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<インタビュー>milet “完璧”ではなく“未完成なままの自分” を歌に 3年ぶりアルバムで見せる脆さと優しさ

Text & Interview: 後藤寛子
Photos:Shintaro Oki (fort)
miletが、約3年ぶりとなる4thオリジナルアルバム『Made of Glass』をリリースした。TVアニメ『葬送のフリーレン』のエンディングテーマ「Anytime Anywhere」「The Story of Us」をはじめとするタイアップソングから、現在のmilet自身を反映した多彩な楽曲まで、音楽を通して3年間の歩みが伝わってくる充実の1枚だ。
軸にあるのは、「ガラス製」というタイトルどおり、力強さと繊細さ、鋭さと脆さなど、相反する特性もありのままに表現したmiletのリアルな姿。「今」を刻んだアルバム制作を経て、彼女は何を掴んだのか。「強くなった」と語る変化と現在地に迫る。
──3年ぶりのフルアルバムが完成しての手応えはいかがですか。
milet:すごくいいアルバムができたなと思っています。この数年間の酸いも甘いも全部を曲にして詰め込むことができました。
──3年分のシングル曲を含めてアルバムにするうえで、テーマみたいなものはあったんですか。
milet:ライブで歌えるアルバムにしたいという気持ちがありました。もちろんほかのアルバムの曲もライブで歌ってきましたけど、このアルバムを聴いて「ライブに行きたい」と思ってもらえるような、今まで以上に生っぽいライブ感ある作品にしたかったんです。だから、アルバムの新曲は自分でギターを弾いて作った曲が多くて。もともとギターを弾きながら曲を作るのは好きなんですけど、マイク一本で歌っている時よりも生きている感じが乗るんですよね。
──歴代のシングル曲を振り返ると、懐かしいくらいの感覚ですか?
milet:懐かしいですね。(2023年リリースの)「Anytime Anywhere」を聴くと、改めてこの数年間は『葬送のフリーレン』と共に生きてきたなと思います。アニメ第1期から、『フリーレン』のために4曲書いてきましたし、私自身も支えてもらった心の友のようなところがあるので。ずっと一緒に旅を続けてきて、旅を始めた時の景色と、旅を進めて見える景色という2つの視点からフリーレンの愛の曲を作れたのはよかったです。

──ほかにもタイアップの曲が多いですが、タイアップ曲との向き合い方は変わってきましたか?
milet:あまり変わっていないと思います。デビュー当初から、物語の中に誰よりも入って壮大なファンアートを描く気持ちで曲を作らせていただいてきました。その没入度は今のほうが高くなったかな。ただ、その時の自分の心情で物語と向き合うので、暗い気持ちだったら暗い曲になるかもしれないし、希望を探している時期だったら曲の中にもそういうメッセージが込められていくと思います。
──単なる提供曲ではなく、ちゃんとmiletさんの足跡になっているということですね。3年間の歩みをまとめるタイトルとして、『Made of Glass』=ガラス製というタイトルがぴったりだなと思いました。ガラスというキーワードはどこから出てきたんですか。
milet:最初にこのアートワークを思いついたんです。大好きな芸術家の及川春菜さんとのコラボレーションなんですけど、いつか彼女と作品作りをしてみたくて。及川さんの作品は、モザイクガラスの奥に自分で作った彫刻などを置いてどう見えるかというアートなので、いつか春菜さんのガラスの中に入ってみたいと思っていたんです。
──想像力を刺激する、素敵なジャケットですね。
milet:彼女の作品を見ていたら、ガラスでできている繊細さと、その奥にあるものがガラスというフィルターを通すことでまた違って見えるんじゃないか?という不確かさみたいなものを感じて、ガラスってすごく深いなと思ったんですよね。そのままでも美しいけど、割れても傷ついてもなお美しいところが人間とも似ているから、その弱さすらも包み込めるような人間でありたいという想いを込めて、このタイトルにしました。
──「透明でもいたい。でも鋭くもありたい。脆くても、自分らしく光を反射させながら輝きたい。」というコメントをされていましたが、いろいろな側面を見せていくというのは、アーティストとしての理想像でもあるんでしょうか。
milet:そうですね。前までは、「自分をよく見せたい、完璧に見せたい」という気持ちがあったんですけど、休養期間を経て、未完成なままの自分を歌にしたいと思えるようになったんです。脆さすらも提示できるような人間になりたいし、むしろそのほうが強くないか?と思ったんですよね。強さで包み込むことは誰にでもできるけど、弱さで包み込んであげられるのは本当に優しい人だろうなって。そういう気持ちで曲を作っていきました。
──とは言え、「鋭くもありたい」という。
milet:そうなんです、尖ってはいたいんです(笑)。

──今まで出していなかった部分を曲にする作業は、スムーズにいきましたか?
milet:はい。大変さは全然なくて、自分の魂の一部がスーッと引き出されて曲に落とし込まれていった感じ。むしろ、飾らなくていいんだ、ありのままの自分で歌っていいんだと思うとすごく楽でしたね。それこそガラスのように、透明なものも、曇って見えないものも、割れて反射しているものもあると思うし、いろいろな曲ができたと思います。
──1曲目の「Hurricane」から、まさに自分をさらけ出しながら進んでいくという意思が伝わってきました。
milet:不安定な気持ちや、何かにすがりたくなる弱い気持ちも含めて、私の頭の中はいろんな感情がハリケーンのように吹き荒れていて。その中で、時には立ち尽くしたりしながら前に進んでいく。そんな自分をありのままに曲にできたらいいなと思って作りました。曲自体は明るくて軽快なメロディですけど、歌っていることは心の奥底にある感情です。
──悩んでる段階も歌詞にしてしまおうと。
milet:これまでは自己完結してから曲にすることが多かったんですけど、感情を咀嚼して曲にするんじゃなく、悩んでいる最中のリアルな感情の渦の中で曲を作ったらどうなるんだろう?と思って、ちょっと実験した曲でもあります。
──だから、〈Is this who I am?〉と疑問形で終わるわけですね。
milet:そこから、次の「Golden Ember」では、〈It’s who I am〉で締めて答えが出ているという。ここでは自分自身のことがちゃんとわかったし、恐れももうないと言い切っているくらいのモードになっているんです。
──2曲とも、ロックに振り切ったアレンジになっていて。「Hurricane」は歪ませたギターが印象的ですね。
milet:今回は歪んだ音を取り入れたいと思って、歪ませてもらいました。歪みって、音では「ひずみ」だけど、「ゆがみ」とも読むじゃないですか。私の心の中にはゆがんでいる部分もあるので、クリーンな音だけじゃないなって。あえてちょっとくぐもらせているほうが本当のメッセージが伝わりやすいかなと思って、音作りからこだわりました。完成したものを聴いた時、気持ちよかったですね! 私が作ったデモではアコギだったので、エレキに変わってかなり理想の形になりました。この強いサウンドの中で脆い自分のことを歌うのも、虚勢を張っているようで私らしいと思います。
──「Hurricane」は最初から1曲目のイメージだったんですか?
milet:「Hurricane」か「Golden Ember」かで迷ったんですよ。でも、1曲目で自分の弱さをさらけ出しておく表現はあまりやってこなかったなと思って、「Hurricane」にしました。「Golden Ember」はすごく1曲目っぽい顔をしてるんですけど、今回出したいのは「Hurricane」の弱さかなって。
──ギターでいうと、「Christmas Eve」もザクザクのギターが目立ちますね。
milet:「Christmas Eve」は特にお気に入りです! ギタリストの野村陽一郎さんと作ったんですけど、彼もギターを歪ませるのが好きで。彼のギターの音が良すぎて、その音を聴いてすぐメロディが浮かんできました。
──中盤のギターソロとmiletさんのフェイクが重なるところが、聴いていても気持ちいいなと。
milet:ありがとうございます。このギターソロは、ライブでは自分で弾きたいなと思っているんです。
──それは楽しみですね。歪んだギターやそういうサウンド感は、今のモードなんですか?
milet:歪んだギターは昔から好きですね。レディオヘッド、クーラ・シェイカーとか、私の大好きなバンドのサウンドもみんな歪んでいるし。そこで育ったから、逆にクリーンなギターのほうがあんまり聞き慣れていないくらい(笑)。今回のアルバムで特に意識したという意味では、ライブ映えする曲にしたいというところかな。スケールで言ったら、スタジアムぐらいの規模でも響くような曲にしたいというイメージがありました。
──ライブハウスのロック感というよりは、スタジアムロック的なダイナミックさがありますよね。逆に「hanare banare」のようなピアノバラードは、また違うチャンネルなんでしょうか。
milet:「hanare banare」は、テンション的にはロウな雰囲気でまとまっていますけど、頭の中にあるのは「常に正直な曲を書きたい」という気持ちなので、すべて地続きという感覚はあります。曲自体は5、6年くらい前に書いていて、歌詞に少しだけ今の心情を書き足したくらいで、基本的には作った当時のままです。別れの曲ですけど、「離ればなれになろう」という表現で、少しでも明るく、清々しくしていきたいという気持ちを込めました。
──ウィスパーっぽい歌い方になっていますが、やっぱりロックサウンドの曲とはアプローチが変わりますか。
milet:そうですね。バンドサウンドの曲だとギターが前面に出てくるけど、こういった曲は本当に歌が第一線で聞こえてくるので。吐息やブレスの入れ方など、歌のアプローチはかなりこだわりました。どこにブレスを入れるかで強調される言葉も変わってくるので。


──今回のアルバムは歌のアプローチが曲によってさまざまで、特に「Masterpiece」のハイトーンは圧巻でした。
milet:私はフェイクパートが得意と自負しているんですけど、レコーディングしてると調子に乗っちゃって(笑)。どんどん高いキーにいっちゃうんですよね。特に「Masterpiece」は、THE SPELLBOUNDさんにアレンジしていただいたので。私はもともとBOOM BOOM SATELLITESの大ファンだから、レコーディングで中野(雅之)さんがいらっしゃった時、いいところを見せよう! かっこいいことをしたい!と思って歌っていたらこうなりました。
──いつも以上にスイッチが入ったと(笑)。
milet:入りましたね(笑)。THE SPELLBOUNDさんにお願いしたことで、自分のデモからガラッと色が変わって、めちゃくちゃ強い曲になったので、それに負けないように歌を重ねなきゃいけないと思って、歌もかなり変えたんです。出るところまで出してみようと。もしかしたら自分の曲の中で一番キーが高いんじゃないかな。音と一体になっている歌が録れたと思います。歌の編集もTHE SPELLBOUNDさんにしていただいたんですけど、やっぱり他の曲と一線を画した仕上がりで。この曲だけの世界観ができあがりました。
──フェイクは、その場で生まれてくるものなんですか。
milet:その場で生まれてくるので、基本的に何も考えていかないです。私のレコーディングはその場で生まれることばかりで、フェイクもハモリパートも全部その場でつけるんです。曲をつくってメロディを考えている時と同じように、無意識に生まれてきますね。

──そして、アルバムを締め括るのが弾き語りの「Perfect blue」。miletさんの振り幅を堪能できるわけですが、この曲は最初に咳払いが入っていたり、特に生っぽいですね。
milet:というか、生なんです(笑)。自分の家で普通に録った歌で「このままが一番いいじゃん」となって何の加工もせずに入れました。本当に生のmiletですね。歌っていることもすごくリアルな感情ですし。
──あえて、部屋で歌ったそのままで出そうと思ったんですか?
milet:素朴に正直に歌った歌で締めたいなと思ったんです。この曲ができたことで、アルバムが完成したなと思いました。実際、アルバム制作の締め切りギリギリ……アウトくらいのタイミングできた曲なんです。滑り込みで、「もう1曲だけ入れさせてください! このアルバムの最後の曲になります!」と宣言して、その夜に作りました。前から頭の中にはふわっと浮かんでいて、形にはなっていなかったんですけど、絶対にこのアルバムに入れたほうがいい曲だという漠然とした気持ちがあったんですよ。自分で自分を追い詰めました。
──レコーディングも急いで?
milet:70回くらい歌いました。全部自分の部屋で「これは違う!」とか言いながら70回歌ったんですけど……結局、最初に歌ったテイクが採用になりました(笑)。
──新鮮なテイクが結局いちばんいいという。
milet:そういうものなんですよね。結果的に、このアルバムの中でもいちばん本音をさらけ出せた曲です。だからこそすごく特別で大切な曲になったし、この子がいたことでほかの曲にもより現実性を持たせることができたと思います。「私は嘘ついてないよ、歌たちは全部本音だよ」ということをこの曲で証明できた。完成して、本当にすっきりしました。

──ちなみに、「Perfect blue」以外にも「Bluer」「海原」など青系の言葉がたくさん出てきますが、青色はキーワードのひとつだったんでしょうか。
milet:たしかに、言われてみると青っぽいかも、このアルバム。「Golden Ember」も炎の話ではあるけど、青い炎だから。
──「赤く滾る火」となりそうなところ、「青く滾る火」という表現が面白いですよね。miletさんにとって青はどんなイメージですか?
milet:青は強いなと思います。炎の中でも一番熱いところは青色だし、冷静沈着なイメージもあるけど、その中に本当に強さがあるんじゃないかなといつも思っています。そういう意味でも、アルバム制作中は青がテーマだったかもしれない。
──改めて、今のmiletさんが刻まれた作品ですね。
milet:アルバムは、今しか歌えない曲を入れるもの、今の等身大の自分を真空パックして届けるものだと思っているので。いい思いも悪い思いも全部形に残しておきたかったんです。自分にとって休養期間はすごく大きなことだったんですけど、そこから明けての心情は今しか書けないので、鮮度を保って曲にしたいと思っていました。
──9月からホールツアーが開催されます。ライブを意識したアルバムということで、ツアーに向けての気持ちも高まっていますか。
milet:めっちゃ楽しみですね! 早くギターを掻き鳴らしたい(笑)。アルバムの曲たちが中心になると思うし、まずはこの曲たちでどういう景色が見られるかが楽しみです。制作中と同じように、とにかく生身の私でぶつかっていこうかなと思っていて。2024年の【GREEN LIGHTS】(デビュー5周年記念の横浜アリーナ公演)や、今年の【Ray of Water】(日本武道館公演)では、どちらかというと作り上げた世界観の中で歌うことがテーマのひとつだったんですけど、今回は全部剥ぎ取って、できるだけ装飾品がない、生身の自分で向き合いたい。本当にありのままのmiletを届けられたらと思っています。
──ツアーを通して、曲がさらに育っていきそうな気がします。
milet:そうですね。もともと、ツアー中に曲を作ることも多いので、もしかしたら新曲が生まれるかも。私は、デビューしてからずっと曲作りが止まったことはなくて、みなさんがよく言う「生みの苦しみ」をあんまり感じたことがないんです。アルバムが完成しても、まだまだ泉から溢れ出てます。
──今回のアルバムでいろいろさらけ出したことで、また新しい扉が開いたとか?
milet:そうかもしれない。最近、週に何日かはしっかり休む時間を作っているんです。その時間に、本を読んだり、映画を観たり、しっかりインプットできているのも大きいのかなと思っていて。自分と向き合う時間も増えて、だからこそ悩む時もあるんですけど、今はそれすらも曲にしようと思える強さも得たので。改めて自分自身の変化を感じますね。
リリース情報

『Made of Glass』
2026/8/19 RELEASE
<初回生産限定盤/Blu-ray>
SECL-3332~SECL-3333 14,300円(tax in.)
<初回生産限定盤/DVD>
SECL-3335~SECL-3337 14,300円(tax in.)
<通常盤>
SECL-3339 3,850円(tax in.)
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ツアー情報
【milet live tour “Made of Glass”】
9月12日(土)千葉・森のホール21 大ホール
9月18日(金)神奈川・カルッツかわさき
9月21日(月・祝)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
9月23日(水・祝)香川・サンポートホール高松 大ホール
9月26日(土)京都・ロームシアター京都 メインホール
9月27日(日)静岡・静岡市清⽔⽂化会館 マリナート ⼤ホール
10月3日(土)広島・広島文化学園HBGホール
10月4日(日)岡山・倉敷市民会館
10月10日(土)石川・本多の森 北電ホール
10月17日(土)東京・ガーデンシアター
10月24日(土)宮城・仙台サンプラザホール
10月25日(日)福島・とうほう みんなの文化センター(福島県文化センター)大ホール
11月1日(日)、2日(月)大阪・フェスティバルホール
11月5日(木)東京・NHKホール
11月8日(日)愛知・Niterra⽇本特殊陶業市⺠会館 フォレストホール
11月13日(金)北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
11月21日(土)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
11月22日(日)大分・iichikoグランシアタ
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