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<インタビュー>OSHIKIKEIGO 「信じるよりも信じたい」心理 初ドラマ主題歌「ReTake」を自己解析

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Text & Interview: 森朋之
Photos: Yuma Totsuka

 1stデジタルミニアルバム『BOARDING PASS』で新世代アーティストのトップランナーとしての存在感を示し、今年2月リリースのデジタルシングル「インスタントナイト」がBillboard JAPAN “Heatseekers Songs”で2位を獲得したOSHIKIKEIGO。Spotifyが2026年に躍進を期待する次世代アーティスト【RADAR: Early Noise 2026】に選出されるなど、瞬く間に知名度を上げているOSHIKIKEIGOの新曲「ReTake」は、彼にとって初めてのドラマ主題歌だ。

 読売テレビ・日本テレビ系4月期プラチナイト枠木曜ドラマ『君が死刑になる前に』に寄り添って書かれた本曲は、「信じたい」という願いは時として「信じる」ことよりも強い輝きを放つことを証明。そんな思いを込めたこの曲について、OSHIKIKEIGO自身に語ってもらった。

──『BOARDING PASS』のリリースから約半年。楽曲制作や音楽活動において、どんな変化がありましたか?

OSHIKIKEIGO:いくつかありました。「喩えて」で初めてストリングスを生で録ったんですけど、その経験を今回の「ReTake」のレコーディングで生かせたり。鍵盤やギター、ベースもそうですけど、この半年間で各楽器に対する解像度が上がった気がするし、『BOARDING PASS』を作り終えた後に見えてきたものもいろいろあって。……いいところは残して、よくないところは改善する。これからも精査したいですね。

──新曲「ReTake」からも、OSHIKIKEIGOさんの新たな進化が感じられました。ドラマ『君が死刑になる前に』の主題歌ですが、制作のプロセスはどうだったんですか?

OSHIKIKEIGO:まずは台本を読み込んだうえで作曲に取り掛かりました。台本を読んでドラマが伝えたいこと、自分自身が思っていることの重なっている部分を探しつつ、キーワードやテーマみたいなものを考えて。それが“リテイク”だったということですね。ドラマの主人公はドキュメンタリー作品を撮っていたんですけど、ある出来事によって挫折して、キャリアが途絶えてしまった。悶々とした日々を過ごしていたんだけど、友達から「もう一度、撮ってみないか」と言われて準備を始めるその最中にタイムリープするんです。

──過去にタイムリープして、無実を主張する死刑囚に出会うというストーリーですね。

OSHIKIKEIGO:“リテイク”は撮り直すという意味ですけど、それが自分のなかで「過去の出来事を捉え直す」という意味合いにつながったんですよね。昔撮った写真を見ると、写りが悪かったりピントがぼやけていても「おもしろいな」って思ったりするじゃないですか。「レンズ」もそうですけど、撮影から想起される比喩も使ってますね。

──〈悴んだ手で持つカメラ/レンズ越しに貴方を見てる〉ですね。レンズ越しである以上、相手をそのまま見ることはできないという……。

OSHIKIKEIGO:これは以前から感じていたことでもあるんですけど、人と接するとき、自分の物差しを使ってしまいがちだと思うんですよ。誰かに何かをあげるとき、話しかけるときも、自分が欲しいものを渡したり、自分が言われたいことを言ったりすることが多いんじゃないかなと。それは鏡を見るのと同じで、他人を通して自分を見ているからだと思うんです。鏡だってそうやって自分の物差しを使っていると、どうしてもズレが生じる。よかれと思ってあげたモノ、話しかけた言葉が相手には合わないかもしれないし、それってすごく切ないなと。そういうことを曲に出来たらいいなとどこかで思っていて、ドラマの主題歌の話をもらって、それが形になった感覚もありますね。


──なるほど。「信じたい」というワードも軸になっていると思います。

OSHIKIKEIGO:そこは完全にドラマのストーリーを反映していて。過去の世界で「私は無実だ」と主張する女性と出会って、「信じたい」と思うようになる。口では「信じてる」と言ってるんだけど、どうしても心が揺れ動いてしまって、「信じたい」に留まってる状態というか……。台本を読んだときは「信じるという行為にたどり着くことが大事なんだろうな」と思ったんですけど、さらに作品と向き合うなかで、「いや、そうじゃないのかも」と感じはじめたんですよね。信じるという行為は、どこまでいっても近似値に留まって、じつはたどり着けないんじゃないかなと。目の前にいる人が本当に罪を犯していないのか、それは本人じゃないとわからない。それでも主人公は「信じたい」という気持ちに滞留している、そのこと自体に輝きを感じたんです。

──「信じる」という状態ではなく、「信じたい」という能動的な感情のほうに魅力を感じた。

OSHIKIKEIGO:そうですね。「信じる」って、少し投げやりな気もするんですよ。「信じると決めた」とレッテルを貼ってるだけというか。「信じたい」にはその人のがんばりや努力が感じられるし、この曲でもそこを伝えたかったんです。信じるという行為より、信じたいという思いのほうが強いし、輝いているんだと。

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──作曲、編曲について意識した部分は?

OSHIKIKEIGO:基本的にはいつも通りというか、歌詞とメロディーとコードはほぼ同時に作っていきました。ただ、これまでとは違うところもあって。これはさっき話した“『BOARDING PASS』を作った後に気づいたこと”にもつながるんですけど、あの作品を俯瞰したときに、メロディーや歌詞などの根本的な部分をもう1回見つめ直すことができそうだなと思ったんです。僕はもともと編曲家やミックスエンジニアになりたくて。そこがスタートだったのですが、メロディーや歌詞について改めて1から考えたいと思いました。もちろんメロディーも人並み以上に探求してきたつもりですけど、どちらかというと音楽理論やコードとメロディーの兼ね合いみたいなことを考えることが多かったんです。あとは歌いやすいメロディーラインとか。そういう理論的なことは大好きだし、今後もやっていきたいんですけど、それってレベル1というより、レベル2、3、4の話だと思うんですよ。

──メロディーや歌詞、つまり楽曲の根本の部分を今一度見つめ直すべきだと。

OSHIKIKEIGO:『BOARDING PASS』を作り終えてしばらく経った頃に、そう思いました。「ReTake」は制作スケジュールがかなりタイトだったんですけど、そこを突き詰めないのはイヤだったので、メロディーラインについてもかなり探求しました。ただ具体的なことを言葉にするのは難しくて。言語化するのは好きなんだけど、どうしても言葉にならない部分もあるじゃないですか。言葉にしようとすればするほど、言葉にできないところが目立つことに、メロディーラインを研究しているときに改めて感じました。研究の結果というか、「まずはここにトライした」ということが一つあるんですけどね。

──言葉にできないというのは、メロディーラインの制作には感覚的なところが含まれるからですか?

OSHIKIKEIGO:そうですね。また例え話なんですけど(笑)、車の駐車って、上手い人はスッとやれるじゃないですか。僕は運転できないんですけど、たぶん駐車には「ここまでハンドルを切って、これだけ下がって」みたいに言語化できるところと、運転する人が何気なくやってることが混ざっている気がして。「ReTake」のメロディーラインもそうで、脳内でやってるところがかなりあるし、上手く言葉にできないんですよね。

──技巧的な部分とエモーショナルな感覚が混ざっていて、何度聴いても飽きないメロディーラインだと思います。アレンジに関しては?

OSHIKIKEIGO:いつも通り、いろいろこだわってます(笑)。生で録ったストリングスのピチカートにディレイを強めにかけたり。リズムは基本的にシャッフルなんですけど、ちょっとたどたどしいリズムを挟み込んでるんですよ。ハイハットは生と打ち込みの両方を使っていて。Aメロは電子的なハイハットが中心、Bメロは生なんですけど、一瞬だけ打ち込みになったり、かなり行ったり来たりしていますね。現代のJ-POP的な要素を意図的に含めているところもあります。そこは何となくやるのではなくて、ちゃんと意思を持ってやりたいと思っているので。ギターのレコーディングも楽しかったですね。個人的に気に入ってるところが2つあって。ひとつは音符の長さとかをすべて取っ払って、ガーッとフルピッキングした後、シールドをアンプから引っこ抜いているんです(笑)。

──電源を入れたままシールドを抜くのって、普通はやっちゃダメなヤツですね。

OSHIKIKEIGO:そうですね(笑)。シミュレーションで音を作ることもできるんだけど、どうしても本物の音を入れたくて。友達に初心者向けのギターアンプを借りて、「ガッ!」ってシールドを引っこ抜いた音を録ったんですよ。もうひとつは、ラスサビ前に入っているギター。リズムがめちゃくちゃズレてるんですけど、それも生楽器ならではのストロングポイントだと思っています。今の曲はエディット主義というか、きっちり作り込まれたものが多いじゃないですか。そのカッコよさもあるんですけど、だからこそ生でしかやれないことをわかりやすくやってみたくて。

──音源ならではの手法なのかも。「ReTake」をライブでやるときはどんなスタイルで演奏しているんですか?

OSHIKIKEIGO:この前のイベント(【Spotify Early Noise Night #18】)で初めて披露したんですけど、そのときはバンド編成でした。ライブに関しても、まさにレベル1をやってる最中なので、一歩一歩進んでいけたらなと思ってます。

──5月3日には【VIVA LA ROCK 2026】に出演するなど、ライブの頻度も上がっています。観客の前でパフォーマンスすることに対しては、どんな思いがありますか?

OSHIKIKEIGO:「たくさんの人の前に立って心地よさを感じるタイプか?」と考えると、そうでもない気がします(笑)。ライブは友達の家に遊びに行くような感覚ですね、今のところ。緊張するんだけど、家にいるときとは違う楽しさがあって。この前のSpotifyのイベントもそうでしたけど、いろんなアーティストの方たちとお話できるのも楽しいですね。

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