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“ネオレトロ”が新しい!? K-POP第4世代ガールズグループの注目株CLASS:y



コラム

Text:岡本貴之

 70年代~80年代のスパイ映画やTVアニメを思わせるスリリングなイントロから始まる、スケールの大きいサウンドと最先端のダンストラック、どこか歌謡曲の懐かしさを感じさせるメロディ。レトロなエッセンスも感じさせるK-POPガールズグループの新曲「TARGET」がリリースされた。


 “ネオレトロ・ガールクラッシュ”をコンセプトに制作されたというこの楽曲を歌っているのは、新人K-POPガールズグループのCLASS:y(クラッシー)だ。CLASS:yは、韓国MBC史上最大級のグローバル・ガールズ・オーディション番組『放課後のときめき』を勝ち抜いた韓国出身の7人で結成され、2022年5月にミニ・アルバム『CLASS IS OVER』で韓国デビュー。同年6月にシングル『SHUT DOWN -JP Ver.-』で日本デビューを果たした。メンバーは、最年長ミョン・ヒョンソ、メインボーカルを務めるユン・チェウォンを中心に、ホン・ヘジュ、キム・リウォン、ウォン・ジミン、パク・ボウン、キム・ソンユの7人。2001年~2008年生まれで平均年齢は17歳というフレッシュなグループだ。

 2017年以降、CLASS:y 同様に2000年代生まれのメンバーで構成された、K-POPガールズグループ「第4世代」の活躍が目覚ましい。2022年K-POPの授賞式で新人賞を総なめにしたNewJeans、『第73回NHK紅白歌合戦』に出場したLE SSERAFIMとIVE、先日初の単独ワールドツアーとして日本公演を成功させたITZY、5月から日本初アリーナツアーを開催するKep1er、aespa、XG等々…、その勢いはとどまることを知らない。そんな中、CLASS:yも「TARGET」のリリースに合わせて、2月23日に初の単独来日公演【CLASS:y JAPAN FAN CONCERT 2023 STEAL YOUR HEART】を東京・渋谷ストリームホールで開催して、日本のK-POPファンからも注目を集めている。


Photo by 上溝恭香

 そんなCLASS:yが初の日本オリジナル曲としてリリースした「TARGET」は、ノスタルジーを喚起するレトロな音像と最先端のトラックが見事に融合した楽曲。同じ第4世代のグループの楽曲と一線を画す、これまでのK-POPにはないユーモアと中毒性、一度聴いたら耳に残るインパクトがある。日本語と英語が混在した歌詞も昭和歌謡曲的で、Bメロで歌われる歌詞<You can’t imagine what I’ll do>のスタッカートの効いたメロディは、70年代に活躍した日本の女性レジェンド・シンガーの大ヒット曲を連想させる。

 さらに注目したいのが、ミュージック・ビデオだ。映画『007』シリーズのオープニングをオマージュした映像でスリリングに曲のクライマックスへと誘うと、サビではユーロビートっぽいリズムトラックが、不思議な高揚感を醸し出している。7人が踊る屋上のセットも、良い意味でレトロチープで味わい深い。

 2番では最先端のダークなヒップホップ・トラックに乗せてラップを披露。カッコよくキメかと思えば、それまでの黒いスパイ風衣装だからガラリとイメージが違うカラフルなファッションで登場して、キュートに歌い踊る姿も。サビの振り付けも「忍者ポーズ」と頭に両手で耳を形作った「猫ダンス」で、大人っぽさと愛らしさのギャップを一度に見せていて、7人の魅力を色んな角度から伝えてくれる。


 さらに間奏では、バブル期に一世を風靡した“パラパラ”のテンションの高いビートがいきなり炸裂。アゲアゲで踊りながら、振り付けではキックやパンチを見せている。MVで途中に出てくるネット黎明期を思わせる壁紙風の背景、「GET YOU」などのレトロなフォントのロゴなど、ディティールの細かさは何度観ても、聴いても発見があるはず。空に浮かんだ月の異様な近さなどは、「もしかしてここは地球じゃないのかも?」と、根本的な舞台設定まで推察してしまった。それぐらい繰り返し楽しめる楽曲、MVになっている。

 10代、20代にとっては新鮮で、リアルタイムで昭和カルチャーの雰囲気を知る世代にとっては懐かしいであろう「TARGET」。メロディ、歌詞、振り付け、そして映像も、違う世代間でその面白さを共有できそうなところも楽しい。他グループとは違う個性的な楽曲で、第4世代の中から頭角を現してきたCLASS:y。独特なアプローチで、今後ますます幅広い音楽ファンに知られる存在になっていきそうだ。

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