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<インタビュー>ドリコム×マンガボックスの新レーベル「DREボックス」始動――異なる強みを持つ2社が描く、コミカライズとIPの未来

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Interview & Text: 加藤雄斗(リワークス)
Photo: SHUN ITABA

 2026年6月6日、株式会社ドリコムと株式会社マンガボックスの2社が協業して新たなWEBコミックレーベル「DREボックス」を創設した。ドリコムはゲーム・出版など多岐にわたりさまざまなIPを創出する企業。一方のマンガボックスはTBSグループのバックボーンを活かしたオリジナル漫画の編集と、マンガアプリ「マンガボックス」を運営する電子出版社だ。本レーベルはドリコム社の「DREノベルス」から出版されている小説を原作とした、「異世界・ファンタジー」作品に特化したコミカライズを展開していく。

 2つの企業がなぜ協業したのか。強みの異なる2社が組んだとき、レーベルはどこへ向かうのか。その狙いや今後の展望について、ドリコムからはDREノベルス副編集長・藤原大樹氏(以下:DRE藤原)、マンガボックスからは第三編集部副編集長・中本良之氏(以下:MB中本)にお集まりいただき、「DREボックス」の中核を担う2社の担当者に語ってもらった。

「DREボックス」を立ち上げることになったきっかけとは?

――そもそも、ドリコムとマンガボックス、2社が協業し「DREボックス」を立ち上げることになったきっかけとは何だったのでしょうか?

DRE藤原:実は発起人は僕と中本さんというわけではなく、それぞれの会社の上長でして。2人が前職の同僚だったことがきっかけでした。ドリコムはIPの総合プロデュース、マンガボックスさんは弊社にない独自のプラットフォームを持っている。互いの強みを活かして何かできないか、という会話から始まりました。……とか言いつつ、ぶっちゃけ飲み話ですね(笑)。

――お二人は、どの段階からこの話に関わることになったのですか。最初に聞いた時の率直な感想も伺いたいです。

DRE藤原:その飲み話が僕のところに降りてきた当初は、中身は何も決まっていませんでした。真っ先に浮かんできたのは既存レーベルとの差別化です。やるからにはDREボックスならではの強みをどうするのか考えましたね。これは時間もかかる、途方もない道のりだな……と。ただ、編集者が作品のトータルプロデュースを任せられる時代が来ているとも思っているので、レーベルを立ち上げて、その大きな可能性を考えられるのは、すごくやりがいがあるなと思いました。

DREノベルスが最も厚く持っているのが異世界・ファンタジーですから、そこは早い段階から前提としてありました。

MB中本:自分はドリコムさんといえばゲームのイメージが強くて、出版業をされていたことは知っていても、刊行物自体にはそこまで詳しくはなかったんです。それで一度ドリコムさんの作品を読んでみたんですが、質がよい、魅力的な作品が多いレーベルなんだ、と感じました。——しかも、国内の出版事業だけではなく、海外、アニメやゲームなど幅広くメディア展開をされています。1つのコンテンツをどこまで多くのメディアに繋げられるか——その展開力が素晴らしいと感じました。異世界・ファンタジーは弊社としても実績・手応えのあるジャンル。これは組む意味があると思えました。

DRE藤原:一番強い資産と一番需要のある場所が重なっていた。ジャンルについては、自然に決まりましたね。

――レーベルを新たに立ち上げるとなると、やることが山積みだと思います。

DRE藤原:体制を整えるのも含め、約2年ほどかかりました。今思うと長い準備期間でしたが、凄く濃い日々だったと思います。

MB中本:漫画家さんの執筆ペースも人それぞれですし、病気や私事でどうしても描けないタイミングも出てきます。すごく速くても半年、普通でも1年は作品準備にかかります。

DRE藤原:お互いの領域をどこで区切るかは一番の悩みどころでした。例えば、マンガボックスさんは電子が主ですが、紙コミックスを出すのかどうか、とか。互いに譲れない部分はありますし、それぞれの強みを活かした協業体制なので、良さを殺さずにどう責任分界点を作ればよいか何度も調整しましたね。

最終的には腹を割って話すこと、だったと思います。最初は遠慮している部分も多かったので、うまくかみ合っていなかったのですが、しっかり本音で話せる仲を築けたので。結局言いたいことを言えなかったり、遠慮しあったりすると何も進みませんから。何度もMTGを重ね、決起会などをして今ではだいぶ仲良くさせていただいております(笑)。

MB中本:電子コミックスの市場はインフレの影響などが比較的見えにくいんですが、紙コミックスは刊行に際してそういったあおりを強く受けるところもあり、レーベル設立の話が立ちあがった頃とは市場の状況もかなり変化しています。また、作品の売り方についても互いに異なる考え方やポイントがあるため、スケジュールの立て方等も自然と変わってきます。

そういった背景もあったため、何度も綿密に調整をする中で、同じ出版社でも見ているポイントが違うのだと、改めて思う部分がいくつかありました。

同時に、違うからこそお互いに初めて気付けることや、リスペクトしあえる部分があるということも今では強く感じています。

DRE藤原:何度も相談しながら少しずつ前進を繰り返して……レーベルを新設するという大変さはかなりありましたね。でも、それぞれがノウハウを持っているレーベル同士だからこそできたと言いますか。逆にこの期間で準備が済んだ、と言えると思います。




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限られた"スキマ時間"に適性が高いジャンル

――異世界・ファンタジーは、いま国内でトップクラスの需要があると伺いました。なぜ、そこまで強いジャンルになっているのでしょうか?

MB中本:一番はとにかく、現代人が忙しすぎるということに尽きるのではないでしょうか。現代で最も手軽に活用されるハードウェアはスマートフォンだと思います。自分ももちろん、スマホアプリで漫画を読むことも多いです。通勤中や仕事が終わった後。子育てにひと段落したタイミング。限られた"スキマ時間"の中で、爽快感やカタルシスをリラックスしながら楽しむのに、非常に適性が高いです。このハードと相性の良いジャンルが異世界・ファンタジージャンルだと思っています。

DRE藤原:ジャンルと読者の欲求が合致しているという点は強みですよね。現代に適したジャンルだからこそ需要が増え、供給も増えているのが現状です。出版社に限らず、エンタメ企業の間では「ユーザーの時間」の奪い合いが発生していると思っているので、我々はユーザーの限られた時間でどんな娯楽を楽しんでもらうかを考える必要がありますね。

MB中本:市場的な側面ですと、弊社の事業は電子書籍が中心ですが、電子書籍市場は成長期を終え、少しずつ伸びが鈍化する局面に入ったかなと自分は感じています。しかしその中でも例外的に、異世界・ファンタジージャンルの伸びは非常に良好なんです。また、北米などでも人気が高く、まだまだ伸びしろがあるのが事実です。マンガボックスでも、異世界・ファンタジー系の作品で累計100万部以上の人気作が何本も出ています。

DRE藤原:弊社が出しているのは文庫ではなく大判サイズの小説なのですが、このサイズとの相性が良いジャンルでもあるんですよね。書店のランキングなどを見ても、このジャンルの本が上位に食い込んでいることも多い。企業としてチャレンジする意義があると感じます。

――DREボックスでは現在4作品が連載中です。作品の連載ラインナップはどのように決められているのでしょうか?

DRE藤原:弊社から「こういう作品があります」とご紹介して、その中からマンガボックスさんに選んでいただく流れです。ここは、あえて弊社側で絞り込まないようにしています。小説として面白いかどうかは僕らが判断できる。でも、それが漫画にして強くなるかどうかは別の判断かなと。そこは漫画のプロに見ていただいたほうが確実なので、幅を持たせてお見せして、選定はお任せしています。

MB中本:そこはたしかに、お互いの見方が一番違うところかもしれません。

提案していただく作品は当然商業作品なので、高いクオリティのものばかりで選定にも悩みます。最終的には漫画家さんと原作の絵柄や作風との相性が大きいのですが、マンガボックスでのコミカライズに向いているかどうかを重視して選定させてもらっています。たとえば現在連載中の『宰相の器を持つ小役人の、辺境のんびりスローライフ ~出世できず左遷されたはずが、なぜか周りから頼られまくっています~』ですと、スローライフという設定がマンガボックスでは少なかったこと、昼行燈な主人公が実は……というわかりやすく、みんなが好きな設定だったことがポイントでした。加えて、ただわかりやすいだけでなく、物語の裏側にしっかりとした謎も含まれていたため、読みごたえとしても十分。面白い漫画になると確信してコミカライズを提案させていただきました。

――取材現在、DREボックス設立から約4か月が経過しました。レーベルとしての滑り出しはいかがでしょうか?

MB中本:まだまだ走り出したばかりで、データも少ない中ですが、ありがたいことにマンガボックスアプリでのPV数は好調で、スタートは良好と言えます。まだまだ作品も増えていきますし、単行本の発売予定もありますので、適切なタイミングでより盛りあげていきたいと考えています。

DRE藤原:いったん安心しました(笑)。僕らは書籍の刊行サイクルで動いているので、隔週連載で読者の反応が返ってくるスピード感は驚きました。

ただ、良質な原作提供も宣伝も、もう少しの間は頑張らないといけないフェーズが続くかなと思います。どれだけ作品をヒットに繋げられるか、その火種は両社で作っていかないといけません。

――このジャンルの需要と供給が増えている状況で、レーベルとして生き残るための「勝ち筋」はどこにあると考えているでしょうか?

MB中本:マンガボックスは、作品を読者に届けることにずっと向き合ってきた会社です。連載媒体となるアプリを持ち、数字面でもヒットと呼べる作品がいくつも出てきて、良いスキルを持った編集者も集まってくれている。ただ、忸怩たる思いがあって——漫画を作って読者に届ける、そこで完結してしまうのはもったいないなと。

もちろん我々も日々ライツ、クロスメディア展開なども念頭に作品を編集・展開していっているのですが、もっと視野を広げるために新しいアプローチ方法を積極的に探していました。今回そこにドリコムさんの「この作品は次にどこへ行けるか」を考える独自の視点が加わったのでとても心強いです。

DRE藤原:そう言っていただけるとありがたいです。ゲームもアニメも社内にあるので、自然とそういう会話になる環境ではありますね。

レーベルとしての座組・基礎の部分は出来たかなと思います。そのうえで、皆様にお届けする作品の中身に対して妥協はしない、求められるクオリティ以上のものを出していくというのは忘れてはいけません。

DREノベルスとしても、ノベルだけで完結せずコミックでも受け入れられる作品を作ること。さらにそれが仮にアニメになった時に、アニメとしても受け入れられる作品であること。当たり前ですが、作品を雑に作っても読者さんには見透かされてしまいます。上質な面白い作品をお届けする、それがDREボックスというレーベルを見つけてもらう近道であり、読者を離さない唯一の道筋だと考えています。

それに加え、実はドリコムの強みのひとつに、海外展開のしやすさがあります。北米をはじめとした海外需要も踏まえ、DREボックスの作品をグローバルに展開していきたいと考えています。10月にはドイツで行われるブックフェアもあって、そこで弊社の海外担当者が現地バイヤーに作品を提案する機会もありました。

――最後に、今後のDREボックスの成長と拡大に向けた意気込みをお願いします。

MB中本:まずはとにかく良い作品を作っていきたい、というところに尽きます。それ以降の展開、例えばアニメ化についてはまだ夢のまた夢で、実現してもご褒美を貰えた、くらいの感覚になると思います。大谷翔平さんの、「自分はここまでしかできないのかなと、憶測だけで制限をかけてしまうのはムダなことだと思います」という言葉があります。この言葉を胸に刻みつつ、このレーベルの成功に最大限尽力したいと思います。

DRE藤原:僕は、読者さんも作家さんもみんながDREボックスに注目してくださった、さらにその先。DREノベルスやマンガボックスというコンテンツにも興味が派生して、目を向けてくださる、それが一番の成功になるのかなと思っています。このレーベルが注目されるほど、関わりのあるコンテンツも一緒に大きく輪が広がっていく。みんなで幸せになるレーベルへの成長、ぜひ実現したいです。


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