安藤裕子の1年半ぶりとなる【安藤裕子Premium Live 2017～夜明け前～】が6月3日、東京・昭和女子大学人見記念講堂にて開催された。

　『夜明け前』と題されたこのライブ。ライブ活動は継続していたものの、メジャーレーベルを離れ、自身の楽曲制作をしばらく行っていなかった彼女は、朝が来る前に何を伝えたいのだろう。今の想いや歌声を聞き届けようと、緊張感を持って会場に足を運んだファンもいたのではないだろうか。この日の2時間半のステージは、安藤裕子が一夜限りにして“全身全霊”で踏み出した第一歩に、心が終始揺さぶられっぱなしだった。

　安藤裕子が自身で舞台美術なども施したステージは、花やカラフルなイスなど“ドリーミー”な装飾で彩られていた。山本隆二(Pf.)、名越由貴夫(Gt.)、沖山優司(Ba.）、あらきゆうこ(Dr.）、CHICA(Vn.)、篠崎由紀(Vc.)と管楽器が入ったストリングスの編成でバンドメンバーが登場し、その後拍手で迎えられた安藤がステージの中央に立つと、1曲目に「いらいらいらい」、続いて「溢れているよ」を披露。ソリッドかつエモーショナルな演奏の中ネガティブな感情をさらけ出す彼女の姿に、このステージに立つまでの葛藤や覚悟を感じさせられると同時に、苦しみや楽しさが全て歌になっていく解放感に包まれているような不思議な気分だった。

　MCでも、彼女は自分の迷いを隠さず必死に言葉を探して想いを伝えようとしていた。「“歌”は、悲しい、辛い、虚しいことがある人に手を差し伸べるものなんだって気付いたんです」と告げて演奏した「悲しみにこんにちは」「ここに臨む丘」では、重厚な生音のサウンドがしっかりと絡まった包容力のある演奏の心地よさに、観客はしっとりと聴き入った。

　中盤には、ギターとピアノのシンプルな編成で、新曲「雨とぱんつ」を披露。「しばらく息をひそめて歌わず過ごしていたんですけど、夜明け前には自分が何したいんだろうって考えてみたんです。そしたら、今の自分を見てみたいなって思ったんですよね。今回CDを作ったのは“動き出すことへのけじめ”です」と静謐ながら力強いその言葉が、深い夜から抜ける一筋の光に思えた気がした。

　また、安藤はこの日「エイリアンズ」や「Smells Like Teen Spirit」などバラエティに富んだカバーを数曲演奏し、「心に迷いがあると自分の曲と向き合えないんです」と吐露した。だがその後、絞り出すような声で「だけど、歌うことしかできないんです。出口はないけど…自分の歌に立ち返らなきゃ…」と語り、終盤2曲は自身の楽曲「隣人に光が差すとき」と「聖者の行進」を披露。温かく深みのあるストリングスと、感情の全てが乗ったボーカルが共鳴し合い、その歌は圧倒されるほどの生命力に満ち溢れていた。アンコールでは、安藤が満面の笑顔で「初オーガナイズで対バンをやります！」と、8月9日の3マンライブを発表し、「ぼくらが旅に出る理由」でライブを締めくくった。

　そして、この日会場限定で販売された自主制作CD『雨とぱんつ』を、安藤が購入者に直接手渡しするイベントがライブ後に行われ、ファンと笑顔で話す安藤の眼に迷いは見られなかった。時に苦しみ立ち止まりながらも、安藤裕子という歌い手が見せてくれる新しい景色はいつもエネルギーと優しさに溢れており、その歌に導かれるようにまた夜は少しずつ明けていくに違いない。

　なお、安藤裕子からの熱い呼びかけに応え、峯田和伸、LEO 今井を迎えて行われる3マンライブは、8月9日東京・SHIBUYA CLUB QUATTROにて開催。7月8日のチケット一般発売に先駆けて、現在ファンクラブとアーティストのオフィシャルHPにて先行受付が行われている。

Photo：Aki Ishii
Text：神人未稀

◎リリース情報
自主制作シングル『雨とぱんつ』
※販売はライブ会場＆オフィシャル通販限定
レコチョク＆iTunesにて配信中
DGAR-001　1,000円（tax in.）
＜収録曲＞
1.雨とぱんつ
2.暗雲俄かに立ち込めり

◎公演情報
2017年8月9日（水）
東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
OPEN 18:15 / START 19:00
出演：安藤裕子、峯田和伸、LEO 今井
チケット：5,800円（tax in./オールスタンディング）※D代別途
一般チケット発売日：
2017年7月8日（土）
※3歳未満入場不可、3歳以上チケット必要
・UCAD LiVE KIDSチケット先行受付
抽選エントリー期間：2017年6月3日(土)21:00～6月12日(月)23:00
・Andrew Page(オフィシャルHP)チケット先行受付
受付期間：2017年6月5日（月）18:00～6月14日（水）23:59