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<わたしたちと音楽 vol.73>SCANDAL×日食なつこが初共演前に語る、30代の“揺らぎ”の中で―【Grooving Night】×【BBJ Women In Music】開催記念対談

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 米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。

 来る3月15日、Billboard JAPAN Women In Musicは、「音楽・社会・人をつなげる」をテーマにした企画ライブ【Grooving Night】とコラボした公演【Grooving Night Premium with Billboard JAPAN Women In Music】をビルボードライブ横浜で開催する。【Grooving Night】は、これまでSIRUPがホストをつとめ、毎回ゲストを招いてライブやトークを行ってきたイベントで、“音楽・社会・人”をつなぐことを主旨としたもの。今回のWomen In Musicとのコラボ公演では、3月8日の国際女性デーを含む月間に開催し、ホストをSCANDALが初めてつとめ、SIRUPからバトンを引き継ぎ、日食なつこをゲストとして迎える。そんな公演の開催を記念して、ここではSCANDALのHARUNA(Vo, G)とTOMOMI(B, Vo)、そして日食なつこの3名にイベントへの意気込みなどを聞いた。[Interview:Naoko Takashima l Photo:Shinya Kato l 撮影場所: studio126 Tokyo(旧Amazon Music Studio Tokyo)]

どこまで本音を出していいんだろう

――【Grooving Night Premium】のことを改めて説明すると、“音楽・社会・人”をつなぐテーマで、SIRUPさんがホストをつとめてきた企画ライブです。今回は特別編として、SCANDALの皆さんが初めてホストをつとめる回ということになりますね。

HARUNA::SIRUPさんが続けてこられたイベントのバトンを引き継ぐことが光栄ですし、今回は3月8日の国際女性デーを絡めての開催とのことですよね。自分たちがガールズバンドとして20年続けてきたからこそ恵まれた機会だとも思うので、とても嬉しいです。

TOMOMI:私たちに何ができるかを考えながら、楽しみながらできたらいいなと思ってます。

――このイベントは“音楽と社会と人をつなぐ”をテーマにライブとトークで構成されますが、社会に対する思いや自身の考え方を公の場で発信することに抵抗がある方もいらっしゃると思います。皆さんはいかがですか?

日食なつこ:逆に、みんなが「自分たちは、そういう発言ができる機会をどこで与えてもらえるんだろう」と考えながら生きてる時代でもあると思うので、そういうディスカッションの場を設けていただけたのが良いですよね。ミュージシャンって、意外と「どこまで本音を出していいんだろう」と考えることが多い。だからお客さんたちを迎えつつ、自分たちも発言する側になれる良いチャンスなのかなとも思います。

HARUNA:確かに、1人ひとりに寄り添いたいと思えば思うほど、発言するのって難しいですよね。SNSで1つ発言するのもすごく気を遣います。

TOMOMI:上手に伝えられる自信があったり、ある程度の覚悟がないと核心を突くような発言ができないっていうのもあって。友達同士とかだと全然気軽に話せるんですけどね。

――“社会を良くする”ために、音楽が果たせる役割について皆さんはどう思いますか?

日食:音楽って、どこまでいっても娯楽じゃないですか。“みんなで楽しむ”という面が強くあるのが当然で、そこに「誰かを救おう」みたいな意味を与えると、途端にグッと重くなる。私は「自分の言葉が自分にとっての起爆剤になれば」という気持ちで歌詞を書いているところがあるのですが、それが誰かにとっての嫌なアタックになっているかもしれないとも最近考えるようになりました。それで、音楽が人を助けるというのは、最終的に「このリフ1個聴くために明日も生きることができる」みたいなところが、本随なんじゃないかなって。歌詞は大切にしてはいますが、例えば地球の裏側で歌詞という武器を封じられたときに、音だけで残っていくものが強いと思うんです。

HARUNA:私たちが海外でライブをしていても、言葉の壁は感じます。現地の言葉で挨拶程度はするのですが、自分の気持ちをそのまま伝えることは難しい。そのぶん、音楽やパフォーマンスでいかに気持ちを伝えるか、いかにハッピーな空間をその場で作れるかが大切になる。その一方で、自分がそういうことをやれてるっていうのは本当にすごいことだなって、海外公演のたびに思うんですよね。自分がパフォーマンスすることで、目の前の人たちがこんなにも笑ってくれるって、普通に生きていたらあり得ないことなので、「自分が存在してるだけで誰かを幸せにできているような気がする」みたいな、そういう満足感や高揚感はあります。

TOMOMI:私たちの日本のリスナーが海外に行ったり、海外のリスナーが日本に来たりして、ファン同士のコミュニティがけっこう世界中に広がっているんですよ。それを見ていると、「自分たちは、人と人を繋げるために存在しているかもしれない」と感じることがあります。音楽そのものでピースを伝えることもあると思うのですが、私たちが活動することでコミュニティがどんどん広がっていって、「これ自体が壁をなくしていく1つの要素なのかもしれないな」と思ったりもするんです。「この国にはこういう性格の人が多い」みたいなイメージや固定概念があると思うんですけど、実際に関わってみると全然そうじゃないことがいっぱいあるじゃないですか。私たちのライブって、そういう誤解を解いていく場所にもなっているかもしれないって……海外公演のたびに感じるんですよね。


「次のライブまでにこの曲が弾けるのか?」の繰り返し

――今回の公演は、この連載のテーマでもある“エンタメ業界の女性のエンパワーメント”を促すことも目的の1つです。 女性であることが、皆さんのこれまでの活動に影響を与えたことはありますか?

日食:私は活動のうえで“女性であること”について考えたことは一度もなかったかもしれません。ただ、一時期考えていたのが、「目が見えない方がたまたま私の音源を耳にしたとき、どういう姿が想像される人間でいたいか?」ということ。そのとき、バキバキの美女だと思ってほしいと思っていたんですよ。世の中のこと何一つ怖くなく、自分の発言で全て動かしていき、背筋も……今、めちゃくちゃ背筋が曲がってますけど(笑)、背筋のすっと伸びたカッコ良い女……に、自分の曲が自分を見せてくれたらいいなって。“世の中の真ん中でも恥じることなく咲くことのできる女”の像を、自分の中で描いていたことはありましたね。それが実際、今の自分にどう繋がってるかはまだ把握はできてないですけど。

――そのとき、具体的にモデルにしていた人などは?

日食:いませんでした。だから架空で作っていたんです。SCANDALさんはすでにそういうカッコ良い姿なので、そんな思想は絶対いらないとは思うんですけど(笑)。SCANDALさんと私って世代がほぼ一緒で。同じ年代の人たちがこんなに早くから自分たちの足場を確立して、テレビにバンバン出て回ってるって……地元の岩手の片隅で戦々恐々としながら拝見していましたよ。あれって、当時から自分たちで「こういう女になってやろう」ってイメージをしてやっていたのかどうか、それを伺ってみたいです。

HARUNA:正直、10代の頃にデビューしたので、よく分かっていませんでした。元々ダンスボーカルスクールで結成して、バンドをやりたくて集まった4人でもなかったので、「バンドにどう向き合っていけばいいんだ?」という葛藤に、10代後半から20代にかけて長い時間を使ってしまっていました。「ガールズバンドとして何ができるか?」みたいなことはそこまで考えられていなくて、“その時々の気持ちを歌詞に残す”ということにこだわっていたくらいで。“女性として自分たちの生活を豊かにしながら音楽を続けていこう”と思えるようになったのも、30代に入ってからやっとだな、と思います。

日食:外側から見ていると、ずっと「カッコ良い女子たち……輝いている!」としか(笑)。だからその話を聞くと、時にぶつかり、時に譲りなど、いろんな選択を何度も繰り返されてきたと思うんですけど、皆さんの華は、そういった経験故のしなやかさに裏付けされた華だったんだなと伝わりました。

HARUNA:とても良い言い方をしていただいて(笑)。

TOMOMI:バンド仲間もいなかったので、私たち、4人だけで過ごしてきた時間があまりにも長かったんです。周りと比較することもないまま、目の前の課題をどうクリアしていくかに必死でした。ただ、制服を着てデビューしたので、コスチュームの観点からいくと最初から“女性”ということをナチュラルに表現していたと思います。女性はファッションで楽しめる範囲が幅広いですし、それを音楽と絡めながら表現の1つとしてやってきたので。それに、自分たちがその時々で精一杯、等身大で書いてきた曲が、自然と女性として生きていた中の経験でしかないので。

――当時、20年後の自分って想像してましたか?

TOMOMI:してなかったですね。「いつまで続くか」なども具体的に考えたこともありませんでした。結成と同時に楽器を始めたので、次のライブのことしか考えていませんでした。「次のライブまでにこの曲が弾けるのか?」とか、その繰り返しで……気付けば20年。

日食:そのひたむきさが、美しさになっていったんでしょうね。ご本人たちの意図したものでなかった瞬間もあったかもしれませんが、それでも“可憐で強い少女たち”というロールモデルとして、すごくインパクトがあった。“小賢しいこと考える瞬間もなく、目の前のことをとにかくやれるだけやっていく”みたいな一生懸命さが、美しさになっていたのかなって……すみません、勝手に推測をしました。私としては、20年前、音楽は何かしらでやってるだろうなと思っていましたけど、音楽を仕事にしたいわけではなくて、記者やカメラマンになりたかった人間だったんです。音楽をこんなにやっている未来は想像していなかった。だから、20年前の自分は「ああ、よく頑張ってるな」って思ってくれるんじゃないかな。


友達と食事をするのも後ろめたい

――日食さん、その当時のご自身にアドバイスをするとしたら?

日食:「けっこう適当でも大丈夫だよ」とは言ってあげたいですね。私、大人になることへの恐怖心があったんです。「保護者や先生がいてもこんなにちゃらんぽらんなのに、それが全部取っ払われて世に出たらどうなってしまうんだろう?」って。それでも今、意外となんとかなっている。自分が果たすべき義務をちゃんと果たして、そのぶんの権利を得てる。だからこそ、「“ガチガチに装備を全部固めてから世の中に出ないと死んでしまう”みたいな感じでは全然ないよ」と言ってあげたいです。

HARUNA:私は、「30代、楽しいよ」っていうのはあるかもしれないです。スクールに通っていたこともあるかもしれませんが、目の前のことを一生懸命やることが、なんとなく美徳になっていたんです。“いつでもSCANDALの自分でいなきゃダメだ”というか、ずっとオンステージの気分で生活しなきゃ、というか。そういう窮屈さを……当時はそこまで窮屈だとも思っていませんでしたが、今考えると、そんな意識だったと思う。友達とご飯に行くだけでもちょっと後ろめたい気持ちもあって。

――「遊ぶよりも、練習しなきゃ」のような?

HARUNA:とか、4人でいなきゃ、みたいな。でも、それじゃ生きていけないと30代になって気が付きました。友達や愛犬との時間も大切にして、いかに自分を取り戻しながらSCANDALとして生活していくかを考えるようになりました。だから、「もっと力を抜いていいんだよ」と言いたいですね。デビューするために上京してきたし、周りにスタッフもたくさんいて、大人に管理をされるところから始まっていたのでどこかで負荷をかけすぎてたかもしれません。しかもバンドだと、メンバーに対しての責任もある。1人欠けるとバンドはできないので。

TOMOMI:初期の頃は制服で活動してたというのもあって、黒髪じゃないといけないとか、体重の管理をしなきゃいけないとか、「できるだけ良い状態でテレビに出ましょう」みたいなこともあったんですよね。それを当たり前だと思ってやってきたけど、本当の自分とかけ離れてる部分も少なからずありました。だからHARUNAの言う通り、「それぞれのライフスタイルを大事にしないと音楽って楽しいものにならないよな」ってことに気付けるまでに、ちょっと時間がかかった感じはあります。でも、10、20代の頃に作った曲で、今でもやりたいって思える曲もいっぱいあって。当時書いた曲ってけっこうヒリヒリしていて、大人になって聴いても「すごく元気をもらえるな」と思うこともあります。つまり、いろんな経験をしてきたからこそ30代で気付けたこともあって、全部やってきて良かったなと思っています。

――これから10年、20年と、どう活動していきたいですか?

日食:私は逆に、これまで自分勝手にやらせてもらえたんです。自分の書く曲に対して「こうしたほうがいいんじゃない?」と言われることもほぼなく、自分の吐きたい言葉をそのまま吐いてきました。そうやって30代の真ん中まで生き残れた人間ですが、たぶん今は、その1歩上の段階に上がっているタイミング。いろんな人の声を聞きながら、その上で「じゃあお前は何を吐く?」と問われている段階だと思うんです。それを10、20年と考え続ける。答えが出るかどうかは分からないですが、それを考えるのがこの20年の自分の宿題かなって思います。

HARUNA:結成時に20年後の今がどうなってるか分からなかったみたいに、SCANDALとしては、今後のことは分かりません。でも自分としてはこの数年、すごく楽に歌えています。葛藤の中で歌ってた20代は……ちょっと言語化するのが難しいんですけど、ものすごく力が入った状態で歌っていた感じがありました。葛藤と共に20代を過ごし、ようやく自分と向き合いながら音楽ができていますし、良い力の抜き方で歌えてる感じもあります。若いときよりもできることが増えたし、今が一番良いなって思えていて本当に楽しいんです。これから、もっと良い自分に進化したいと思っています。

TOMOMI:私も今、とても楽しいです。だからこれが続くといいなと思っています(笑)。岸谷香さんと仲良くさせてもらっているのですが、香さんが「例えば子供ができたりすると、書く曲が変わってくるよ」と話をしてくれたことがあったんです。自分が今後出産するかどうかは分からないですけど、そういうふうにライフステージに合わせてどう表現が変わっていくのかに興味があるし、楽しみです。女性って、年代により“揺らぎ”がありますからね。ホルモンのバランスとかもあるし。それをそのまま表現したっていいわけですから。


目指すヒーロー像が変わった

日食:本当にその通りだと思う。活動歴が長くなると、初期の曲を求める人たちも一定数いて、自分の中にもその気がちょっとあるんですよね。でも最初の姿のままでいることは不可能で、だからこそ、最初の姿に固執してる時間ほど無駄な時間はないというか。揺らぎを楽しめる自分にさっさと移ったほうが絶対に有意義な時間が長いなって思います。

TOMOMI:私たち、初期はネガティブなことをほぼ歌わなかったんです。誰かのヒーローみたいな存在であると自負して、かなり意識してとにかく前向きになれる曲を作っていました。それもそのときの正解だったと思っているんですけど、大人になるに連れて揺らぎもあるし、痛みもあるし……いろんなこと経験したうえで、前を向かせるだけじゃなく、寄り添ったり、日常のことを歌ったりと、別の“救い方”があると思うようになってきました。自分だって、底抜けに明るい曲より日常の曲に救われることも多いので、自分たちもそういうヒーローでいてもいいんじゃないかなって……目指すヒーローの種類が変わったのかもしれません。

――【Grooving Night Premium】当日、話してみたいトークのテーマなどは?

日食:SCANDALさんってバチバチに仕上がった方たちだなって思っていたんですけれども、今日話していて、“完璧じゃなくてもいい”“強くなくてもいい”というところに着目されていることが伝わってきて。そういうお話をもっと伺いたいと思いました。

TOMOMI:この取材の前に、「トークで話したいこと」みたいな質問があったんですけど、その中で、日食さんが「“平成”の話をしたい」と言っていて、「マジでしたい」と思いました(笑)。世代的に同じ時代を生きてきたから、絶対に同じものを見て、聴いて育ってると思うので。

HARUNA:同じ平成を生きてきて、影響を受けた音楽もたぶん似てる。私たちもJ-POPが好きで音楽やダンスを始め……そうやって育ってきた音楽は一緒なんだけど、今やってる音楽は全然違うじゃないですか。だから、なぜバンドではなく弾き語りスタイルで表現されてるのかもちゃんと聞いてみたいですし、お互いの話をもっといっぱいしたいです。

TOMOMI:あと、当日はコラボも楽しみです!私たちには鍵盤のメンバーがいないので、「鍵盤が入ったら……最高!」って(笑)。単純に楽しみです。

日食:練習していきます(笑)。

TOMOMI:私たちも頑張ります!

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