2026/08/25 14:00
2023年秋、テイラー・スウィフトは音楽界最大のスターというだけでなく、一時的に映画館における最大のスターにもなった。
その年の10月、『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』は北米公開初週末の興行収入で9,300万ドルを記録して映画業界を驚かせ、劇場公開されるコンサート映画の新たな波を引き起こす一助となった。重要なのは、この作品が脚本家や俳優のストライキが重なったことによる劇場公開スケジュールの空白期に登場したことであり、コンテンツに飢えていた映画館にとってまさに天の恵みとなった点である。このように、同作は映画興行主にとってコンサート映画が果たし得る重要な役割を浮き彫りにした。大手スタジオの公開作品数が減少し、観客が自宅のソファでストリーミング配信を楽しむようになる中、興行主たちはますます代替コンテンツを求めるようになっている。
「“テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR”は状況を一変させました」と語るのは、米国第2位の映画館チェーンであるリーガル・シネマズで米国コンテンツ担当シニア・バイスプレジデントを務めるブルックス・ルブーフ氏だ。「この作品は史上最高の興行収入を記録したコンサート映画となり、観客が劇場でのプレミアムな音楽体験のために足を運ぶことを証明したのです」
Box Office Mojoによると、北米で1億8,000万ドル、世界全体で2億6,100万ドルの興行収入を上げて上映を終えた『THE ERAS TOUR』だが、現代の映画館におけるヒットしたコンサート映画はこれが初めてというわけでは決してない。2000年代後半から2010年代前半にかけて、ハンナ・モンタナ/マイリー・サイラス(2008年『ハンナ・モンタナ ザ・コンサート 3D』、北米で6,500万ドル)、ジャスティン・ビーバー(2011年『ジャスティン・ビーバー ネヴァー・セイ・ネヴァー』、7,300万ドル)、ワン・ダイレクション(2013年『ワン・ダイレクション THIS IS US』、2,900万ドル)といったスターの若いファンをターゲットにした映画の波があった。また2009年には、マイケル・ジャクソンの死からわずか数か月後に公開されたコンサート映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』も大きな集客力を証明し、米国内で7,200万ドルを稼ぎ出している。
当時と現在で異なるのは、現在の大手スタジオの公開作品数が大幅に減少していることだ。Boxoffice Mediaのコンテンツ戦略担当シニア・バイスプレジデント兼エディトリアルディレクターであるダニエル・ロリア氏によれば、それがコンサート映画やその他の代替コンテンツを映画館の収益を補う上でますます重要なものにしているという。同氏は、こうした変化の大きな理由として映画業界の統合が進んでいることを挙げている。
「(ディズニーに買収される前の)2015年、フォックスが独立したスタジオとして運営されていた当時、フォックス・サーチライトと20世紀フォックスは26本の映画を公開しました」とロリア氏は言う。「昨年、ディズニーの部門として、20世紀スタジオとサーチライト・ピクチャーズが合わせて公開したのは確か9本です。つまり、大手スタジオの興行市場価値の3分の2が基本的に消滅したことになります。これは非常に大きなことです」
さらに、デヴィッド・エリソン率いるパラマウントによるワーナー・ブラザースの買収が(まだ確定ではないものの)迫っていることで、大手スタジオからの公開作品は今後さらに減少する可能性があると彼は指摘する。
「コンサート映画の量が、スタジオ映画1本分の不足を必ずしも補えるわけではありません」と語るのは、米国中西部および南東部に37の劇場を展開するマルコ・シアターズの映画・マーケティング担当シニア・バイスプレジデント、ジェフ・カウフマン氏だ。「しかし、上映中の映画だけでは集客が弱いかもしれない平日や週末の枠を埋める機会を与えてくれます」
おそらく、映画館が代替コンテンツ、とりわけコンサート映画への依存を強めていることを示す最大の兆候は、5月に現れた。この月、米国最大の映画館チェーンであるAMCシアターズは「アリーナ・ワン(Arena One)」と呼ばれる新たな取り組みを発表した。これは、パリス・ヒルトン、ビービー・レクサ、キム・ペトラス、マレン・モリスなどのアーティストがペンシルベニア州の専用ステージで行うコンサートを、全米の300以上のAMC劇場にライブ配信するというものだ。従来のコンサート映画とは異なり、これらのショーにはインタラクティブな要素があり、アーティストが全国の劇場にいるファンを見て実際にコミュニケーションを取ることができるようになっている。
AMCと提携してアリーナ・ワンの取り組みを推進するアーティスト・ワンの創設者兼チーフ・クリエイティブ・オフィサー、ロヒト・カプール氏はこう語る。「アーティストは文字通り、我々のスタジオのステージの端まで歩いていき、(ロサンゼルスのショッピングモール)グローブにあるAMC劇場のあなたを指差して、“ヘイ、その黒いセーター素敵だね。立って、言いたいことをみんなに教えてよ”と言うことができるのです」
当初6月に予定されていたアリーナ・ワンの公演は、発表からわずか数週間後に延期された。同社が発表した声明によれば、表向きの理由は最近の興行収入の好調さと「今後数週間にわたる強力な映画のラインナップおよび前売り券の好調な売れ行き」のためだとされている(AMCシアターズは、この取り組みの最新情報に関する度重なる問い合わせに応じなかった)。
「3スクリーンの映画館や小規模なチェーンを運営しているなら、(大手スタジオの公開作品が少ないことは)それほど大きな問題ではありません……しかし、AMCはショッピングモールのシネコン企業なのです」とロリア氏は言う。「彼らはイノベーションを起こし、それらのスクリーンを埋めなければならないという特有の立場にあります」
「代替コンテンツ」には、テレビシリーズの最終回(『ストレンジャー・シングス』)から、大画面向けに再利用されたNetflix映画(『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』)、スポーツ(ワールドカップの試合、F1レース)、ブロードウェイやウェストエンドの演劇のライブ配信、さらにはマーチングバンドの競技大会(配給会社ファゾム・エンターテインメントの『DCI 2026: Big, Loud and Live』)まで様々な形態があるが、音楽コンテンツはその計算において不可欠な要素である。
AMCシアターズ、シネマーク、リーガル・シネマズが共同所有し、BTS、ガース・ブルックス、クリスティーナ・アギレラ、アンドレア・ボチェッリなどのコンサート映画を配給してきたファゾム・エンターテインメントの元CEO(今年7月に退任)、レイ・ナット氏は言う。「人々は家から出て、共同で集まりたいのだと思います。特に音楽においては、集まって、友人を(映画館に)連れて行きたいと思っているはずです」
金曜から日曜にかけてビジネスの大部分を行う映画館にとって、こうした映画は客足の鈍い平日の客席を埋めるのに役立つ。この分野の巨大企業であり、最近ではBTS、KATSEYE、ATEEZ、シーアのコンサート映画を配給しているトラファルガー・リリーシング(同社はAMCシアターズと提携し、『THE ERAS TOUR』と『ルネッサンス:ア・フィルム・バイ・ビヨンセ』の一部地域での配給も行った)のマーケティングおよび戦略的パートナーシップ担当シニア・バイスプレジデント、ジェイミー・ウォグロム氏は、同社がしばしばこれらの映画の公開初日を平日に設定していると語る。「(コンサート映画は)予約視聴のようなものなので、そうしたオフピークの時間帯や曜日にファンを劇場に呼び込むことができるのです」と彼女は言う。
もちろん、アーティスト側もこうした公開から利益を得ている。「ツアーで回らない地域にリーチしたり、あるいは300ドルや400ドルもする夜のチケット代(さらにベビーシッター代)を投資するほどではないライトなファン層にリーチしたりすることを可能にします」と、トラファルガーのコンテンツ獲得およびプログラミング担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのキンバリー・フルー氏は語る。「本当に親密かつ手頃な方法で、そうした周辺層の観客にアーティストを紹介できるのです」。また、コンサート映画は、アーティストのより熱心なファンへの過剰なまでのサービス(スーパーサーブ)にもなる。彼らの多くは、従来の音楽会場でライブを観た上で、コンサート映画が劇場公開されればそのチケットも購入するからだ。
さらに、上映前に映画館がアーティスト特有のグッズを販売するケースが増えており、こうした上映はアーティストの物販ビジネスにも有益となっている。ウォグロム氏が言うように、「興行主は(グッズの)取り扱いへの関心をますます高めている」が、そこから彼らも利益の分け前を得ている。「熱狂的なファン層が存在する場合、彼らはいつでもタレントにできるだけ近づきたいと思うものです」とリーガルのルブーフ氏は言う。「そして、それがタレント自身が作成・承認したグッズを通して実現するのであれば、イベント的な体験にさらなる価値を付加することになります」
アーティストがこうしたコンテンツから利益を得る、より目立たない方法も存在する。フルー氏によれば、場合によっては、アーティストのチームに対し、今後のツアーで優先すべき未開拓の市場のヒントを与えることができるという。「私が現在取り組んでいるプロジェクトでは、マネジメント側が特定の地域でツアーを行っていませんでしたが、“ファン層が十分に厚いかを確認し、今後のツアーの方向性を決めるのに役立つ非常に興味深い試みになるかもしれない”と考えています」と彼女は語る。
映画館のビジネスモデルにおけるコンサート映画の重要性が高まっているとはいえ、それが映画館の総興行収入に占める割合は依然として比較的小さく、『THE ERAS TOUR』を除けば、見出しを飾るような巨額の利益をもたらすことは滅多にないとロリア氏は指摘する。地球上最大のアーティストの一人による最大規模のコンサートツアーを収めた『ルネッサンス:ア・フィルム・バイ・ビヨンセ』でさえ、年末の米国興行収入ランキングでは3,400万ドル(十分に立派な数字ではあるが)で60位にとどまり、M・ナイト・シャマラン監督のスリラー映画『ノック 終末の訪問者』のすぐ下という結果だった。今年初め、ジェームズ・キャメロンが監督を務めたことで大々的に宣伝されたビリー・アイリッシュのコンサート映画(『ビリー・アイリッシュ – HIT ME HARD AND SOFT : THE TOUR (LIVE IN 3D)』)は、2,000万ドルと報じられた予算に対して国内で約990万ドル、世界全体で2,670万ドルの興行収入にとどまり、期待外れだったと見る向きもある。しかし、多くの場合1億ドル以上の予算を抱える従来のスタジオの大作映画とは異なり、コンサート映画のリスクは比較的低い。
「誰も(コンサート映画を)見て“これが大ヒットしてくれないと困る”とは言っていません。彼らがそう言うのは、“アバター”についてであり、マーベル映画についてであり、“スーパーガール”についてなのです」とロリア氏は言う。「だから、ビリー(・アイリッシュ)の映画はメガヒットではありませんが、そうである必要もありません。もともとそういう設計ではないのです。週末の映画鑑賞の選択肢に彩りを添えたり、あるいは少しでも損失を軽減したりするために作られているのです」
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