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<コラム>ウィルコらのプロデュースも手がけるケイト・ル・ボンが初来日、シーンを横断する表現者の軌跡を辿る

インタビューバナー

Text:清水祐也

 ウェールズ出身のマルチディシプリナリー・アーティスト、ケイト・ル・ボンが待望の初来日公演を行う。音色や質感を緻密に重ね、感情の機微を描き出すその音楽は、リスナーに鮮烈な印象を残してきた。さらに近年では、プロデューサーとしても手腕を発揮。ギターやサックス、シンセサイザーが交錯する最新作を携えバンド編成で臨む貴重な公演を前に、その表現の核心に迫る。

※この記事は、2026年5月発行のフリーペーパー『bbl MAGAZINE vol.218 6月号』内の特集を転載しております。

 ウィルコやデヴェンドラ・バンハート、セイント・ヴィンセント。一見脈略のないこれらのアーティストに共通するのは、いずれも最新作をケイト・ル・ボンがプロデュースしているということだ。

 90年代に青春時代を過ごした人なら、スーパー・ファーリー・アニマルズやゴーキーズ・ザイゴティック・マンキといったウェールズ出身のバンドによるサイケデリック・ロックが、ここ日本でも人気を博したことを覚えているかもしれない。ケイト・ル・ボンことケイト・ティモシーもそんなウェールズの出身で、23歳の時にゴーキーズ・ザイゴティック・マンキのベーシストだったリチャード・ジェイムスのソロ・アルバムに本名名義で参加して、本格的なレコーディング・デビューを飾っている。

 そんなケイトが最初に注目を浴びたのは2008年。スーパー・ファーリー・アニマルズのグリフ・リースとブーム・ビップによるヒップホップ・プロジェクト、ネオン・ネオンのアルバムにゲスト・ボーカルで参加したことがきっかけだった。この頃からデュラン・デュランのサイモン・ル・ボンに由来する“ケイト・ル・ボン”名義での活動を始めたケイトは、2枚のアルバムをリリースすると、新たな活動の場を求めてロサンゼルスに移住。デヴェンドラ・バンハート作品で知られるノア・ジョージソンをプロデューサーに迎え、パフューム・ジーニアスことマイク・ハドレアスも参加したアルバム『Mug Museum』を2013年にリリースし、メディアはもちろん、ウィルコのジェフ・トゥイーディーといったミュージシャンたちからも、賞賛を受けることになる。






 ケイトにとって更なる転機となったのは、サンフランシスコのガレージ・ロッカー、タイ・シーガルとのコラボレートでも知られる、ホワイト・フェンスことティム・プレスリーとの出会いだ。2人はドリンクスというデュオを結成すると、ヤング・マーブル・ジャイアンツのようなポスト・パンク・サウンドを聴かせる2015年の『Hermits On Holiday』で、新境地を開拓。この試みは、レーベルをメキシカン・サマーに移籍してリリースされたケイトの2019年の傑作『Reward』で実を結ぶことになるのだが、時を同じくして彼女はプロデューサーとしても、インディー・ロック・シーンで引く手あまたの存在になっていく。






 もともと仲間内の作品をプロデュースしてきたケイトだが、初めて外部の作品を手掛けたのは、アトランタのロック・バンド、ディアハンターが2019年にリリースした『Why Hasn't Everything Already Disappeared?』だ。前年にテキサス州のマーファで出会ったディアハンターのブラッドフォード・コックスとケイトは意気投合し、そのままアルバムのレコーディングを開始。ディアハンターのガレージ・ロックにニューエイジ的な感覚をもたらしたケイトの手腕は高く評価され、カート・ヴァイルやホースガールといった人気ミュージシャンの作品に、プロデューサーとして次々に抜擢されることになる。



 そんなケイトの目下の最新作となるのが、昨年リリースされた『Michelangelo Dying』だ。ティム・プレスリーとの別れをモチーフに、失恋を神話のような領域まで高めた本作には、ウェールズの大先輩でもある、元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルがボーカルで参加。その評価を揺るぎないものにすると、今年に入ってからもセイント・ヴィンセントが参加したアルバムからのアウトテイクが公開されたり、プロデュースを手掛けたロンドンのロック・バンド、ドライ・クリーニングの新作がリリースされるなど話題に事欠かないケイトだが、そんな絶好のタイミングで、待望の初来日公演が決定した。



 

 バックを固めるのは、ウェールズ出身のポール・ジョーンズとステファン・ブラック、サックス奏者のユアン・ヒンシェルウッドらケイト作品の常連に加えて、セイント・ヴィンセントのサポートで知られる元イーノンのトーコ・ヤスダといった、強力な布陣。さらに今回はロンドンのジャズ・サックス奏者、アラバスター・デプルーム作品で知られるドラマーのアーシュラ・ラッセルが参加することもあり、見逃せない一夜となりそうだ。

 現在は故郷であるウェールズに拠点を戻して活動を続けるケイト・ル・ボン。中世の面影が残るその街並みから届けられる魔術のようなサウンドに、あなたも幻惑されてみてほしい。




Messages from Cate Le Bon

皆さんの前で演奏することは、長年の夢でした。
そして今回、「Michelangelo Dying」の
フルバンドとともに来日できることを心から嬉しく思っています。
素晴らしいミュージシャンたちと共に
音楽を届けられることをとても幸運に感じていますし、
メンバー一同、日本で皆さんと特別な時間を共有できることを
心から楽しみにしています。



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