」(笑)

--先日、全国アリーナツアー【Koda Kumi 15th Anniversary Live Tour 2015 ~WALK OF MY LIFE~ supported by Mercedes-Benz】を終えたばかりですが、自分の中ではどんなツアーになったなと感じていますか?

倖田來未 / 「WALK OF MY LIFE」MUSIC VIDEO
倖田來未 / 「WALK OF MY LIFE」MUSIC VIDEO

倖田來未:今回のツアーは最新アルバム『WALK OF MY LIFE』を携えたツアーでもあったんですけど、アルバムのメッセージ性が強ければ強いほど良いライブになるんだなって思いました。今までは楽曲のサウンドに合わせたり、ライブを見据えて歌詞を書いていたんですけど、今回は「WALK OF MY LIFE」とか「Dance In The Rain」とか「Sometimes Dreams Come True」とか「Lippy」とか、自分の生き様を書いたじゃない? そしたら意外とそういう曲が人気だったりして。前は歌詞よりもメロディラインを重視していたりしたんだけど、今回はメッセージ性を深くしたことによってライブに重みが出たなって。歌詞の重要性を改めて感じました。

--あのツアーは演出も生き様を表現しているものだと感じたんですが、ステージ上空に浮かぶベンツのフロントに腰かけた状態で登場。ステージに着地すると今度はランウェイに向けて発進。四方八方から超大量な紙幣が噴き上がり、客席へばらまかれるという、オープニングからぶっ飛び過ぎた内容でしたね。

倖田來未:そうなの!「倖田來未にしか出来ないでしょ?」っていう(笑)。あれこそ“ザ・倖田來未”だなって。あと、「BUT」の間奏の振り付けに昔のものを持ってきたりとか、最後は衣装を脱いでエアリアルで終わったりとか、15年間の軌跡を彷彿させる、倖田來未の今までのライブを思い出させる見せ方にも拘りました。自分のやってきたことは間違いじゃなかったって肯定するというか、倖田來未らしさを追求したツアー。

--らしさを追求すると、ベンツを宙に浮かばせなきゃいけないのが面白いですよね(笑)。

倖田來未:本当にそう思う。あれのせいで照明つれなくてスタッフから大ひんしゅくでした(笑)。ベンツもエンジン抜いて、ガソリンがダメだからモーター入れて、ベンツが回る回転盤を入れて、「あれが出来ない、これが出来ない」っていうしがらみもある中で、あれを実現させられたのは良かった。

--あと、ピアノとドラムとギターを自ら演奏。いつの間に練習していたんですか?

倖田來未:コツコツ家で練習していたんですけど、本当に難しかった! 今まではリハーサルスタジオ行かないと出来ないことばっかりだったんだけど、今回は家にギターもあるし、ピアノもあるし、電子ドラムもあるし、アンプもあるし、家族のサポートも大きかったです。スタジオにサミー(倖田來未のサポートギタリスト)も呼んで「こっちのほうが見せ方的に格好良いんじゃない?」とか「こっちのほうが分かりやすくて簡単だよ」とか話し合いながら一緒に作ってもらいました。

--あの国内最高峰のショー、演出満載のステージを構想から実現まで持っていく製作期間ってどれぐらい要したんでしょうか?

倖田來未 / 「Dance In The Rain」 Spot
倖田來未 / 「Dance In The Rain」 Spot

倖田來未:今回はね、まず「Dance In The Rain」とラストシーンのエアリアルティシュー(布にくるまって宙を舞うフライングパフォーマンス)はすごく時間を要するだろうなと思ったんで、1ヶ月半前にティシューの先生に会って振りを作ってもらって。で、バンドリハが始まったのは1ヶ月前。あと、上空からのベンツでの登場シーンは結構前から決まっていて、重量だの何だのいろいろ調べて……8ヶ月ぐらいはかかったかな? もうね、やりたいことが多すぎて!

--その全ての工程を並行して走らせていく訳ですから、尋常じゃないビッグプロジェクトですよね。

倖田來未:倖田來未のコンサートは、いつもスタッフにも言われてるんだけど、「机の上にとりあえず100%乗っけます」と。出来るか出来ないかは分かんないけど、まずは私が描く夢物語を語って、そこから実現不可能なものを落としていくやり方なんですよ。

--で、あれだけ残ったのが凄いですよね。

倖田來未:あれでも結構いっぱい削ぎ落とされてるんですけどね(笑)。

--あと、ティシューでのフライングパフォーマンスですが、布にくるまりながら空を舞うという。本来シルク・ドゥ・ソレイユの方々がやるお仕事までやって自らやっている訳ですけど、なんであそこまでやるの?

倖田來未:あれはね、ラスベガスでショーを観ていたときに「パフォーマーはやるけど、メインのアーティスト本人がやるのは観たことないよね?」って話して、やっぱり他の誰かがやっていないことをやりたい私としては自らやりたかったんですよね。水中に入るパフォーマンスもラスベガスで観て、私も水の中から出ていくパフォーマンスしたいなって思ったんです。

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命懸けのティシュー「やっぱり倖田來未だからあれをやりたい」

--倖田來未のティシューは命綱なしですし、一歩間違えたら死ぬじゃないですか。本当に命懸けのパフォーマンスだと思うんですけど……

倖田來未:そうなんですよ。でも今回のツアーはひとつの集大成だったし、そのラストシーンでありがちなものをやったり、マジックとかトリックをやったりするより、私はこの体と布一枚で幕を閉じたいと思って。でも反対されたり、私が求める強度と透け感のある布の準備とかもあって、最後の最後までやれるかどうか分からなかったんですよ。だからあのシーンを実際に練習したのは本当にギリギリのタイミングで、ゲネプロの日に練習して、そのゲネプロで初めてやったの。その1週間後にはツアー開幕で本番ですよ。一番危ないことを一番最後まで置いておいたという(笑)。本当にあれは一歩間違えるとケガをするから緊張したけど、シルエットで美しく見せてお客さんの記憶に残るような演出で終わりたかったから……頑張った。

--その「頑張った」は本当に凄すぎます。

倖田來未:観てる人の中で「怖い」って感じる人もいるかと思ったけど、「やっぱり倖田來未だからあれをやりたい」って我を通させて頂きました。

--あれ観て、泣きましたよ。

倖田來未:嬉しい!

--本来、歌とダンスを頑張っていればいい仕事じゃないですか。それなのに「やっぱり倖田來未だから」って命懸けで空を舞うって、誰もやらないことを続けてきた倖田來未の集大成として美しすぎました。

倖田來未:でも実は最後、足を攣ったりして。ティシューの先生は「一番体力が無くなっているラストシーンでやるのはリスキーだ」って言ってたんですけど、案の定、足が攣りまくっちゃって。それでも何とか蝶になって締め括ることができてよかったです。

--倖田來未って本当は臆病だし、自信もないし、何にしても「嫌われないかな?」と気にするタイプだし、高所恐怖症だし、それでも今回のような他の追従を許さない次元のライブが出来ちゃうのは、全て“踏み込む”勇気と覚悟でしかないんだろうなって。そこに倖田來未の凄さはあると思うんですが、自分ではどう思います?

倖田來未:泣ける、そんなこと言われたら。ありがとうございます。今言われて「そういう風に思っていいんだ」って思いました。というか、今の話、絶対載せてください(笑)。昔から海外アーティストのライブを勉強も兼ねて観ていたんですけど、最近は突拍子もないことをやって面白いとか、格好良いとかはあるんですけど、そのアーティストのストーリー性やドラマティックさが欠けている気がして。だからこそ私は私にしかない表現の仕方を追求したかったんですよね。……いや、でも、さっきの話、嬉しいなぁ。何かアクションを起こして、それに対して「才能ですね」って言われたりすることもあるんだけど、なかなか「頑張ってんだね」っていうところまでを掘り起こしてくれる人はいなかったりするから、すごく嬉しいですね。

--どう見たって頑張ったし、無茶もしてきた15年でしょ?

倖田來未:だから「タフだね」って言われても、「いや、違う。家では疲れ果ててるよ」と思ってた(笑)。私、元々は努力が嫌いな人なのに、その嫌いな努力を15年やってるから、毎朝ティシューの練習に行くときも「イヤだな~」って言いながら、酔い止め飲みながらやってるんです。でもね、私は夢を売る仕事だから「才能ですね」とか「タフだね」って言われるのも嬉しいんですよ。ちゃんとそう見せられているってことだから。

--そんな改めて倖田來未の凄さを感じている15周年なんですが、8月2日には国立代々木競技場第一体育館にて倖田來未プロデュースの【a-nation island ~Koda Kumi 15th Anniversary Premium Live ~】を開催。Sean Paul、AK-69、Blistah、DJ HASEBE、TEEDA、Zeebra、SHOW、LISA、KM-MARKITを招聘と、これまた攻めたラインナップとなっております。

Sean Paul - Other Side of Love [Official Video]
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倖田來未:このイベントは【a-nation】スタッフに企画を持ち込んで頂いたんですけど、最初は「出来ない」って答えたんです。実際に来てくれるアーティストさんいるのかなっていう不安もあったし。でも「出来ますよ!」って言われて、こんなにたくさんの方が出演してくださることになって。夢物語だと思っていたことが、みなさんのおかげで実現までこぎつけることができました。今度、リハーサルスタジオにみんなで集まるんですけど、凄いことになると思いますよ(笑)。

--どんなイベントになったらいいなと思ってますか?

倖田來未:今回は自分がリスペクトしているアーティストさんに出て頂くので、そういう意味では私の尊敬する人たちの生き様を見てほしいと思うし、ポップスカルチャーも良いですけど、異なるジャンルでこんなに格好良い曲もあるんだってみんなに知ってもらいたいと常々思っていたので、来てくれるお客さんにはそこを楽しんでもらえたら嬉しいです。

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とにかく恋の話を私もたくさんしていきたいと思います

--日本のR&B/ヒップホップシーンを盛り上げたい気持ちは強い?

倖田來未:そうですね。私がクラブで歌っていたときにご一緒してたアーティストさんとか、音楽が純粋に大好きで格好良い音楽だけを追求している人たちがいて、そういう人たちの音楽はもっと聴いてほしい。でも最近は、それ以外のことをやり過ぎてる人も多くて。そういう意味でも、純粋に大好きな音楽を追求している人たちの音楽を堪能してほしいな。すごく格好良いもん。

--今回の新曲「HURRICANE」やそのMVには、今話してくれたことが反映されていますよね。

倖田來未 / 「HURRICANE」 (Only Audio)
倖田來未 / 「HURRICANE」 (Only Audio)

倖田來未:1曲の中で4回ぐらい展開してて、今っぽい格好良い曲なんですけど、あれをA面に持ってこないのが倖田來未なのかなって。やっぱりA面はポップスカルチャーで、B面がアンダーグラウンドになる。でもそれでいいのかって悩んだときは、とりあえず攻める(笑)。だから「NO ONE ELSE BUT YOU」でMV撮るか、「HURRICANE」でMV撮るかって言われたときは、「そこは「HURRICANE」でしょ」って答えました。

--「アイドルやアニメもいいけど、これこそが日本のポップカルチャーだ」的な意思も近年の倖田來未の言動からは伺えます。

倖田來未:今回の「EX TAPE」にしても「HURRICANE」にしても格好良いサウンドですけどキャッチーじゃないですか。すごく耳に残る。だからやっぱり「これでしょ?」っていう想いが自分の中にはあるかな。もちろんアニメソングや歌謡曲のメロディーも大切だと思うんですけど、日本語を乗せてもこれだけ格好良く聴かせられるR&B/ヒップホップ、ダンスミュージックがあることはもっと注目されていいのになって思います。

--倖田來未デビュー前後、90年代終盤~00年代初頭はそうした音楽がムーヴメントとなって、攻めた楽曲が日本のヒットチャートを賑わしていましたからね。またその時代が来ても何らおかしくはない。

倖田來未:だからね、流行ってるからって自分が良いと思わないものに走るぐらいだったら、自分が良いと思うものを作って「あの曲、全然古く感じないよね。格好良いよね」って5年後に言われるほうがいいんですよ。

--あと、そのシーンを盛り上げる裏技としては、逆に倖田來未プロデュースのアイドルグループを作っちゃう。全メンバー、歌もダンスも凄くて、布一枚で空も飛べなきゃいけないアイドルグループ。

倖田來未:なるほどね! でも最近よく思うんだけど、私ぐらいの世代って下も知って上も知って両方見てるアーティストが多くて、要するに叩き上げなんだよね。でも今って、どれだけ音楽のことが好きで、考えられてるのかなって思うこともあるんです。だから若い子たちと何かやるにしても、ついてこれるかな?って。私けっこうスパルタかも(笑)。

--第二の倖田來未はもう出てこないでしょうね。あのライブをできる人はそうそう出てこないと思うので。でも倖田來未の姿勢とかスピリット的なものを継承する人が増えてほしいなとは思いますね。

倖田來未:なるほど。

--そんな唯一無二の存在となった倖田來未。今年の夏は例年にも増してトピック豊富で、7月22日にはサマー・コレクション・アルバム『SUMMER of LOVE』をリリースします。こちらはどんな風に楽しんでもらいたいと思って制作したんでしょう?

倖田來未 / EX TAPE
倖田來未 / EX TAPE

倖田來未:今回は「EX TAPE」もそうだし「NO ONE ELSE BUT YOU」もそうですけど、心地良い夏の風を感じてもらえるアルバムにしたいなと思って。あと、歌詞が今までとは違う角度の目線から書けてるのかなって思う。前だったら「EX TAPE」みたいな曲は「未練タラタラで忘れられない!」って感じになっていたと思うんだけど、そこで終わるんじゃなくて「そんな私もいいんじゃない?」っていう。すべてを忘れようとするからトラウマになって次に行けないだけで、嫌なところは忘れて良いところだけ残していけばいいじゃん。みたいな感じの歌詞になってるんですよね。

--今作は「夏は、恋の話をしたくなる。そう思わない?」というキャッチが付いてますが、恋愛促進アルバムでもあるんですか?

倖田來未:私は年中してるんですけどね、恋の話。でもやっぱり夏って開放的で、露出も多くなってきて、出掛けることも多くて、夏が一番恋の話をするのに向いてるんですよね。で、やっぱり倖田來未から恋愛って切り離せないので。一回「恋愛のバラードは歌わない」って封印したこともあったけど、やっぱり恋は私のベースにあるので。最近は「恋人なんていらない」って言ってる女の子も増えてるらしいんですけど、そんなこと言ってたらダメ! 勉強では学べない、恋から学ぶこともきっとあるはずだから。恋っていうのは女性ホルモンにとっても大事なんじゃないかな(笑)。だから『SUMMER of LOVE』を聴いて、恋の話をしてほしいですね。なので、今年の夏はライブで『SUMMER of LOVE』の新曲もどんどん披露していきたいと思ってるんですけど、同時にとにかく恋の話を私もたくさんしていきたいと思います。

Interviewer:平賀哲雄

KODA KUMI「SUMMER of LOVE」

SUMMER of LOVE

2015/07/22 RELEASE
RZCD-59785 ¥ 3,850(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.EX TAPE
  2. 02.HURRICANE
  3. 03.NO ONE ELSE BUT YOU
  4. 04.I’ll be there
  5. 05.With your smile
  6. 06.FREAKY
  7. 07.girls
  8. 08.Lick me□
  9. 09.Once Again
  10. 10.Lady Go!
  11. 11.Lollipop
  12. 12.Poppin’ love cocktail feat.TEEDA
  13. 13.V.I.P.
  14. 14.LALALALALA
  15. 15.TOUCH DOWN
  16. 16.HOTEL

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