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<インタビュー>ミコラス 2ndアルバム『Ⅱ』で生み出したグルーヴ&日本のファンへの想い

インタビューバナー

Interview & Text:松永尚久



 2020年にリリースした楽曲「LALALALALALALALALALA」がバイラル・ヒット、24年にリリースした初アルバム『ONE』も高セールスを記録しているチェコ出身のシンガー・ソングライター、MIKOLAS(ミコラス)。昨年10月にはSKY-HIとコラボした「LALALALALALALALALALA (TokyoVersion)」で、更なるファンを拡大させた彼が、2ndアルバム『Ⅱ』をリリースした。前作同様のポップ感を残しながら、ラグジュアリーとバルキー度が増したアグレッシブなビートが轟く内容。この作品に込めた想いを尋ねると、日本のファンへの真摯な想いが浮き彫りになった。

アルバム制作自体が
僕の「別人格」を探求する旅のようなものだった

――前作『ONE』のリリースから1年が経過しました。

ミコラス:「もう1年経った」と言われると、信じられない気持ちです。前作を作るのに6年かかったのに、今回はとても速かった。ただ「何があってもクオリティは落とさない」という明確なビジョンを持って取り組むことができたと思います。夜通し作業することも多く、休日もあまり取れなかったですね。


――この1年の間にはSKY-HIとのコラボレーションもありましたね。

ミコラス:素晴らしい経験でした。彼は成功しているだけでなく、とても親切で謙虚で、メンターのような人です。彼を通じて、日本のリスナーや音楽業界の在り方について多くを学びました。日本での僕の活動を本当に助けてくれた存在で、とても感謝しています。



MIKOLAS, SKY-HI - LALALALALALALALALALA (Tokyo Version)


――では、今回のアルバム『Ⅱ』は日本のリスナーを意識して制作した部分も?

ミコラス:残念ながら、「この曲が日本でヒットしたから似た曲を作ろう」とは考えていません。それは自分にとって面白くないので。ただ、日本での経験やSKY-HIとの共演などが自然と楽曲の中に染み込んでいる気がする。1年で仕上げたとはいえ、いろんな経験が詰まったアルバムです。僕にとっては1年で作るのはクレイジーなスピードでした。でも人によっては年に2〜3枚出す人もいるんですよね?

 本作には、過去の経験や家族との出来事、ヨーロッパでの成功をどう受け止めたかなど、いろんな時期の自分の思いが閉じ込められている。だから「この1年だけの作品」とはいえない。この1年はスタジオにこもって曲作りしかしていなくて、それ以外大したことはしていなかったし(笑)。


――前作の経験もあり、今回は制作のアプローチやプロセスも異なったのでは?

ミコラス:確かに。前作は何もかもが初めての経験だったし、本作はもうちょっと手際良く完成したのかなって自分では思っています。また、クオリティは妥協したくなくて、前作以上に満足のいく音に仕上がったのかなって。


――アグレッシブでダンサブルなグルーヴがアルバム全体に流れていますね。

ミコラス:アルバム制作自体が僕の「別人格(オルターエゴ)」を探求する旅のようなものだった。結果、とてもアグレッシブになったのかなって。ただ、少しやりすぎかなと思う部分もあり、そのバランスを取るために「RIGHT HERE」のような柔らかい曲も作りました。でも、そのように感じ取っていただけたのならば、僕の狙いは間違っていなかったと思います。


――特に冒頭を飾る「MAZZALEEN」は躍動感がありながら、とてもゴージャスというかラグジュアリー感が漂う歌詞が印象的です。

ミコラス:僕はかつて車の中で寝たりストリートで演奏していたので、「贅沢な歌詞」を書くのは初めての経験でした(笑)。だから、初めて耳にした人はちょっと驚くかもしれませんね。この楽曲はアルバム全体のテーマである「クラブでエネルギーを感じること」を体現できたものになった。UKラップ独特のフローや、BPMの高いテンポなどを組み合わせて、斬新なサウンドにしています。自分の枠から一歩踏み出せたような仕上がりになったのかなって。


――そうしたら、現在は歌詞にあるようなラグジュアリーな生活を?

ミコラス:(笑)。確かに生活は変わりましたが、謙虚さは変わっていません。ストリートで警察に追われたり、他の人と居場所を争ったりした経験があるからこそ、今こうして安全な場所で活動できることに感謝しています。とはいえ、高級車を乗り回したりはしていません。この楽曲は、ストレスを忘れて楽しむ時間を提供したいと思って制作しただけなので。



MIKOLAS - MAZZALEEN (Official Video)


――「FROM THE BLOCK」は、ジェニファー・ロペスの「Jenny From The Block」をサンプリング。

ミコラス:今回の来日インタビューで、この曲についてたくさん質問されます(笑)。そういう意味では、日本受けのいい楽曲を収録することができたのかなって。なぜサンプリングとして使ったかというと、自分の作ったビートにすごくうまく合ったんです。実はいろんなアイデアを試したのですが、これが1番フィットした。また、生まれたサウンドに中毒性みたいなものを感じて、だったら完成まで持っていこうと。オリジナルの要素を残しつつ、新しい形を構築できたのかなと思います。オリジナルをリスペクトしながら、自分の声で違う表情を出せたと思うし、ライブで早くパフォーマンスしたいですね。


――また「BENSON BOONE」という楽曲も。

ミコラス:彼はSNS発のミュージシャンから一躍スターダムに登り詰めた人で、その急上昇を比喩的に楽曲へ取り入れました。でも実際にお会いしたことがなく、名前を使っていいかどうかの許可も聞いてないので、怒られなければいいんですけど(苦笑)。



MIKOLAS - BENSON BOONE (Official Lyric Video)


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2026年には大掛かりなツアーも計画

――これもライブで盛り上がりそうですね。今後始まるライブが楽しみになります。また、パフォーマンスといえば、先日は東京でファン・ミーティングを開催されました。

ミコラス:チケットを販売してライブを楽しんでいただけるツアー同様、ファン・イベントも大切にしたいと思っています。アルバム発売日にはプラハで、その後に東京で開催しました。参加いただくためには、ファン登録をして、特別なポータルから申し込みをしなくてはいけないという手間を要してしまうのですが、それでも参加したいと思ってくださる人には、より近い距離で僕を感じていただきたいと思っています。


――日本のファンの人の特徴というか、独特だと思う部分はありますか?

ミコラス:これは海外のアーティストだったら絶対に感じるはずの喜びだと思うんですけれど、整理整頓されていて、礼儀正しく、空気を読む力がある。一人ひとりが時間と空間を大切にしてくれます。だから日本で悪い経験をしたことは一度もありません。また来たいと思える理由の一つです。


――今後は日本のファンとはどういう関係を結びたいですか?

ミコラス:もっと日本の滞在期間を長くしないといけないと思います。そうすれば、もっと日本のファンとの濃密な関係を結べそうな気がするので。また、地元でも大規模なホールなどで公演することもあれば、コアなファンに向けてライブハウスなどでもパフォーマンスしている。その両方をすることが大事かなって。実際、デビュー当初からずっと支持してくれている人たちも多くて、彼らとはすでにチームの一員みたいな親密な関係になっています。だから、たくさんの人と深く繋がる機会をもっと多く設けたい。もし、自分が誰かのファンだったら、アーティストに何をしてほしいか? それを考えて活動の幅を広げたいと思います。


――今後のビジョンがあったら教えてください。

ミコラス:あんまり先のことは考えていません。時代のムードや求められるものによって変わってしまうから。でも、ツアーに関してはやり続けたい。実は2026年には大掛かりなツアーを計画していて、日本にも再訪したいと思っています。間隔を空けずに、みなさんと繋がることができる活動をし続けることが目標といえますね。


――現在、日本には海外からの旅行者が殺到していますが、逆に日本人がチェコへ行った場合、おすすめの場所は?

ミコラス:チェコは本当に美しい国です。みなさん、プラハの街並みを見て満足しているようですが、それ以外にも素晴らしい場所はたくさん。特におすすめはクルムロフ(Krumlov)と、映画『ロード・オブ・ザ・リング』のリヴェンデルを思わせる幻想的な場所、カルロヴィ・ヴァリ。どちらもとても中世的で、SNS映えすること確実なので、ぜひ!


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