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<インタビュー>BBHF、Galileo Galileiのフロントマン 尾崎雄貴――異なるアプローチで切り拓く音楽の現在地

Interview & Text: 黒田隆憲
BBHFが、6月にリリースしたEP『ATOM』を携えて3年ぶりにビルボードライブへ帰ってくる。【Atom to Atom】と銘打った本公演は、12月15日に東京、翌年1月30日に大阪で開催。これまでもライブごとに変化してきた彼らの楽曲たちが、今回はどんな表情を見せるのか。また、Galileo Galileiも10月28日にEP『Rise of The Man』をリリース。両バンドのフロントマン・尾崎雄貴に、公演への意気込みと、それぞれ異なるアプローチで生まれた二つの新作について聞いた。
来年は結成20周年を迎えるGalileo Galilei
――Galileo Galileiの新作『Rise of The Man』は、どのようなモードで制作した作品でしょうか。
尾崎雄貴:もともとは年内にアルバムを出したくて、みんなで40曲以上のデモやアイデアを作っていました。その途中でブラジルのアニメイベントに出演した際に、南米にもこんなに僕らの音楽を聴いてくれている人がいるんだと実感したんです。メンバーがサッカーのユニフォームを着たイラストや、いろんな国の国旗を描いた大きな旗をプレゼントしてくれたり、僕らもいつ出したか忘れているような初期のグッズや、インディーズ時代のCDを持ってきてくれたり。なかには、頑張って日本語で話してくれる人もいて。再始動する時は、もっとゆったり、知る人ぞ知るくらいの感じで長く音楽をやっていこうと話していたんです。でもいざ再開してみたら、「待っていたんだよ」という思いをたくさん受け取った。僕らの音楽を人生のそばに置いてくれている人たちがいる。それが海外にも広がっていたんですね。
――なるほど。
尾崎:そこで、そういえば来年は結成20周年だと気づいた(笑)。僕は一度Galileo Galileiを終わらせた時が第一章の終わりで、再始動から第二章だと思っていたんです。でも、「これ、まだ第一章が終わっていないじゃん」と。まずそこに区切りをつけなきゃいけない。同時に、デモの中にも「今、出してくれ」と言ってくる曲があって。その何曲かを選んだ時に、これはEPだなと思ったんです。ただ、第一章を終えた先に何が待っているのかは、僕にも見えていない。活動終了を示唆しているわけでは全くなくて、ずっと続いていた道の、途切れる場所が初めて見えたような感じなんです。そこから落ちるのか、飛び立つのか、また別の道が見えるのかもわからない。でも、希望を持って、ここまでやってきたことを「第一章」と呼ぼうと思った。メンバーといろいろ対話する中で、その感覚に名前がついたんですね。
――今回のEPで、具体的に描きたいと思ったことは?
尾崎:「帰り先が見つからない」という感覚ですね。僕自身、一人のミュージシャンとして、Galileo Galileiのヴォーカリストとして、あるいは1991年生まれの尾崎雄貴として、どこへ帰っていけばいいのかわからない。それをGalileo Galileiという物語を通して歌いたかったんです。最近、結成した頃に聴いていた曲をカヴァーして公開したんですけど、その反応からも、行き先が決まらないままの亡霊のような気持ちを感じている人たちが、僕らの世代にはたくさんいるんだと実感しました。「UREI」でも、そんな亡霊のような感覚を描いています。白昼夢の中をさまよっているような感じ。以前は自分の心にある光や闇を描きたいと言っていたけれど、今は「その光や闇って何だったんだろう」と、一つずつ考えていくところに来たのかなと思います。
――ドラムンベース的なリズムや語りに近い歌、ギターとシンセが重なる厚いサウンドにも、新しい試みを感じました。音楽面では、どのような変化がありましたか。
尾崎:大きかったのは、ポーター・ロビンソンのライブに出演したことですね。久々に会って話したり、ライブを観たりして、彼は自分の曲や歌、言葉を、作品として出しているんだなと感じた。反応を見ながら、「僕はこうなんだ。みんなはどう思う?」と投げかけているように見えたんです。本人に聞いたわけではないけれど、電子音楽をやるというより、言葉で言い表せないものを、自分のできる全てを使って表現したいんじゃないかなって。それはまるで、友達の成長を目の当たりにしたような感覚でした。彼の方も、Galileo GalileiやBBHF、warbearまで聴いてくれていて、「それ、warbearで鳴らしていたシンセの音じゃん」みたいに言ってくれる。海を越えて、お互いに意識し合う音楽の友達なんですよね。そういう経験もあって、今は具体的な音楽をリファレンスとして出すのではなく、「赤をやりたい」「黄色と青でやってみたい」みたいに、抽象的な発想から曲作りが始まっていきました。実際にどんな音になるのかは、やってみるまでわからない。まず吐き出して、形を整える段階で、ミュージシャンとしてのジャンル感が出てくる。音楽って、まだまだおいしいものが残っている、僕はその「ご馳走」を、ひたすら食い散らかしている化け物なのかもしれない(笑)。
――そうした変化の中で、Galileo GalileiとBBHFの違いは、どう感じていますか。
尾崎:BBHFは、DAIKIくんと服屋に行く感覚に近いです。僕は服にあまりこだわりがないんですけど、彼はおしゃれが好きで、一緒に店に入ると、「これ、結構似合うかも」と思わされる。「これ買いなよ」と言われて、買わされるんですよ。音楽でも、「お前、その格好めっちゃいいじゃん」ということが起こる。(弟の)和樹とDAIKIくんに加えて、今は岡崎真輝くんも制作に関わってくれているんですけど、スタジオで起きていることは、Galileo Galileiと全然違います。財布を開いて、買えなければ買わない。買えるものを着てみたら似合っていたから、その格好で外に出て「俺、かっけえ」と思う。今のBBHFは、そんな楽しさがあるんですね。 Galileo Galileiでは、僕は書き物をしている感覚なんです。物語や登場人物、自分のイメージを言語化することも必要になる。霞の中に漂っているものをつかんで、形にしていくような感覚が、制作にも活動にもある。BBHFは、自分たちの頭と心で形にできるものを出していく。取っ掛かりが違うんだと思います。

音楽という芸術の楽しみ方ができる、BBHF
――BBHFの「冬眠」と、そこからまた動き出すことも、その感覚につながっていますか?
尾崎:服を一回、衣装タンスにしまっていた、という感じです。それを「冬眠」と言おうと言ったのはDAIKIくんなんですけど、寒くなくなったから服をしまった、くらいの感覚というか。そこが僕らにとっても、ファンにとっても、BBHFの魅力なんじゃないかなと思います。制作でDAIKIくんが札幌に来ると、その時の彼の調子が、曲の面白さにも直結するんですよ。全てを信頼しきってたら、「絶対にやってくれる」と思うじゃないですか。でも、いつも半々で、応えてくれる時もあれば、全く応えてくれない時もある。猫みたいな人なんです。僕はそれが面白いし、振り回される自分も悪くないなと思っている。Galileo Galileiでは、僕が周りを振り回す形になることが多いので。BBHFなら、「このギター弾いたのお前だからな」「もっとちゃんとしていたら、もっといい曲になっただろ」とDAIKIくんに言える。その、音楽という芸術の楽しみ方ができるのが、BBHFなんですよね。

――「エンフォーサー」がセッションから生まれたのも、予期せぬやり取りがきっかけだったのでしょうか。
尾崎:DAIKIくんと岡崎くんが、ずっとレイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)の話をしていて。僕はデモを用意していたのに、後ろで関係ないフレーズを弾くんですよ。ベースにギターを合わせたりしているから、「やりたいなら、やってやれよ」と。そのモードなんだったら、そういう感じでセッションしようと言って、作った曲ですね。僕はその時、もうちょっとしっとりした曲を書いていたし、エレクトロなことをやりたかったんですけど、そんなの聞いていないんですよ。それがBBHFなんです。全然違うものになって、面白いなと思いました。
――新曲のお披露目ライブでは、アーティスト写真のゴスメイクも再現していましたね。
尾崎:「化粧してみたくない?」「いいじゃん」という感じでした。僕がスマッシング・パンプキンズを聴き返していたら、DAIKIくんが「この曲もいいよ」と聴かせてくれて、「雄貴くんもビリー・コーガンみたいになればいいじゃん」と言うから、「俺は髪は剃れないよ」って(笑)。 『ATOM』を作る時は、マリリン・マンソンもよく聴いていました。でも、そちらの方向へ行こうということではなくて、「マリリン・マンソンって美学だよな」という話をして、今度はTHE NOVEMBERSを聴いたりする。「美学って何だ?」「化粧だ!」と(笑)、そういうやり取りが行動につながっているんです。
――「ATOM」の歌詞は、どのように生まれたのでしょうか。
尾崎:BBHFでは、映画のワンシーンのような映像が先に浮かぶ感覚が強いです。「エンフォーサー」なら、稼ぐべきお金を稼げなかった人を、一人ずつダムに沈めている殺し屋のイメージ。「ATOM」では、自分がなぜ作られたのかわからないロボットが、宇宙まで飛んでいって、月に腰掛け、自分を生み出した街を見下ろしている。そのシーンを描きたくて、歌詞を書きました。 Galileo Galileiの場合は、自分が今直面している問題が下地にあって、それを物語にしていく。歌詞の世界も全てつながっているんです。BBHFは、曲ごとに全く違う世界でもいい。もっとアトラクションに近い感覚ですね。
――ライブで演奏することで、曲の見え方が変わることもありますか?
尾崎:ありますね。『ATOM』も、ライブでやってみて、「この感情で歌えるんだ」「ここにインパクトを持ってきたら、こう聴こえるんだ」と気づくことがたくさんありました。作った時にはわからなかったことが、ライブで新しく見つかるんです。
――そんな曲たちが、ビルボードライブ公演【Atom to Atom】でどう変化するのかも楽しみです。
尾崎:DAIKIくんが、お客さんに「何をやってほしい?」と聞いていたんですよ。僕に何も言わずに。「難しい曲ばかりになったらどうするの。歌うの俺やで?」と思ったんですけど(笑)、彼が「投げかけたからには応えたいよね」と言っていたので、僕も全力で応えようと思っています。聴きたい曲を送ってくれた人たちの気持ちを、ちゃんと受け止めてセットリストを組んでいる、ということは伝えたいですね。Galileo GalileiとBBHFでは、ライブに来てくれるお客さんの顔ぶれも、僕らが思っている以上に違うんです。BBHFにはBBHFに合った距離感や楽しみ方、活動の感覚がある。そこをDAIKIくんも自分で模索し始めていて、僕一人ぼっちではなくなったんですよ。これからは、そういうところも楽しみにしていてほしいし、いい掛け合いが見られるんじゃないかなと思います。

――ビルボードライブは客席とステージが近いです。お客さんと、どのような関係をつくっていきたいですか?
尾崎:BBHFには、どこかニヒルなギャグみたいなところがあるのかなと思っていて。聴きに来てくれる人たちにも、心の中で「何やってんの?」とツッコんでほしいんですよ。お互いにクスリと笑えたり、「悪くないじゃん」と思えたりする、オリジナルな関係をつくってみたい。ビルボードライブも、そういう空気を一緒につくろう、という感じですね。今回はセットリストの選び方も変わったし、『ATOM』の曲は、まだ一度のライブでしかやっていないんですよ。BBHFの曲はライブごとに化けていくことが多くて、『ATOM』も、その余地をまだまだ残している。そこを、ちゃんと見せたいと思っています。
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