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<インタビュー>JAKOPS(SIMON)が見つめるXGの次なるフェーズとは――1stフルアルバムは“世界一の名盤”になる

Interview & Text:照沼健太
Photo:森好弘
XGがついに1stフルアルバムのリリースを発表した。その先行曲として届けられた「GALA」は、彼女たちが次のフェーズに進んだことを示す大傑作だ。ハウスを基盤に、デトロイト・テクノを思わせるスペイシーなビートに、XGらしい鋭くもしなやかなラップ/ボーカルが融合する。そして何より、楽曲展開そのものが新しい。J-POP的なAメロ/Bメロ/サビの定型でもなければ、洋楽のヴァース/コーラスともまた異なる、“次の次元”を提示する一曲と言えるだろう。
デビューから3年で大規模なワールドツアー、コーチェラ出演、東京ドーム公演まで駆け上がったXG。その“現在地”について、アルバムや「GALA」の制作背景も含め、エグゼクティブ・プロデューサーのJAKOPS(SIMON)に話を聞いた。なお、取材はオープンしたばかりの新拠点「XGALX Tokyo HQ」で行われた。
7人の成長は
本当に怖いほど止まらない
――前シングル「MILLION PLACES」は、そのMVも含め、まるで“エンドロール”のように感じられました。SIMONさんは、いまのXGをどう捉えていますか?
SIMON:おっしゃる通り、ワンシーズンの区切りを取った感覚があります。約5年をかけて準備をしてデビューし、この3年で多様な曲に挑戦し、1年以上のワールドツアー、コーチェラ、そして東京ドームまで行けた。チームもXGも、スタッフも自分も大きく成長できました。「MILLION PLACES」はツアーを振り返りながら、まずはファンの皆さんへの感謝を込めた“エンドロール”的な曲です。ここで一区切りして、ここからが本当の出発点=1stフルアルバムだと思っています。XGというチームが積み上げてきたものを一度しっかり抱きしめて、次の章に入る。そんな気持ちです。
XG - MILLION PLACES (Official Music Video)
――通常は“アルバムリリース→ツアー”が王道ですが、XGは逆でした。それは意図的だったのでしょうか?
SIMON:厳密な順序は決めていませんでした。ツアー中にも新曲を作って出し、セットリストを変え、プロモーションも止めない。正直ツアーだけでも大変でしたが、120%出す覚悟でやり切りました。その後、コーチェラと東京ドームを一区切りとして、すぐにフルアルバム制作へ。フルアルバムは“一生記憶に残る” 作品にしたいと思っており、XGALXとしても”使命”のあるアルバムだと考えていました。正解がない中でも本質を大事にし、初心を忘れず、期待を良い意味で裏切るものにしたい――その意識で走っています。
――デビューからわずかな期間でワールドツアーを成功させたのは驚異的です。世界での手応えは、想定通りでしたか?
SIMON:正直、狙った通りです。メンバーが決まる前から「グローバル基準でデビューして、ワールドツアーをして、コーチェラやドームに立つ」と言ってきました。実現した今は「OK、行くしかない。宇宙へ行こう」という気持ちです。言葉にする、思う、共有する。それを続けてきた結果、果たせたことが多い。だからこそ、言葉の重みや大切さを感じていますし、これからもちゃんと言葉にしていきたいと思います。

――コーチェラではバンドセットも含めて非常に印象的なステージを残しました。どんな意識で臨んだのですか?
SIMON:コーチェラは歴史的に“ロックのフェス”。そこでXGのダンスとボーカルの魅力を最大化するため、編曲段階でバンドの質感を作りつつ、現場では生演奏を前面に出し過ぎない判断をしました。巨大なステージでの見え方・聴こえ方を最優先に、映像演出と、デビュー前からコレオを一緒に創り上げてきたダンサーチームと一体で“ショー”を組み上げています。7人の動きと声が最も解像度高く届くこと、それを最優先にしました。
――コーチェラは2週開催ですが、1週目と2週目の間には音と構成の見直しもあったそうですね。
SIMON:はい。徹底的にモニタリングしました。会場とストリーミングでは“正解”が違うので、1週目の手応えや映像、XGメンバーからのコメントも踏まえ、2週目に向けて大胆に調整しました。合間にシアトル公演があり、休みはほぼゼロ。睡眠も削られるほどのスケジュールでしたが、「ここでさらにトライしないと一生後悔する」と、セットリストも少し変えて臨みました。結果、満足できるステージに到達できたし、涙なしでは見られないビハインドもたくさんありました。東京ドームではその経験が確実に活かせていた。メンバーは軽い怪我や痛みを抱える場面もありましたが、弱みを見せずベストを尽くしました。最高状態をキープすること。それが一番プロフェッショナルだと改めて感じました。
――そうしてアルバム制作に入ったとのことですが、どのように動き始めたのでしょう?
SIMON:ドームが終わるまでは話す余裕もないほどパツパツでした。終演後に短い区切りをつけると、自然と「次はアルバムだよね」という共通認識に。6月から本格始動し、1日も休まずレコーディングと曲作り。ツアー中に作った1〜2曲を除けば、約10曲を1か月強で一気に仕上げました。現在はミックスとマスタリングの段階で、まだ気は抜けません。「世界一の名盤を残そう」と言い続けてきたので、言ったことを現実にしていくフェーズです。7人の成長は本当に怖いほど止まらない。今日のインタビューでは「彼女たちを自慢したい」と思ってここに来ました(笑)。
――ぜひお願いします(笑)。
SIMON:この3年は、僕とXGの7人の関係性が、“育てる/育てられる”から“プロフェッショナルなパートナー”へと変わっていった時間でもあります。舞台裏でのコンディショニング、自己管理、まとめる力、そして何より毎回ベストを“維持し続ける”こと。これは一度のピークを作るよりもずっと難しいけれど、XGはそこに真正面から向き合っている。それがパフォーマンスの芯になっていると感じます。本当に頼もしい7人です。

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XGの“新しい次元”をはっきり示せた

――現在のXGを表すアルバムが期待されますが、主に制作はどこで行なったのでしょうか?
SIMON:日本と韓国、両方に拠点があるので行き来しながら進めました。今回は、韓国で毎日のように集中制作した期間が長いです。過去にはロサンゼルスや東京でのキャンプセッションもあり、そこでのストックも活きています。方向性は走りながら都度議論して微調整しました。最初に新曲を皆で共有したのは6月に行った私の結婚式でした。私にとって家族のようなXGのメンバーとXGALXのコアスタッフが参加してくれた結婚式の場で「GALA」を流して、「このモードでアルバムを作ろう」と気持ちを合わせ、そこから加速しました。
――リード曲「GALA」については、どんな狙いと手応えがありますか?
SIMON:ツアーでのヨーロッパ滞在やパリコレで音楽を担当した経験で受けた電子音楽のインスピレーションが大きいです。ハウスを基盤に、実験的な展開、ラップ/ボーカルのXGが得意とするプロダクションを重ね、固定観念を壊して刷新しました。XGの“新しい次元”をはっきり示せたという自信があります。
XG - GALA (Official Music Video)
――「GALA」に限らず、XGは常に“自分たちがかっこいいと思う音楽”をやってきました。そのことで日本でのセールスに不安はなかったですか?
SIMON:受け入れられない可能性も含めて覚悟は最初からありました。批判も歓迎です。それより“良い音楽を早く届けたい”というワクワクが大きかった。売れる/バズる不安より、まず作品を前に出すことを優先しました。
――XGのサウンドにはメジャーなポップとアンダーグラウンドの感覚が同居しています。むしろマドンナの「ヴォーグ」以降、両者の関係には常に協力と緊張が同居してきた部分もあると思います。XGを通して、その関係をどう考えていますか?
SIMON:ジャンルや主流/非主流の線引きはあまり意識しません。“いい音楽”であることが基準ですね。既存の主流を追いかけるより、新しい感覚を主流に差し込む側でいたい。クラブ、ロック、J-POP、ラテン、K-POP、ヒップホップ、ジャズ、クラシック、民族音楽……良い要素は広く取り入れます。たとえば大友克洋のアニメ『AKIRA』の音楽。多くの人はネオ東京の夜景やバイクの疾走感など“日本的な未来像”を感じ取ると思います。でも実際にはバリの民族楽器が使われていて、別の文化が溶け込んでいる。見た目や印象はすごく日本的なのに、下地には異文化の要素がある。そういうハイブリッドな感覚が好きなんです。

――この場所「XGALX Tokyo HQ」についても教えてください。
SIMON:ここはオープンしたばかりの東京の新拠点です。単なるオフィス空間ではなく、アーティストとスタッフが密に連携し、創造的なアイデアを円滑に共有できるように設計されています。各フロアやスペースは、コミュニケーションやコラボレーションのしやすさを中心に考えて構成しました。また、育成期に使っていたソファや照明、ロッカーも再配置して、原点のエッセンスを今に接続しています。スタジオでは広さと天井高を活かしてバドミントンコートも設置し、韓国時代にメンバーやスタッフとバドミントンをしていた文化も屋内で再現しました(笑)。体を動かすことは健康にもパフォーマンスにも良いし、チームが一つになりますからね。
立ち上げまで物件交渉と工事で約3年。使い始めてまだ2~3か月ですが、自主練、録音、振付確認、ヘアメイクまで同じフロアで回せて、すごくいいです。アーティストにとってベストな環境であり、スタッフも含めてチームが1つになれる、そんな場所を目指して作りましたし、そのような場所にしていきたいです。
――最後の質問です。XG以降、J-POPにおけるガールズグループの基準が引き上げられたようにも見えます。サイモンさんとして、シーン全体の変化は感じますか?
SIMON:以前よりも多様なジャンルが見えるようになっている印象です。これまで「なぜ出てこないのだろう」と思っていた方向性のチームや動きが確実に増えている実感はあります。それは単純に嬉しいし、だからこそ自分たちの強さをもっと明確に見せていきたい。それが次の章へ進むモチベーションになっています。

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