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2018/07/05

『ザ・エッセンシャルズ』 ジャック・ジョンソン(Album Review)

 2018年7月末に開催される【FUJI ROCK FESTIVAL '18】への出演を記念してリリースされた、ジャック・ジョンソン初のベスト・アルバム『ザ・エッセンシャルズ』。そもそも、シングル・ヒットから売れたアーティストではないし、彼の作品は「アルバム1枚」を通して楽しむものだと思っていたから、このベスト盤には若干抵抗があった……が、それぞれの作品からチョイスした名曲を並べてみると、それはそれでひとつの作品として完成してしまうから凄い。

 ジャック本人も、「そもそも“必聴”と呼べる曲があるのか?」と自身の作品を謙虚に振り返り、本作に収録するタイトルを信頼している友人やスタッフに選んでもらったと話している。賛否はあるかもしれないが、「日本のファンのためだけに制作した」というだけで価値あるアルバム、といえるのではないだろうか。また、未発表だった「ビッグ・サー」のビースティ・ボーイズのマイクDによるリミックス・バージョンが収録されているのもウレシイ。

 2001年のデビュー・アルバム『ブラッシュファイアー・フェアリーテイルズ』からは、アダルト・オルタナティブ・ソング・チャートで首位に輝いたデビュー曲「フレイク」と、物憂げなフォーク・ロック「バブル・トーズ」の2曲が選ばれた。どちらもジャックの原点ともいえるタイトルで、“海”を連想させるタイトルとはまた違う、翳りある淡い色合いの作風がいい。

 米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で初のTOP3入りを果たした、2003年の2ndアルバム『オン・アンド・オン』(3位)からは、同オルタナティブ・チャート1位の「ホライゾン・ハズ・ビーン・ディフィーティッド」と「ウェイスティング・タイム」のシングル2曲に加え、ラテン風味の「ロデオ・クラウンズ」と、AORのような心地良さも感じさせる「ゴーン」の2曲がアルバムから厳選された。

 アメリカで2位、UKとオーストラリアでは初のNo.1獲得を果たした3rdアルバム『イン・ビトウィーン・ドリームス』(2005年)からは、ゴールド・ディスクに認定された3曲のシングル「シッティング・ウェイティング・ウィッシング」、「グッド・ピープル」、 「ベター・トゥゲザー」と、アルバムの中でも高い人気を誇るハワイアン・チューン「バナナ・パンケーキ」の計4曲を収録。前2曲のシングルは、米アダルト・オルタナティブ・ソング・チャートで1位、「ベター・トゥゲザー」はUKチャートで最高位となる24位をマークした。

 2006年の映画版『おさるのジョージ』のサウンドトラック盤からは、オープニングを飾るお得意のアコギ・ロック「アップサイド・ダウン」が選ばれた。収録曲のほとんどが新作で、オリジナル・アルバム同等の仕上がりだったが、ベスト盤への収録はほとんどが見送られた。

 全米・全英チャートはじめ、主要各国でNo.1を獲得した4thアルバム『スリープ・スルー・ザ・スタティック』(2008年)からは、ミュージック・ビデオにモノクロのレコーディング風景が起用された「イフ・ア・ハッド・アイズ」と、野外フェスのシーンが登場する「ホープ」の2曲が収録されている。ブルース感覚のタイトル曲も良かったが、ベスト盤という意味ではこの2曲が最も有力だろう。

 ジャパン・チャートで最高7位をマークした、2010年の5thアルバム『トゥ・ザ・シー』(全米・全英1位)から選ばれたのは、「ユー・アンド・ユア・ハート」の1曲のみ。リトルリーグの世界選手権【リトルリーグ・ワールドシリーズ 2010】のテーマソングとして起用されたことと、ジャックの隣でサーフィンをしている気分に浸れる(?)、“トゥ・ザ・シー”というコンセプトに基づいたミュージック・ビデオ効果もあり、米ビルボード・ソング・チャート“HOT 100”では、これまでの最高位となる20位を記録した。

 一面空のアート・ワークが印象的だった、2013年発表の6thアルバム『フロム・ヒア・トゥ・ナウ・トゥ・ユー』からは、口笛のイントロとアコースティック・ギターの柔らかい音に癒される先行シングル「アイ・ガット・ユー」(アダルト・オルタナティブ・チャート1位)と、シングル・カットされていないが、ファンの間でも人気のチルアウト・ソング「ホーム」の2曲を収録。和やかな雰囲気に包まれた本作は、こういったユルめの曲が中心となっている。

 7作目となる最新作『オール・ザ・ライト・アバブ・イット・トゥー』(2017年)からは、ゴールド認定された風通しの良いフォーク・ポップ「マイ・マインド・イズ・フォー・セール」のみ、本作に収録された。哀愁漂う「ユー・キャント・コントロール・イット」や、夕日を眺めながら聴きたい「サンセッツ・フォー・サムバディ・エルス」など粒揃いだったが、直近に発売されたことを考慮して、あえて選ばなかったのかもしれない。

 4年振りの出演となるフジロックについて、「当日までセットリストを決めない」と話しているジャック。とはいえ、当ベスト盤からのいくつかのタイトルは、間違いなく演奏するはず。フェスに参加する方は予習を兼ねて、それ以外でも、部屋でリラックスする際に、暑さを和らげる清涼剤に、ドライブに……どんなシチュエーションでもハマるジャック・ジョンソンのベスト盤で、この夏を堪能せよ。


Text: 本家 一成

◎アルバム『ザ・エッセンシャルズ』
2018/7/4 RELEASE
UICU-1299 2,500円(tax incl.)

◎公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL'18】
期間:2018年7月27日(金)、28日(土)、29日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
時間:9:00 開場 11:00 開演 23:00 終演予定
INFO: SMASH http://www.fujirockfestival.com
※ジャック・ジョンソンの出演は29日(日)

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