go!go!vanillasにとって初の日本武道館公演は2020年11月。コロナ禍での開催となり、キャパシティは50％以下、オーディエンスの声出しはNGという制限のある状況下でのライブだった。「次は満員の武道館で」という再会の約束をし、2年後の2022年9月、日本武道館で宣言通り満員を達成。そこでバンドは「次は2デイズで」と再び約束。そこから約2年半後。2025年3月8日と9日にバニラズ初の武道館2デイズ公演が行われた。約束の地での極上のロックンロールショー、その2日目をレポートする。

　最新アルバム『Lab.』収録曲「SHAKE」がイギリス・ロンドンで制作されたことを想起させるエレクトリック・ライト・オーケストラの「Last Train to London」がSEとして流れ、ステージ中央に置かれたミラーボールが回転。アルバム『Lab.』のオープニングを飾るご機嫌なインストナンバー「Lab.」が響く中、ジェットセイヤ（Dr）が側転をしながら登場。続いて、牧達弥（Vo/Gt）、柳沢進太郎（Gt）、長谷川プリティ敬祐（Ba）が姿を見せた。サポートメンバーは井上惇志（Key/from showmore）、山田丈造（Tp）、曽我部泰紀（Sax）、Takumadrops（Key）の4人だ。

　アルバムの曲順と同じく、まずは「HIBITANTAN」を演奏。１ヴァース歌って牧が「俺たちがgo!go!vanillasだ！」と開幕宣言。ハンドマイク姿でステージ下手に行き、オーディエンスに近付く。「さあ、声を聞かせて！」と言った後、美しいファルセットによるサビに。牧がマイクをフロアに向かって掲げると、オーディエンスのシンガロングが響いた。序盤から、バニラズとオーディエンスが同じ音楽を愛する者同志、強く結びついているような得も知れぬ一体感が溢れたライブだった。

　プリティの「3度目の武道館、最高の思い出にしようぜ！」という宣言を皮切りに披露された「デッドマンズチェイス」。いつものようにバニラズの4人それぞれがボーカルを担い、歌を繋いでいく。井上惇志はキーボードの定位置から離れ、ワイヤレスの鍵盤ハーモニカを弾きながら、ステージ中央で暴れまわる。ロックンロールの享楽性や楽天性がいつも以上に爆発していて最高。牧がギターをポロンと弾いて「Super Star Child」へ。牧は「武道館、見せてくれよ！」と言ってギターを置き、ハンドマイクでステージ上を歩きながら熱唱。柳沢とオーディエンスの「君の元へと急ぐのさ」という歌が響き渡った。

　牧が「みんなの人生がビューティフルになるように一緒に歌ってくれるかい！」と言って、牧と柳沢のツインボーカルが映える「LIFE IS BEAUTIFUL」へ。牧が「君となら　日本武道館となら　大丈夫」と歌詞を変えて歌い、大きな拍手が上がった。「今日という日を楽しもうぜ！」と牧がシャウトし、ご機嫌なホーンが多幸感を醸成した。プリティは曽我部に近付き、楽しそうにベースを弾き倒す。

　牧が「2年半前、このステージに立った時、あの時も最高に楽しんでたけど、そこで思いついた願望で『ここで2日間ライブがしたい』って言って、それが叶った！　夢って叶うんだな。本当にありがとう」と感慨深げに話した。「いろんなアルバムをこれまで作ってきたけど、『PANDORA』っていうアルバムは外に出られなくなったり、友達との旅行がなくなってしまった、世の中的に恵まれない時代に作ったアルバム」とコロナ禍のことを語ると、その後「手紙」「馬の骨」を披露。多くの人にこの曲を直接届けられなかった気持ちを昇華させるように、情感たっぷりに歌った。

　テンションが上がって笑いが止まらない様子のプリティ。「武道館の1回目と2回目があったから今日みたいなライブができてる」と笑顔で口にした。柳沢は「何度でもこの武道館でライブをやりたい。まだまだやりましょう！」と決意をのぞかせた。牧は「バンドを始めた頃は武道館に立つのは夢のような話で。いろんな苦しいことがあって、やっとたくさんのみんなを入れることができて、今度は2デイズできて。夢って叶うよ！」と胸を張った。ジェットセイヤから「次は武道館5デイズ」という目標が飛び出すと、牧が「だったら7デイズやっちゃうか！　絶対来いよ！」と言えば、ジェットセイヤが「東京ドームやりたい！」と言い、次々と夢が膨らんでいったのもバニラズがいくつもの夢を叶えてきたからこそだ。

　本編ラストはアルバム『Lab.』に収録された「Leyline」。演奏する前、牧はこう話した。「愛する人や大事な人には会いに行ってください。僕も後悔することがあります。バンドもそうです。悲しいことがたくさんあった。でもやっぱり音楽が好きだし、この世界にはきっと幸せな場所はあるから、それを見つけに行きましょう。一番最高の形でみんなが武道館から帰ってほしい。今日という日を共有してくれて、分かち合ってくれてどうもありがとうございました。いろんなことを思って去年書いた曲です。しんどい時や孤独な時にこの曲を聴いてほしい」

　暗いステージに牧の祈りのような歌が響いた。〈叫ばなければ消えないよ　鏡よここに写し出して〉と歌うと照明が明るくなり、距離のある「君」と「僕」を繋ぐためのメッセージが武道館いっぱいに広がり、ゴスペルチックなコーラスが祈りの強度を高めた。〈ひとつになったなら　無念だ　無念だって　あきらめかけていたコトをしようよ〉。約束の地で鳴る「Leyline」はとても説得力があった。

　オーディエンスがアンコールを求める「おはようカルチャー」を歌い、スマホライトをムーブさせる。バニラズの面々が再登場し、牧が「美しいな！　アンコールやります」と宣言。まずは爽快なアコースティックテイストの楽曲「ロールプレイ」を披露。牧が「負のスパイラルみたいなものに入ることがあっても自分をもっと幸せにしてあげて。みんな実は自分に一番厳しいんじゃないかな。僕が思う音楽って水のような存在で、癒してくれたり元気をくれたり誰かを思い出したり。そういうものをたくさん詰め込んでるから音楽はみんなを引き付けるんだと思います」と話し、「だから自分を大事にしよう。また元気であおうぜ、日本武道館！　死ぬまでやろう！　君とやろう！　『Lab.』の最後にこの曲を入れたのはそういう気持ちからかもしれません、一緒に歌えますか？」と問いかけた後に演奏されたのはもちろん「Moonshine」。研究室を意味するLaboratoryの略称Lab.と、ファンや音楽への愛を掛けたタイトルを冠したアルバムを締め括る楽曲だ。ビジョンにエンドクレジットが流れる中、「君とやろう」「死ぬまでやろう」「醒めない夢を　置いてかないように　手を握り合って」と歌う牧。ここで終演かと思いきや、牧のシャウトが響き、オーディエンスが照明で照らされる中、「FUZZ LOVE」へ。残された時間を悔いなく楽しもうとステージのあちこちに移動しながら歌と楽器を響かせる面々。8人は横並びで肩を組み、牧が「最高の瞬間が生まれたけどまだまだやるぞ！　死ぬまでやるぞ！」と再び口にした。夢を乗せたロックンロールでバンドとオーディエンスが共鳴し、双方の夢が膨らみ続けるようなハッピーな約2時間半だった。

Text by 小松香里
Photo by 西槇太一、renzo

◎公演情報
【go!go!vanillas Lab. TOUR 2024-2025】
2025年3月8日（土）、9日（日）
東京・日本武道館

▼セットリスト プレイリスト
https://lnk.to/ggvLab.TOUR_Budokan2PL