2025/04/04 18:00
ミュージック・コレクティブとして活動する・XinU(シンユウ)が、ビルボードライブ横浜に初登場。2021年のデビューから、クラブミュージックの多様なグルーヴ、リアルで等身大のラブとライフを真摯に歌う歌詞、陰影に富むスモーキーボイスで、幅広い音楽ファンの耳を惹きつけている実力派だ。“From One to Collective”と題して、各ステージ異なる内容で行われた2公演のうち、初のソロ弾き語りを披露した1stステージの模様をレポートしよう。
肩にかかる黒のセミロング、ブルーのスニーカー、黒のロングスカート、アシンメトリーな白のカットソー。ピリリとした緊張感をまといつつ、ガットギターを構えてすっくと立つシルエットが美しい。1曲目は「余裕綽々」。リズミックなカッティングと繊細な爪弾きに乗せ、エアリーなボイスがよく響く。「もうやだ」「Kiss Kiss Kiss」と、恋愛の情景を時に観念的に、時に肉感的に描く歌詞がまっすぐ届く。弾き語りだがしっかりグルーヴがあり、シートに座っていても自然に体が揺れてくる。
「オモイオモワレ」では、自然発生的に手拍子が湧き起こり、初めてちらりと笑顔を見せた。緊張感がふっと緩み、「罠」を歌うハイトーンも伸びやか。客席は平日夕方にも関わらずほぼ満員。彼女の音楽のファンでありつつ、身内のように温かく見守る視線を多く感じる。会場内、緊張感と包容感のバランスが絶妙だ。
「初めてのビルボードライブです。1stステージは、私が私自身と向き合う時間。2ndステージは、ミュージック・コレクティブの仲間のメンバーと向き合う時間。ここから一緒に向き合っていきたいと思います。」
ここからはサポートギターの庄司陽太を呼び込み、デュオ編成で。「バタフライ」はマイク一本で歌に集中し、「昼夜酩酊」はエレクトリックギターでリズムを刻む。会場いっぱいの手拍子を味方につけた、ロックなリズムがかっこいい。庄司のガットギターのソロに、やんやの歓声が飛ぶ。後ろに並べた3本のギターを見やって、「ギターたくさんあるでしょ。ギタリストみたいでしょ」と微笑むXinU。ポップで明るく、ほんのり官能的な「触れる唇」の、全員が息を合わせてのクラップもばっちり決まって、思わずニッコリ。いいムードだ。
ギタリストを送り出し、一人で歌う「ロマンス」。ラグにちょこんと座り込み、ルーパーエフェクターを駆使してコーラスを重ね、目の前で音楽が組み上げられる様子に見とれる。ミラーボールとシャンデリアが、会場いっぱいに星をばらまく光景もとても素敵。初めての会場にもかかわらず、演出もばっちりだ。
今度はピアニストの武藤勇樹を呼び込み、ピアノと歌のダイアローグ。「愛おしいままで」から「まだまだ」へ、徐々にテンポを上げながら手拍子を誘う流れはスムーズ。歌詞とメロディの組み合わせにグルーヴがあるから、XinUの歌はピアノ一台、ギター一本でもリズミックに感じる。ピアノソロにも歓声が飛ぶ。本当に温かいオーディエンス。
「横浜という土地で歌うことは、私にとって大きな意味があります。歌手になると決めて、初めて出てきた場所が横浜でした。」
この日初めての長いMC。この場所で歌える喜びと、この観客と、この仲間たちと一緒に歌える幸せを率直に語るXinU。みんなのリアクションが前に進むパワーです。そう言ってから「つながっていて」を歌う、セットリストの流れにもきっと意味がある。心を込めた歌声に、海野あゆみのソプラノサックスがそっと寄り添う。「合図 EYES 合図」では庄司陽太のギター、海野のアルトサックスのトリオで、明るいムードでグルーヴィーに。ギターとサックスの丁々発止の掛け合いを、ニコニコしながら見ているXinU。時間の経つのは早いもの。残すは1曲。
「デビューから3年が経ちました。一人で書いていた曲が、みんなの曲になってきているのを感じます。XinUとして初めて書いた曲を、ここで一緒に歌えたらいいなと思います。」
ラストソング「鼓動」は、ピアノの弾き語りで。悲しい歌詞だが、どこか吹っ切れた前向きさも感じる不思議な曲。フィナーレのアカペラコーラスに、一人また一人と声が重なってゆく。そんなふうにXinUの歌は、少しずつ広がってきたのだろう。「ありがとうございました!」と深々とお辞儀をする姿に送られる、温かい拍手がその証明。
アンコールでは、嬉しいお知らせが聞けた。3月15日から『XinU“Road to LIQUIDROOM” LIVE VIDEO PROJECT』と題して、初のリキッドルームライブのBlu-ray化プロジェクトのためのクラウドファンディングがスタート。3月19日にはニューシングル「また会いに行くから(Verse Extended)feat.maco marets」をデジタルリリース。さらに4月には台湾のフェス【Neon Oasis Fest. 25】への出演も決まった。海外での活躍にも期待が高まる中、桜の開花とともにXinUの新しい季節が今、始まろうとしている。
アンコール曲「また会いに行くから」は、ガットギターのリズムと、満場のコーラスと手拍子と共に。2階席で見守る観客にもしっかりと視線を合わせ、大きく手を振って一体感を求める姿に、ライブ開始時の緊張感はない。このあと、2ndステージのバンド編成ライブも大いに盛り上がるだろう。“From One to Collective”、一人から共同体へ。XinUの活動のター二ングポイントになるかもしれない、この日のライブを体験できて良かった。
Text:宮本英夫
Photo:Sakiho Kawakubo
◎セットリスト
【XinU “From One to Collective” at Billboard Live】
2025年3月14日(金)神奈川・ビルボードライブ横浜
1stステージ:XinU Solo Stage
1. 余裕綽々
2. もうやだ
3. Kiss Kiss Kiss
4. オモイオモワレ
5. 罠
6. 目眩
7. バタフライ
8. 昼夜酩酊
9. 触れる唇
10. ロマンス
11. 愛おしいままで
12. まだまだ
13. つながっていて
14. 合図 EYES 合図
15. 鼓動
En1. また会いに行くから
◎リリース情報
シングル「また会いに行くから」
2025/3/19 DIGITAL RELEASE
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