2026/11/04 18:00
今世紀、この経済状況の中で、インディーロック・バンドとして15年間生計を立て続けることは決して簡単ではない。だが、メンバー間の問題や音楽業界の変化の波を乗り越えてきたDIIV(ダイヴ)は、ただ生き残ってきただけではない。ザカリー・コール・スミスが結成し、フロントマンを務める同バンドは、今、これまでで最も興味深い時期を迎えていると言えるだろう。創造性を絶えず追求し、自分たち自身とリスナーに挑戦する姿勢を持ちながら、現実的な収支にも目を配っている。
その歩みを振り返れば、重厚で圧倒的なサウンドへと舵を切った2019年の『デシーバー』、そして2024年に発表した、催眠的で社会・政治的なメッセージを深く織り込んだシューゲイズ作品『フロッグ・イン・ボイリング・ウォーター』がある。そして今回、彼らはまた異なる方向へと転換した。新作『ZIRP!』には、カラフルなアートワーク、印象的なフック、明るいメロディ、そして世の中に対する皮肉交じりの、ときに希望を感じさせる視点が詰まっている。
コミックを思わせるタイトルの頭字語「ZIRP」は、“Zero Interest Rate Policies”(ゼロ金利政策)を意味する。これは、景気後退後の低金利政策によって、一握りのテック起業家が途方もない富を築く一方、多くの人々はさらに貧しくなり、西側諸国の貧富の格差が一層広がった状況を指している。『ZIRP!』のジャケットには、ピンク、赤、白で歪められたアメリカ国旗が描かれ、縞模様は明確に下向きの矢印になっている。
『フロッグ・イン・ボイリング・ウォーター』を支えた反資本主義の熱意は今作でも失われていない。ただ、前作が重く湿った論調をじっくりと展開していたのに対し、『ZIRP!』は即効性があり、躍動感にあふれ、思わず口ずさみたくなる甘さを持っている。キャッチーな「Trillions」のミュージック・ビデオで、ギタリストのコリン・コールフィールドが「DIIV Goes Pop!」という見出しの偽のローリング・ストーン誌を手にしている場面も、半分は冗談ではない。8月に発表された新作の告知では、DIIVは“ニュー・オルタナティブ”の旗手として紹介され、さらに「音楽の最適化、VC資金による豪華仕様、リミックス、AI強化、アルゴリズムによる完璧化が進む2020年代のワイルド・ウェストにおける新ジャンル。100万回のストリーミング再生は素晴らしく、10億回ならさらに良く、1兆回も十分に射程圏内」と謳われていた。
つまり、スミス、コールフィールド、アンドリュー・ベイリー、ベン・ニューマンはポップなサウンドを積極的に取り入れているが、DIIVは依然として、鋭い知性と反射的な皮肉を備えたバンドだ。甘い音楽に苦いメッセージを忍ばせている。
「Trillions」では、オートチューンをかけた軽やかな声で、スミスが物質的な夢の数々を列挙する。金の床、ボート、“とにかくバカでかい飛行機”。そして、富める者がさらに富む資本主義を好む人々なら誰もが望みそうな願望に、「俺が勝って、お前が負ける」というゼロサムの本質を付け加える。
パワーポップ調の高揚感あふれる「The Crash」では、億万長者をワニのいる穴に投げ込めと陽気に叫ぶ。一方、「Dare Me」や、救済を感じさせるラスト曲「Idiot In the Sky」には、社会がリセットされることへの希望も込められている。『ZIRP!』を貫くテーマがあるとすれば、それは再生と再建だ。バンドとしての再生であり、そしてシンガーにとっては文字通りの再建でもある。
コール・スミスは、これまでも数々の困難を経験してきた。2017年、筆者は米ビルボードの取材で、彼の依存症との闘いや、そこから立ち直るまでの長い道のりについて詳しく話を聞いた。しかし、それらも2025年1月に起きた出来事には及ばない。ロサンゼルス北部のアルタデナを襲った壊滅的なイートン火災によって、コールと妻のダニ、幼い息子のロイは自宅と家財道具の大半を失った。
その悲劇は、『ZIRP!』に収録された少なくとも「Us Against You」と「When The Glow Came For Us」の2曲に影響を与えている。後者の歌詞には、燃え残った灰の中から、まだ使える持ち物を探す情景が描かれている。火災からわずか数か月後、コールとダニには2人目の子どもが誕生した。こうした感情のジェットコースターを経験しながら、バンド史上最短の制作期間で新作を完成させたことは、いっそう驚くべきことだ。
寄付や借り物の機材を使い、チャイナタウンに借りた絵画スタジオで、彼らはゼロから再出発した。セッションを重ね、曲を書き始めたのだ。一日一日を大切にしながら、新たな切迫感と目的意識を持って、DIIVは長年にわたり彼らを刺激的で魅力的な存在にしてきた原点のいくつかを取り戻していった。
米ビルボードは、再生をテーマにした最新作『ZIRP!』のリリースを1週間後に控えたコール・スミスに話を聞いた。
――最近のライブでは、アルバム収録曲の半分ほどを披露していますね。「Kid」「The Fountain」「Trillions」はすでにリリースされていますが、他の曲も好評ですか?
本当にそうだよ。今回のアルバムの目標の一つは、ライブで演奏して楽しい曲を作ることだった。『フロッグ~』はすごくスローで閉塞感のある作品だったし、僕はあのアルバムが大好きだけど、ライブも少し陰鬱な雰囲気になっていた。だから、過去の作品にあった、もっと楽しくてアップテンポで速く、カタルシスを感じられる要素を取り戻したかったんだ。「My Star」や「The Crash」を演奏したら、観客がものすごく盛り上がってくれたよ。
――『フロッグ~』発売から2年半が経ちました。間違っていなければ、今回のアルバムはDIIV史上、前作からの制作期間が最も短い作品ですよね。この1年半、あなたと家族が経験したことを考えると、なおさら驚きです。
制作期間という点では、DIIVはいつも、「バンドをもっと真剣にやりたいなら、勢いのあるうちに動くことが大切だ」という流れでやってきたと思う。それに、『フロッグ~』で見られたような、作品を大切にしすぎたり、完璧主義に陥ったりする傾向を手放したかった。だから、スピーディーに制作したことは、その助けになった。でも、すべては火災とつながっている。昔から、DIIVは何か困難を乗り越えながら活動してきたバンドだからね。個人的にも、あれは大きなリセットになった。方向転換しやすくなったというか、「新しい機材がある。バンドとは何なのか、何をするのかについて、新しい感覚が生まれている」と考えられるようになった。そのリセットを機に、自分の人生においてバンドがどんな役割を果たしているのか、そしてバンドや音楽の何が好きなのかを改めて考えた。楽しさや遊び心を取り戻すことが、本当に重要だったんだ。そもそも、みんなが音楽を始める理由はそこにあるからね。
――その最中に、新たな命も生まれましたね。
そうだね。シドという赤ちゃんが生まれたのも、ちょうどその頃だった。家が燃えた瞬間から、僕たちは本当に子どもたちの世界で生きていたんだ。「君たちのために、すべてを落ち着いた状態に保たなきゃいけない」ってね。そのときどきで、「今はこれをする。今はこれをする」という感じだった。子どもたちはそうやって生きているから。「今、何が起きているの? じゃあ、今遊ぼう!」というふうにね。だから、そうやって目の前の瞬間に集中することは、『フロッグ~』のように世界全体を俯瞰したり、実際に経験していた悲劇にとらわれたりせず、目の前のことを一つずつ乗り越えようとする姿勢につながった。音楽を作るうえでも、クールなアプローチだったと思う。いろいろ試し、その瞬間を受け入れ、目の前の曲に向き合うことができた。みんなで一つの部屋に集まり、笑顔で音楽を作ることができたんだ。
――アルバムの紹介文では、“ニュー・オルタナティブ”の一員として紹介されていて、DIIVらしい、冗談めいたところもありながら、ポップな側面を受け入れようとする姿勢には、どこか本気も感じられました。“メインストリーム”という言葉も何度も登場し、「いよいよメインストリームへ!」といった調子でしたね。『ZIRP!』はどこまで本気で、どこまでパフォーマンス・アートとして捉えればいいのでしょうか?
間違いなく、その両方だよ。真剣さと皮肉の境界線を歩くこと、そしてその線を曖昧にすることは、すごく楽しい。もちろん、プロデューサーのA.G.(クック)はその達人だし、それが彼に惹かれた理由の一つでもある。あの紹介文は、マーケティングというものをいじって、大げさに表現してみる試みだった。確かに皮肉はあるけど、同じくらい本気でもある。「Trillions」はその好例だね。かなり皮肉めいた曲だけど、ある意味では完全に本気でもある。僕たちは、自分たちの仕事で生計を立てられるようになりたいんだ。僕たちにとっての1兆は、生活できるだけの賃金ということ。それが僕たちの“1兆”であり、それを望んでいるんだ。
――「Trillions」は特別な曲ですね。「some kind of(何かしらの)」という言葉から始まるところが好きです。まるで、何かを夢見ている子どものように聞こえるので。
そうだね。自分が何を望んでいるのかも分からないけど、とにかくすべてが欲しいんだ!そして、どれだけ成功しても決して満足できないという考え方でもある。でも、ミュージック・ビデオ、曲全体の演出、あの不条理さや風刺は、同時に現実でもある。それはアメリカ文化における資本主義の神話の一部であり、このアルバムそのもののDNAに深く刻まれているんだ。
――あなたたちはあまりにも知的で、世の中の動きにも敏感なので、安全で無難なポップを受け入れることはないと思います。実際、メインストリーム・ポップは、あなたたちの音楽よりもずっと安全な方向に進んでいるように感じます。だから、あの紹介文で“ポップ”や“メインストリーム”という言葉が繰り返されていたのが興味深かったです。
僕たちが本当に興味を持っているポップ・アーティストといえば、A.G.と同じ時期にアルバムを制作していたチャーリーxcxや、すごくポップでありながら政治的な発言も積極的に行っているMUNAのようなバンドがいる。“ニュー・オルタナティブ”という考え方は、“オルタナティブ”という言葉がどうなってきたのかを振り返るものでもあった。実際に起きたことだけど、90年代には“オルタナティブ”という言葉が、非常に企業的な形で取り込まれてしまった。それ以来、この言葉は本来の姿を取り戻せていない。オルタナティブ・チャートも、すごく企業的な空間に感じられる。“オルタナティブ”という言葉が持つさまざまな意味を考える中で、マーガレット・サッチャーの「資本主義に代わるものはない」という言葉が頭に浮かんだ。反資本主義、反企業主義という意味での“オルタナティブ”を考え、それをオルタナティブ・ミュージックに当てはめてみるのは面白かった。つまり、“オルタナティブ”に代わるものが必要だ、ということだね。
――そもそも、A.G.クックに惹かれたのはなぜですか?彼が制作した3枚組アルバム『ブリットポップ』や、そこに合わせて作った“Witchfork”のような偽ウェブサイトを思い出しました。DIIVにも通じるところがあるように感じます。
ニューヨークにいた当時から、ずっとA.G.のファンだったんだ。ロンドンでは、並行してすごく大胆で、先進的で、知的なシーンが生まれていた。それがいつも魅力的だった。彼がフィン・キーンと(のデュオ)サイ・スローターとして制作した作品があって。未来的で、奇妙で、クールなロック・アルバムなんだ。すごいギター・ソロが入っているんだけど、実際にはディストーション・ペダルを通したボーカルだったりする。プロダクションも曲も、とにかくすごい。本当にクールなプロジェクトだった。それも理由の一つだね。そして、僕にとって大きかったのは『ブリットポップ』の特に2枚目のディスクだった。「Bewitched」を聴いたとき、「これは未来的なロック・サウンドだ」と思ったんだ。すごくクリーンで複雑で、音の数も多く、展開にも動きがある。だから、あれは大きなきっかけだった。それに、僕たちの“Soul-net”というウェブサイト(『フロッグ・イン・ボイリング・ウォーター』のために制作したディストピア風のパロディー・プロモーション)と、彼の“Witchfork”が同時期に存在していたこともあって、音楽的にも文化的にも、僕たちが似た感覚を持っていることは明らかだった。スタジオで一緒に楽しく制作できるだろうし、常に新しいサウンドを追い求める姿勢も理解し合えると感じたんだ。
――実際にそうなりましたか?彼はかなり強いアイデアを持っている人のようですし、あなたたちにとって創作における民主性はとても重要ですよね。『フロッグ~』の制作では、意見の相違を乗り越えなければならない場面もあったと聞いています。
今回は、制作のペースが速かったことや、その瞬間を大切にして楽しんでいたこともあって、意見の相違はほとんどなかった。もっと自由奔放な制作だったんだ。A.G.は信頼できるコラボレーターで、「この曲にはギター・パートが必要だね。はい、ギター」といった感じで、僕たちを導いてくれた。僕たちは彼の目の前で、その場で何かを作り上げていった。僕たちが本当に望んでいた形で、背中を押してくれたんだ。もともと彼には、かなり破壊的な制作プロセスを提案していた。「この曲を渡すから、めちゃくちゃにぶっ壊してくれ!」という感じでね。でも、彼は「いや、一緒に作ろう」と言ってくれたんだ。
――火災が起きる前から、「次のアルバムでは方向転換したい」と話していたのでしょうか?その時点ですでに何曲か書いていましたか?
デモが1曲あったかどうか、というくらいだったかな。「My Star」(息子のロイに向けたロック・ナンバー)が最初に書いた曲だった。アルタデナにある自宅のガレージにメンバーを集めて、音楽を作ることを本当に久しぶりに、心から楽しんだんだ。『フロッグ~』以来、初めてのことだった。「最高だね!毎日こうしよう!明日も集まろう!」という感じだった。そして、みんなが家に来たその日が、火災が起きた日だった。数時間後には、すべてがなくなっていた。そこから、新しい視点が生まれたんだ。
――「The Crash」は、アルバムの中で初めて明確な政治的メッセージが表れている曲ですね。“ワニのいる穴で叫ぶ億万長者”や“株主が勝てば、みんなが負ける”といった歌詞がありながら、楽しくてパワーポップなサウンドで届けられています。
この曲を作ったとき、僕はプロディジーをよく聴いていたんだ。今でもたくさん聴いているよ。彼らはドラムンベースやエレクトロニックの世界と、ロックやヒップホップの世界を融合させていて、それがすごく自然にまとまっている。初期の制作では、そうした要素をもっと自分たちのサウンドに取り入れることも試みていた。この曲や『フロッグ~』の時、あるいはそれ以前に作った曲では、当時ならかなり過激なアイデアだったものが、今では一般的になっていると思う。今は反億万長者のポピュリズム的な感情が強く、多くの人がこうした考えを共有しているんだ。
――最近のフランスでの抗議活動や、アメリカ国内での反ICE抗議デモを見ていると、何かが大きく変わる転換点にいるようにも感じます。ただ、そう思い込んでしまって、結局は元の状態に戻ってしまうこともあるのではないか、と考えることがあります。
そうだね。このアルバムには、間違いなく暴力的な革命の精神がある。「Us Against You」「The Crash」「Evangelizer」は、その大きな部分を担っている。でも同時に、その後の希望や再建の精神についても、本当に伝えたいと思っていた。だから、そこには多くの希望や前向きな要素もある。とはいえ、革命という考え方は、今やかなり多くの人に共有されていると感じるよ。
――確かに。アルバムの最後を飾る「Idiot In the Sky」は美しい曲で、別の世界や再出発を願う祈りのようにも感じます。革命とも呼べるかもしれないし、再生とも言えそうです。
それが間違いなく、このアルバムに込めた希望だね。でも、このアルバム自体が、僕たちにとっても希望を象徴していると思う。楽しむこと、そしてみんなで一緒に音楽を作れることへの希望だ。君が言ったように、再生という感覚は音楽そのものにも深く刻まれていると思う。
――ターンスタイルは、ワシントン記念塔でパレスチナ、スーダン、レバノンのためのチャリティー・コンサートを開催しましたね。マックルモアをめぐる一連の騒動も追っていたと思います。
うん。
――彼らのようなアーティストに対して、声を上げない、あるいは上げようとしないアーティストも50人はいるように感じます。セキュリティ面で正当な懸念を抱えている人もいるでしょう。自分のプラットフォームを使って発言することが、今は難しい時代になっていると思いますか?
まず、自分の発言に責任を持ち、実際にリスクを負う覚悟で行動しているアーティストは、本当に勇敢だと思う。僕にとって、音楽における最も刺激的な瞬間は、アーティストがリスクを取るときなんだ。自分の生活や生計を危険にさらしてでも、自分にとって大切なことや不正について声を上げる勇気は、本当に必要だ。そうするアーティストを心から尊敬しているし、そうしないアーティストには何の敬意も抱けない。そうした問題から目をそらすのは、ただの臆病さに感じる。何も信念を持っていないアーティストもいるのかもしれない。あるいは、あまりにも恵まれた環境で育ち、家の外の世界について考えたこともないほど守られているのかもしれない。でも、自分なりの信念を持っているのに、それを口にせず、企業の支配者たちに立ち向かおうとしないアーティストがいるとしたら、それはただの臆病さだ。悲しくなるよ。でも、マックルモアやMUNA、フォンテインズ(D.C.)をはじめ、自分の発言に責任を持ち、実際にリスクを負って行動している多くのアーティストには敬意を表したい。
――『ZIRP!』のリリースを目前に控え、これまでのDIIVの作品と比べて、今回はどんなところが最も違うと感じていますか?
違うところはたくさんあるけど、自分たちの音楽に対して、目に見えるほどの期待や興奮が生まれていると感じるんだ。2012年の最初のアルバム『オシン』の頃にも、同じような感覚があった。新しい存在として注目されて、期待と興奮に包まれていたんだ。ある意味、この15年間ずっと、その感覚を追いかけてきた。もちろん当時とは違うけど、あの頃以来、初めて同じような高揚感が戻ってきたように感じる。それが本当にうれしい。キャリアをここまで積み重ねて、すべてをこのバンドに懸けてきた今、ステージを降りたときに警備員から「お前たち、マジで最高だったよ!」と言われる。そういう瞬間は本当にうれしいんだ。自分たちが正しい選択をしてきたし、今もそうし続けていると実感できるからね。自分たちを追い込み、現状に甘んじることも、音楽から目をそらすこともしない。最初の頃と同じように、自分たちがワクワクするものを追い求める姿勢を持ち続ける。そして、それがほかの人たちにも刺激を与えていると分かるのは、素晴らしいことだよ。
By: John Norris / Photo: Louie Kovatch / 2026年10月30日 Billboard.com掲載
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像