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<コラム>ヴィンテージ・ソウルの美学を体現するトリオ・Thee Sacred Soulsに見る、現代の"チカーノ・ソウル"――3都市ビルボードライブ・ツアーを前に魅力へ迫る

Text:Tsuyoshi Hayashi
米西海岸サンディエゴで結成され、スウィート・ソウルやドゥーワップ、ロックステディなどの要素を織り込んでヴィンテージなサウンドを奏でるセイクリッド・ソウルズ。名門ダップトーンのサブレーベル、ペンローズに所属し現行チカーノ・ソウルのグループとして人気を集めるこの3人組は、NPR『Tiny Desk Concerts』などのパフォーマンスでも話題沸騰中だ。ビルボードライブでの待望の初来日公演を前に、そのキャリアと魅力に迫る。
※この記事は、2026年4月発行のフリーペーパー『bbl MAGAZINE vol.217 5月号』内の特集を転載しております。
チカーノ・ソウルを現代に体現する3人組
チカーノ・ソウルという音楽ジャンル/カルチャーがある。チカーノ、つまり米西海岸~南西部に暮らすメキシコ系アメリカ人が歌い奏でるソウル・ミュージックだ。それともうひとつ、ドゥーワップやスウィート・ソウルなどチカーノたちが愛する50~70年代のソウル・ミュージックもチカーノ・ソウルと呼ばれる。それらはともにカリフォルニアのイースト・ロサンゼルスを筆頭とするバリオ(メキシコ〜ラテン系居住区)で親しまれ、ローライダー・カルチャーや45回転の7インチシングルを収集する文化とも相まって、様々な音楽とのハイブリッドで進化・発展を遂げてきた。
全米有数のバリオを抱えるカリフォルニア州サンディエゴで2019年に結成されたセイクリッド・ソウルズは、まさに二つの意味でのチカーノ・ソウルを背景に持ち、現代に体現する3人組だ。2018年にローライダーの趣味を通して出会ったドラマーのアレックス・ガルシアとベーシストのサル・サマーノという二人のチカーノがソウルディーズ(ソウル+オールディーズ)のバンドを組み、西海岸にやってきた黒人ボーカリストのジョシュ・レーンを加えてスタートした。

グループ名の英語表記ではアタマに“Thee(ジー)”がつくが、これは現代の“you”に相当する古い英語の二人称単数代名詞で、それを定冠詞のように使ったもの。近年はセイクリッド・ソウルズ以外にも“Thee”を冠したチカーノ・ソウル系のグループが目立つが、これは60年代に活躍したLAのチカーノ・ロック~ソウルバンド、ミッドナイターズ(Thee Midniters)に倣っているとされる。ミッドナイターズはチカーノ・ソウルの王様と言われるテキサス州サンアントニオのサニー&ザ・サンライナーズなどとともに、セイクリッド・ソウルズのような現行チカーノ・ソウルのグループがアイドルとして慕うバンド。スモーキー・ロビンソンあたりを彷彿させるジョシュ・レーンの甘く切ないヴォーカルや甘美なハーモニーも含めて、セイクリッド・ソウルズの音楽は演奏や録音、ミックスなど、まさにミッドナイターズに通じるレトロなムードが漂う。だが、レジェンドたちの音楽を現代的な感性で解釈した彼らの 楽曲は、古風でありながらも新しい。
そんなセイクリッド・ソウルズを迎え入れたのが、いわゆる現行ヴィンテージ・ソウルの代表的レーベルとして知られるダップトーンだ。ボスコ・マンことガブリエル・ロスが率いるダップトーンはNYブルックリン発のレーベル。2020年には「南カリフォルニアのソウルディーズ・シーンで台頭しているエキサイティングなアーティストを紹介する」として西海岸にサブレーベル、ペンローズを発足させた。ペンローズはLAの東方に位置するカリフォルニア州リバーサイドにスタジオも構え、シンシアーズなどのチカーノ・ソウルを世に送り出している。そこで第一号となるシングルを出したのがセイクリッド・ソウルズだった。ペンローズ・スタジオで録音されたそのシングルとは、2020年にリリースした「Can I Call You Rose?」。
セルフタイトルのデビューアルバム(2022年)にも収録された同曲は、思いを寄せる相手をトゲがありながらも美しく芳しい薔薇にたとえて、「君をローズ(薔薇)と呼んでいいかい?」と歌うロマンティックなラブ・バラード。薔薇をアイコンとするチカーノ・ソウルらしい歌で、今やセイクリッド・ソウルズ、そしてペンローズを代表する一曲となった。SNSでもリール動画のBGMとして頻繁に使われ、スペイン系英国人女性シンガーのイザベルやUS R&Bのラヒーム・デヴォーンなどによるカバーも登場している。同シングルのカップリングだったスウィートな「Weak for Your Love」や女声コーラスが映えるミディアム・テンポの「Easier Said Than Done」も人気で、これらもデビューアルバムに収録された。
同アルバムのインストゥルメンタル・バージョンを出した2024年にはセカンドアルバム『Got A Story To Tell』も発表。前作のムードを受け継いだスウィートでやるせない「Lucid Girl」や60年代モータウンとロックステディの雰囲気を持つポップ・ソウル「My Heart Is Drowning」などを含み、ラストの「I’m So Glad I Found You,Baby」では憧れのミッドナイターズからラリー・レンドンをテナー・サックス奏者として迎えていた。そこでのグルーヴィーな「Live For You」や2023年のシングル「Running Away」といったステージ映えするアップ・チューンを持ち歌として加えたことで、ライブも年々パワーアップしているようだ。
セント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズやカリ・ウチスのオープニング・アクトも務めた彼らは、実際にライブパフォーマンスに定評がある。2024年1月に公開された『Tiny Desk Concerts』でのパフォーマンスも語り草だ。フェスへの出演も増えていて、2025年4月にはコーチェラ・フェスティバルに初登場。屋内型としては最大規模となるサハラ・ステージに立ち、会場を沸かせた。そんなセイクリッド・ソウルズがビルボードライブで行う初めての来日公演。海外ではアリーナクラスの会場にも登場する彼らがビルボードライブのインティメイトな空間で行うライブは、繊細な歌や演奏を抜群の音響で聴ける貴重な機会となるだろう。
ブルーノ・マーズの最新作『The Romantic』では、ダップトーンのガブリエル・ロスがペンローズ・スタジオでホーンの録音を手掛けていた。ブルーノのアルバムも薔薇を描いたアートワークを含めてチカーノ・ソウルにアプローチしていたが、その背景にある音楽や文化を体現するセイクリッド・ソウルズのライブにこのタイミングで足を運ぶことは大いに意義がある。
Messages From Members

Sal Samano (Ba.):個人的には、最高のショーになると思っているよ。
Alex Garcia (Dr.):旅するサーカス団ばりに全員を連れて行こうと思ってる。パフォーマーやダンサー、火吹き芸人とかね(笑)。
Sal:かなりコンスタントにツアーに出ていて、そのあとに長い間休みを取っていたから……リセットボタンを押したみたいに全てが新鮮に見えるようになって、リフレッシュした気持ちで挑めると思う。演奏するのが待ちきれないよ。ツアーがすごく恋しかったから。
Josh Lane (Vo.):観客のみんながどれくらい一緒に歌ってくれるか気になるな。フルバンドで演奏するし……だよね?(笑)。
Sal & Alex:うん(笑)。
Josh:ホーンとかみんな一緒に連れて行くんだ。
Alex:観客のみんなの間を走ったりするかもよ(笑)。
Josh:正直、本当に日本で演奏するのが楽しみ。日本に行くのはこれが初めてだからね。日本に行ったことのある友人から話を聞いたり、SNSで日本の様子を見る限り、日本の人たちはある特定の文化に対してすごく思慮深く、静寂を重んじているような気がするんだ。例えばリスニングバーとかね。デニムを探したりするのも楽しみだよ。
公演情報

【Thee Sacred Souls】
2026年5月17日(日)
大阪・ビルボードライブ大阪
1st stage open 15:00 start 16:00
2nd stage open 18:00 start 19:00
公演詳細
2026年5月19日(火)
神奈川・ビルボードライブ横浜
1st stage open 16:30 start 17:30
2nd stage open 19:30 start 20:30
公演詳細>>
2026年5月21日(木)-22日(金)
東京・ビルボードライブ東京
1st stage open 16:30 start 17:30
2nd stage open 19:30 start 20:30
5/21公演詳細>>
5/22公演詳細>>


























