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<インタビュー>YURIYAN RETRIEVER、驚きを提供するエンターテイナー節が炸裂 3rdシングル「難波ナンバーワン」で描くのは過去の片思い

インタビューバナー

Text & Interview: 永堀アツオ
Photos: 興梠真帆

 ゆりやんレトリィバァが、YURIYAN RETRIEVER名義で本格的なアーティスト活動を始めて早5か月。yonkeyと手を組んだデビュー曲「YURIYAN TIME」と2ndシングル「Venus」では“誰にも媚びない自分”をダンサブルなサウンドともに届けてきたが、3rdシングル「難波ナンバーワン」では自身の過去の恋愛経験を昭和歌謡のテイストに仕上げるという、予想外の方向性でリスナーを飽きさせない。「みんながワクワクする “YURIYAN RETRIEVER”というジャンル」を提供し、音楽でも枠にとらわれず、YURIYANらしさを全開で届けている。

 米ロサンゼルスから帰国したYURIYAN RETRIEVERの撮りおろし写真とともに、今年の輝かしい活動と最新曲の制作エピソードを振り返る。

 今年7月16日に1stシングル「YURIYAN TIME」をリリースし、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たしたYURIYAN RETRIEVER(ゆりやんレトリィバァ)。7月25日には単独では初となる『ミュージックステーション』に出演し、2ndシングル「Venus」のリリース後の9月13日にはNHK『Venue101』にも出演した。

「ほんまに信じられないぐらい緊張してました。ゆりやんレトリィバァ史上最大の緊張で動けなくなってしまって。生放送やから失敗できないし、間違えたらどうしようという不安がドキドキになって。『ミュージックステーション』では憧れの階段降りがあって、タモリさんがいらっしゃるところに並んで、少しやりとりをしてから、コマーシャルの間に座るという段取りやったんですね。リハーサルもしっかりしたのに、階段を降りてポーズを取ることだけで頭がいっぱいになってしまって、本番では階段を降りて、そのまま勝手に座っちゃって(笑)。『なんで一人だけ座ってるんだよ!』みたいになりました。『Venue101』では、装飾をどんどん取っていって、最後に着飾らない本当の私になるというMVと同じ演出を再現してくださったんですが、リハの段階で緊張でパニックになって、頭のリボンを取り忘れて……。もう、めっちゃ情けない姿になったりしてましたね。」

 芸歴12年目を迎え、数々のコンテストで優勝を獲得してきた彼女がそれほど緊張するのは、それだけ音楽に対して真摯に向き合ってる証拠でもある。現在、拠点をロサンゼルスに移してる彼女だが、9月4日と9日には東京・ルミネtheよしもとにて【ゆりやんLA(ルミネありがとう)ライブ】を行い、10月にはLAのLaugh Factory Hollywoodで単独ライブ【Yuriyan Retriever’s: You Know What I Mean?!】を開催、観客の前でパフォーマンスも披露した。

「お笑いの単独ライブのオープニングで歌わせてもらったら、お客さんがめっちゃ盛り上がってくれて。開演までのBGMとしても『YURIYAN TIME』と『Venus』をずっと流してもらってたんですけど、それもみんな楽しんでくれてたんです。友達や知り合いが〈♪YURIYAN TIME IS MONEY〉って歌ってくれるのも嬉しいし、みんなが『曲を聴いたよ』とか『MV観たよ』って言ってくれるのも嬉しい。デビューから怒涛の3か月で、自分でもいまだに信じられないんですけど、最初にユニバーサルミュージックさんとお会いしたときに話していたこと——『お笑いに音楽のエネルギーが入ったらめっちゃ盛り上がるし、お客さんが1つになる』って言ったことが実現してて、ほんまに感動してます。本当に曲を出させてもらえたんやなっていう実感を噛み締めてるところですね。」

 そして、12月3日に早くも3曲目となるニューシングル「難波ナンバーワン」がリリースされた。ゆりやんのアイデアノートをもとにyonkeyが楽曲を制作するという過程はこれまでの2曲と同様だが、サウンドはヒップホップから大胆にチェンジ。最新のビートを盛り込んではいるが、全体的には演歌〜昭和歌謡のテイストでまとめている。

「タイプが全く違う曲なので私もびっくりしました。ぱっと見の方向性は違うんですけど、yonkeyさんが私の今までの思いをすくい上げて作ってくれているという根本は変わってないです。私、そんなに詳しくはないんですけど、歌謡曲が大好きなんですよね。例えば、阿久悠さんの『ジョニィへの伝言』とか。みなまで言わへんけど、その人の切なさが伝わってくるし、映画のように情景が思い浮かぶ。『物語みたいな感じ好きやわ〜』と思っていたので、私もそういう曲を歌わせてもらえて嬉しかったです。」

 歌詞は彼女の実体験が元になっているという。

「8年前くらいかな? 大阪の難波らへんに住んでいたときに、好きだった人のことを思って作った曲があって。3つしか弾けないギターのコードを使って、『ナンバーワン』というシンプルな曲を作ったんですね。東京と大阪を行き来している時期で、大阪に好きな人がいた。そういう実際の恋愛を元にした曲をyonkeyさんに聴いてもらったのがきっかけになってます。」

 実際の恋愛というと、すでに結婚して、最近、本名で歌手デビューしたあの人が思い浮かぶが、歌詞には〈背の高い人〉とある。

「まぁ、いろいろあるので、お相手の名前は言えないんですけど……ある芸人さんがモデルです。当時、楽屋でその方に向けて『ナンバーワン』を号泣しながら歌って、大笑いしている動画もYouTubeに残ってると思います。東京で仕事が続く日も、大阪に戻ったら会えるかもしれへんからという思いで、明日も東京やのに『1回、帰ります』みたいなことをしてて。そういう勝手な行動の歌なんですけど、それを聞いたyonkeyさんが感動してくれて。この曲では仲よくしてた二人が、東京と大阪で少しずつすれ違ってしまうっていう切なさがあるけど、本来はすれ違うこともなかったし(笑)、ストーカーっぽい怖い話なんですよ。だから、実話に基づきつつ、yonkeyさんがめっちゃ小さいところを引き伸ばして、ちょっとフィクションを入れて綺麗にまとめてくれたのが、この『難波ナンバーワン』です。」

 「私の禍々しく、濁った悔しさをキラキラしたものに変換してくれた」という失恋ソングのミュージック・ビデオでは、昭和の歌番組『夜のヒットスタジオ』のようなセットでストリングスをバックに着物姿で歌い上げている。

「着物を着て歌うのは初めてだったので、身の引き締まる思いと言いますか、ウエストの引き締まる思いでした(笑)。自分のリアルな経験を思い出しながら感情を込めて歌ったんですけど、MC役の男性のノリ方が昭和で。「絶対にちゃうやろ!」っていう令和ではないノリ方が大好きだし、歌う前のなんてことのない会話もちょっと難しくて。MC役の二人がタイムスリップしてきたかのようで素晴らしすぎました。ストリングスの方たちはエキストラじゃなくて、ほんまもののオーケストラなんですよ。普段、映画音楽などを演奏されているらしく、現場で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『サイコ』とか、いろんな曲をサービスで弾いてくれて。私の曲では弾いてないんですけど(笑)、めっちゃ贅沢でした。当時の映像と見間違えてくれる人がいるといいなと思いますね。」


 ヒップホップから昭和歌謡へ。「サーカスのようなひとり芸術集団として、楽しいことは何でもやる。目指すは、みんながワクワクするような、ゆりやんレトリィバァというジャンルになりたい」と語っていた彼女は間違いなくその言葉通りの道を歩んでいる。

「セックスレス……じゃなく、ジャンルレスか。すみません(笑)。いい意味で私と言えばこれというのが定着せずに、毎回、『次はどうなんねやろう?』って楽しんでもらえたらいいなって思います。yonkeyさんとYURIYANのYYワールドはまだまだ続きますし、一瞬たりとも見逃せないアーティストになりたいですね。」

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