2015/11/25 11:15
インディ・ポップというと、凝りに凝ったコード進行やサウンドといったイメージが湧いてしまう。でも本来“ポップ”という言葉に、そんなにひねくれたことを求めるのはおかしいんじゃないだろうか。なんてことをあらためて考えさせてくれるのが、韓国のポップス・グループ、秋休み(Autumn Vacation)。女性ヴォーカルのゲピと、ギタリストでありソングライターの男性バビという2人のユニットだ。2010年にアルバム『秋休み』を発表するや、あっという間に話題になり日本でもリリース。セカンド・アルバム『鮮明』に続く3作目が、この『3番目の季節』である。
彼らの良さは、本当に屈託のないポップ・センスだ。ピアノやアコースティック・ギターを中心としたシンプルなサウンドと、ノンビブラートのストレートな歌声で綴られるのは、親しみやすいメロディ・ライン。そこにはインディ・シーンにありがちなオルタナティヴな雰囲気は薄いし、かといって過剰な売れ線の味付けをしているわけでもない。ただナチュラルに淡々と歌を届けるというイメージが清々しい。この曇りのない心地よさは、ありそうでない感覚かもしれない。
確かに韓国語で歌っていることで、多少はワールドミュージック的なエキゾチシズムを感じることはできる。しかし、それ以上にシンプルな楽曲の力によって、言葉や国籍の壁は軽々と超えてしまう。パッと聴いただけでは、良質なJ–POPといってもいいくらい自然に耳に入り込んでくるのだ。逆に言えば、普遍的なメロディや歌声は世界基準とも言えるし、今後彼らが大きく世界に羽ばたく可能性も感じられる。その証拠が、ラストに収められた「時々狂おしいほど君を抱きしめたくなる時がある」という切ないミディアム・バラード。デビュー・アルバムに収められていた名曲を日本語ヴァージョンにすることで、ぐっと心の琴線を響かせてくれる。ほとばしるような情感豊かなポップスを聴きたいと思うなら、迷わず手に取ってほしい一枚だ。
Text: 栗本 斉
◎リリース情報
『3番目の季節』
秋休み
2015/11/25 RELEASE
2,484円(tax incl.)
関連記事
Album Review: 『オラシオン』田中倫明 繊細で愁いのあるビートで、パーカッションのイメージを覆す
Album Review: 『ボッサ・モンク』 現役タクシー運転手のタクシー・サウダージが奏でるこれまでに無かった日本語ボサノヴァ
Album Review: 『Jacaranda en Flor』タンゴのエッセンスを持ちながらもオリジナリティを持った楽器と楽器のダイアローグ
Album Review: 『三枝伸太郎 Orquesta de la Esperanza』 聴く者の心に寄り添う優しいサウンドで、日々感じるささやかな希望を演出
Album Review: 馬喰町バンド 民謡を現在進行形のロックへと昇華!斬新な“民族音楽”に酔う最新News
関連商品
アクセスランキング
1
【ビルボード 2025年 年間Top Lyricists】大森元貴が史上初となる3年連続1位 前年に続き5指標を制する(コメントあり)
2
Billboard JAPAN 2025年年間チャート発表、Mrs. GREEN APPLE/Snow Manが首位
3
【ビルボード 2025年 年間Download Albums】Mrs. GREEN APPLE『10』大差で1位、Number_i/サザンが続く
4
【ビルボード 2025年 年間Top Albums Sales】Snow Manがミリオンを2作叩き出し、1位&2位を独占(コメントあり)
5
【ビルボード 2025年 年間Hot Shot Songs】米津玄師「IRIS OUT」が首位、HANA 5曲入り
インタビュー・タイムマシン







注目の画像