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<インタビュー>橘ケンチ(EXILE)が語る、本から得た新たな視点/2026年のアーティスト活動の意気込み【WITH BOOKS】

Interview & Text:高橋梓
ビルボードジャパンが、2025年11月6日に総合書籍チャート“Billboard JAPAN Book Charts”をローンチした。このチャートは、紙の書籍(書店/EC)と電子書籍の売上、サブスクリプション、図書館での貸し出しやSNSでのリアクションなどを合算した日本初の総合ブックチャートだ。
書籍や文筆と縁深いアーティスト、また音楽と縁深い作家へ、自身の書籍や音楽とのかかわりについて訊くインタビュー企画【WITH BOOKS】。今回は、EXILE/EXILE THE SECONDの橘ケンチが登場。読書好きとして知られる橘は、2017年に「たちばな書店」をオープンさせたり、複数の書籍を発行していたり、本と多くの接点を持っている。そんな橘に本の話、そして新体制でリスタートを切ったEXILEの話をたっぷり語ってもらった。
本はその人の思いと歴史が詰まっている芸術
――本が大好きという橘さんは、普段どんな本を読んでいるのでしょうか。
橘:実は今日、今読んでいる本を持ってきていまして。僕、1冊の本を読み終わってから次に行くタイプじゃなくて、並行読みで何冊も同時に読むんです。しかもジャンルもバラバラ。今はこの6冊を読んでいます。まず『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』(著:吉田直樹、森谷健史、宮永充晃)は、元社長の吉田さん、共著している宮永さんと仲良くさせてもらっていて、ご飯に行った時にいただきました。読んでみたら、ドンキの見方が変わりましたね。『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』(著:しんめいP)は、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)に出演した時に、しんめいPさんからいただきました。これも、すごく面白いんですよ。昔の人の哲学や普遍的な考え方をエッセイっぽく、わかりやすく書いていて、世の中の見方が変わる感じがあります。僕は、「世の中はすべてフィクションだ」という考え方の龍樹が推し。その考え方をすると、一つのことに固執する必要もないと思えてきました。
3冊目は『魯山人の料理王国』(著:北大路魯山人)。僕、お酒や食べることが大好きなのですが、お店に行くとそこかしこで魯山人の名前が出てくるんですよね。いつか魯山人を紐解いてみたいと思っていたので、読んでみようと思って。これ、結構言っていることが過激なんです(笑)。美しさを求めないで食べ物を食べるのは家畜と同じだ、くらいのことを言っているんですね。食事をする際の環境や料理の盛り付け方などから美的感覚を磨いていくことが、人間として高みを目指す上で必要なのだそう。
4冊目は昔から読み込んでいる『多読術』(著:松岡正剛)。僕は本好きが集まる広場として「たちばな書店」というものをネット上で作ったのですが、そこでは面白いと思った本をポストできるようになっているんです。そこで僕が一番最初にポストしたのがこの本。読む前は、多くの本を読むための術について書かれていると思っていたのですが、そうではなくて。本とどういうふうに関わってもいいんだよということが書かれているんです。本は編集するべきだとも書かれていて、読みながら自分でいろいろ書き込んでいっています。
――本当だ。橘さんもたくさん書き込みされていますね。
橘:そうなんです。こういうふうにして書き込んで、「実はこっちの書籍に通ずるな」と思ったらそっちの本を読んでみる、という。僕、本屋に行くとワクワクすると同時に、「絶対ここにある本すべては読み切れない」という絶望を感じていた時期があったんです。それに「今日は◯冊読まなくちゃいけない」という焦りを感じたり、途中で寝てしまった時に罪悪感を抱えてしまったりして、「自分は本が読めない人間なんじゃないか」と思ってしまうこともあって。でも、この本はそれでもいいと言ってくれています。
5冊目の『クジラは食べていい』(著:小松正之)は、衝撃だった一冊。クジラは食べちゃダメ、獲っちゃダメという社会的な概念があるじゃないですか。でも小松先生は、さまざまな理由からクジラは捕るべきと話されていて。捕鯨問題について考えるきっかけを与えてくれています。そして6冊目は『水滸伝』(著:北方謙三)。言わずと知れた大長編の小説ですね。北方さんとも仲良くさせていただいていまして、僕が小説を書くきっかけになったのも北方さんなんです。
――本当にジャンルレスに読まれているんですね。中でも、特にお好きなジャンルはあるのでしょうか。
橘:ドキュメンタリーは好きですね。映画もドキュメンタリーや実話に基づいたものが好きですし、事実であることが好きなんだと思います。フィクションはフィクションで作者の方の想像力がすごいと思うのですが、ドキュメンタリーやノンフィクションは本当にそういう世界があると想像すると、「自分の身の回りにも起こるかもしれない」と思えてきて。あとは、人が見えるのも好き。生き様や、成し遂げるまでどう生きたかということが書かれているのも面白いと思います。なのでビジネス書も好んで読みますね。
――逆に、苦手なジャンルはなさそうですね。
橘:そうですね。いろんなものに触れるのが好きなんですよね。人と会うのもいろんな業種の人に会うのが好きだし、いろんな話を聞くのが好き。多分本もそうなんだと思います。本を読むと著者に会った気がするんです。僕、本を書いた時に3年くらいかかったんですね。北方先生も少しずつ書かれるタイプで、それが積み重なって長い小説になっているわけです。そう考えると、本はその人の思いと歴史が詰まっている芸術なんだなって。本に対するリスペクトが増しましたし、この著書の方はこういう思いからこういう文章を書くのかなと思いを馳せながら読むようになりました。
――今はSNS然り、いろんなところに文章が溢れていますからツルッと読んでしまう人も多くなっていますもんね。書き手まで思いを巡らせることが減っているからこそ、橘さんのような読み方をすることで得られるものも多そうです。
橘:ネットはどういう事件があったかもすぐに見れますし、情報をすごく便利に得られる。でも、それは起こった事象だけ。そこに介在するものまで想像する人はあまりいませんもんね。X(旧Twitter)もそう。校閲が入ることもなく個人の思考がそのまま世に放たれていますが、本は編集者がチェックしていることで、即時性がない分ネットより信憑性が増していると思うんです。ネットサーフィンと本屋巡りって似ていると思うのですが、ネットで調べるよりも本屋に行ったほうが価値の高い情報が得られるんじゃないかという感覚があります。
――読みたい本はどうやって探すことが多いのでしょうか。
橘:最近はいただくものが多いですね。それ以外だと、本屋に行ってぶらぶら歩き回りながら自分の琴線に触れる本との出会いを待っている感じです。これがめちゃくちゃおもしろいんです。本屋に行くと、セレンディピティしまくりなんですよ。今日会った人や明日会う予定の人が載っている本がパッと目に入ったり、何気なく手にとって読んでいた本に「あ、あの人だ!」というページがあったり。いつもセレンディピティに弄ばれながら楽しんでいます(笑)。
――本屋をぶらぶらしている時に惹かれがちな本があったりも?
橘:最近は歴史モノが好きになってきました。今流行っていることではなく、不変の哲学や昔の人の考え方、「あの時こうだったから今こうなっている」というような歴史を最近欲するようになってきましたね。
――これも先ほどのノンフィクションというところと繋がりますね。でも、それだけ多くの本を読まれていると、どんな時間の使い方をされているのか気になります。
橘:僕は、本を読むために2〜3時間空けるってことはないんです。朝起きて、トイレに入って2〜3ページ読むとか、仕事で新幹線に乗っている時に読むとか。あとは隙間で10分くらいあったら数ページ読んだり、夜お風呂に入っている時に10ページずつ読んでいたり。ビル・ゲイツさんは1年で1週間くらい休みを取って、人里離れた場所で本を読んでいらっしゃるじゃないですか。ああいうのも憧れますが、僕は1日中本を読むことができないタイプ。合間に本に向き合うという方法が今の自分には合っているんだと思います。
――本は日常の中に普通にあるモノ、なんですね。
橘:そうですね。ルーティーンの1つになっている感じです。歯を磨く、ご飯を食べる、トイレに行く、運動する、打ち合わせをする、本を読む、みたいな。以前は「今日は5時間本を読むぞ!」と、受験勉強のような読み方をしていたこともありました。でも、それだと苦しいだけで楽しくないんです。続かないですし。だったら、楽しく読める範囲で少しずつ積み重ねていく方が自分の身になると思って、習慣化しました。
――今回お話してくださったように、メンバーや周りの人に内容をシェアすることもあるのでしょうか。
橘:EXILEのメンバーにあまり本を読む人がいなくて。(小林)直己とSHOKICHIくらいかな。なので、EXILEに入りたての頃、新幹線で移動している時に本を読んでいたらHIROさんに「ケンチ、本読んでるよ」と大爆笑されたことがありました(笑)。HIROさんは新聞や雑誌などは読まれますが、文字よりも感覚的に情報をキャッチする方なんですよね。EXILEのオリジナルメンバーの方もHIROさんタイプだったので、僕みたいに文字を読んでいるタイプが新鮮だったみたい。なので、メンバーと本の会話で盛り上がることはあまりないかも。THE RAMPAGEの岩谷翔吾は本が好きで、小説も書いていたので、彼とは本の話をしますね。
「LDH PERFECT YEAR 2026」への意気込み
――そんな橘さんは、Billboard JAPAN Book Chartsをどう見られますか?
橘:(チャートを見ながら)僕が今読んでいる本だと『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』がチャートに入っているんですね。こういったチャートに入っているタイプの本は自分で買う機会はあまりないのですが、『ユダヤ人の歴史』(著:鶴見太郎)は面白そう。やっぱり歴史モノに目がいっちゃいますね。でも、本のランキングってほとんどないので、すごくいいと思います。とっつきやすい本を探すという意味では、こういうチャートを参考にするのがいいのかもしれませんね。「とりあえず1位を読んでみようかな」と思えますから。ワインが世界に広がったのって、ロバート・パーカーという人がパーカーポイントをつけて世界的なランキングができたというのも一因になっていると思うんです。なので、ムーブメントを作るきっかけとして、順位やランキングを用いるのはすごく適しているのかなと思います。
――ありがとうございます。では、橘さんの音楽活動のお話も少し聞かせてください。EXILEが新体制となって新しいスタートを切っていますが、今のグループの状態はいかがですか?
橘:ATSUSHIくんが復帰して、EXILEの現メンバー11人とEXILE TRIBEの後輩メンバーを入れた20人でドームツアーを回っていますが、すごくいい意味で“定まっていない”状態です。僕が加入した当初はHIROさんという絶対的なリーダーがいて、ATSUSHIくん、TAKAHIROくんがいるというEXILEの形がビシッと決まっていたんですよ。EXILEはこういう曲調で、こういう演出でライブをして、ライブに行ったら非日常体験ができる、みたいな。それがHIROさんが卒業されて、先輩方も勇退されて。グループの理念は残りますが、まったく同じ状態でグループは存続できないですよね。辞めたメンバーも新しく入ったメンバーもいますし、こういう表現方法がしたいというのも個人個人で感覚も違いますから。それをメンバー、avexやLDHのスタッフさんみんなで意見を出しながら、今のEXILEの表現を作っています。「今のEXILEだったらこういう表現も面白いかもね」という感じで、トライ・アンド・エラーを繰り返しているところですね。
――「Get-go!」のリリース時にAKIRAさんにインタビューをさせていただいたのですが、「今までだったら再始動するタイミングの楽曲は気合いが入ったものが多かったですが、今回はすごくナチュラル」とおっしゃっていて。橘さんがお話された今のグループの状態とある意味リンクした楽曲だったんだなと感じました。
橘:そうですね。楽曲を提案してくれたATSUSHIくんとしては、「笑顔」がキーワードだったみたいで。みんなで仲良く、イケオジたちがワイワイしているというイメージです。来年25周年を迎えるグループで、しかも男だらけとなると「本当に仲良いの?」と思われるかもしれませんが、僕ら、実際にめちゃくちゃ仲良いんです(笑)。その大人の仲の良さが上手く伝わったかなと思います。ライブなどでは“半裸でウォー!”と気合いが入っている姿を求められますが、まずは笑顔でキャッキャしているものを世の中に見せるというか。「怖くないよ〜、こんなにいいイケオジたちだよ〜」みたいな(笑)。今の時代だからこそ、アグレッシブさというよりも柔らかく、仲間の絆やファンとの関係性を見せたかったんですよね。そういう意味でも、再始動の楽曲としていいものができたと思っています。
――ツアーでパフォーマンスした時のファンの方の反応はいかがですか。
橘:ツアーではそんなに踊っていなくて、一緒に手を振って会場一体となるパフォーマンスをしています。「Get-go!」は、ちょうど後半戦のスタートくらいのポジションにやる曲なんですね。前半はアグレッシブに攻めて、バラードも見せて、後半は明るく盛り上げていく流れなのですが、EXILEのリスタートとこの曲がうまく噛み合わさってお客さんと一体感を生み出せていると思います。
――あぁ、なるほど。
橘:それに、なんだか今EXILEは第二次成熟期に向かっている感覚があって。HIROさんがいた時代は力強くて、それこそ“半裸でウォー!”というイメージの成熟期。そこからいろんな変化があって、今また成熟期に向かっているのかなと感じています。ちょうど2026年は「LDH PERFECT YEAR 2026」もありますので、いい形のEXILEを改めてお見せできたらいいなと思っています。
――その「LDH PERFECT YEAR 2026」も個人的にすごく楽しみで。EXILEの【EXILE LIVE 2026 "THE REASON"〜PERFECT YEAR Special〜】もそうなのですが、EXILE THE SECONDも約1年半ぶりにライブをされます。
橘:今お話したことと少し矛盾するかもしれませんが、僕の中ではEXILEでのパフォーマンスって「EXILEをしっかり演じる」というか、どこか鎧を着る感覚があって。でも、SECONDは本当に等身大のまま、ある意味好き勝手やらせてもらっています。楽曲もバラード、HIPHOP、ロックなどいろいろありますし、僕たちなりのベストライブをやろうと思っています。2020年の「LDH PERFECT YEAR」の時に予定していたSECONDのライブがコロナで中止になってしまったのですが、実は内容にめちゃくちゃ自信があったんです。でも、今回はそれを上回るクオリティのライブをお届けするつもりでいます。
テーマは、昔リリースしたアルバムタイトルと同じ「Born To Be Wild」。2ndアルバム『Born To Be Wild』は、僕ら5人の生き様のイメージに合っているので、アルバムの内容をやるのではなく、過去パフォーマンスしていない曲を含めて、一番いい状態でお届けしようと思っています。2026年1月22日に、セカ友(EXILE THE SECONDのファンの呼称)とセットリストから演出まで一緒に決める生配信をやるんですよ。そこから5か月かけてみんなでライブを作って初日を迎えるという試みをする予定です。前代未聞だと思うのですが、SECONDならできるかなと思っています。いいライブになると思いますよ。
――今から楽しみです! では最後に「LDH PERFECT YEAR 2026」への意気込み、橘さん自身の2026年への意気込みを教えてください。
橘:前回の「LDH PERFECT YEAR」は悔しい思いをしたので、「LDH PERFECT YEAR 2026」でそれを覆したいですね。しかも、LDHが掲げるお祭りなのでより多くの方に認知してもらいたいですし、最近ライブから遠ざかってしまっていたファンの方々にもエンタメ心を再燃させてほしいと思っています。LDH全体でさまざまなことを仕掛けていくので、漏らさずぜひチェックしてほしいです。この間、EXILEの京セラドーム公演でSHOKICHIが面白いことを言っていて。「『LDH PERFECT YEAR』は、お母さんが『もっと食べなさい。これも食べなさい。まだあるよ』と子どもにご飯を食べさせるスタンスです」って(笑)。僕たちはエンタメを皆さんに差し出し続けるので、お腹いっぱいになってもまだ食べ続けるというエンタメ飽和状態を楽しんでほしいです。
僕個人としては、毎年アップデートし続けている僕を感じてほしいと思います。あと何年かは踊らせてもらえると思うので、それを証明できる年にしたいですね。そして僕はLDHの社会貢献、地域共生の担当もしていて、いろんな地域の自治体と取り組みをしています。2026年は日本を盛り上げる活動がより増えると思うので、日本中を回る1年にしたいですね。楽しみにしていてください!
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