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<インタビュー>二階堂和美から溢れる、今だからこそのエネルギー――"まるだしのいのち"で歌うビルボードライブ公演を前に

インタビューバナー

Interview & Text: 土井コマキ

 二階堂和美が、オリジナル・アルバムとしては14年ぶりとなる新作『潮汐』を今年の1月にリリースした。その14年の間に彼女の身の上にはさまざまな出来事があり、中でも、バンドメンバーで人生のパートナーでもあったコントラバス奏者・ガンジー西垣との死別の知らせには、私たちファンも大きな悲しみに包まれ、残された彼女を心配した。そして、そんな二階堂和美がアルバムを産み落とした。共同プロデュースを原田郁子(クラムボン)、ソングライターには辻村豪文(キセル)、髙城晶平(cero)、皆川 明(minä perhonen)と個性的な面々が揃い、まさに『潮汐』のタイトル通り、今の二階堂和美だからこその説得力あるアルバムだった。この秋、そのアルバムを携えて、二階堂和美名義としては初めてのビルボードライブに立つ。今、どんな思いを持っているのだろうか。自身が僧侶を務める広島県のお寺の前に作ったプライベート・スタジオから、オンラインでインタビューに答えてくれた。


歌の9割はメンタル。ライブを重ねて取り戻した自分自身

――リリースのタイミングでもお話を伺いましたが、あの時は、話しながらお互いに涙目になるような、人生を思う対話になったのを記憶しています。リリースしてから時間が経って、今、どのような心持ちですか?

二階堂和美:あれから各地でワンマンライブをやって、徐々に、音楽に向き合える、音楽を楽しむ自分に少しずつ戻れているというか。また新たにその喜びを感じている、というところです。お客さんの前でパフォーマンスすることで得られる手ごたえっていうのが、ほんとにすごい。やっぱり『潮汐』を出すということに怯えている部分があったんだなと。私なんかが、まだ歌ってもいいんですか?みたいな。私、いじけ体質なので(笑)。






――いじけ体質!?

二階堂:すぐいじけますから。普段はお寺の業務をしたり子育てをしたりしていて、本当に音楽に携わっている時間が少ないし、「ガンジーの命を守れなかった」というとすごい言葉が強すぎますけど、なんかそんな私が、また歌ったり、作品を出したりしていいんですか?とか。


――でも、各地でお客さんが待っていてくれたでしょう? 久しぶりに各地のお客さんを前に歌ってみて、どうでしたか?

二階堂:本当に、ありがたいばっかりで。包みこむように「おかえりー!」って迎えてくれて。お互いにハグしているような。私も、たぶんお客さんも、みんな涙か汗かわからないけど身体から何かが出て浄化されるみたいな(笑)。そうやって1回ずつ公演を重ねるごとに、自分を取り戻しながら、歌に向かうエネルギーが鮮明になってきた感じです。ずっとへばりついていた申し訳なさみたいなものを、少しずつ引っ張り剥がしてもらって。私もライブでしか出てこないエモーションがドバドバ出るし、それに対してお客さんが反応してくれて、もうやってるこちらがすごい感動体験させてもらっていて。バンドメンバーの力も大きいんですよね。本当にメンバーのみんなにどれだけ勇気づけてもらっていることか。今回のアルバムの制作から気づいたことなんですけど、私の歌の9割はメンタルで、健全でなくても、ボロボロだったとしても、その全ての感情が乗るんです。そのむき出しの歌を、みどりさんのピアノやバンドの演奏が、音楽として受け止めてくれるからこそ、出せるんだなって。ライブは今、お客さんに聴いてもらうのはもちろんですが、自分の中の歌う細胞に問いかけながら歌っている感じです。これまでもそうではあったんですけど、歌に助けてもらっている感じ。大きな悲しみを経て、歌が自分の受け皿だってことがよりわかった今、なんというか、歌に対して、自分がコントロールするものではなくて、出てきてもらうものっていうか。うまく言葉にできないんですけど。



Photo: 岸田哲平


――二階堂さんのライブって、シンプルに「二階堂さんの人生、体、気持ち」がまずあって、「お客さんの人生、体、気持ち」もあって、二階堂さんの歌によってその2つの間で交わされる何かがありますよね。それを私たち聴く側は「救われる」とか「癒される」とか表現するのかなと思いますが、二階堂さんは、自分を取り戻す感じなんですか?

二階堂:そうですね。特に今は家のことやお寺のことをやっている時間が多い分、余計に音楽をやっている時に、脳も身体も覚醒して、すごく自分の得意なことをしてる、って感じるんです。それは事前のリハーサルの時からそうで。それで、あちこちで日々ライブをやりまくっている人たちが「ニカさんはライブをやるべきだ」「みんなこれを見るべきだ」なんて言ってくれるもんだから「そうかな」みたいな。いじけやすいけど、おだてにも乗りやすいんです(笑)。来てくださった方が、感動したとかびっくりしたとか言ってくださるのも、本当にこちらは感情の機微というか、まるだしのいのちで歌っているので、その露呈っぷりはちょっと、日常的に音楽やってる人には逆に出せないものがあるかもとは思います。


――アルバム『潮汐』は、ライブでどうなるんだろうって思う曲が多いです。

二階堂:案外そのままできるんです。今年3月にはピアノのみどりさんと全曲二人だけで収録順通りやったんですけど、「できたね」って。例えば「あれもこれも」は原田郁子さんに曲のアイデアをもらった時から、そんなに音を重ねたりリズム出したら、ライブでやりづらくならないか?って心配してたんですけど。そこは原田さんですよね、「そう?お客さんに歌ってもらったらいいんだよ」みたいに言ってて。確かに、再現とはならないにしても、最近ようやくライブでどうやるのかがつかめてきましたね。「リトル・トラベラー」の緊張感は、むしろライブ向きというか、ライブでこそ体感してもらいたい曲のひとつでもあります。『潮汐』はテーマが重めですけど、リリースから少し時間が経って、徐々に昔の曲も入れてアルバムのムードに縛られない“二階堂和美の歌”をお見せしたらいいのかなと思い始めました。


共同プロデュースを務めた原田郁子と


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お経をよむことと、歌うこと

――ずっと聞いてみたかったんですが、お経をあげるのと、歌うことは、モチベーションというか心づもりは一緒なんでしょうか?

二階堂:お経は、場面によって違うけど、お通夜や葬儀の場ではまだセンシティブな悲しみが溢れていますよね。そこでは極力丁寧に、慰めの気持ちで歌います。同じお経でも、ある程度年月が経った法事だったり、日常で唱える時は、雅楽とかハウスミュージックみたいな、一定のトーンを音楽的に楽しんでいるかも。ライブはお客さんの方を向いてパフォーマンスするけれど、お経は、参列されている方に背を向けて、一同でご本尊、仏様の方を向いて声を発する。宇宙っぽいもの、ひろーい空間に浮かぶ命の粒みたいなものをイメージしながら声を発しているかな。でもそれは、私の場合、お客さんのほうを向いて歌っていてもそうかもしれません。お経をよむことを「おつとめ」っていうんですけど、おつとめも、歌も、その日によって、自分が自分の知らない声に出会うこともあるんですよ。第一声でいい声を取り出せたら、わ~い!ってなります。


――参列している自分と仏様のために、僧侶が自分の中にある何かを取り出して、お経をあげてくださっていると思うんですが、それも歌と近いですか?

二階堂:私たちは何か供養をして差し上げるということではなくて、基本的には仏徳を讃嘆しています。そのお経に描かれている世界へといざなう。亡くなられた方に対して、というよりは亡くなられて仏となられた、その仏の世界に対して手を合わせている。その間は、故人のことや自分の命のことを思ったりする時間、別世界に思いを馳せるような時間になれば。まぁ、ぼーっとするための時間なのかもなという気もするんです。心を空っぽに。囚われの心から離れる練習ですかね。私の宗派では一緒によんでもらったりもするんです。退屈凌ぎにもなるだろうし、自分も声を出すことで、違うところに行けたり、一緒に歌うみたいに一体感も生まれたりしますし。


Photo: 岸田哲平


――一緒にお経をあげるって、音楽のライブで一緒に歌うみたいですね?

二階堂:参列される方にとって、お経を聞く時間が音楽的体験でもあってほしいなと思っています。何かサウンドが入ったらもっと入りやすくなると思うんですけど、うちの宗派は木魚も使わないので、声だけでトランス状態にどれだけ持っていけるかという部分もあります。受け取ってくださる方がそのつもりで来てくださらないと、なかなかそうはならないんですけど。そこが一番違うところかも。


――ライブはみんな受け取る気満々で来ますもんね。

二階堂:そう。だからパッとひとつになれるけど、お経はもうずっと片思いみたいな感じで、虚しさを自分に植え付け続けている感じですよ。あ! だからいつもの反動もあって、いわゆるライブでは、なんて耕された土壌だろう!ってなって、すごいものを放出できちゃうのかもしれないです。


Photo: 木原千裕



――ライブのお客さんは、今日の歌めちゃくちゃ良かったですって言ってくれても、仏様は今日のお経良かったよ〜とか言ってくれないですもんね。

二階堂:あはは。たまに参列された方から、あんなお経に遇ったことない!なんて言ってもらうこともありますけど、日常的には淡々とした日々なので(笑)。ライブは私の本領を発揮できて、私を受け止めてもらえて嬉しいーーーーー! ありがとう~~~みんな~! ってなるんですよね。


――ビルボードライブに来た人をどんな所に連れて行ってくれますか? 歌うことに剥き出しになっている二階堂さんを見て、ガンジーさんも喜んでいますよね?

二階堂:ビルボードライブのあの空間って音楽を楽しむって感じがしますけど、私のライブはもしかしたらもっとディープなところに連れて行ってしまうかもしれないけど、いのち全開で放出しますので、受け取ってください! 今回は『潮汐』をリリースした今だからこそのエネルギーがあると思うので、今の二階堂和美のパフォーマンスを絶対見とくべきって思います(笑)。バンドが成熟してきたのも見どころだと思います。ビルボードライブでのメンバーは、ピアノの黒瀬みどりさん、ベースの岩見継吾くん、ドラムの松下マサナオくん、とみんな素晴らしいミュージシャンです。普段それぞれ離れてるメンバーですけど、度々集まってリハをしていて、今すごくいいバンドになっているんです! もちろんガンジーなくして存在しないアルバムなのだけど、ガンジーは一緒にステージに立てなくて嫉妬しているかも。ビルボードライブは1日に2公演なので、私の体力が持つのかどうかが心配ですが、そのくらい出し惜しみなく、全力でやります! 実は、私なんてって思う反面、自分はものすごいものをお見せできる、すごいものを放出できているっていう自負もあります。またいつ、いじけて引きこもっちゃうか分からないので、見逃さないでください(笑)。



二階堂和美「潮汐」

潮汐

2026/01/21 RELEASE
PCD-18928 ¥ 3,000(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.リトル・トラベラー
  2. 02.つけっぱなし
  3. 03.あれもこれも
  4. 04.恋しがっているよ
  5. 05.BILLIE
  6. 06.つながりあって生きている
  7. 07.うまれてきたから
  8. 08.あうん

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