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<インタビュー>マシュメロが語る、仲間と作り上げた初のグラミー・ノミネート作『ショックウェイブ』

インタビュー

 2021年11月24日の朝、多くの人がマシュメロとして知るプロデューサーのクリス・コムストックが起床してスマホを手にすると、【グラミー賞】ノミネートを祝福するメッセージが50件ほど届いていることに気づいたが、すぐにまた眠りに戻ってしまった。「そしたらノミネートされた夢を見たんだ」と彼は米ビルボードに語り、「ものすごく混乱した状態で起きて、“すごくリアル(な夢)だった”と思った。で、スマホを見たら、自分が夢を見ているのではなく、本当だということに気づいた」と続けた。

 このまさに夢が実現した瞬間は、マシュメロによる2021年のアルバム『ショックウェイブ』が、2022年の【グラミー賞】で<最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム>にノミネートされたことによるものだ。現時点で3作が発表されている『ジョイタイム』シリーズではない初のアルバムは、今年6月にサプライズ・リリースされ、トラップ、ダブステップ、テックハウスなどハードなエレクトロニック・ミュージックやマシュメロの浮遊感溢れる普段のレパートリーにはないサウンドを網羅している。

 『ショックウェイブ』には、カーネージ、DJスリンク、トロイボイ、エプティック、ニッティ・グリッティ、サブトロニクス、ピーカブーなど、【グラミー賞】で存在感を発揮できていないプロデューサーたちが多数参加している。(ちなみにアルバム収録曲「Bad Bitches」には、今年の【グラミー賞】で<最優秀新人賞>に輝いたスーパースター、メーガン・ザ・スタリオンもフィーチャーされている。米ビルボードは同曲を今年お気に入りのダンス・ソングの一つに選出している)

 現在『ジョイタイム IV』を制作中のマシュメロにとって、自身初のノミネーションが友人たちと協力して得たものだということは、その経験をより喜ばしいものにしているようだ。

ーー今回ノミネートされると予想していましたか?そしてなぜこのプロジェクトでノミネートされたのだと思いますか?

マシュメロ:当たり前のことをするのであれば、人気者にアルバムへ参加してもらう、世界的なビッグなアーティストに。『ショックウェイブ』には、メーガン・ザ・スタリオンがフィーチャーされているけれど、(このアルバムでは)自分がファンのアーティストに声をかけた。例えばDJスリンク。彼はジャージー・クラブ界の伝説で、マシュメロとして音楽を作る上で、最もインスピレーションを受けたジャンルなんだ。彼は、めちゃくちゃビッグなアーティストではないけれど、本当に才能があってクールなんだ。

 このアルバムではそれを心がけた。そこに気づいてもらえたら嬉しい。なぜなら、ビッグ・アーティストと仕事するのは自分にとってヒネリのないことで、それは僕のスタイルじゃない。(有名アーティストとコラボを)してはいるけれど、するとなったら、それは相手のアーティストを敬愛していて、いい関係を築けているからだ。ただ単にその人が有名だからというのは、何かをする理由にはならない。

ーーあなたが言ったように、大スターであるメーガン・ザ・スタリオンも参加していますが、他にもトロイボイ、DJスリンク、トロイボイ、カーネージなど、エレクトロニック・ミュージック・シーンで長年活躍したきたものの、これまで【グラミー賞】に一度もノミネートされていないアーティストもいます。

マシュメロ:ノミネーションが発表された当日、アルバムに参加してくれた全員に“おい起きろ、【グラミー賞】にノミネートされたぞ”ってテキスト・メッセージを送った。みんなとFaceTimeもしたよ。一緒に仕事をした全員のことが、とにかく大好きなんだ。一人残らずクールで、すごく才能がある。それが元々仕事をした理由だしね。曲を一緒に作ると、相手と自然に関係性が生まれるものなんだ。

 多くのミュージシャンにとって、音楽はすべてで、それしかない。わかるかな?僕たちは一つのことに何もかもを賭けている。なので、誰かとコラボすると、その人のアーティストとしてのすべてと自分のアーティストとしてのすべてが融合される。お互い多くの時間をつぎ込んで、曲を作り上げていく。だからアルバムに参加しているアーティスト全員と強い絆で繋がっているんだ。

ーーこれは、あなたのコラボレーター全員にとってのノミネーションでもあるということでしょうか?

マシュメロ:もちろん。選んだアーティストたちは、例えシーンに登場したばかりであっても、25年間活動を続けているのであっても、“この人は最高だ”という自分の個人的な感覚に基づいている。例えばエプティックとは、ジューシー・Jとの曲でコラボしている。(ジューシー・Jがメンバーの)スリー・6・マフィアは、僕が音楽業界に入りたいと思った大きなきっかけの一つだった。エプティックは、おそらく僕より年下だと思うけど、自分がプロデュースの仕方を学んでいた頃からずっと聴いていた。彼のプロダクションのレベルは信じがたいし、フェスで最も人気のあるダブステップ・ナンバーの一つの生みの親でもある。だから、僕たち二人とも(ノミネーションを)すごく喜んでいる。



▲「HITTA (Feat. Juicy J) 」 / Marshmello x Eptic


ーー今回のノミネーションで、あなたが様々なアーティストを【グラミー賞】に“裏から”忍びこませたことが個人的に気に入っています。例えば、ピーカブー、エプティック、サブトロニクスなど、【グラミー賞】とあまり関連のなさそうなコラボレーターも今作により授賞式に参加できることになりました。

マシュメロ:本当に最高。僕が初めて行ったショーは、スクリレックスとDJスリンクとだったけれど、まさかその後一緒に曲を作って【グラミー賞】にノミネートされるなんて。クレイジーだよ。

ーー2020年に発表した『ジョイタイム III』にも多くのコラボレーターが参加していました、今作と『ショックウェイブ』の違いは?

マシュメロ:『ショックウェイブ』では、“色々なスタイルの音楽をやろう、それは自分がやりたいからで、好きだからだ”という感じだった。“誰にもノーとは言わせない”という具合に。完全に自分に委ねられていて、“自分がやりたいことを何でもやろう、ただそれだけ”という感じだったんだ。

ーー過去のアルバムでは、そういった自由を感じることができなかったのですか?

マシュメロ:これまでのアルバムで、それが感じられなかったというわけではない。過去の作品の時とは、異なる考え方をしていた。『ジョイタイム』と『ジョイタイム II』は、とてもシンプルで、過度でもなく少なすぎもしない、とてもなキャッチーな生身のマシュメロ・サウンドだった。それがこれらのアルバムの目標であって、すべて意図的なものだった。“これらのアルバムのプロダクションは、ああでもないこうでもない”というの見るけど、それはただのアンチだよね。なぜならすべて意図していたことだから。最初の2枚のアルバムに関しては、“あまり多くを必要としていない。ここで4日間もかけてスネアのサウンドを作る必要はない”と考えていたんだ。

 『ジョイタイム III』に関して話すと、昔よくポップ・パンクを聴いていて、ギタリストがいるバンドで歌っていたこともある。だから今作では、ポップ・パンクとEDMの融合をさらなる高みへ持っていきたかった。アルバムには、自分でボーカルを務めたポップ・パンクとEDMを融合した曲が多く収録されていて、直球なEDMナンバーもいくつかある。もちろんこれも意図的だった。

 『ショックウェイブ』のオープニング曲「Fairytale」は、完全にトラップだ。制作している時、“ジョイタイムや何かのようなサウンドぽくはないけど、自分が作りたいから作るんだ”と思っていた。今作はアルバムらしいアルバムになっていて、どちらかというと『ジョイタイム』シリーズはマシュメロのサウンドを称えるものなんだ。

 『ショックウェイブ』はかなりヘビーだよね。君が言ったように、トラップ、ダブステップ、テックハウスなど、一般的に【グラミー賞】では認識されていないサウンドを扱っている。ノミネートされるだけではなく、授賞式であまりで取り上げられていないサウンドで候補に挙がったということには、本当に驚かされた。自分はただ楽しんでいただけだった、わかるよね?時間に追われていたわけでもない。当然のごとくパンデミックの影響もあって、すぐにツアーに出たいとは思っていなかったし、それは他のアーティストも同じだった。おかげで一緒に仕事をしたアーティスト全員から最高のものを提供してもらえることができたと思う。このアルバムでは、全員がお互いから最高のものを引き出し合うことができたんだ。

 直球なアンセムが多いけれど、これもすべて意図的だ。あまり多くのことを深く考えずに、ただ楽しもうとした。これがノミネートされた作品になって、ずっと一緒に仕事がしたいと思っていたアーティストが多数参加しているのは、“マジで嬉しい”って感じなんだ。口下手なりに自分の感情を説明すると(笑)。



▲「Bad Bitches (Feat. Megan Thee Stallion) 」 / Marshmello x Nitti Gritti


ーー今回のプロジェクトにおいて、あなたとあなたのコラボレーターたちに時間の自由があったいうのは興味深いですね。実際にいつ頃制作に取り掛かっていたのですか?

マシュメロ:2020年の前半に、“オーケー、またアルバムを作ろう”と決めた。去年の前半、約6か月ぐらいかけて取り掛かった。FaceTimeや電話を死ぬほどしたし、クレイジーな奴みたいにシンセのリズムを電話越しで歌っていたよ。

ーーそれはいつもとプロセスと異なるのでしょうか?

マシュメロ:大体のプロデューサーは、自分なりのバイブスを持っている。みんな自宅で過ごすのが好きだし、朝コーヒーを飲むのも好きだ。細かいルーチンがある。これはプロデューサーが室内で多くの時間を過ごすから。プロデュースを学ぶのは、多く場合どこかの地下室で、引っ越しても自分が最も心地いいと感じる特定の空間がある。みんながそれぞれ快適だと感じる場所にいる期間に作業ができたことは、これまでとは違う何かを生み出したと思うね。

ーー今回のノミネーションを受けて、シーンにおける立ち位置の面で心持ちが変わった部分はありますか?

マシュメロ:ノー、全く心持ちは変わらない。とにかくありがたく思っていて、感謝している。すごく嬉しいけど、それによって自分の心持ちが影響を受けることはない。まぁ、これからは【グラミー賞】にノミネートされたって言えるけど、自分がノミネートされて、一緒にコラボしたアーティスト全員がノミネートされたことに、ただただ感謝している。それが自分にとって一番喜ばしいことなんだ。

ーーもし受賞したら、スピーチをするためにヘルメットを取りますか?

マシュメロ:スピーチはするよ。ヘルメットは取らないと思うけど。

Q&A by Katie Bain / Billboard.com掲載 / Photo: Getty Images Entertainment

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