東京、大阪、横浜の3都市に位置するビルボードライブでは、2025年も国内外における最高峰のアーティストによる公演が開催され、観る者の心を揺さぶる感動を数多く届けてきた。2020年に開業したビルボードライブ横浜は5周年を迎え、8月に開催された【SUMMER SONIC 2025】では『Billboard Live & JUJU's BEACH PARTY』と銘打ち、初日のBEACH STAGEをジャック。そんな2025年の締めくくりとして、数々のライブに足を運んできた“ライブの達人”に印象深いパフォーマンスや、今年聴いた曲、さらには2026年への期待までを語ってもらった。ビルボードライブで行われたライブの記録、そして音楽愛にあふれたコメントとともに、ぜひ自身のライブ体験も振り返ってほしい。
“ライブの達人”が選ぶ2025年ベストライブ
石若 駿(打楽器奏者、作曲家、音楽家)
ビルボードライブでの印象深い思い出はありますか?
ビルボードライブではここ数年、私のプロジェクトAnswer to Rememberでの出演でお世話になっています。初めてアンリメの大所帯で出演できたときはとても嬉しかったのを覚えています。ホスピタリティに大感謝で本当に演者皆によくしてくれました。そもそも自分が最初に出演したのを思い出すと、2014年の【きっずじゃず】というイベントだろうか。大貫妙子さん、Maya Hatchさん、TOKUさん、ケイコ・リーさん、そしてしまじろうという素晴らしいシンガーの皆さんと一緒でした。以来様々な音楽で出演させていただいています。音楽人生ここにありです。いつもありがとうございます!
ビルボードライブでの印象深い思い出はありますか?
いつも温かく迎えてくれる“第二のホーム”のような場所です。(ビル・シャープ)
今年日本で演奏できたことは、私たちのツアー日程の中でも特に大きなハイライトでした。(ジル・セイワード)
家族や友人のために演奏しているように感じます。(ロジャー・オデル)
日本のビルボードライブで演奏するのは、いつも本当に特別です。素晴らしい会場で、音響や照明も最高ですが、何よりスタッフの皆さんがいつも親切で気遣いが細やかで、長年の積み重ねでまるで家族のような存在になっています。(ジョージ・アンダーソン Jr.) 今年一番心に残ったライブはなんですか?
今年のベスト・ライブは ルイス・コールの Roundhouse公演。(ビル)
ジャロッド・ローソンのライブは本当に心を奪われました。(ジル)
ビル・ローレンス・トリオ(Ronnie Scott’s)とクリスティーン・トービン&フィル・ロブソン(Embassy Gardens)が特に印象的でした。(ロジャー)
今年のベスト・ライブは、マンチェスターで観たスティーヴィー・ワンダーです。あの名曲の数々を、伝説のスティーヴィー自身が約3時間も素晴らしい歌声と素晴らしいバンドとともに披露してくれて、本当に感動的な体験でした。(ジョージ) 今年のお気に入りのアルバムはなんですか?
ベストアルバムはルイス・コールの『nothing』。(ビル)
ジャロッド・ローソンのアルバム『BE THE CHANGE』は、今年私が最も聴いた作品でした。ルイス・コールの『nothing』も素晴らしかったです。(ジル)
今年公開された映画をきっかけに、ルーサー・ヴァンドロスの『Live at Radio City Music Hall 2003』をまた聴くようになりました。(ロジャー)
僕は大のデヴィッド・ボウイファンなのですが、最近よく聴いているのは『The Next Day』です。これは彼が自身の病状を知りながら録音した、最期のアルバムのひとつ。そうした状況にもかかわらず、ボウイの不屈のスピリットが詰まった素晴らしい作品で、楽曲も本当に素晴らしいです。(ジョージ) 2026年の展望やプランを教えてください。
UKでのライブと新アルバム制作の一年になりそうです。(ビル)
新しいアルバム制作が始まり、とても忙しい一年になりそうです。(ジル)
次のShakatakのレコーディングに向けた新曲作りを進める予定です。(ロジャー)
Shakatakにとって忙しい一年になりそうですが、ツアーの合間には、自身のソロプロジェクトでヨーロッパの素晴らしいミュージシャンたちとレコーディングやギグをして、音楽的な刺激をキープしたいと思っています。皆さんにまたお会いできるのを楽しみにしています。(ジョージ)
Shakatak
5/3@ビルボードライブ東京
Photo:岩田 慶
黒田隆憲(ライター)※音楽〜カルチャー系メディアを中心に、ジャンル問わず幅広く執筆中
2025年のビルボードライブで印象に残っているステージはありますか?
【スタジオ地図 Music Journey at Billboard Live 高木正勝 “うたの時間”】。ゲストボーカルにアン・サリー、Hana Hope、寺尾紗穂の3人を迎え、馴染みのバンドメンバーとともに〈スタジオ地図〉作品のサントラから選りすぐりの曲を演奏するスペシャルライブ。三人三様の声が紡ぐストーリーに、ピアノを基軸とした繊細かつオーガニックなアンサンブルが寄り添いながら、会場を包み込んでいく。祈りのように静謐で、春先の陽だまりのように親密な、心の染み入る祝祭のひとときだった。 今年一番心に残ったライブはなんですか?
マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン OVO Arena Wembley(ロンドン)。ホームタウンであるダブリンのThe 3Arenaを皮切りに、マンチェスター、ロンドン、そしてグラスゴーにて行われたツアー全公演を撮影。およそ7年ぶりのライブは会場規模を一回り大きくし、サウンドプロダクションはもちろん、照明や映像もヴァージョンアップしたイマーシヴな内容だった。どれも甲乙つけ難いが、メンバーのテンション、オーディエンスの熱気、演出の完成度などを含めてトータルで最も印象深かったのはロンドン公演。2026年2月に行われる来日ツアーも楽しみだ。
スタジオ地図 Music Journey at Billboard Live 高木正勝 “うたの時間”
今までのビルボードライブで印象に残っているステージはありますか?
2014年5月にビルボードライブ東京で撮影させていただいたジミー・クリフ。圧倒的な存在感、名曲の数々を極上の美声とパフォーマンスで魅せてくれた。生の「Many Rivers to Cross」には涙しながら撮影。1stステージの写真を見て「2ndステージも撮ってくれよ!」と言われたのもいい思い出。Rest In Music… 今年一番心に残ったライブはなんですか?
久々のエリカ・バドゥ。ジ・アルケミストとのジョイントで新たな化学反応が素晴らしかった。衣装も相変わらず素敵。日本のアーティストではIO、唾奇それぞれの武道館公演が印象的だった。
Tomoko Moore(Billboard JAPAN Global Business Development Director)
今年一番心に残ったライブはなんですか?
10月の【Erykah Badu~Mama's Gun 25th anniversary tour~】@The Royal Albert Hall, London。今年の6月にもビルボードライブ東京で彼女のショーをキャッチしたのですが、ロンドンでの公演は純粋にノックアウトされました。ステージ上の演出がパフォーマンスだけではなく空間さえも何か操っているような印象を受け圧巻でした。また特にディアンジェロが亡くなった直後であったこともあり、彼の話をした時一瞬アーティストではなく、一人の友人としてのエリカの姿を見た気がしました。
あとは、トモキ・サンダース@Ronnie Scott's。ヘッドライナーとしてのロンドン公演は初めてということでしたがショーのChoreographcがとてもスリック!! 本人がドラムでリズムをとりながら徐々にほかのメンバーが登壇、最後に自身のサックスで演奏という流れの作り方、トークもイギリス人に合わせたシニカルさを込めたジョークなど飛ばしつつ、父親のファラオ(・サンダース)の楽曲を自分なりのアレンジをしたりと新旧交えた内容の深いショーでした。
今年のお気に入りのアルバムはなんですか?
Even Briarの『Lieutenant Beckwith's Widow』。全くの新人でレーベル契約など本格的なセットアップができていないアーティストですが、このアルバムは私にとって“中毒的”なインパクトがありました。背景には第一次戦争中のイギリス軍の未亡人の心境をテーマにしたアルバムで切ない気持ちを表現した歌詞、特に「You left me with England」は今年私がSpotifyで聴いたNo.1の曲でした。
2026年の展望やプランを教えてください。
在ロンドンということで縁があってSXSW Londonの初回からMusic Juryとして参加させていただいています。2026年も継続することになり新しいアーティストの発掘が出来るのが楽しみです。また昨今の日本ブームで日本人アーティストの活躍がさらに飛躍出来るように現地で何かきっかけを作ることができればと思っています。
Erykah Badu presents 'Abi & Alan' Featuring The Alchemist
2025年のビルボードライブで印象に残っているステージはありますか?
KIRINJI。「一年に何度もライブに参加する」をかれこれ10年以上、もはや人生の習慣になっているKIRINJI。やはりビルボードライブ公演は格別。この日はフジロック帰りでエネルギーに満ちあふれた演奏、「Drifter」をはじめ過去曲も新曲も織り交ぜながら、セットリストを“現在の音”でいつまでも更新していく。「After the Party」の酔いの回ったグルーヴは驚くほどに会場とマッチし、手練れによる追求されたきめ細かさを感じた夜。 今年一番心に残ったライブはなんですか?
nai sê。どこまでも素晴らしいユニットが誕生していました。名はnai sê。伊神柚子(Vo)、杉本亮(Pf)による「自分の声を見つめ直す」をコンセプトとしたデュオ。内声でいて、内省。アルゼンチンジャズを取り入れるなど、普段のライブシーンで馴染みがあまりない方もいるかもしれませんが、音楽に明るいかどうかなんて置いておいて「あの人に聴いてもらいたいな~」と好きな人たちの顔が次々と浮かんできた三軒茶屋。耳にすればたちまちあらゆる感情が生まれて、どの心の動きを迎えに行こうかなと嬉しく悩める。人肌感じる音楽と出会えてよかった。
KIRINJI Billboard Live Tour 2025
7/17@ビルボードライブ大阪
Photo:Kenju Uyama
柳樂光隆(音楽ライター/エデュケーター)
2025年のビルボードライブで印象に残っているステージはありますか?
セオ・クロッカー(8/5@ビルボードライブ東京)。彼のライブは何度も観ていますが、見るたびにアップデートされていて、今回は過去観た中で最も素晴らしかったと思います。ジャズの即興性を存分に楽しめるのにエレクトリックで折衷的。ライブを観るべきアーティストだと思います。 今年一番心に残ったライブはなんですか?
カッサヴ(7/6@Jazz à Vienne)。フランスのジャズ・フェスでフレンチカリビアンの伝説的なグループのライブを観ました。近隣のカリブ系の老若男女が大勢集まって盛り上がりまくり。おじいさん、おばあさんたちもみんな満面の笑顔で踊っていて、こんな幸福な光景はなかなか観られないなと感動しました。
Blicher Hemmer Gadd Japan Tour 2025 ~ スティーヴ・ガッドBHGプロジェクト
11/5@ビルボードライブ東京
Photo:Masanori Naruse
武部聡志(作・編曲家、音楽プロデューサー)
2025年のビルボードライブで印象に残っているライブはありますか?
現在僕は、ビルボードとタッグを組んで「Piano Duo Session」、「billboard classics」で僕のプロデュースするシリーズ2つのプログラムをご一緒させていただいております。今年「Piano Duo Session」では、4月に一青窈、11月にSURFACEといずれも僕がプロデュースを手掛けたアーティストと共にビルボードライブ東京のステージに立ちました。いつもアンコールでカーテンが開き夜景を見ながらピアノを演奏する時、「戻ってきた」と思えるホームグラウンドになってきました。また、シリーズ初となる東京以外での公演として、4月に柴田淳と共にビルボードライブ大阪と横浜のステージにも立ちました。そして「billboard classics」では3月に川崎鷹也、12月にKREVAと共にフルオーケストラでのコンサートを開催しました。こちらも編曲、指揮を担う若きマエストロ、岩城直也と共に毎公演楽しみにしております。どの公演も温かいお客様の声援を受けて大成功に終えることができました。来年もいくつかのプログラムを準備中ですので、是非お楽しみに!! ▶【billboard classics「川崎鷹也 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志】レポートはこちら ▶【billboard classics「KREVA Premium Orchestra Concert」~produced by武部聡志】レポートはこちら 今年一番心に残ったライブはなんですか?
6月に観に行かせていただいた、【billboard classics 玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2025 ""ODE TO JOY""】。日本武道館に響き渡る彼の唄声とオーケストラとの融合が素晴らしく、一緒に観に行ったアーティストたちとも感動することしきりでした。いつか僕も自分のプロデュースするシリーズで、日本全国のオーケストラと共演できる日が来ると嬉しいです。
Billboard Live presents Piano Duo Session #9 SURFACE×武部聡志 ~SAIKAI III~
11/21@ビルボードライブ東京
Photo:Masanori Naruse
Isabella Araujo(Billboard Colombia Marketing and Brand Director)
今年一番心に残ったライブはなんですか?
J. バルヴィンが26人のゲストを迎えた公演です。ゲストが自分の曲を5分ずつ歌って合計7時間にも及ぶライブは素晴らしかったです。 今年のお気に入りのアルバムはなんですか?
Ozuna and Beeleの『Stendahl』、リリースされたばかりのアルバムですが、Billboard Colombiaの表紙にも登場いただいたくらい素晴らしいアルバムです。 2026年の展望やプランを教えてください。
2026年は、サルサ音楽にフォーカスしたコンベンションを開催します。あらゆるショーケースや様々な音楽ジャンルのアクティビティを1週間にわたって開催予定です!
雨穴(覆面ホラーミステリー作家)
今年一番心に残ったライブはなんですか?
今年はライブには行っていませんね……。ただ、コロナ禍もあって去年から今年にかけて(世の中が)『ライブ』のような『生』のものを(より一層)求めているように感じています。普段、私は部屋で寝ながら、スマホを通じてライブを見るのが好きなタイプなのですが、(見ていると)段々「その場に自分もいたい、見たい」という熱気が沸いてきます。どんな形になるのか、まだ分かりませんが、いつかライブ感覚を味わえるような企画もやってみたいです。
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James Stirling(SXSW London Music Adviser、ヴィクトリア&アルバート博物館 Creative Advisor)
今年一番心に残ったライブはなんですか?
バーレーンのAl Dana Amphiteathreでのメタリカのライブ。砂漠の岩を削って造られた壮大な会場で行われた、とても特別なコンサート。メタリカにとっては初のバーレーン公演で、長年待ち続けてきた観客との深い一体感をアーティスト自身も楽しんでいる様子だったよ。 今年のお気に入りのアルバムはなんですか?
Little Simzの『Lotus』。 2026年の展望やプランを教えてください。
2026年は、観客が心に残る体験を強く求めていることから、ライブ音楽は今後も成長していくだろうと考えています。また、音楽業界も中東の湾岸諸国-特にサウジアラビアに注目し始めていて、この国の音楽産業はかなり速いスピードで成長していると感じています。
2025年のビルボードライブで印象に残っているライブはありますか?
6月16日にビルボードライブ東京で行なわれた【ZARD Acoustic Live 〜Especial moment〜】(1stステージ)。今聴く坂井泉水の声は、どこまでも無垢な感情によって象られた歌であり、どこまでもまっすぐだった。これほどまでに近い声、近い歌、近い音楽はあったのだろうか。坂井泉水とは日本が生んだ最高のシンガーであり、ZARDは2025年の現在も変わらず日本の音楽史上の金字塔である――その理由を見た、極上としか言いようのない体験でした。
今年一番心に残ったライブはなんですか?
9月3日にLaLa arena TOKYO-BAYで行なわれた【THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 Sparkleの惑星X -ネ申-】。4人が今見せるべき姿と本当にやりたいこと、人々が今見たいものと受け取るべきものが完全に一致した瞬間だった。ロックとして何より正しいもロックはあり、ライブとして何よりも誠実なライブがある。それを実現することのできるロックバンドは、もしかしたらTHE YELLOW MONKEYなのかもしれない。THE YELLOW MONKEYの輝きを2025年の今目撃できることは、とても幸福なことなのだと思いました。素晴らしいライブでした。
Federico Durante(Billboard Italy Chief Editor)
今年一番心に残ったライブはなんですか?
6月24日にミラノで行われたリンキン・パークのライブです。「待望のカムバック」という言葉は、イタリアでも1日のみの海外アーティスト単独大規模ライブを指して使われることが多いのですが、I-Days Milano Coca-Colaで開催されたリンキン・パークのコンサートは明らかに別格でした。今回はイタリアで8年ぶりのライブでありチェスター・ベニントンの死後初、そして新ボーカリストのエミリー・アームストロングを迎えての初ライブでした。単なるノスタルジーの演出にとどまらず、このステージでリンキン・パークは自分たち自身のトリビュート・バンドではないということを見事に証明してくれました。 今年のお気に入りのアルバムはなんですか?
ボン・イヴェールの『SABLE, fABLE』。世界がジャスティン・ヴァーノンの音楽に恋をした、あのサウンドへ穏やかに回帰しています。 2026年の展望やプランを教えてください。
Billboard Italyとしていくつかのハイライトは、2月のサンレモ音楽祭(特別に建てられた会場や、オーガニックとブランディング観点両方を含む幅広いエディトリアル施策を予定)と、4月のミラノ・デザインウィーク、夏中に開催されるイタリア及びヨーロッパ各地でのフェスティバル、9月に開催される第2回GEN b Festival(注目の新進アーティストに焦点を当てたライブイベント)、そして11月に開催される第3回Billboard Italia Women in Musicの開催です。