2026/11/05 19:00
2026年10月30日、東京・TOYOTA ARENA TOKYOにてLEX初のアリーナ単独公演【LEX LIVE AT TOYOTA ARENA】が実施された。本稿では、同公演のライブレポートをお届けする。
個人的な話になるが、筆者が初めてLEXのライブを見たのは2022年5月、当時初開催となったヒップホップ・フェスティバル【POP YOURS】のステージだった。前年の「なんでも言っちゃって」や「WAVEBODY」(ともにJP THE WAVYの客演)のバイラルヒットの勢いも相まって、エネルギッシュなパフォーマンスで場を盛り上げてくれたのだが、最も印象的だったのは、当時リリースされたばかりの「大金持ちのあなたと貧乏な私」を披露した瞬間だった(今でもYouTubeに当時のライブ映像が公開されているので、ぜひ見てほしい)。その時に見せた、少し触れただけでもバラバラに壊れてしまいそうな繊細な姿は、どのヒップホップのライブでも見たことがないもので、今でもそれが私にとっての「LEX」のイメージとなっている。
あれから4年が経ち、次世代ラッパー発掘オーディション『RAPSTAR 2026』の審査員を務め、妹のLANA(彼女もトップ・アーティストの一人になった)とともにNHKの10代向け特番に出演するなど、今やLEXはシーンや人々を導き、後進を育む立場となった。まだ24歳という若さが信じられないほどに、その背中は力強く、彼の背中を追う人々が後を絶たない。
この日のTOYOTA ARENA TOKYOにも、LEXとともに多感な時期を歩んできたのであろう、数え切れないほどの若者たちが集まっていた。平均年齢は20代前半といったところだろうか。開演を間近に控えた会場内の至るところから聞こえてくる、LEXへの愛や感謝の想いが込められたファンたちの絶叫を聞けば、「今日が誰のためにあるのか」は明確だった。
アリーナを覆う巨大な暗幕には、LEXと思わしき人物の影がこちらに向けて激しく壁を叩く光景が繰り返し投影され、まるで檻に囚われた彼が抑圧に耐えかねて、心の底から解放を望んでいるようだった。それは観客にとっても同様だったのだろう。会場が暗転し、「レベルアップ」の〈level up〉というフレーズが聞こえた瞬間、明らかに会場のムードが一変する。遂に暗幕が降ろされると、上下の超巨大スクリーンで構成された壮大なステージセットが目の前に現れ、轟音の鋭利なビートと凄まじいライティング、何よりLEX自身の咆哮によって、ステージ/客席の双方の抱えていた抑圧された感情が一気に解き放たれた。「今日はきっとすごい日になる」と思っていたにもかかわらず、その予想を遥かに上回る凄まじい熱量に、完全に圧倒されてしまう。
自身初のアリーナ単独公演ではあるものの、既に【POP YOURS】のヘッドライナーなど多くの大規模なステージを経験しているだけあって、ステージで思いっきり暴れながらエネルギーを放出するLEXの姿は堂々たるものだ。この日最初のサプライズとして登場したゲストのHezronも持ち前の鋭いフロウで沸騰したばかりの会場をさらに焚き付け、制御不能な興奮が空間を覆う。壮大な歌声が響いた「力をくれ」、包容力に満ちた「今日くらいはいい子でいようよ」を立て続けに放てば、もはや彼の独壇場である。オリジナルな存在感をアリーナに刻み込んだNENEとの「I’m The One」、盟友・JP THE WAVYとの抜群のタッグで魅せる「なんでも言っちゃって」&「WAVEBODY」と、キャリアを語る上で欠かせないゲストも次々と登場し、この大舞台に彩りを添えていた。
しかし、この日のライブの中核を担っていたのは、紛れもなく“今のLEX”の楽曲だった。贅肉を削ぎ落としたソリッドなビートと言葉が炸裂する「完璧だ」から、(「STRANGER」を挟んで)チルな「OCEAN」で緩急をつけつつ、ハイエナジーなジャージー・クラブの「BABY」で竜巻のように会場を掻き回す。幕間の映像を挟んでセンターステージへと移動すると、360°を観客に囲まれたLEXが「V12」、「Melo」と最新アルバム『SPEEDSTAR』の楽曲を立て続けに放ち、レイジの影響下にありつつも音数を絞ったソリッドなサウンドと、彼らしい独特のフロウが一体となって観客を圧倒する。その光景はあまりにも鮮烈で、海外のシーンを含め、ここまでクールなパフォーマンスを作り上げることができるラッパーが果たしてどれだけいるだろうかと考え込んでしまうほどだ。
屈指のエネルギーを誇る「センス」ではSieroが登場し、二人の絶叫と轟音が渦巻くカオティックな熱狂に身も心も飲み込まれてしまう。その勢いは収まることなく、気付けば「Hey アリアナ」に至るまで、新作の楽曲がほとんど披露されていた。本来であればグレイテスト・ヒッツ的なセットリストで確実に成功を狙えるところを、あえて最新2作を軸に勝負するあたりもLEXらしく、同時に今の彼自身の好調ぶりを示しているようだ(実際、この日披露された半分以上の楽曲が、1年以内にリリースされたものだった)。
再び幕間の映像を挟むと、それまでの混沌としたステージから一転して「GOLD」、「Romeo & Juliet」とポジティブなムードの楽曲で会場のテンションを和らげていく。そして披露されたのは、「大金持ちのあなたと貧乏な私」だ。今でもキャリア屈指の繊細な楽曲であることには間違いないが、その姿にはどこか堂々とした、確かな自信のようなものを感じることができた。だが、それは決してLEXが落ち着いたという意味ではない。
「人生ってめっちゃ辛いんだけど、みんなを目の前にすると、この世も捨てたもんじゃないなと思います」、「俺の歌って捨てたもんじゃないかな?……下手くそでも、歌っていいかな?」という言葉に続いて披露されたのは、ピアノ・バージョンの「ALONE」と「So Sad」。亡き友人のために贈られた楽曲と、NHKの番組でも披露された、自身が生きることに悩んでいた18歳の頃に作られた楽曲だ。普段の生活ではなかなか表に出すことのできないような剥き出しの感情が会場に響くと、誰もがその歌声に耳を澄ませる。「下手くそ」と語りつつも、その歌声は美しく、特に「So Sad」の<so sad, so sad, so sad, so sad>のパートの、まるで自身の内側にある悲しみをすべて出しきろうとしているかのような切実な姿に、強く胸を打たれた。
ライブがいよいよ終盤を迎え、観客の目線の先にあるのは、一本のマイクスタンドを強く握りしめるLEXと、その姿を正面から捉えるスクリーンのみ。「ひとりぼっちの夜」、「億万長者」、「真っ直ぐ生きてゆく」と、キャリアの中でも歌にフォーカスした楽曲が続き、まっすぐな言葉とメロディが会場の隅々まで広がっていく。マイクスタンドに対して全体重をかけるかのようにして歌うLEXの姿が印象に残るが、きっとそうでもしなければ、自身が抱える膨大なエネルギーを制御することができなくなってしまうのだろう。
冒頭でも書いたように、LEXには二つの側面がある。この日のライブの前半のように、クールなトラックを巧みに乗りこなす、Playboi CartiやLil Uzi Vertのようなシーンのトップランナーとしてのラッパーの姿。もう一つは、まるでTHE BLUE HEARTSの頃の甲本ヒロトと、今のJustin Bieberが重なり合ったかのような、すべてを剥き出しにして美しい歌を歌うシンガーとしての姿だ。この二つが一体となっているからこそ、LEXはここまでの支持を集めたのだ。
幕間の映像では、『SPEEDSTAR』の世界観を映像化したかのような、闇の世界に飲み込まれたLEXが自ら強烈な光を放つ姿と、その果てに穏やかに光る星となって、絹のように美しい光を紡ぐ光景が描かれていた。それはまさに、制御不能レベルのエネルギーと対峙しながら、それでも飲み込み、希望の歌へと昇華するLEXの生き様の投影でもある。本編の最後を飾った「この世界に国が無かったら」では、〈がんばれ がんばれ 俺〉のパートが観客たちに委ねられ、会場がはち切れんばかりの大合唱が生まれていた。ここに集まった多くは、きっとLEXが描く生きづらさに共鳴して、この場に集まったに違いない。そんな彼らが、自分たちに向けて全力で「頑張れ」と叫びながら、圧巻の本編が幕を閉じた。
熱烈なアンコールの声に応え、再びLEXが戻ってくると、会場には「明るい部屋」のトラックが響く。恐らく誰もが待っていたであろう、最後のゲストであるLANAがステージへと現れると、この日一番の歓声が湧き上がった。〈昔は何にもなくて酷かった暮らし/今ではマイクを握り客は総立ち〉のラインが、これほど似合う場面もないだろう。兄弟での見事なパフォーマンスを終えたLANAは、LEXに向けて「LEX!! お前やっぱカッケーよ!!!」と叫び、鮮やかにステージを去っていった。
改めてありのまま自分らしく生きる姿をステージへと刻んだ「This is me」を経て、この日の本当の最後を飾ったのは、本日二度目となるキラーチューン「BABY」。おかわりとばかりに盛大にブチ上がる観客を前に〈i can change your life〉と叫ぶLEXの表情は、ただひたすらに大きな喜びと決意に満ち溢れていた。
ライブ終了後には、オフィシャルメンバーシップ「SPEEDSTARS」が始動し、これからさらに精力的に活動の幅を広げていくことが期待されるLEX。記念碑的な今回のライブも、きっと彼にとっては通過点に過ぎないのだ。
Text by ノイ村
Photos by Daiki Miura(1~13枚目)/ cherry chill will.(14~17枚目)
◎セットリスト
【LEX LIVE AT TOYOTA ARENA】
1. レベルアップ feat. Hezron
2. 力をくれ
3. 今日くらいはいい子でいようよ
4. I'm The One (feat. LEX & NENE)
5. なんでも言っちゃって
6. WAVEBODY
7. 完璧だ
8. STRANGER
9. OCEAN
10. BABY
11. V12
12. Melo
13. センス feat. Siero
14. NEWDAY
15. リーリエの手紙
16. ELDEN RING
17. WASTED
18. Hey アリアナ
19. GOLD
20. Romeo & Juliet
21. 大金持ちのあなたと貧乏な私
22. ALONE
23. So Sad
24. ひとりぼっちの夜
25. 億万長者
26. 真っ直ぐ生きてゆく
27. この世界に国が無かったら
<アンコール>
1. 明るい部屋
2. This is me
3. BABY
▼セットリストがプレイリストとして配信中
https://lexzzz.lnk.to/TOYOTAsetlist
◎リリース情報
「真っ直ぐ生きてゆく」
2026/10/21 DIGITAL RELEASE
https://lexzzz.lnk.to/msi
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