2014/11/02 19:00
ポップ・ミュージック史に燦然と輝く名盤『Purple Rain』が30周年を迎えた今年、プリンスが米ワーナー・ブラザーズ・レコードから新作をリリースしたことは、とても感慨深いニュースだった。ただ古巣であるばかりでなく、一時は同レーベルの副社長まで務めたプリンスだが、その後は活動やリリースを巡って関係がこじれ、シンボル・マークを用いた改名騒動もそのことに端を発していた。
ここ数年のプリンスは、インターネット上の海賊行為などを理由にアルバムの制作/リリースに慎重な態度をとっており、この4年のアルバム・ブランク以前は『Planet Earth』(2007)が当初新聞の付録としてリリース、『Lotusflow3r/MPLSound/Elixer』(2009)は特定の大手スーパーとオフィシャル・ウェブサイトでの独占販売、『20Ten』(2010)もまた新聞・雑誌の付録CDと、リリース方法もかなり個性的なものになっていた。
それが今春、ワーナー・ブラザーズへの電撃復帰が報じられ、夏にはプリンス名義の『Art Official Age』、そしてガールズ・バンドであるサードアイガールとの共作『PLECTRUMELECTRUM』の同時リリースが正式にアナウンスされる、という急展開を迎えたわけだ。Billboard 200では『Art Official Age』が最高5位、『PLECTRUMELECTRUM』が最高8位を記録している。
さて、このニュー・アルバム2作の内容についてだが、『Art Official Age』は『Musicology』(2004)を継承するような、濃密なファンク・グルーヴでミネアポリス・サウンドの現在地を描き出し、オーガニックで柔らかなサウンドも巧みに配したプロダクション。凝ってはいるが風通しが良く、プリンスのバランス感覚が冴え渡ったアルバムだ。オープニングをノリノリで飾る「Art Official Cage」やエモーショナルな「Way Back Home」などには、帰還と再出発の思いが歌詞に込められ、レーベル復帰を果たしたプリンス自身の姿と重なる。
一方、サードアイガールとのコラボ作『PLECTRUMELECTRUM』はフレッシュなロック・アルバムといった趣で、ラウドかつヘヴィなギターが大振りなリフを刻みながら賑々しいコーラスを纏って突き進む。かと思えば、リード・ヴォーカルも任せて美しいギター・プレイをなびかせる美曲「WHITECAP」も収められていたりする。『Planet Earth』や『Lotusflow3r』で押し広げて来たプリンス流ロックのアプローチを、サードアイガールに委ねて思い切り良く鳴らしたといった手応えだ。
何よりもリスナーとしては、こうしてまたプリンスの才能がパッケージされた作品に触れられること、そしてプリンスがバトンを繋ぐ新たな才能に触れられることが嬉しい。世のすべての優れた才能が、それに相応しい、恵まれた環境に出会うことを願うばかりだ。
Text:小池宏和
◎リリース情報
プリンス『アート・オフィシャル・エイジ』
2014/10/01 RELEASE
WPCR-16127 2,457円(tax out.)
プリンス&サードアイガール 『プレクトラムエレクトラム』
2014/10/01 RELEASE
WPCR-16128 2,457円(tax out.)
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