Special
<コラム>back numberの“歌わなければならなかった想い”に包まれた2025年――寄り添う言葉は2026年、より多くのリスナーのもとへ

Text: 天野史彬
今年アルバムのリリースがあったわけでもないし、大規模な全国ツアーがあったわけでもない。が、2025年を振り返ったときに、back numberがこの1年を通して世に放った3曲のシングル曲たちが、如何に特別な重みと深みと鮮やかさを持ちながら、自分の日々に響いてきたかを実感する。
最初は「ブルーアンバー」だった。今年4月から6月にかけて放送されたドラマ『あなたを奪ったその日から』の主題歌でもあった1曲。いつの日か置き去りにしてしまった、でも確かに芽生えていた感情。どんな人の内側にもきっとある「なかったこと」になんてできない悔しさや寂しさや悲しさ――そうしたものに光を当てるような、作詞作曲を務める清水依与吏(Vo / Gt)の人間の哀切を見つめる眼差しの鋭さと温かさを実感させる1曲だ。プロデュースを蔦谷好位置が務めたサウンドは、美しくもあるが激しくもあり、この曲が持つ「叫び」の感覚を、端正な旋律の奥から見事に引き出していた。
6月には「ある未来より愛を込めて」が配信リリースされた。モスバーガーのCMソングだった1曲で、これから先の未来を生きていく若い世代へのメッセージソングと言える。この時代を生きながら、先の見えない未来を不安に思う若い世代に向けて、「大丈夫だ」と、そう確かに言い切る覚悟を感じさせるこの曲は、back numberがこの社会において「大人(=未来)」としての役割を引き受けようとしている――そんな頼もしさを感じさせた。たくさんの希望のメッセージが羅列するように歌われるが、それを「無責任だ」なんて言わせない、「いろんな不安や絶望を知ったうえで、このメッセージを歌うことを俺たちは選択したんだ」という強い意志が楽曲からは伝わってきた。sugarbeansがプロデュースを務めたサウンドも晴れやかでダンサブル。バンドの新境地を感じさせた。
そして、7月には劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』の主題歌「幕が上がる」がリリース。「弱さ」ではなく、「強さ」でもなく、「強くありたい」と願う人の心、揺れ動きながらも懸命に生きる心の姿が、飾り気なく、真摯に、歌われる1曲だ。歌われる一言は、まるで「特別なことを歌ってやろう」なんて自意識を感じさせない素朴さがあり、だからこそ如何に深く、清水依与吏が自分自身の人生や胸の内と対峙しながらこの曲を書いたかが伝わってくる。「大作映画の主題歌」と説明されればゴージャスな曲を想像する人も多いかもしれないが、この曲はそうではない。親密で、パーソナルな、「人一人ぶん」と言えるような、ぬくもり。それこそが、なによりの「back numberらしさ」と言えるだろう。小林武史がプロデュースを務めたサウンドも、流麗なストリングスなどを取り入れたリッチなアレンジだが、震えながら、押しつぶされそうになりながら、それでも一歩一歩未来に向かって歩を進めていく人間の足取りに繊細に寄り添っている。
こうして2025年に発表された3曲を振り返ってみれば、今のback numberがたくさんの期待や役割を背負いながら、自らの音楽世界をより深い場所へ、そして、より新しい場所へと運んでいこうとしていることがわかる。そして、進化し、大人になっていくバンドだからこそ、これまでに発表してきた代表曲たちも信頼され、常に新たなリスナーたちと出会い続けているのだろう。「高嶺の花子さん」や「花束」のような人気曲たち、それにこの時期になればやはり聴きたくなる「クリスマスソング」のような楽曲も、もはや時代を超えた「普遍的な名曲」としての威風堂々とした響きを獲得しているように思える。
若い世代のバンドにもback numberからの影響を公言するバンドは多い。だがやはりback numberこそが特別だと思えるのは、悲しみも、希望も、「好きだ」という気持ちも、いつもそれらは心の中の断崖絶壁のような場所から、「歌わなければならなかった想い」として歌い上げられている――そんなふうに感じさせる強い意志が、彼らの楽曲から感じられるからだろう。誰が「そんな人間は愚かだ」と言おうが、自分たちは「弱くて、だからこそ気高く強い人間の歌」を奏でる。そんな信念が、back numberの曲からは感じられるのだ。歌は「正しさ」のためにあるわけじゃない。歌は「人間」のためにある。back numberの曲を聴いているといつも、僕はそんなことを思い出す。
back numberは来年、史上最大規模となる初の5大スタジアムツアー【Grateful Yesterdays Tour 2026】を全国5か所9公演で開催することも発表している。まだまだ彼らは進み続けるだろう。
冬になるとまた聞きたくなる
back numberウィンターソング5選
四季や行事に寄り添い、人々の心にそっと染み込んできた音楽。春夏秋冬の移ろいが感じられる日本では、同じ曲を毎年聴いても飽きないのは、そこに自分の思い出が重なるからだろう。肌寒さを感じ始めるこの季節、街は少しずつクリスマスの装いに変わり、back number の楽曲も一層多くの人の耳に届いている。
Billboard JAPAN集計では、back numberのストリーミング1億再生突破曲数は30曲で、Mrs. GREEN APPLEに次いで2番目の多さ。NHKウィンタースポーツテーマソングに決まった新曲「どうしてもどうしても」も、新たな冬の名曲となりそうな予感がする。
「クリスマスソング」(4.7億再生)
「ヒロイン」(4.1億再生)
「ハッピーエンド」(5.2億再生)
「冬と春」(1.4億再生)
「思い出せなくなるその日まで」
リリース情報

「どうしてもどうしても」
2025/12/27 DIGITAL RELEASE
プレアド・プレオーダーはこちら
ツアー情報
【back number “Grateful Yesterdays Tour 2026”】
2026年5月2日(土)宮城・キューアンドエースタジアムみやぎ
2026年5月16日(土)、17日(日)静岡・静岡エコパスタジアム
2026年5月23日(土)、24日(日)大阪・ヤンマースタジアム長居
2026年6月13日(土)・14日(日)神奈川・日産スタジアム
2026年6月27日(土)、28日(日)熊本・熊本えがお健康スタジアム
詳細はこちら
関連リンク
back number 公式サイトback number 日本レーベルサイト
関連商品


























