――11月5日に配信リリースされた新曲「ひとりじゃないから」は、SABU監督最新作『DANCING MARYダンシング・マリー』の主題歌として書き下ろされたものだそうですね。

Crystal Kay：実はこの曲、コロナ前に作ったものだったのですが、映画のプロデューサーに聴いてもらったところ気に入ってくださって。「ぜひ使いたい」とのことだったので、歌詞などブラッシュアップして仕上げました。もともとの歌詞も、大切な人のことを気にかけているという内容で、まさに今の状況に響くメッセージソングになったと思います。

　最初はホラー映画と聴いていたのでびっくりしたんですよ。私の曲は明るいし大丈夫なのかな……？　と少し心配だったのですが、エンドロールで流れているのを試写で確かめた時に、すごくしっくりきているなと思いました。主人公のEXILE NAOTOさんや、霊視が出来る女子高生役の山田愛奈さん、幽霊になって登場する人たち、みんなそれぞれ孤独を抱えているけど、実は一人じゃない。自分を愛してくれている、あるいは自分が心から守りたいと思っている存在に気づき、それぞれが人生の意味を見つけていくというストーリーは歌詞世界ともリンクするし、きっと観てくださった人にとっても何かしらの「気づき」に繋がったらいいなと。

――個人的には＜その涙は 孤独じゃないよ 見守ってるね＞という歌詞が心に響きました。コロナでなかなか会えなくなってしまった大切な人たちに、「見守ってるよ」「あなたのことを考えているよ」という気持ちをCrystal Kayさんは、どのように伝えていますか？

Crystal Kay：普通に電話やメールを使って「あなたのことを思っているよ」と伝えるだけでも、きっと大きなエネルギーになると思う。手紙も素敵ですよね。今の時代、あえて手書きのテキストを送ることで気持ちが伝わりやすくなりますよね。昔の人と比べたら、気持ちを伝える手段はたくさんあるから、逆にエクスキューズできない状況じゃないかな（笑）。

――個人的には、「自分の思いを伝えたら、相手が負担に感じてしまうのではないか？」とかつい考えてしまうんですよね。

Crystal Kay：それでも私は、ふと誰かのことを思い出したときには気軽にメッセージするのがいいと思うし、そこにはきっと意味があると思う。「あの人、何してるんだろう？」「元気かな？」と思った時って「虫の知らせ」じゃないけど、向こうもこちらのことを考えていたり、もしかしたら何かあったりしたのかもしれない。コロナになって、会えないまま亡くなってしまったり、お見舞いにもお葬式にもいけなかったりしたことがたくさんあったと思うんです。後になってから「伝えておけば良かった」「あのとき一瞬でも声をかければ良かった」みたいなことが、普段よりも起きている気がします。

ファンに感謝の気持ちを伝えたい
みなさんの日々の力に少しでもなれたら

――そういえば去年、シンガーソングライターのUKICOさんからの発案で、すみれさん、TIGARAHと共にメンタルヘルスをサポートするプロジェクト『All FOUR ONE PROJECT』を立ち上げましたよね。

Crystal Kay：そうなんです。コロナ禍で、20代から40代女性の自殺が増えている悲しい現状があることを知って。心に抱えているものがあっても誰にも話せない人って多いんじゃないかと思ったんです。というのも、日本って「メンタルヘルスケア」そのものがタブーとされているというか、まだちょっと閉鎖的な気がするんです。日本人のメンタリティとして、「誰かに迷惑をかけちゃいけない」と思ってギリギリまで頑張ってしまうところがある気がしませんか。

――確かにそうですね。

Crystal Kay：今この瞬間にも生きづらさを抱えている人たち、メンタルヘルスに興味はあるけど、どうやって学んだらいいのか分からない人たち、そもそもメンタルヘルスそのものをよく知らない人たちが、安心して参加できる場があったらいいなと思い、メンタルヘルスのスペシャリストやヨガのトレーナーなど毎週ゲストを呼んで、みんなでいろいろ話しているんです。配信ライブなど実際にやってみると、思っていた以上にたくさんの人が参加し、自分のことを話してくださるんです。やはりこういう場を求めている人が、たくさんいるのだなということを改めて認識しました。「ひとりじゃない」というメッセージは、これからずっと広め続けていきたいです。

――日々の生活の中、つい心が沈みがちな時など誰しもあると思うのですが、そういうときに負の感情から抜け出す秘訣などありますか？

Crystal Kay：単純だけど、お散歩するのがやっぱり一番いいですね。ちょっとでもいいから外に出て太陽の光を浴びること。それも、出来るだけイヤホンやヘッドホンを外すことをお勧めします。私も音楽が好きだし移動中に聴くのが日常になっていますけど、そこをあえてせずに外の音に耳を澄ませてみると、いろんな発見がありますし耳や心にもいい効果がある気がします。

　あと、個人的にハマったのが陶芸。「土をいじる」ってメンタルヘルス障害を抑制する働きがあるみたいですよね。裸足で土を踏むのとかもストレス発散にいいみたいだから、公園とか行って裸足になったり砂をいじったりするだけでもいいんじゃないかな。

――さて、今年もBillboard Liveでは、クリスマスライブ【Crystal Xmas 2021 ～I SING～】が開催されます。最後に見どころなど教えてもらえますか？

Crystal Kay：実は、今年4月にカバー・アルバム『I SING』をリリースしてから、これが初めてのライブになるんです。ワンマン公演としても1年ぶりなので、お客さんと直接会えることが不思議ですらありますね（笑）。コロナ禍で支えてくれたファンのみなさんに感謝の気持ちを伝えたいし、私の歌がみなさんの日々の力に少しでもなれたらいいなと思っています。

　私、人のライブを観に行くのも大好きなんですよ。「勇気」をもらえるというか、心を「解放」してくれるのがライブという場所だと思うんです。歌っている姿、演奏する姿を見ていると心が揺さぶられて、自分の中の言葉にできない思いが浄化されるような気持ちになるというか……この間もサラ・オレインのコンサートを観に行ったら涙が止まらなくなって。表現をしている姿を見ているだけでもエネルギーをもらえるんですよね。

――「嬉しい」とか「悲しい」とか、そういう言葉が乗っかる前の「感情」そのものが、音楽の力で引き出される時ってありますよね。

Crystal Kay：まさにそんな感じです。生バンドと一緒に歌えるのも今から待ち遠しい。みなさん、楽しみにしていてくださいね。