Special
<インタビュー>JADEが開花したソロキャリアの道 8年ぶりの日本でリトル・ミックスの“あの曲” を歌う理由は

©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved
リトル・ミックスのメンバーとして音楽シーンを席巻してきたジェイド(JADE)が、ソロ・アーティストとして本格的に動き出してからおよそ1年が経った。2025年9月にリリースされたデビュー・ソロ・アルバム『ザッツ・ショウビズ・ベイビー!』は全英アルバム・チャートでは3位を記録。批評家からも高く評価され、“最も売れた新人アーティストのデビュー・アルバム” という新記録も樹立した。グループ時代のエンパワーメント一色だったサウンドとは一線を画し、業界の中でもがきながら自分を見つけ直していく過程を、脆さも含めてパーソナルに描いた作品として、多くのリスナーの心をつかんだ。
そして今夏、ジェイドが実に8年ぶりに来日。リトル・ミックスとして【POPSPRING 2018】のステージに立った日から長いブランクを経て、今度はソロ・アーティストとしての凱旋だ。本番前日のスケジュールの合間を縫って行われたBillboard JAPANのインタビューで、ジェイドは終始リラックスした様子で、デビュー作を通して得た教訓、すでに動き出しているという次作への構想、そして音楽とは関係のない素顔まで、惜しみなく語ってくれた。ステージの上では堂々としたポップスターでありながら、プライベートでは自称“ちょっとシャイなオタク”な彼女の人柄にも迫るインタビューをお届けする。
──デビュー・アルバムのリリースから、もうすぐ1年が経とうとしています。ライブという場で実際に楽曲と向き合い、ファンが歌詞を歌い返す姿を目の当たりにしてきた今、アルバムそのものへの見方に変化はありましたか?
ジェイド:はい、実際に変わりました。このアルバムで一番大きな収穫だったのは、私が音楽業界で生きていくことの浮き沈みについて書いた作品だったということ。そして、そのことをどう乗り越えるか、今ではその術がわかっているということです。でも気づけば、また同じ渦の中に引き戻されていたりもして。今、それがちょっと滑稽に思えるんですよね。
この1年を振り返ってみると、私は人からどう見られているかを気にする状態に戻ってしまった時期がありました。ネット上のコメントや意見が気になって、それに影響もされてしまう。これって、まさに私がアルバムで「もう気にしないようにする」と書いていたことそのものなので、ちょっと皮肉な話ですよね。だからこれも、結局はいい教訓になったのかなと思っています。

──ソロキャリアへ踏み出すにあたって、ご自身の中で特に大切にしていたことはありましたか?
ジェイド:リトル・ミックスと自分自身の活動との間に、ちゃんと空白の期間を持つことです。実際に作品を出すまで、3年ほどかかっています。それはすごく重要な時間で、自分がソロでどんな人間になりたいのかを知るために欠かせないプロセスでした。恋愛関係と同じだと思うんです。私とグループのメンバーは、11年間一緒に過ごした、いわば11年続いた関係のようなもの。そこから抜け出した時に、「じゃあ、ひとりの自分って何者なんだろう?」と考えないといけない。それには時間がかかるものです。何事も焦って進めることはできません。すぐに音楽を出さなければというプレッシャーもグッと飲み込んで、じっと待つ強さを持てた自分を誇りに思っています。それがあったからこそ、自分が本当に何者で、何について書きたいのか、自分のサウンドとは何かを、きちんと理解できたんだと思います。
──グループでの活動からソロへのソングライティングの旅路について、詳しく伺えますか?
ジェイド:グループにいた時は、長年、ある特定の書き方で書いていました。普遍的であることが求められて、メッセージも、多くの人が共感できるものでなければいけません。リトル・ミックスのモードは、常に女性のエンパワーメント。ボリューミーなコーラスがあって、もっと、もっと、もっと、という感じ。振り付けを軸に組み立てられることも多々ありました。
だから自分自身の音楽のために書き始めた時、かなり気が重い作業でした。突然、誰も知らない個人的なことを書かなければいけなくなったから。弱さをさらけ出すようなアングルから書かないと、人に受け入れてもらえない。華やかさやガールズグループのマスクの後ろに隠れることはできませんでした。それこそが、これほど時間がかかった理由のひとつだと思います。最初の頃に書いていた曲は、まだどこかリトル・ミックスっぽさが残っていましたから。自分をもっと磨いて、リトル・ミックスの曲に聞こえないような書き方に挑戦し続ける時間が必要でした。
私の頭の中はもともとかなり散らかっていて、すぐに飽きてしまう性格なんです。『ザッツ・ショウビズ・ベイビー!』を聴いてもらうと、本当にいろいろな要素が入っているのがわかると思います。テンポが変わったり、ダンステイストの曲の次にはロックやディスコの要素が入っていたり。私自身が自分を発見していく過程がそのまま聞こえてくるのが、すごくいいと思っています。
──アルバムのアートワークも、それをうまく表していますね。
ジェイド:そう、いろんなバージョンの自分が、それぞれ見られたいと主張しながらせめぎ合っている。あれは意識的に選んだイメージなんです。

『ザッツ・ショウビズ・ベイビー!』アートワーク
──このアルバムは失恋や再生について、とてもオープンに描かれていますよね。時間が経った今、ライブでこれらの曲を歌う感覚に変化はありますか?
ジェイド:去年は、どちらかというとプロモーション・モードに入っていた感じでした。それに対して、今年は、いくつかの曲をまた好きになることができた期間でした。完全に嫌いになっていたわけではないんですが、レコードを仕上げる時期って本当にストレスが多くて、ミックスやマスタリングの工程で、同じ曲を何度も聴きすぎて、作業が終わる頃には、「もうこれ以上聴けない」という状態になります。だから、ステージでこれらの曲を演奏して、「ああ、これ本当にいい曲だな」と書いた時の気持ちを思い出せたのは、すごく嬉しかったです。

特に自分でも意外だったのが「ビフォア・ユー・ブレイク・マイ・ハート」です。この曲はかなり試行錯誤の上、できた曲です。私はどうしても自分がどこから来たのかを忘れないための曲、いわば“小さなジェイド”についての曲を、このアルバムに一曲入れたかったんです。ちょうどセラピーを長く受けていた時期でもあって、幼い頃の自分を思い浮かべて、彼女を誇りに思うこと、そしてここまで一緒に来られたことを実感する作業をたくさんしていました。だから、どうしてもそのテーマの曲がアルバムに必要だと思っていたんですよね。
ただ、アルバムを仕上げるカオスの中で、この曲を何バージョンも作り直すうちに、正直もう嫌になっていました。でも、いざステージで再びこの曲を歌い始めた時に、「ああ、私は本当にこの曲が好きだ」と気づいたんです。かなり感動的な体験でした。ツアー中、毎晩ステージに上がる前に、自分自身に「あなたはここにいるにふさわしい」と語りかけるようにしていて、その時、実際に幼い頃の自分を観客の中や、自分の隣に思い浮かべているんです。それがすごく特別な感覚で、自分が何をやり遂げてきたかを思い出させてくれます。
この曲を初めて披露したステージの一つが、【BBC Proms】でした。私の8歳の姪、アマーラが若い頃の私を演じてくれたんです。自分のショーでステージに立ちながら、ふと左を見ると、そこに若かりし頃の自分がいる。本当にパワフルで、癒される体験でした。そしてその瞬間、「あ、この曲は、自分がこれまで書いた曲の中でも特にお気に入りの一曲だ」と実感しました。
──姪御さんとのエピソード、とても素敵ですね。
ジェイド:彼女、私にすごく似ているんです。それも不思議で。彼女を見ていると「ああ、まさに私そのものだ」と感じる場面が多々あります。彼女はステージに立つのが初めてで、すごく緊張していたので、「大丈夫だよ」と励ましていたのですが、その言葉を自分自身にかけているような感覚でもありました。もし誰かが自分を疑ったり、つらい状況にいたりするなら、みんな一度、若かりし頃の自分を雇ってみて。
──新作では、どんなことに挑戦したいとお考えですか?
ジェイド:今はただ、また実験を楽しんでいるという感じです。まだ本当に初期段階なんですが、すでにスタジオに入って、大好きな人たちと一緒に書き始めています。マイク・サバスや、前作をたくさん一緒に書いたパブロ・ボウマンなど、心から安心できる人たちです。というのも、次のアルバムは、もっとパーソナルなものになるかもしれないと感じているから。そういう話をできるくらい安心できる人たちに囲まれる必要があって、まだ新しい人とはほとんど一緒に書いていません。でも、それでいいと思っています。ずっと、自分の一番好きな人たちだけで何かを作るレコードを作りたいと思っていたので。また“みんなを驚かせる”ことをしたい、という気持ちで溢れています。
Photo by Kazumichi Kokei──実に8年ぶりの来日となりました。前回の来日以降、日本を訪れる機会はありましたか?
ジェイド:【POPSPRING】以来、日本には来ていません。だから、ただその機会を待っていた感じでした。【SUMMER SONIC】のオファーが来た時、「これはもうやるしかない!」と思いました。(【サマソニ】で)何が起きるのか、正直まったく予想がつきません。リトル・ミックスのファンが来てくれるのか、私のソロ曲を知ってくれている人が来てくれるのか。それすらわからないんですが、気にしていません。ここにいられるだけで嬉しいので。たぶんすごく暑くて湿度も高いんだろうなと思っているので、髪の毛はどうなってもいいや、と受け入れる覚悟です(笑)。
Photos by Kazumichi Kokei
──リトル・ミックスの「Wasabi」は披露していただけますか? すでにセットリストの定番になっている印象がありますが。
ジェイド:もちろんです。「Wasabi」はもう、今となっては私自身の曲になっているんです。リトル・ミックスの曲だということを、自分でも忘れてしまうくらい(笑)。フェスのセットには、リトル・ミックスの楽曲を集めたメドレーも入れています。ファンの期待に応えるためにも大事なパートですから。でも「Wasabi」はそのメドレーの中には入れていなくて、一つの曲として扱っています。絶対にパフォーマンスしないといけない曲。みんなの前でまた歌えるのが本当に楽しみです。ファンでも、そうでなくても楽しめるような、間口の広いセットリストを組んだので、みんなに楽しんでもらえたらうれしいです。
──日本滞在中、特にやってみたいことはありますか?
ジェイド:絶対にヴィンテージものの買い物はしたいです! こっちでスーツケースをもう一つ買って、買ったもので満杯にしたいくらい。今回は少し長めに滞在する予定で、大阪公演の後に京都で数日過ごす予定です。ホテルに空手のレッスンがあるみたいなので、試してみようかなって。今までは、なかなかじっくり楽しむ機会がなかったので、今回は長くゆっくり楽しもうと思っています。
──曲作りやパフォーマンス以外の、オフの日の過ごし方について教えてください。
ジェイド:私、実はちょっとオタクっぽいところがあって……数独が大好きなんです。それと、うちの犬たちとただのんびり過ごすのも好きです。2匹とも保護犬で、一匹はコリーとレトリバーのミックスだと思います。もう一匹のミミは、正直、野良犬っぽい見た目で……何の犬種かよくわからないんです(笑)。犬と過ごしたり、ジグソーパズルや数独、あとは塗り絵をしたりして過ごしています。塗り絵も好きで、赤いクリップがロゴの有名なお店がありますよね。伊東屋でしたっけ? そこに行って、いろいろ買い込みたいです。
──では最後に、カラオケの定番曲は何ですか?
ジェイド:最初に思いついたのは、アナスタシアの「レフト・アウトサイド・アローン」です。あと、ものすごく王道でベーシックすぎるかもしれないんですけど……(クイーンの)「ボヘミアン・ラプソディ」。ミュージカル作品が曲になったようで、ちょっとカオスなところが盛り上がるし、カラオケでは絶対に外さない一曲だと思います。まさに今、私がやるべきことですね。せっかく日本にいるんだから、カラオケに行くべき!

























