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<コラム>復讐のその先へ、anoの初武道館公演が“お守り”になるまで――Blu-ray『「呪いをかけて、まぼろしをといて。」at 日本武道館』

Text:永堀アツオ
Live Photos:横山マサト
約12,000人のファンが集結し、熱狂と感動の渦に巻き込んだanoのキャリア初となる日本武道館公演のライブBlu-ray『「呪いをかけて、まぼろしをといて。」at 日本武道館』がリリースされた。
本作には「できる限りたくさんの人に来てほしい」という思いから、観客席を360度開放したセンターステージ形式となり、この日のみの演出とアレンジが施された全20曲が完全収録されている。さらに、数々の著名アーティストのドキュメンタリー映像を手がけたエリザベス宮地監督による約1時間に及ぶドキュメンタリーフィルム+インタビュームービーも収録されている。
タレント、俳優、パーソナリティー、モデル……。多方面で活躍するanoにとって、音楽とは「これがないと生きられない」ものであり、「どんなに忙しくも逃げなかった」ものである。そして、ライブは彼女がもっとも“自分”でいられる絶対聖域であり、彼女は自身の音楽活動を“復讐劇”と自認する。「お前は笑うな」「お前は幸せになるな」「お前は普通じゃない」という心ない言葉によってかけられた“呪い”を自分の“呪い”のパワーで蹴散らして、壮絶な快進撃の中で見てきた “まぼろし”を解いていく“復讐劇”。日本武道館公演【呪いをかけて、まぼろしをといて。】は彼女がソロアーティスト・デビューからの5年間で成し遂げてきた復讐の一部始終とともに自分自身の過去とも再び向き合ってきた時間が明確に提示されていた。
オープニングを飾ったのは、TVアニメ『チェンソーマン』第7話のエンディングテーマ「ちゅ、多様性。」だ。2022年11月に配信リリースされた楽曲だが、独特のフレーズとダンスがバズを巻き起こし、2023年3月に<THE FIRST TAKE>で披露、2023年末には『紅白歌合戦』へも出場も果たした。続く、「許婚っきゅん」もTVアニメ『らんま1/2』オープニングテーマ。彼女がタレントの“あのちゃん”ではなく、ソロアーティストの“ano”として広く認知されるようになった楽曲から始め、2020年から現在まで続いている冠番組『あのちゃんねる』の歴代オープニングテーマ「F Wonderful World」「Bubble Me Face」を続けた。
大きな骨になった羽を背負った派手で壮大な衣装を纏い、ハンドマイクでパフォーマンスしていたanoは、ライブが進むにつれて、次第に等身大で素の姿へとなっていく。裸足に白いワンピースでアコースティックギターを弾き語り、青いジャージでエレキギターをかき鳴らし、ビッグTシャツ1枚から、アンコールではパジャマ姿になった。楽曲と衣装に合わせて舞台や照明も変化していき、白いワンピース姿だった中盤にはセンターステージに“学校”を思わせる机と椅子が置かれていた。昨年にリリースされたばかりの「ハッピーラッキーチャッピー」はアニメ『タコピーの原罪』のオープンニングテーマだが、小学4年生のいじめと家庭環境がテーマとなっていた。インディーズ時代の「SWEETSIDE SUICIDE」や、最も忙しい時期に“音楽を作る”ことを希求し、急遽、作詞作曲した「YOU&愛Heaven」を含め、いじめがきっかけで家に引きこもっていた学生時代の自分や、立ち止まらざるを得なくなった経験と向き合い直す時間にもなっていたようだ。
そして、2020年9月にインディーズからリリースされたソロデビュー曲「デリート」で、「あのちゃんは、一人で武道館なんかに立てないよって言ってきたアーティストども、ザマーミロ!」と言い放ったあと、「普変」では“あのちゃんの喋り方、気持ち悪い〜。”などのアンチコメントがプリントされたハート型の紙吹雪が超満員の武道館に舞った。センターステージに倒れ込み、「ここで寝るの、めっちゃ気持ちいい!」と笑顔を見せた彼女。まさに復讐劇の完遂と言っていい場面で、映像では静かで美しい全体像も鮮やかに刻み込まれている。
また、現場には巨大なLEDスクリーンが設置され、生カメラで彼女の表情を映し出していたが、この曲の時、こんな表情で歌っていたんだと再確認できるのは、やはり映像作品ならではの魅力だろう。前述のハート形の紙吹雪やシャボン玉、バンドのアンサンブルやダンサーのフォーメーションや衣装、正面だけじゃなく、真横や真上からのカメラなど、さまざまな視点から全体像が把握できる内容となっている。
一方のドキュメンタリーフィルムとインタビュームービーでは、リハーサルや当日のライブ開演までの模様が収められている。彼女がどんなこだわりを持ってライブを作っているのか分かると同時に、インタビューでは、ライブのセットリストとは異なり、ソロアーティストデビューした2020年からの活動を追う形になっていた。
ライブとドキュメントで対になるような構成で、音楽に対する熱い思いや、ライブ会場に足を運んでくれるファンに対する感謝と愛情も伝わってきた。また、映像には武道館に集結したファンによるコメントも収録されていた。これもまた、本編で使われたアンチコメントの真反対の言葉たちだ。「音楽がないと生きていけない」というanoと、「あのちゃんの音楽が生きる楽しみ」や「生きる糧」、そして、「お守り」になっているというファンとの幸福な関係性。anoとファンの絆の深さに涙を誘われずにはいられなかったが、最も胸がギュッとなったのは、ライブ本編でもドキュメンタリー映像でも使われていたMCの部分だ。
「あなたたちが死にたいと思った時、消えたいと思った時、逃げたいと思った時、死ななかったからここにいます。死ぬことを諦めてくれたから、僕はここで君と一緒にいることができているので、あの時諦めてくれてありがとう。僕は武道館でこれを言いたかったです。生きていてくれて、ここまできてくれてほんとうにありがとう。よく頑張りました。これから絶対大丈夫です。ついてきてください」
アンコールで歌った「ミッドナイト全部大丈夫」には、<呪いをかけておくれよ/まぼろしだっていつかはとけるはずだわ>というフレーズがあり、<全部、全部、大丈夫になるよ>という歌詞にはない囁きから、<大丈夫>で締める、本公演のテーマソングのような楽曲で感動的だったが、その後のMCでの “よく頑張りました”と“大丈夫”いう言葉に、ついに涙腺が崩壊した。anoは、数々の苦難や困難を乗り越えてきたこれまでの自分自身に言ったのかもしれないが、音楽や芸能とは違う場所で戦う観客一人一人を抱きしめてくれたような温かさがあった。
改めて振り返ってみると、本編の冒頭で、スクリーンに<とにかく生きてほしい>という言葉が映し出されていた。全編を通して流れていたのは「生きていてくれてありがとう。よく頑張りました。絶対に大丈夫です」というメッセージだったのだ。日本武道館公演【呪いをかけて、まぼろしをといて。】はanoが自身の過去と向き合いながらも、生きること=音楽を諦めずに歌い続けてきたことで聖域を得た、5年間の復讐の旅路であると同時に、anoが「キモくて、汚くて、許せないし、ムカつく」という社会を生き抜くための私たちの新たな“お守り”にもなるだろう。
年末年始には国内外のフェスに出演していたano。ワンマンライブは武道館公演以来、半年ほど行っていないが、本作のリリース後、3月から5月にかけて、全国9都市をまわるホールツアーがスタートする。
リリース情報

Blu-ray『「呪いをかけて、まぼろしをといて。」at 日本武道館』
- 2026/2/18 RELEASE
詳細・購入はこちら ano日本武道館公演「呪いをかけて、まぼろしをといて。」特設サイト
ano LIVE Blu-ray「呪いをかけて、まぼろしをといて。」at 日本武道館 - Trailer
▪️ano LIVE Blu-ray「呪いをかけて、まぼろしをといて。」at 日本武道館 Documentary Film+Interview Movie - Teaser
【Documentary Film+Interview Movie】
Director/Cinematography/Editor:Elizabeth Miyaji
Cinematography:Satoshi Imada
Interviewer:Satoshi Shinkai
Producer:Takashi Sugai
Assistant Producer:Hiyori Fujimura、Fukumi Yoshimoto
Production:CROMANYON
協力:ニッポン放送「あののオールナイトニッポン0」
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