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<インタビュー>鞘師里保が語るソロ活動の3年間、“ダンス封印”のビルボードライブ公演は新たな挑戦

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Interview:Takuto Ueda

 ソロアーティストとしてますます活躍の場を広げている鞘師里保が、大阪と横浜のビルボードライブに初登場する。

 幼少期はアクターズスクール広島にてダンスを学び、2011年に当時12歳でモーニング娘。9期メンバーとしてデビューした鞘師。2015年12月31日にグループ卒業後、米ニューヨークへのダンス留学を経て、満を持して2020年9月から芸能活動を再開した。現在はドラマや舞台など幅広く活動しながら、アーティストとしてはこれまでに計3枚のEPを発表している。

 そんな活動再開後におけるソロアーティストとしての3年間の歩み、幼少期から向き合い続けてきたダンス・ミュージックへの想い、そして新たな挑戦となるビルボードライブ公演の手応えなど、本人に話を訊いた。

ソロアーティストとしての3年間

――2020年9月に芸能活動を再開してからの3年間は、鞘師さんにとってどんな期間になりましたか?

鞘師:グループを卒業するまでは、誰かにスケジュールを決めてもらって、いろんな仕事にがむしゃらについていくスタンスだったぶん、休養中の5年間は自分で決めて、自分で行動していく期間でした。それを経てのソロの活動では、「あ、こういうことが好きなんだ」ということが少しずつ分かってきたからこそ、その枝を一緒に仕事してくださっている人たちに広げてもらっているような感覚で。こういう世界なので、面白い考え方や技術を持っている人がたくさんいて、そういう方々とお話しすることで新しい自分に気づかせてもらう機会もあったり。それを楽しみながら進んできた3年間ですね。

――あくまで舵は自分で握りつつ、いろんな人を巻き込みながら鞘師里保という樹木を育てていくような感じでしょうか。

鞘師:そうですね。すごく思うのは、私がやりたいこと、届けたいことを素敵なかたちで実現させるための手段をたくさんの方が知っているということで。ただ真っすぐやっても届かないことはアイデアを捻らなきゃいけないので、そこに対していろんな方の力を借りている感じです。





――そこで発見した新しい自分というのは?

鞘師:私は発言することや気持ちを言葉にすることがすごく苦手なタイプだと思っていたり、けっこう感情が少なめなタイプだと思っていたけど、周りの人は私の話や人生観を聞いて面白いと言ってくださったりして。今までの経験を経て、意外と自分の中でも考えをまとめながら生きられているのかなって。そういうのが楽曲の世界観や歌詞にも反映できるようになっている気がします。

――クリエイティビティにも良い影響が出ている。

鞘師:はい。私の普段の会話の中で出てくるフレーズを拾い上げて楽曲のタイトルが決まったりすることもあって。あとは、最新EPの『UNISON』はダンス・ミュージックをやっていて、自分はそういう音楽が好きだけど、もしかしたら違う音楽で頑張ったほうがいいのかなと思ったときもあったんですよ。もうちょっとメロディアスというか、王道のJ-POPみたいな。一方的にダンス・ミュージックに片思いしてるけど、私はダンス・ミュージックに好かれていないかもなって。でも、とある方が「絶対にダンス・ミュージックをやったほうがいい」と言ってくれて、「肯定してもらえるんだ」みたいな嬉しさがあったんです。私自身は色んなジャンルの音楽が好きだけど、やっぱりダンスには憧れの気持ちが大きいので、「私なんて…」って考えちゃうところがある。でも、「そんなことないよ」と言ってもらえるのが本当にありがたいなと思います。




鞘師里保 - DOOM PA (Official Music Video)


――自分だけではどうしてもネガティブな方向に迷い込んでしまう?

鞘師:「自分のことを客観視できない大人になっていたらどうしよう」みたいな焦りがあって、周りの意見とかすごく気にしちゃうんです。自分がやりたいことや思っていることが、ただの自分のわがままなんじゃないか、それを無理やり周りの人に実現してもらおうとしてるんじゃないか、という回りくどい考え方をしてしまう。それはたぶん、12歳のときから人前に立つお仕事をさせてもらって、昔からいろんな大人の方の話を聞いてきたから。10代の頃からいろんな価値観や考え方に触れてきた機会はメリットもデメリットもあって、そのデメリットの部分がちょっと出てきてしまったかなって。

――幼少期からずっと向き合ってきたダンス・ミュージックだからこそ、精神的なスランプの迷路に迷い込んでしまった?

鞘師:そうですね。最終的には自分のやりたいことを絶対に貫き通してきたタイプではあるけど、そこにたどり着くまでにすごく時間がかかっちゃう。それでも「一緒にやろう」と言ってくれる人がいたから今にたどり着けているわけで。最近は楽曲制作も進めているけど、新しく面白い話ができていたり、ファンの皆さんも含めて世の中の人たちに私の音楽、ライブの個性をどう伝えていくか、今はそこを構築している感じです。

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挑戦のビルボードライブ公演

――ビルボードライブ公演についても聞かせてください。記事が出るのは大阪公演のあとですが、横浜公演にいらっしゃるお客様にも配慮してネタバレにならない範囲で伺いたいのですが、ビルボードライブは約300人キャパシティの会場です。ずばりダンスは?

鞘師:それがやらないんですよ(笑)。封印です、ダンス。

――普段と違って歌一本で臨むライブ。どんな仕上がりになりそうですか?

鞘師:前回のツアーでもがっつりダンスしたので、ビルボードライブ公演のお話をいただいたときは「大丈夫かな」と正直ちょっと不安でした。そもそもバンドセットでライブするのにもけっこうドキってするのに、ましてやアーティストにとって特別な会場でもあるビルボードライブなので。ただ、いろんな表現のやり方でも楽しんでもらえるということが分かってきた時期でもあったので、新しい自分でステージに立てるのがすごく楽しみになっています。自分の曲の中でも楽器が際立つタイプというか、いわゆるバンド映えする曲もあるけど、今回は最新EPの中からダンス・ミュージックの印象が強かった曲も歌うんですよ。




【No editing】鞘師里保 - WE THE ONES / RIHO SAYASHI 2nd LIVE TOUR 2022 UNISON (Live Clip)【撮って出し】


――3rd EP『UNISON』は過去二作と比べても、とりわけダンス・ミュージック色を強く打ち出した作品でした。

鞘師:バンマスの村田シゲさんはじめとして、いろんな方が一緒に考えてくださったセットリストです。アレンジに関しても、自分から提案した部分もあれば、意見をいただいた部分もあって。バンドなのでライブの柔軟性がすごいじゃないですか。「ここはちょっと8小節伸ばそうか」みたいな。そういうライブ感も楽しみつつ。

――歌唱のアプローチも変わってきそうです。

鞘師:例えば、音源ではけっこうストリングスが効いている曲があるんですけど、今回はストリングスがあるわけではないので、もうちょっとアットホームな雰囲気が出るように柔らかく、優しく歌い上げるようなイメージ。せっかく客席との距離も近いので、お客さんに語りかけるような感じで歌えるアレンジを考えていただきました。





――おっしゃる通り、ステージと客席の物理的な距離が近い会場なので、オーディエンスのリアクションも楽しみですね。

鞘師:そうですね。お食事やお酒を楽しみながら見ていただくライブも初めてなので、そう思うと大人になったなって。お客さんがどういうふうに受け取ってくれるかも楽しみだし、たぶん私も客席から影響を受けて、どう歌うかを生で考えながらやっていくと思うので、お互いに新しい時間を楽しめたらいいなと思います。

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火種を燃やし続けたい

――先ほど楽曲制作も進行中とのことでしたが、今の鞘師さんの音楽的モードについてはいかがですか?

鞘師:基本的に私はライブをしたいと思っているので、ライブがどうなるから楽曲がどうなる、みたいな道順で考えていて。それこそ『UNISON』で言うと、ダンスをがっつり見せられるようなライブにしたいと思ってたどり着いたかたちだったんですけど、今回は一本のライブの中でいろんなセクションが作れるといいなって。私自身は昔からダンスをやってきて、ファンの皆さんからも「鞘師といえばダンス」と言ってもらえたりするので、ただただそれを信じてやってきたところもあって。でも、それこそ今はビルボードライブが進行中ということもあって「いろいろできることがあるんだな」という面白さを感じてます。

――良い刺激になっていますか?

鞘師:正直、そうやってワクワクしないと長く続けられないと思います。私はけっこう保守的だけど、「冒険したい」という火種もずっとあって。その火種をちゃんと燃やし続けられるような環境をどんどん作っていこうと思っています。秋にはツアーも予定しているので、そこにも反映していけるように楽曲制作を進めていますね。





――ちょっとカジュアルな質問ですが、個人的に鞘師さんが最近よく聴いている音楽は?

鞘師:ずっと好きなのはmillennium paradeです。曲の展開が私たちの知っているような、一般的な構成じゃなかったりするけど、それが違和感なく成立している感覚というか。例えば映画でも、分かりやすく感動的で泣ける作品ではないけどめっちゃ沁みる、みたいな作品ってあるじゃないですか。そういうのがすごく好きで。それにmillennium paradeはアートワークやライブの世界観も含めて、全部が作品になっていると思うんですよね。

――けっこうピンポイントに好きな音楽を聴き続けるタイプ?

鞘師:でも、けっこうランダムで聴くことが多いですね。昔はビヨンセとかデスティニーズ・チャイルドとかブリトニー・スピアーズとか、わりと洋楽に寄っていたけど、途中K-POPにはまった時期もありつつ、最近は本当に幅広く聴くようになりました。ラジオで聴いたり、サブスクでおすすめされた曲に“いいね”をつけたり。あまり偏りがなくなってきたかもしれないです。

――では最後にあらためて、ビルボードライブ公演に向けてメッセージをいただければと思います。

鞘師:私もすごくドキドキしているんですけど、場の空気とかお食事やお酒が潤滑油となって、きっとリラックスしていただけるライブになるのかなと思っています。私の曲を普段から聴いてくれている方、ライブに来てくれている方には、新しい楽しみ方をご提案できると思いますし、それ以外の方ともコミュニケーションがきちんととれる会場だと思うので、とにかく「いい週末だったな」と思ってもらえるような時間を作れたらいいなと思います。

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鞘師里保「UNISON」

UNISON

2022/11/16 RELEASE
SAVR-6 ¥ 2,500(税込)

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Disc01
  1. 01.MERGE
  2. 02.WE THE ONES
  3. 03.Stupid
  4. 04.Melancholic Blvd.
  5. 05.DOOM PA

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