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<インタビュー>syudou、武道館も素顔も経た今 ニューアルバム『UKA』で描く30代の「正直」

インタビューバナー

Interview & Text:柴那典

 syudouが2ndアルバム『UKA』をリリースした。

 新作には『ABCお笑いグランプリ』テーマソング「我が栄光よ」などの既発曲、先行配信された新曲「だってさ」などを含む全17曲を収録。アルバムのリリースは前作『露骨』から約3年半ぶりとなるが、その間には、初ライブの頃から目標に掲げてきた武道館公演や、アリーナでの単独公演、素顔の公開、フェスやテレビへの出演など、さまざまな活動の広がりもあった。アルバムはそうした軌跡や変化を反映した一枚にもなっている。

 syudouへのインタビューでは、「羽化」を意味するタイトルの由来やアルバムの制作背景、テレビ出演やお笑い芸人との交流を通じて感じたこと、音楽活動を続ける友人たちへの思いなどを、率直に語ってもらった。

前作からの3年半を振り返って

――アルバム『UKA』が完成して、どんな実感がありますか?

syudou:今回、ちゃんとアルバムにしようと思ったんですよ。「曲がたまったらアルバムだ」みたいになりがちなご時世なんで、ちょっとでもいいからアルバムの形にしたいなと思って、ギリギリまで作業してたので。「ヤバかった」って感じですね。

――アルバムの全体像のイメージは結構前からあったんですか?

syudou:アルバムを見据えて曲を作ってきたわけではないんです。何曲かはそうなんですけど、基本的には曲が増えてきたのでアルバムを出そうという感じで。でもそれだけだと、本当にただ出すだけになっちゃう。だから、モノとして手に取っていただくことを考えて、お世話になってるヤスタツさんにジャケットのイラストを描いてもらったり、デザインをしてもらったりして。なんですけど、そこで「俺にもまだできることがある」って思ったんですね。それで新曲を急遽追加したり、イントロとアウトロを入れて流れで聴ける感じにした。そうやってアルバムの形にしたかったっていうのはあります。

――タイトルの『UKA』、そしてイントロとアウトロも含めて「羽化」というのがアルバムのコンセプトになっていますよね。これはどういう由来だったんですか?

syudou:このアルバムで一番古い曲が「やっちゃったわ」なんですけど、それから今に至るまで、結構活動の内容が変わりまして。インターネット中心でやってたところから、特に今年からビジュアルも出して、フェスやテレビにもいろいろ出るようになった。イモムシが蝶になる時って、一回さなぎになって、その中で身体がぐちゃぐちゃになって、変わっていくという話を聞いたことがあって。そういう変化の過程を詰め込んだアルバムになったと思って、『UKA』っていうタイトルにしました。

――前作からの3年半を象徴する言葉になった。

syudou:そうですね。この過程で、いろいろ変わったんで。あと、今までのタイトルは、『必死』とか『最悪』とか『露骨』とか、漢字二文字が多かったんですよね。だから最初は漢字二文字で『羽化』というのを思いついたんですけど、「アルファベットにしたらかっこいいかな、軽くなるかな」みたいな気持ちで『UKA』にしてみました。

――前作からの期間を振り返ると、まず大きなターニングポイントとしては2025年5月の日本武道館でのワンマンライブがあったと思うんですが、どんな体験でしたか?

syudou:武道館を終えて、「やりきったぜ」みたいな感じには全然ならなくて。泣けると思ったんですけど、全く泣けないし、全然エモくなかったんです。初ライブの時から武道館が夢で、ずっとやりたいと思ってたから、もっとエモくなるかなと思ってたけど、いざやり終えたら、何も完結しない感じがあった。もちろんめでたいことだと思うんですよ。ファンとの約束みたいな意味もあったし。でも、当たり前なんですけど、終わってからも現実は続く。燃え尽きるとかじゃないんですけど、日常が続くんだな、という気持ちになって。

――それはなぜだったんでしょう?

syudou:やっぱり、友達が頑張ってるってのがあるんでしょうね。周りに誰もいなくて俺だけだったら違ったのかもしれない。もっとデカい会場で友達がライブしていたりもするし、新しいバンドを始めたりもしてるし。そういうのを見ると、エモくなれないなって感じですね。

――その話で言うと、2026年1月に横浜BUNTAIで開催した【PENTATONIC】は、わかりやすくその繋がりを示したライブになったんじゃないかと思います。あれは振り返ってどうでしたか?

syudou:すごく意味のあることだったと思います。武道館の後にあったというのも、大きいと思うんですよね。ただ、「仲間」って言うとかっこいいですけど、あえて「友達」と言いたくて。友達なんですよ。友達と会うことが仕事になっているのがすごく嬉しいことだし、個人的には、友達といることで価値が生まれるということが、何より人生を豊かにしてくれると思う。そういうことをしみじみと感じたイベントだったと思います。

▲「インザバックルーム」【PENTATONIC】

――【PENTATONIC】の出演者の並びって、すごく面白いと思うんです。キュレーターとしてのsyudouに加えて、YOASOBI、Aooo、すりぃ、NOMELON NOLEMON、須田景凪、なとり、Chevon、DREAMERSというラインナップになっている。これって、いわゆる音楽シーンというものを可視化していると思うんです。ただ、不思議なのは、それに当てはまるジャンル名がないんですよね。

syudou:ないっすね。ボカロでもないし、ネットとも言えない。一括りにできない。

――そうなんです。ボカロPが集まったというわけでもないし、ネットカルチャーというともっと広い対象も含まれる。でも、この並びには確実にライブシーンにおけるカルチャーのまとまり感とインパクトがある。そのあたりはどうでしょう?

syudou:そうですね、ただそれだけじゃなく、やっぱり自分が最後にイベントを締めることになるわけだし、ライブの内容も、裏のケータリングとかも含めて、みんなが「出てよかったな」と思えるイベントになったらいいなと思ってやりました。楽屋に趣味の筋トレスペースを作って、フリーエリアにしたんです。Aoooのメンバーも、メンズ以外とはあんまり会ったことがなかったんですけど、そこで一緒に筋トレできて。友達が増えました。楽しかったです。

▲「暴露」

――「暴露」リリースのタイミングでは素顔を公開しました。それによって、テレビやフェスへの出演など活動の場所も広がったと思うんですが、それはどういう決断だったんですか?

syudou:今のスタイルで、とりあえず現状やることはやったと思ってて。そこに変化を加えたいということで、ビジュアルありでやることになったんですけど。それを経て変わったことでいうと、そもそも俺の曲を聴いてない人にも、認知してもらうことが増えたというのがありました。特に『相席食堂』に出させていただいたのが面白い仕事で。あれはすごいですね。学生の頃の友達から久々に連絡が来たりもしました。音楽をやってると勘違いしがちなんですけれど、世の中には音楽を全然聴かない人もいて。でも音楽を頑張ってると、こういう仕事でそういう人にもアプローチできるんだなと思った。それは嬉しかったですね。

――『相席食堂』みたいなテレビのバラエティ番組への出演は、曲を作ってステージに立つのとはまた違う感触がありました?

syudou:全然違いました。性格上、このご時世に人前でしゃべるなら、ちゃんとしないといけないというところがありまして。実は、自分にとって、音楽が一番ちゃんとしなくていい場所になってるんです。音を整えるって意味ではちゃんとするんですけど、自分の思想だったり性格だったりを、外で本音でしゃべると全然いいことがないっていうことを改めて思った。その反動で、そういうものをちゃんと曲にしようと思って作ったのが、アルバムに入ってる「だってさ」という曲なんです。テレビに映るんだったら、いわゆる「好感度」と言われる、価値があるのかないのかよくわかんないものに、どうしても縛られる。でも、僕の本音は全然キャッチーじゃないし、作品制作は好感度じゃないなって思ったんで。両方やる意味が明確になった気がしますね。

▲「我が栄光よ」

――お笑いとの関係性が深くなってきたというのもありますよね。以前にも「爆笑」はありましたけれど、『ABCお笑いグランプリ』のテーマソングとして「我が栄光よ」を書き下ろしたし、お笑い芸人と共演するイベントとして【呵呵大笑】も実現した。特に2026年はお笑いとの距離がすごく近くなった一年でもあったと思うんですが、その実感はどうでしょう?

syudou:好きだって長年言い続けてきたんですけど、やっぱり言い続けると、こうやって仕事になって距離が近づいていくんだなっていうのを、明確に実感した一年ではありましたね。あと、芸人さんは本当にすごいなと思いました。音楽としてやれることはやりたいと思うんですけれど、俺自身が芸人的な動きをするっていうのは、好きだしリスペクトがあるからこそ、ちょっと厳しいなって感じましたね。一朝一夕にはできない芸事だと思ったので。【呵呵大笑】にはマヂカルラブリーさんとオズワルドさんに出ていただいたんですけど、やっぱ特殊なんですよね。ゼロから笑いを作るって改めてすごいなと思いました。

――お笑いの仕事をしたり、芸人さんとイベントをやったりすることで、自分のクリエイティブにはどんなプラスがあったと思いますか?

syudou:音楽はちゃんとやった方がいいって思いましたね。テレビに出させていただくようになった時は、もうちょっとバラエティ的な立ち回りを頑張って、かわいがられるように、いろいろ頑張ろうかなと思ってたんです。でも、それはその道のプロがやることだなって。もちろんお話が来たら全力で応えるんですけど、俺はあくまで音楽をやってる人として呼ばれている。だから、ちょっと変なことを言っただけでも笑ってもらえるんですけど、たぶん芸人さんが同じことを言ってても全然面白くないと思って。だから、本業を頑張ろうと思いましたね。



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「だってさ」は正直な曲

――そういう経験を経て感じたことや考えたことが、「だってさ」という曲になっていますよね。

syudou:なってますね。「だってさ」は正直な曲ですね。

――これはどういうタイミングで、どんなふうに作っていったんでしょうか?

syudou:アルバム制作のかなり最後に作った曲です。ある程度出そろって、「これで出せるよね」みたいになってたんですけど、急遽一曲追加しようということになって。今の心境で作った曲を入れることで、このアルバムをどういう状態で作ったかを記録できるし、それを共有できると思って作ったのが「だってさ」ですね。10月とかに作ってたんで、かなりギリギリでした。

▲「だってさ」

――この曲は「普通」ということをテーマにしていますよね。

syudou:自分が酔っ払った時に喋ってるような、うじうじした価値観を歌ってますね。そういう時って、都合がいいんですよ。でも、その都合のよさや、意見がブレる感じをそのまま曲にしたかったっていうのがありまして。歌詞を書くならひとつの明確なメッセージがあった方が入ってくると思うんです。でも、普通に生きてて感じることって、そんな明確に一個に定まらないし、あっちに行ったりこっちに行ったりするんで。そのブレブレな自分の心情を、極力そのまんまパッケージしたみたいな曲ですね。

――この曲の歌詞って、『必死』を作っていた頃のsyudouさんと、根っこの部分は変わってないと思うんです。「大人になんかなりたくない」という歌詞も「ヘラヘラ生きていくのが いわゆる普通なんだってさ」という歌詞も、数年前の曲にあってもおかしくない。でも、こういう言葉を、武道館やアリーナでライブをやって、素顔を出して、バラエティ番組に出て、その上で歌っているというのが、このアルバムのポイントでもあるのかなと思いました。

syudou:20代前半に「大人になんかなりたくない」って言ってるのと、30を超えて「大人になんかなりたくない」って言ってるのでは、だいぶ意味が変わってきますよね。でも、精神性がガキみたいなのも本当に嫌いなんですよ。ガキのまんまなのも嫌だし、大人の責任も嫌で、みたいな、うじうじしてる曲ですね。だから、あっちに行ったりこっちに行ったり、いろいろ考えるんです。でも、結局大体のことが「それが普通だよね」ってところに着地しちゃう。それが腹立つなと思って。そのことだけでも、なんとか曲にできたらなと思って。ちょっと皮肉みたいな感じです。この年齢で考える悩みなんて、基本普通なんで。こういう生き方をしてきたとしても、とんでもなく特殊な悩みがあるわけでもないし、先輩とかに聞けば大体経験してるし、普通なんですよね。「こんなにいろいろ考えてたんだけど、全部普通なのか」っていう曲ですね。

――「あーあ」では川谷絵音さんがアレンジを手掛けています。前作からの変化としては、いろんな人が編曲に携わるようになったこともありますよね。このあたりの意識の変化としてはどうでしょう?

syudou:その前もちょいちょいあったんですけど、「神頼み」あたりからすごく増えたんですよね。ポジティブに言えば、いろんな人の音でやっても意外と自分の曲として成り立つんだということがわかってきた。もちろん、それで成り立つくらいの歌詞とメロディをちゃんと組まないと話にならないと思ったというのもあって。あとは、自分の現状のスキルに限界を感じたっていうところも当然あります。絵音さんとの「あーあ」とかも、めちゃくちゃ良くなったんで。音がセクシーなんですよ。なぜそう感じるかは細かい理由がいっぱいあると思うんですけど、その艶やかさを借りることで曲が良くなったりもした。だから、もちろん自分のスキルも磨き続けるんですけれど、求められるのはプロデューサー目線みたいなところにもなってくるのかなって思いました。自分で全部やるんじゃなくて、俯瞰で見て「ここにはこういう人がいた方が作品が良くなる」というジャッジができるようになってきている気がします。

▲「あーあ」

――今回のインタビューでは『露骨』の頃から3年半で、いろんなことが変わってきたという話をしてきましたけれど、逆に変わらなかったと思うものは?

syudou:変わらなかったのは、自分の精神年齢かな。どうだろうな。友達の存在は変わってないですね。僕、友達が決して多いタイプではないんです。なんとなく仲がいい人っていうのがいないんですよ。だからこそ限られた友達は大切にしたくて。そういう友達の幸福が自分の幸福にもつながるっていうのは、前よりも明確に感じるようになったかもしれない。前はもっと「蹴散らしていくぜ」「俺の強さを誇示するぜ」みたいな感じだったんですけど、じゃあ俺が一番になったとして、周りに誰もいなかったら寂しすぎる、みたいな。年を重ねるほど、友達っていう曖昧な関係性が、すごく価値のあるものだと感じるようになってますね。

――アルバムを全曲聴いて感じたことですが、思った以上にブレないというか、全曲に「syudou節」というものがあると思うんです。メロディとフロウにsyudouさんらしさが強くある。そこへのこだわりはどういうところなんでしょうか?

syudou:ありがとうございます。でも、ブレられるならブレたいんですけどね。自分の癖が強いんで。メロも歌詞も歌も幅が狭いんです。それを壊すのが、結構難しいというか。いろいろやってみて、「神頼み」とか結構明るくなったかなと思ったんですけど、今聴くと、普通に俺がやってそうだなって思うし。

――さっきの話ともつながるんですが、そういう「syudouらしさ」はどの曲にもあるんですが、これも「◯◯系」みたいに、ジャンル名やスタイルを表す言葉では括れないものだと思うんです。このあたりって、どう思いますか?

syudou:自分は、好きなものの境界をあんまり分けずに考えてて。お笑いも好きだし、格闘技も好きだし、ラジオも好きだし、ヒップホップも好きだし、そういうのが全部ぐしゃーっと混ざって、その出口が曲になってるってだけで。自分の中の謎のバランス感が、そういう風になってるのかなっていう感じですかね。自分の好奇心にちゃんと正直でありたいという。自分としてはまっすぐやってる気がするし、せめて正直ではありたいんですよ。そこだけはなんとか守ってるかもしれません。あと、これを続けていくことで、これがsyudouのブランドになったらいいなとは思うし。ジャンルを作りたいっていうのも、ちょっとあるんですよ。「物販でこれ売るのアリなんだ」みたいなアイデアでも何でもいいんですけど、そういう何かしらの発明をしたいと思ってて。その一つになってたら嬉しいですね。

――それを踏まえて『UKA』というアルバムのタイトルについて、もう一度訊かせてください。「羽化」を経た、その先のイメージにはどんなものがありますか?

syudou:どうなるんですかね。わかんないですけど、その時その時のことをちゃんと曲にしたいと思ってます。「だってさ」もそうなんですけど。ここから30代のリアルを追求して、その年齢の悩みをうまく伝えられたらいいなと思ってますね。ただ、「ドロップアウト」とか、めっちゃ中二な曲なんですけれど、あんまり無理なく歌えちゃってるので。ということは、俺がまだまだ中学生ってことだと思うんですけど。

――やっぱり精神年齢は変わってないかもしれない。

syudou:変わったら「変わったよ」って言いたいんですけど。次の曲で「あ、ごめん、変わってなかった」みたいになるかもしれないし。その矛盾はちゃんと曲にしていきたいと思います。やっぱり正直でありたいですね。

――ツアーも発表されていますが、今のところどんな構想を持っていますか?

syudou:アルバムの曲は当然やりたいんですけど、今までの強い曲も、何かしらいっぱい滑り込ませていけたらと思ってますね。今は自己満足のハードルが上がっちゃっているので。それを超えるためには、音楽も私生活も、ちゃんと自分の中でかっこよくありたいですね。自分の中から湧いてくる自分勝手な欲望みたいなものを、無視せずにちゃんと飼いならすのは難しいと思ってて。でも、諦めて「これが普通だから」ってなったら、「だってさ」になっちゃうので。そういう、欲する自分とも向き合いたい。ツアーの話からずれちゃいましたけど、そんなことを考えてます。

――ドキュメントとして曲を作っていく以上、ずっと向き合わざるを得ないということですね。

syudou:そうですね。自分と向き合って生きるって、俺、みんなやってると思ってたんです。でも、話すと意外とそうでもない人がすごく多くて。だから多少なりとも、自分が作ってるものを聴いていただけてるのかなと思います。ちゃんと学校に行ったり働いてたりしていて、みんな自分と向き合うほど暇じゃないのかもしれない。どうせ自分の気持ちを言語化したって、やることは変わんないですから。でも俺はそうやって自分と向き合うと、曲ができるわけで。それも面白がってもらえたら嬉しいですね。

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