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<インタビュー>「悔しいけれど、楽しいからこそ続けてきた」──澤野弘之が『錯覚の音』で綴る20年の軌跡と、読者へ伝えたい想いとは

インタビューバナー

Interview & Text: Ayako Kurosawa

 作曲家活動20周年を迎えた澤野弘之が、2月3日に初のエッセイ集『錯覚の音』を扶桑社より発売した。『医龍 Team Medical Dragon』から『進撃の巨人』などジャンルを問わず多くの作品手掛けてきた澤野が20年間の活動の中で大切にしてきたことと、自身が背中を押してもらえたと語る一冊を聞いた。

自分の選択に後悔しないために、前進し続けること

――『錯覚の音』発売、おめでとうございます。本書を初めて手にされたときの心境はいかがでしたか?

澤野弘之:過去にアーティストブックのような形で本を出させていただいたことはあったのですが、ちゃんとした書籍という形で、自分が本を出すのはイメージしていなかったので……。今までCDのサンプルを受け取ることはあったのですが、今回は出来るまでの過程で色々デザインとかは見させていただいていて、改めて実物を手にしたときは、音楽ができたときとはまた違った新鮮な感じがしましたね。


――本書の前半で、プロになるまでのキャリアをご自身の言葉で綴られていると思います。 専門学校を卒業後、活動を始めるまでの過去の自分にもし会えるとしたら、どんな声をかけたいですか?

澤野:実は前にも同じような質問をイベントで聞かれたこともあったんですが…(笑)。一瞬かける言葉を考えようとしたんですけど、正直なことを言うと、なにも声をかけないと思うんですよ。自分の中で見つけ出して、一つひとつ知りながら進んでいった方がいいんじゃないか。ここで今自分に対して何か言葉をかけてしまうと、また未来も変わっちゃうような気がするから、逆にそんな言葉をかけないのかなと……。実際は声をかけないと思うけど、もしかけなきゃいけないとなったら、なんでもかんでも人の言うことを真に受けるんじゃない、というか、自分の信じる道を進んだ方がいいんじゃないか、という風に伝えると思います。



――ありがとうございます、20年間活動をされてきたからこそ言える言葉だと思います。
後半では「医龍」のヒットから、「進撃の巨人」等、数々の作品との出会いからターニングポイントを書かれています。人生の岐路に立ったとき、何を一番大切にして進路を決めていますか?

澤野:あーどうだろう…!やっぱり自分がその作品をやりたいかどうかということを重要視していたと思います。人の助言とかも大事だと思うんですけど、結局人生って自分のものじゃないですか。だから無理にやりたくないことをやっていくというよりも、自分が惹かれるものとか、これをやりたい!というものを素直にやらないと、モチベーションとかにも影響してくるので。単純に、自分がどう進みたいか、やり続けていて疑問になるようなこととかにはならないように、自分に素直になって選択して来たんじゃないかなって気がします。作品とかも、「この作品だったら自分が熱量を持って取り組めるんじゃないか」というものを選んできたというか。そんな大層なことはしてきてはいないんですけど、そういった思いで人生の選択をしてきたんじゃないかと思います。


――あとがきの中の、続けていたからこそ得られたものや掴めたもの、学びや気づきもあった。ダメなのかと思っても続けた結果ダメじゃなくなることもたくさんある。続けるか続けないかだ、という言葉が印象的でした。20年間続けてこられた原動力は振り返ってみてなんだと思いますか?

澤野:二つあって、一つ目は「悔しい気もち」です。「自分はまだまだだな」ということが常に続いている感じで、自分の目標があって、その目標にはまだまだなと思うことがほとんどです。だからこそ、次の作品こそ……と、少しでも(前の作品より)前進できるんじゃないかという期待を込めて作品を作っています。もう一つは、本にも書いたのですが、僕はそんなに自分を追い込んだりとか、苦しめるのは別に好きじゃないんです。どちらかというと、作曲を楽しいと思えるから続けられるというのがあります。だから、音楽を作ることを楽しいと思えなかったら続けてこれなかったと思います。悔しいことは悔しいんだけど、楽しいって思えるということが、ここまで続けてこれた理由かなと思います。


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――昨年で活動20周年を迎えた澤野さんですが、次なる20年は、どんなことにチャレンジしたいでですか?何か目標もあれば教えてください。

澤野:具体的な部分だと、数年前からプロデュースのプロジェクトにも力を入れるようになったので、彼女たち(SennaRinさん等)と一緒にやっているものをより広げていきたいなという気持ちがあります。でも、新しい目標というよりは、常に自分だからこそ行けるような道というか。自分が目指している場所に行けるかっていうのがやっぱり人生の課題になっています。その課題に対して、一つひとつどういう音楽だったり、作品に取り組んでいくかなっていうことだと思うので。なので、新しいことというよりも、とにかく自分の目指す目標に行くために、どういうことをやっていけるかなっていうことしか考えてないかもしれないですね。


――ここからは、ビルボードの書籍チャートに絡めた質問をさせてください。ビルボードでは2025年11月にBookChartを発表いたしました。普段あまり本を読まない…と仰っていたかと思いますが、過去読んだ本の中で、印象に残っている本はありますか?

澤野:僕が音楽を始めるきっかけとなったのがCHAGE and ASKAのASKAさんで。ASKAさんは過去に『インタビュー』(著:飛鳥涼 名義)という本を出されていて、その本にはすごく励まされました。当時からめちゃくちゃ活躍している方ではあったんですけど、活動裏のすべてを知らないこちら側からすると、活躍してる人って、順風満帆で楽しいことばっかなんだろうなって思っていたのが、実はいろんな苦労があるというか。僕らの知らない場所で壁と向き合っていたんだなというのを見ると、こんなに活躍している人でも悩んだりするんだっていうのを知って、じゃあ自分が悩んでいることもおかしくはないんだなと思えたきっかけにもなったので、すごく背中を押してもらえた本だったと思います。



――最近、気になっている本はありますか?

澤野:今気になっているのは、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』(1月30日公開)でご一緒した[Alexandros]の川上洋平さんが書いた『次幕』です。読んでみたいなと思ってますね。


――ASKAさんの『インタビュー』に澤野さんが励まされたように、『錯覚の音』に励まされる読者の方もたくさんいると思います。一言エールをいただけますか

澤野:今回僕が本を書く一番のきっかけが、クリエイターだったり、夢を追っかけている人に少しでも前向きになれるようにというのがあって。僕を知ってくださる方がこの本を買ってくださると思うんですけど、僕はプロの作曲家としてしっかりとした人生を歩んできたわけでもないんだ、ということを知ってもらいたい。悩む時は悩むし、気持ちが揺らぐときは揺らぐし、そこに親近感を持ってもらって、「あいつもそういう人生を送ってきて、ああいう仕事してるんだ。だったら自分もなれるんじゃないかな。」というような思いに繋がってくれたらうれしいです。



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