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2019/08/09

<コラム>ブライアン・ジャクソン初来日記念 ~ブラック・ミュージックの文化遺産に酔いしれる夜。

詩人とサウンドの達人の出会い

 もしブラック・ミュージックが大好きなら、君はギル・スコット・ヘロンとブライアン・ジャクソンが生み出した音楽の中で毎日を生きているはず。たとえばラッパーたちのリリックやサンプリング・ネタとして、あるいはジャミロクワイのメロディとコード感覚に、ふたりの音楽が生き続けているからだ。

 ふたりが出会ったのは1970年頃、ペンシルバニア州のリンカーン大学でのことだった。1949年生まれのギル・スコット・ヘロンはすでに処女詩集『Small Talk At 125th AndLenox』をピアノやコンガに合わせて朗読する同名アルバムでレコーディング・アーティストとしてデビューしていた。フォーク・ブーム真っ只中のニューヨークで十代を過ごしたこともあって、当時のヘロンが志していたのはあくまで社会派詩人。だが大学に入学してきた3歳下のブライアン・ジャクソンが彼の運命を変えた。

 1952年ニューヨーク生まれのジャクソンは、幼い頃からピアノを習得、コンテンポラリーな音楽に夢中になって作曲を始めていた。ギルの詩に共感した彼は、それに曲を付けるだけでなく演奏もかってでたのだ。

 かくしてヘロンの代表曲「The Revolution Will Not BeTelevised(革命はテレビ放送されない)」を含む次作『Pieces Of A Man』(1971年)で、サウンドはソウル~ファンク化する。同作でジャクソンは半数の楽曲を作曲したほか、ロン・カーターやバーナード・パーディといった凄腕に混じってピアノをプレイしている。このときまだ10代なのだから天才としかいいようがない。

 そしてアーティスト名義がヘロンとジャクソンの共同名義となった1974年作『Winter In America』からファンキーな「The Bottle」がヒットしたことで、ふたりはメジャー・レーベルのアリスタ・レコードに移籍。一躍カーティス・メイフィールドやダニー・ハサウェイといったニューソウル系R&Bアーティストと同列に語られるようになった。

そしてヒップホップの源流へ

 アリスタ時代のジャクソンは、それまでのピアノやフルートに加えてシンセサイザーも積極使用。スティーヴィー・ワンダーと並ぶTONTO(マルコム・セシルとロバート・マーゴレフが開発した巨大なシンセサイザー・システム)のプレイヤーとして腕を振るった。この時代にふたりが生んだ音楽の特徴である、ループ感の強いグルーヴ、ジャジーなハーモニー、そしてメッセージ色が強いヴォーカルは、まさにヒップホップのプロトタイプといえる。その証拠に「We Almost Lost Detroit」「Angel Dust」「Bicentennial Blues」といったナンバーは、コモン、ブラックスター、そしてケンドリック・ラマーといったラッパーたちにサンプリングされ続けている。

 そんなヘロンとジャクソンだったが、1980年にコンビを解消。ヘロンはソロに転向、ジャクソンはロイ・エアーズやウィル・ダウニングといった他アーティストのサポートを行うようになった。2000年にリリースされたジャクソンのソロ作『Gotta Play』にヘロンがゲスト参加したことでコンビ再結成が期待されたものの、ヘロンが2011年に亡くなり、残念ながら夢に終わってしまった。

 近年、ジャクソンが自らのバンドでヘロンとの共作時代のナンバーをプレイするライブツアーを展開しているのは、彼がヘロンと語り合った夢の続きを人々に訴えたいと考えたからにほかならない。そんなジャクソンが日本にやってくる。先立って行われたヨーロッパ・ツアーでは「Pieces Of A Man」「It's Your World」「Winter In America」そして「The Bottle」といった代表曲の数々が披露されたという。ブラック・ミュージックの文化遺産に酔いしれる夜になるだろう。

TEXT:長谷川町蔵


◎公演情報
【ブライアン・ジャクソン
The Music of ギル・スコット・ヘロン&ブライアン・ジャクソン】
ビルボードライブ東京
2019年9月25日(水)- 9月26日(木)
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30

ビルボードライブ大阪
2019年9月28日(土)
1stステージ 開場15:30 開演16:30
2ndステージ 開場18:30 開演19:30

URL:http://www.billboard-live.com/

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