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2015/03/13

ショパン・コンクールの覇者アヴデーエワ「それぞれが違うように演奏しても良い、それが音楽の素晴らしいところ」

 【東芝グランドコンサート2015】にて、トゥガン・ソヒエフの指揮でショパンの「ピアノ協奏曲第1番」を熱演したユリアンナ・アヴデーエワが、ショパンへの想いや10月末から11月の再来日公演について語った。

 アヴデーエワは、2010年のショパン国際ピアノ・コンクールで、アルゲリッチ以来45年ぶりの女性優勝者として話題となったモスクワ出身のピアニスト。そして「ピアノ協奏曲第1番」はコンクールで演奏した曲でもあり、彼女にとって特別な作品だ。「この曲を作曲している時、彼はコンスタンツァという歌手に恋をしていました。そして私の知る限りでは、ショパンはとてもシャイな性格なのでコンスタンツァと話したこともなかったのではないかと思います。彼にとって自分の純粋な感情というのは、人と分かち合うものではなく内に秘めておくものという考えが根底にありました。そんな思いが作品にも表れていると思います。」そしてショパンについて、「彼は私の人生そしてレパートリーの中で特別な存在。常に新しい発見があり、毎日弾いていても新鮮に感じる。」と語った。

 10月には再度ソヒエフと来日し 、ベルリン・ドイツ交響楽団 とともにベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第3番」を演奏する。本作について「古典派の定番でありつつ、ロマン派に繋がる様々なヒントを感じる作品。個人的には第2楽章が大好きで、美しい光、いわゆる宗教的な感情が伝わってくるような光を感じる。」と語り、歴史的にも重要な位置づけを持つ作品をドイツのオーケストラと共演できるのは、とても楽しみと笑顔を見せた。

 アヴデーエワが演奏する時に、最も大切にするのは作品に込められたメッセージだ。「作曲家に、いまさら“これは何を意図しているんですか?”と聞くことはできません。だから正しいかどうかは誰にも分からない。私の役目は、その作曲家の音楽言語を理解し、彼が何を伝えたかったのかについての自分なりのビジョンを演奏すること。」と語った。そして音楽と絵画を比較し「絵は同じ作品を何度も見ることができます。でも音楽は同じ演奏者であっても、同じ演奏は二度とありません。それが音楽の独特な部分であり、素晴らしいところ。」と続けた。

 来シーズンに向け、新しいレパートリーの取り組みも進んでいる。注目すべきは、ギドン・クレーメルとのプロジェクト。ウィーンの楽友協会で、ショスタコーヴィチと彼の友人であるヴァインベルクをテーマにした公演が企画されている。「ピアノのレパートリーというのは非常に膨大です。様々な様式に接し、色々な時代に自分が近づいていくのは非常にエキサイティングな経験です。」

 プライベートでは、自然の中で過ごす時間を大切にしているという。現在、拠点にしているミュンヘンはアルプスが近く、美しい池や花々に囲まれている。「日本にも行きたいところが、たくさんあります。京都や沖縄、あとは東京だと皇居に行ってみたい。いつもツアーでは観光する余裕がありませんが、今後はコンサートの後、少しでも自分が行った場所を見る時間を取るようにしたいと思っています。」10月末から11月の来日公演の前に、先日5月のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンへの出演も発表された。ますます輝きを増す彼女の活躍に目が離せない。

◎公演情報
【ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015】
5月2日~4日 東京国際フォーラム、よみうりホール、大手町・丸の内・有楽町エリアにて
※ユリアンナ・アヴデーエワは、5月4日(月)21:00~22:00 ホールA「LFJ2015の大団円を飾るパシオンの饗宴」に出演

【ベルリン・ドイツ交響楽団 2015年10月-11月 来日ツアー】
出演:トゥガン・ソヒエフ(指揮)、ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)、神尾真由子(ヴァイオリン)
10月27日(火)19:00 東京文化会館 
10月30日(金)19:00 東京芸術劇場コンサートホール 
10月31日(土)18:00 アルモニーサンク北九州ソレイユホール
11月1日(日) 15:00 メディキット県民文化センター アイザックスターンホール
11月3日(火・祝)14:00 サントリーホール
※ユリアンナ・アヴデーエワは、10月31日、11月1日、11月3日に出演

11月3日 東京公演詳細
http://www.kajimotomusic.com/jp/concert/k=470/

発売日:5/21(木)12:00~25(月)18:00:カジモト・イープラス会員先行販売
5/30(土)10:00:一般販売

photo (C)Harald Hoffmann