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<インタビュー>はしメロ 26曲の大ボリュームでおくる初のアルバム『aero』に詰め込んだ、自分だけの“空気”と物語

Interview & Text:高橋梓
インディーズ期から心がワクワクするような楽曲を生み出し続けてきたシンガー・ソングライター、はしメロ。2025年8月にメジャーデビューを果たして以降も、彼女らしい音楽を発信し続けており、多くのリスナーを喜ばせている。そんなはしメロが、2月25日に1stアルバム『aero』をリリースする。同作はこれまでの楽曲と新録曲、計26曲をギュッと詰め込んでいる大ボリュームの作品。この1枚で彼女の世界観がわかる作品だ。どのような思いを込めて同作を制作したのか、本人にたっぷり語ってもらった。
いろんな意味で
自分を“詰め込んだ”作品に
――1stアルバムのリリース、おめでとうございます。リスナーにとっても念願のアルバムですが、はしメロさんご本人にとってはどういう意味を持つ作品になりましたか?
はしメロ:『aero』というタイトルやジャケ写のように、自分の作ってきた空気をみっちり詰め込めたと思います。コンビニに売っている“くんたま”(燻製卵)ってわかりますか? このジャケ写、実はあれをリファレンスにしていて。
――くんたま!?
はしメロ:はい(笑)。くんたまって、ぎゅうぎゅうに真空パックされているのですが、その中に入りたいと思って。で、開けたらパッと膨らむ、みたいな。なので、楽曲も1枚のCDに入るギリギリの曲数を収録しました。いろんな意味で自分を“詰め込んだ”作品です。
――その感性もめちゃくちゃはしメロさんっぽくて好きです! ちなみに、アルバムを作る際は何から取り掛かられたのでしょうか。
はしメロ:リリースした曲はほぼすべて入れようと決めていました。なので、曲順をどうするかから考え始めましたね。どう並べるかは自分の感覚を頼りに流れを想像して、「1曲目は絶対これでしょ」「そうなると2曲目はこれ」「3曲目はこっちかな?」というように決めています。私は楽曲を作る時に「こういう曲が聴きたい」と思って作っているのですが、アルバムも同じ。「こういう流れのアルバムが聴きたい」と曲作りの延長のような感覚で並べていきました。
――感覚によるところが大きいとは思うのですが、並べる際は歌詞、サウンド、テンポ感などどこを重視されるのですか?
はしメロ:うーん、空気感ですかね。まず1曲目を決めたのですが、「ここは盛り上がる曲ゾーンにしよう」と、空気感の似た楽曲を持ってきました。その他にもかわいいゾーン、歌詞をしっとりめに歌い上げるゾーンのように、いろんなゾーンを作っています。
――あぁ、なるほど。◯◯ゾーン、というのは楽曲制作している最中から考えていたりも?
はしメロ:そうですね。「これはかわいいゾーンだな」というような楽曲のカテゴリーはなんとなく見えているかもしれません。それに、「アルバムに入れるなら◯曲目あたりかな」、「前半と後半だったら後半寄りかな」なども思い浮かびます。
――そうなると、ライブのセットリストも考えやすそうですね。
はしメロ:たしかにそうかも。「これは1曲目すぎる!」「これは最後すぎる」という感覚は持っているので、考えやすいです。
――ちなみに、並べ方に関して、リスナー目線を考えて並べたことなどもあるのでしょうか。
はしメロ:意外とないかもしれません。というのも、私はめちゃくちゃ客観視して曲を作っているんですね。実体験は曲にしていなくて、「こういう曲が聴きたい」という思いで作ることがほとんど。アーティスト活動をしているそもそもの部分が、リスナー寄りなんですよね。
――いい流れで作られた今回のアルバムですが、過去曲も多く収録されていますよね。改めて流れを考えながら収録したことで、新しく見えた面などもあるのではないでしょうか。
はしメロ:新しく見えたというよりも、どの曲にも自分らしさをすごく感じました。アルバムにする前は「昔の曲はちょっと懐かしく感じるな」とか「新しい曲は今っぽいな」と思っていたのですが、こうして流れで聞いてみると歌詞もメロディもあんまり変わっていなくて。全部“はしメロっぽい”曲だと感じました。ただ、やっぱり作っている年代がバラバラなので、歌い方の変化のようなものはあるかもしれません。
――歌声の絶妙な変化にも注目ですね。では、アルバムの新録曲について質問させてください。まずは「ブルーシャドウにのっかって」。どんな経緯で誕生した楽曲なのでしょうか。
はしメロ:この曲は新曲として収録していますが、実は結構前からあった楽曲なんですよね。たしか1~2年前にはできていたと思います。なぜだったのかは覚えていないのですが、「ブルーシャドウ」という植物(フォサギラ・ブルーシャドー[シロバナマンサク])のページを見ていたことがあって、「ブルーシャドウ」という言葉を使って曲を作ろう、と。植物の葉っぱは落ちるので、「落ちる」をテーマにできないかなと考えた結果、人に対して、物に対して、「恋に“落ちる”」というテーマで作ることにしました。
ブルーシャドウにのっかって / はしメロ
――その経緯も“はしメロ節”ですね。〈Why are you so nice to me?〉という歌詞がお気に入りとのことですが、他にもこだわりがありそうです。
はしメロ:この曲はサビを印象的にしたいと思って。〈ブルーシャドウにのっかって/君と優艶に〉の後に〈Ah〉と歌っている部分があるのですが、あえて高いキーにして印象を強めました。それと、曲の後半で転調していくことで、“恋に落ちている感”を表現しています。
あとは、言葉選び。〈よって別途付属のタレがんす〉なんかは「何言ってんの?」と思いますが、自分らしい歌詞だなと。「恋に落ちる」を自分なりの言い方で書き進めたのはこだわりですね。
――そんな同曲にかけて。最近、はしメロさんが恋に落ちたものはありますか?
はしメロ:ちょうどさっき恋に落ちたものがあります。KiiiKiiiの「404 (New Era)」です。これ、ヤバいんです! まずタイトルの404=エラーと、New “Era”が掛詞になっているのを見た時点で「いいね!」と思いました。曲を聴いてみると、めっちゃかっこよくて。字幕の歌詞を見ながらキュンキュンしていました。
404 (New Era) / KiiiKiii
――私もあとでチェックしておきます! そしてお次は「meter」。以前は「mater」でしたが、スペルを変えたのはなにか理由があったのでしょうか。
はしメロ:それ、ただの間違いでして……。
――え?
はしメロ:YouTubeにデモで出した時、なぜか「mater」って書いてしまって気がつかなかったんです。今回編曲をしていただいた石田(勇喜)さんに「この曲をやりたいです」とお渡ししたら、「“マター”なんだ」と言われて。そこで改めてmaterの意味を調べたら、「おっかさん」と出てきたんですよ。石田さんが「“おっかさん”っていう意味のタイトルだけど、歌詞のこと教えてくれる?」と。そこではじめて間違いに気がつきました。で、今回サラッと直しました。
――まさかの「おっかさん」(笑)。もはや奇跡ですね。
はしメロ:スタッフさんも誰も気がついていなくて、何か意味があると思っていたみたいです。石田さんも「おっかさんというタイトルだから、母の寂しい心情を描いたのかな?」と真面目に聞いてくださったのですが、私だけめちゃくちゃ笑っちゃいました。
――再録するにあたって音源を聴き返してみて、「今ならこう歌うのに」と思った部分はありましたか。
はしメロ:Aメロ、Bメロで言葉を詰めているのですが、そこの表現は「今ならもうちょっと冷たく、心情に沿って歌うな」と思いました。あとは、デモで出した音源が外で録った歌なんです。なので、何もいじっていない状態で。今回はちゃんと録音したものなので、前回よりも進化していると思います。
――となるとわかりやすく変化が感じられそうですね。「meter」を再録しようと思ったのも、それが理由ですか?
はしメロ:そうですね。「meter」は曲を作り始めた当初に作った曲なのですが、すごく気に入っていて。以前から、ちゃんと清書したいと思っていました。クールな感じで歌いたいという思いも実現できてよかったです。
リリース情報
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曲作りの源にある“感性”と“想像”
――お次は「ナイナイラブ - album version」。この曲はBPMが大きく変わっていますね。
はしメロ:めっちゃ速くなりました! この曲はライブで盛り上がる曲だったのですが、当初作った時のステムデータをなくしてしまって……。maeshima soshiさんにお願いして作り直してもらうことになりました。アレンジしてくださって、このBPMになったのですが、とにかく速くて歌うのが大変でした。
――それでも歌いこなせていて、歌唱力の高さも感じました。新たな魅力も出たのでは?
はしメロ:元のバージョンは編曲まで全部自分でやったので荒い部分もありましたが、洗練されたと思います。以前はテンポもそこまで速くなかったので、幅広い年齢の方に聞いていただける、耳馴染みのいい明るいイメージ。今回のは明るくてポップな部分は変わらずに、かっこいい部分が突出したというか。クラブミュージック的な要素が追加されて、オシャレになったと思っています。曲を聴いて、見える景色も変わったのかなって。
――ライブでもこのバージョンを聴けるのを楽しみにしています。そして、「ひめすぎる」。この曲は、テーマがはしメロさんらしいなと感じました。
はしメロ:頭の中では「あんなことも、こんなことも、やっちゃえ!」と思いつつ、現実では「だめ、だめ」と自分を制するというお嬢さんが主人公のお話です。可愛い女の子を想像して作りました。
――歌詞も面白いですよね。〈ひめひめひめひめ〉ではなく〈めひめひめひめひ〉になっていたり。
はしメロ:「姫、姫、姫、姫」と連呼されていると、「めひ」に聞こえてきますよね。主人公はどこででも「姫」と呼ばれすぎていて、「ひめ」なのか「めひ」なのかわからないという感じを表現してみました。そこ以外にも歌詞は結構こだわっていて。〈とんがっちゃえよムーブ/ひねっちゃえよループ〉〈やんなっちゃうよムーブ/飛んじゃえよズーム〉など現代的な反抗心を書いてみたり、色眼鏡は自分には似合わないものだと思っていたけれど、実はその恩恵を受けているのかもしれない……という主人公の思いを反映してみたり。かわいいサビではありますが、深いことも言えているのがポイントです。
――たしかに。
はしメロ:聴く方によっていろんな「姫」が思い浮かぶと思うんですよね。個人的に〈あれよ〉というワードに和を感じているのですが、現代的な意味の「姫」にも捉えられるし、面白い曲になったと思います。
ひめすぎる / はしメロ
――そして「浴す」。「好きでもあり、嫌いでもあった曲」とのことですが、その理由を教えてください。
はしメロ:「浴す」は、当時「こういうジャンルの曲を作ってみたいな」と思って作って、編曲まで自分でやりました。なのでぐちゃぐちゃな部分がたくさんあったのですが、すごく褒めていただいて。「世界観がすごい」という感想をいただいた時は嬉しかったのですが、私としてはぐちゃぐちゃだし、歌も下手だし、恥ずかしいと思って自分で配信を取り下げているんです。その後、「『浴す』、どうしたんですか?」と聞かれてもあまり答えないようにしていました。それくらい嫌いだったんです。それでもいい曲と言ってくれる方がいらっしゃって。私自身も曲そのものや歌詞、メロディ自体は好きだったので、それだったら自分も納得する形でもう一度世に出そうと思って、今回再録することにしました。
――そうだったのですね。
はしメロ:なので、曲自体で特別変えた部分はないんです。細かなところのアレンジやリズムを整えたくらい。ちゃんときれいに整えられたし、歌もしっかりレコーディングできたし、今では好きな曲になりました。新たに生まれ変わった曲として、皆さんにも広く聴いていただけたら嬉しいです。
――生まれ変わった「浴す」含め、全曲要チェックですね。今回『aero』を聴いて、改めてはしメロさんの感性が素晴らしいと感じて。おそらく、はしメロさんはロジックで曲を作るのではなく、感性で作るタイプですよね。そうなると、質問されても言葉にしづらい部分が多いと思うんです。言葉にしづらいと感じるのは、主にどういったことに関する質問なのでしょうか。
はしメロ:「どういう気持ちを込めて曲にしているのですか?」という質問は、難しいと感じてしまいます。私の場合、曲に自分の気持ちを入れていなくて、「こういう人がいたらきっとこういう思いを抱くんだろうな」と想像で曲を書いているんですね。それは私自身の気持ちではないので、「◯◯だと思います」とか「たぶん◯◯なのかもしれないです」というあいまいな答えしか出なくて。そこは難しいなと思っています。
――冒頭でお話しいただいた「客観的な視点で曲を作る」に繋がっている感じがしますね。逆に話しやすい質問などはありますか?
はしメロ:曲の主人公の特徴ですね。「こういう人が主人公で、だからこの曲はこういう色味で」というお話はすぐに出てきます。でも、そこに対して「なぜそういう主人公になったの?」と聞かれると、「えっと……」となってしまいます。
――感性で生まれたものが故、ですね。
はしメロ:そうなんです。だから説明するのが難しくって。
――感情を深掘りするのって難しいですもんね。客観的視点を持ちつつ、多くの曲を作っていらっしゃいますが、ご自身の曲に共通している要素はどんなことだと思いますか。
はしメロ:すべて私自身の曲ではない、ということです。その上で、どの曲の歌詞にも“はしメロっぽさ”が入っているのかもしれません。実際に(曲を)書く時にも、「他の誰もしていないような表現の歌詞がいいな」と思いながら書いています。たとえば「かわいいkm」だったらマスカラを〈ミリ単位のウェポン〉と表現してみたり、「パレット」だったら〈代わりになれんモルモット〉という言葉を選んでみたり。自分らしいワードは入れ込めているのかなと思います。
――ワードチョイスはすでに“はしメロ流”ができ上がっているというか。
はしメロ:実は、日常的に一般的な使い方じゃない表現を使うことがあって。「よし、歌詞に入れるぞ!」と気合いを入れて書いているのではなく、素直に書いただけではしメロっぽさが出せているのかもしれません。なので、歌詞のテイストは昔からあまり変わっていないんです。
――それはすごい。アーティスト性をものすごく感じました。
はしメロ:「テイクアウト」はギターのコードも弾き方もあまりわかっていない頃に作った曲なんですね。特徴的な言葉はないですが、「ここにあるべきではない愛は、ちゃんとあるべき場所に持ち帰ってほしい」という気持ちを「テイクアウト」と表現しているのは自分らしいなと思います。
――逆に、変化した部分というのはあるのでしょうか。
はしメロ:自覚症状的には、あまりないかも。でも、わかりやすく書くことはより意識するようになったと思います。さすがに「意味わかんないよね……」と思ったら、ちょっとだけ遠慮するようになりました。それに、言葉の意味を間違えて使うことも普通にあるので、ちゃんと調べたり(笑)。そういう部分には気をつけるようになりましたね。
――たとえば、今の楽曲制作の工程ではなく、新しいやり方を試してみようと思うこともありますか?
はしメロ:あります、あります。やってみたいとは思っています。今、なんとなく「こう作る」という型がありますが、新しいやり方もあるのかなと常々思っています。
――作り方のひとつとして、自分で作った曲に影響されて別の曲を作るということはあるのでしょうか。たとえば、明るい曲を作った反動で暗くて重めの曲を作ってみたくなる、とか。
はしメロ:一応やったことはあります。今回のアルバムにも入っているのですが、『ism EP』という作品に収録した「YOKAZE replay」「みらみら」「routine」は連作ではないですが、主人公の気持ちが続いているという視点で書きました。「YOKAZE replay」で悲しくなって、「みらみら」でちょっと元気になって、「routine」で新しいスタートを切る、という流れです。
――そういう流れで聴くのも面白そうですね。『aero』という作品を経て、作ってみたいと思った楽曲の構想などはありますか?
はしメロ:曲ではないのですが、次はくんたま以外をリファレンスにしたジャケットが作りたいと思いました。『aero』はくんたまからイメージが膨らんででき上がった作品なので、次はどんなものからインスピレーションをもらえるんだろうと、いろいろ思い浮かべています。あとは、「こういう曲がないから作ってみようかな」という作り方もいつかしてみたいですね。まったく意味がない曲、とかも面白そう。
――聴いてみたいです(笑)。では最後に、『aero』の26曲を自分以外のアーティストが作った楽曲だと思って聴いた時に、「この人センスあるな」といちばん感心するのはどの曲ですか?
はしメロ:えー! どれだろう。じゃあ、「mine」で。この曲はサビの入りの音がかっこいいんです。絶妙な音で入っているので、きっと「好きだわ〜」となると思います。あとは情景描写が素晴らしい。自分で言っちゃうんですけど!
――(笑)。いいと思います!
はしメロ:これ、本当に気に入っているんです。音源ファイルの名前も「mine(めっちゃいい)」にしていたくらい。なので、この曲を初見で聴いても「かっこいい」と思うと思います。
――「mine」は「第三者として見ている自分は、少しだけ悲しいです」というはしメロさんのコメントもいいですよね。主人公の幸せかもしれないという気持ちも想像しつつ、作り手としては悲しい気持ちを感じているという。これだけ想像力を巡らせられるのも素晴らしいな、と。
はしメロ:小さい頃からひとりで想像遊びをよくやっていたんです。それが今、アーティストとして役立ってくれているのかもしれません。その想像力を活かして、これからもいろんな楽曲をお届けできたらいいなと思います。
『aero』全曲試聴トレーラー / はしメロ
リリース情報
関連リンク
aero
2026/02/25 RELEASE
VVCL-2866
Disc01
- 01.サイキック
- 02.ブルーシャドウにのっかって
- 03.ときはなて!
- 04.meter
- 05.わるいゆめ
- 06.メリみ
- 07.百面相
- 08.かわいいkm
- 09.パレット
- 10.ナイナイラブ - album version
- 11.みらみら
- 12.がなかむ
- 13.en-en
- 14.routine
- 15.トリキの系列です
- 16.渋谷のオナゴ気が強い
- 17.tan tan tan
- 18.mine
- 19.ヨロヨロ (feat.7co)
- 20.YOKAZE replay
- 21.f=ma
- 22.yosumi
- 23.テイクアウト
- 24.ひめすぎる
- 25.安泰
- 26.浴す
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