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2026/10/26 18:00

<ライブレポート>「一生で一度きり」を「またいつか」に――kurayamisaka、自身最大規模のステージで交わした“再会の約束”

 都内の最高気温が26度を記録し、まだ夏の匂いが残る10月17日、kurayamisakaがワンマンライブ【kurayamisaka tte, doko? #8 『Zepp DiverCity 単独公演編』】を開催した。この日は彼らにとって過去最大キャパのワンマンで、全国31館の映画館と松山サロンキティでの生中継も実施。昨年発表した1stアルバム『kurayamisaka yori ai wo komete』が大きな話題を呼び、7月には日本テレビ系の音楽特番『THE MUSIC DAY 2026』にJ-POPのトップランナーと並んで出演するなど、オルタナシーンの枠を超えて存在感を発揮するようになっている現在のkurayamisaka。その勢いを証明するように、チケットはソールドアウトを記録し、幅広いオーディエンスがフロアを埋め、開演前から期待値の高さが伝わってくる。

 開演時刻を過ぎて、5人のメンバーが姿を現し、最初の轟音をかき鳴らして、「seasons」からライブがスタート。ギターを振り上げたり、飛び跳ねたりと、そのステージングはいつものようにダイナミックだが、Zepp DiverCityの広いステージということもあり、その激しさは3割増しといったところ。堀田庸輔(Dr)が重心の低いリズムを叩く「sunday driver」、清水正太郎(Gt, Vo)とフクダリュウジ(Gt)が向き合ってギターを弾く「modify Youth」、阿左美倫平(Ba)がオーディエンスを煽って始まった「curtain call」と、メンバーそれぞれのキャラクターもよく表れている。

 2階席から1階のフロアを見ていて面白かったのが、オーディエンスの多様性だ。「seasons」のサビになって、手を振り上げたオーディエンスは2~3割ほど。それ以外は半数が思い思いに体を揺らしていて、残りはジッとステージを凝視しているように見える。「オルタナシーン」と一言で言ってもその内実は様々だが、kurayamisakaはステージングこそ激しいもののパンク的なノリとも違い、しっかり歌を聴かせるバンドでもあるので、モッシュが起こるようなテンションでもない。そこに知名度の広がりとともにJ-ROCKのフェスに通っているタイプのオーディエンスも合流し、さまざまな楽しみ方をしている様子はバンドの現在地をよく表していたように思う。

 〈夏を最高速で抱きしめたいけど 見過ごして 気づかずにまた通り過ぎていた〉と歌う「seasons」、〈夏は過ぎたというのに まだカキ氷食べてる〉と歌う「modify Youth」など、kurayamisakaの楽曲は夏をモチーフにしたものが多く、特に夏に対する憧れと、その季節が過ぎ去ってしまうことへのセンチメンタリズムが世界観の核になっている。内藤さち(Vo, Gt)がメンバー紹介をしてから演奏され、〈夏は影の中 日々は流れて 長い髪が揺れていた〉と歌う「farewell」はkurayamisakaとしての最初の一曲であり、この曲にはバンドの核がよく表れている。

 〈夏がたりないね〉と繰り返す「evergreen」からは内藤がアコギに持ち替えて、より歌を聴かせるパートに。結成当初のkurayamisakaは清水が内藤に「AIのように、淡々と」とボーカルディレクションをしていたが、その後ライブを繰り返すなかで内藤のシンガーとしてのポテンシャルが明確になっていったことが、現在のバンドの方向性の一助となっている。実際「evergreen」での息遣いを交えた歌唱も、「ハイウェイ」の伸びやかな歌唱も素晴らしいし、弾き語りの「theme(kurayamisaka yori ai wo komete)」で聴き手を引き込む内藤の存在感は確かなものがある。だからこそ、バンドアンサンブルが一気に開ける「jitensha」の轟音がより一層引き立つし、堀田のパワフルなドラムが素晴らしい「sekisei inko」のようなライブでの人気曲のフィジカルな魅力もより引き立つようになっていた。

 「ライブハウスに来るってことは全然当たり前じゃないと思ってます。これだけの規模になると、今日初めてライブハウスに来た人もきっといて、後から人生を振り返ったら、あれが一生で一度きり、あれからライブハウス行ってないなって人がいても全然おかしくないと思う。でも、俺たちは今日その一生で一回だったかもしれない人たちを、もう一回行ってみようかなって思わせるために今ここにいるわけ」という清水の言葉に大きな歓声が起こると、それに続く新曲の「浜辺に散る」は、清水が大学生になって初めて組んだオリジナルバンド、she said moonside時代の楽曲をkurayamisakaで再録したもの。

 「modify Youth」は清水が現在も所属しているせだいのボーカル、佐久間ゲンソウが書いた曲であり、「ハイウェイ」はもともと清水が学生時代に内藤と組んでいたアカネノの曲だったりと、kurayamisakaは清水のこれまでの音楽人生の延長にあるものであり、そのすべての記憶を、ノスタルジーを内包しながら歩みを進めていることも一音楽ファンとしてグッとくる。そんなスタンスはRAYへの提供曲「sagitarius」や、長瀬有花への提供曲「hikari」のセルフカバーにも表れていて、特に「hikari」はシューゲイズな音像に乗せた内藤の情感豊かな歌唱が素晴らしく、しっかりkurayamisakaのものになっていた。

 ライブ後半は怒涛の勢いで、スティーヴ・アルビニばりのソリッドなアンサンブルを鳴らす「kurayamisaka yori ai wo komete」から、疾走感たっぷりの「metro」、さらには前半をツービートで駆け抜け、後半は轟音のなかで内藤がモノローグを聴かせる「あなたが生まれた日に」のドラマチックな展開も印象的。ラストに演奏されたのは、最新曲の「summer film」。〈夏の匂いに灼かれて 胸は切なさ訪れる〉〈夏の陽射し 眩しくて 風に吹かれて がらんどう〉〈君が待ちくたびれて 夏の終わりを迎えに行く場面〉と、kurayamisakaらしい夏の情景が描かれた名曲であり、アウトロで合唱される「シャボン玉」が、楽しかった子供時代の夏の記憶と、それがすぐに壊れて消えてしまうことの儚さを突きつける、心を揺さぶられるエンディングとなった。

 アンコールではまずはじめに、bloodthirsty butchersの名曲「ocean」のカバーを披露。2010年発表の『NO ALBUM 無題』に収録されている曲であり、彼らはこの曲を今年2月に行われたcinema staffとのツーマンライブ【cinemasaka】でも演奏していた。bloodthirsty buthcersはkurayamisakaとcinema staff双方にとって大きなルーツとなるバンドであり、kurayamisakaの楽曲には“夏”と紐づいて“海”をモチーフにした曲も多いが、cinema staffもまた“海”をモチーフにした曲の多いバンドである。9月にcinema staffが来年の解散を発表したことを踏まえれば、惜別の一曲だったと言ってもいいかもしれない。また、『kurayamisaka yori ai wo komete』が「いろんな人の人生が集まっていて、人が生まれてから死ぬまでを描きたいと思った」アルバムだったことを踏まえれば、今は亡き吉村秀樹が〈急げ 海へ オーシャンへ手を伸ばせ 急げ 夜の幕が降りる前〉〈生きている生きて行こう 残された気持ち握り 潰す〉と歌う「ocean」は、まさにアルバムの世界観のその一歩先を歌うような一曲だと感じられた。

 ラストはお馴染みとなった「往年の大名曲」という紹介から、1st EPの冒頭と同じ流れ、「theme(kimi wo omotte iru)」からの「cinema paradiso」で大団円。アウトロで再び轟音が鳴らされると、阿左美はフロアへのダイブを決める。清水は曲の前に「ライブが終わってもまだ20時くらいだと思うんで、いい夜を過ごしてください」と話し、演奏を終えた後も「お互い楽しい夜を過ごしましょう」と話していたが、つまり清水はライブというものを過度に特別視するのではなく、あくまで日々の生活の一コマとして捉えていて、だからこそ信頼ができる。彼らの音楽がこの日初めてライブハウスを訪れた誰かの心に突き刺さり、彼や彼女の人生を少しでも左右したのであれば…そんなワクワクすることはないだろう。

Taxt:金子厚武
Photo:福政良治


◎公演情報
【kurayamisaka tte, doko? #8 『Zepp DiverCity 単独公演編』】
2026年10月17日(土)
東京・Zepp DiverCity