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<インタビュー>FEMMが最後に伝える、お互いへの想いとエージェントへの感謝

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Interview & Text: 岡本貴之

 RiRiとLuLaによる意思を持ったマネキンラップデュオ=FEMMが、2023年いっぱいで10年間の活動に幕を閉じることとなった。最後の作品となるEP『CHERRY』には、彼女たちが世界に向けて発信してきた表現のセルフオマージュがある一方で、これまで一切表に出すことがなかった、パフォーマンスの裏側を見せたMVも公開されるなど、まさに活動の集大成となっている。今回のラストインタビューで、楽曲に込められたエージェント(FEMMファンの総称)への感謝と、独自の活動をしていく中で支え合ってきたパートナーへの想いを訊かせてもらった。

しんみりした気持ちになってる時間が正直全然ないですね(笑)

――2023年4月に、年内いっぱいで活動の幕を下ろすということを発表されました。いよいよ12月に入りましたけれども、今はどんな心境で活動をされているのか、それぞれお聞かせください。

RiRi:発表する前は、エージェントのみなさんがどう思うかなとか、びっくりさせちゃうかなとか悲しませちゃうかなとか、いろんな気持ちがありました。でも、発表したらたくさんの反響とお言葉をいただいて。「寂しい」っていう声もありながら、前向きなコメントをいただいたりして、エージェントのみなさんがずっとついてきてくださったんです。今年はありがたいことにたくさん海外に行かせていただいて、5月にポーランド、その後にロンドン、ドイツ、アメリカ……この間はサウジアラビアに行って、たくさんの国のエージェントに会う機会を持てました。今は年末まで、すごく駆け足でたくさんの気持ちと感謝を伝えられるように、日々LuLaさんと一緒に考えながらやっているので、しんみりした気持ちになってる時間が正直全然ないですね(笑)。ちょっと嵐のような日々なんですけど、毎日楽しんで過ごしてます。

LuLa:FEMMは、当初3年間と期間を決めて活動する予定だったので、それが気づいたら10年間、多くのエージェントの皆さんに応援をしていただいたというのが、すごく不思議でたまらない気持ちです。もちろん、始まりがあれば終わりもあるんですけど、MVを出したり撮影をしたりするのも「これが最後なんだ」って思うと、今日を大切にしなきゃなっていう気持ちで過ごしています。実際に活動をしていると、RiRiさんが言ったように、と「しんみりしている場合じゃない!」っていう感じなんですけど(笑)、エージェントのみなさんと触れ合うときには、やっぱりグッとくることはあります。


――今は日々お忙しいでしょうから、時間が経ってから感じることもあるのかもしれませんね。

RiRi:それは絶対あると思います。終わらないとわからないものってやっぱりあると思うので、それも楽しみといえば楽しみなんですよ。


――ラストEP『CHERRY』を聴くと、しんみりどころか、あくまでもFEMMらしいクールかつかっこいい楽曲でメッセージを伝えているところがいいなと思いました。

RiRi:ありがとうございます。ラストの曲は卒業ソングみたいな曲じゃなくて、あえてパンチの効いた曲にしたいねっていうことでチームのみんなと意見が一致して、こういう作品になりました。

LuLa:最初に、私たちの代表曲の「Fxxk Boyz Get Money」と同じぐらい、みんなに勇気を与えられる曲を作りたいなっていうのがあって。それと、この10年間でできなかったことが「ソロ曲を歌う」ことだったので、このタイミングしかないかなと思って、それぞれソロ曲に挑戦しました。

RiRi:LuLaさんが言ったように、タイトル曲の「CHERRY on TOP」は、代表曲の「Fxxk Boyz Get Money」みたいに作りたかったんです。私たちがデビューしてすぐの2014年に出した曲なんですけど、それからずっと聴かれていて、「本当にエージェントの方がいるのかな?」って思っていたような国――マレーシアとかサウジアラビアとかでも、ライブでこの曲を披露すると一緒に歌ってくれて、「Whoo!」って盛り上がるんですよ(笑)。「みんなやっぱりこの曲が好きで聴きたいんだな」って、いつも思うのが「Fxxk Boyz Get Money」なんです。それもあって、同じ雰囲気のガールズパワーを持った曲にしたくて、タイトル曲にはとにかくこだわりを詰め込みました。ソロ曲のほうはそれぞれが作詞を担当してるんですけど、いつもガールズパワーで勇気づける曲を歌っている中で、あえてリアルな部分を出すことによって、もっとリスナーに寄り添って近くで感じてもらえるかなっていうところで、あえて弱さを出してみました。

――「CHERRY on TOP」は、MVもセルフオマージュを感じさせる映像ですよね。

LuLa:「CHERRY on TOP」のMVを撮ったチームが、監督さん、カメラマンさん、衣装さん、メイクさんもみんな、FEMMがまだ動き出したばかりでみんなに知られる前からずっと一緒にやってくれているチームなんです。これまでの“1.0”と今の“2.0”を掛け合わせたMVを作りたいねっていうことで、オマージュをしてみました。MVをエージェントのみなさんに見ていただいたら、「あ、これはあのMVだ!」とか、「あのMV好きなんだよね」みたいにどんどん話の花が咲いているみたいで、作ってよかったなってすごく思いました。

RiRi:今回のEPは、初めて私たちがセルフプロデュースした作品なんです。「CHERRY on TOP」のMVも企画から考えて、監督さんにオファーしてっていうところからすべて私たちでやりました。私たちの等身大マネキンがあるんですけど、せっかくだから最後にどうにかこの子たちをMVに登場させたいというイメージから始まっていて。私たちは、パフォーマンスをするときにはビニールに包まれた状態でステージに上げられて、ビニールを取って準備OK、という状態でパフォーマンスをしていたので、そういう自分たちの歴史も振り返りながら……最初の“出荷状態”というか、マネキンたちにビニールをかけることで、ひとつの時代に「ありがとう」と言って、次の未来へ進んでいくメッセージを込めました。それを監督さんがバッチリ理解してくださったので、ちょっとエモい内容になっています。



CHERRY on TOP (Music Video) / FEMM


初のソロ曲

――それぞれのソロ曲も、長年聴いてきたエージェントのみなさんはエモさを感じる2曲だと思います。RiRiさんの「Living in the Spotlight」はどんな想いで作りましたか。

RiRi:楽曲制作する際に、コンポーザーの方に「こういった感じでお願いします」っていうリファレンスを送って、EDMポップスソング的な感じにしたかったんです。FEMMに於いて、RiRiというマネキンは「コンバット型マネキン」なので、とにかく強いんですよ(笑)。格闘もできますし、一緒に活動してるLuLaを力の面で守ったりする役割があるので、まずそういった強さ――ちょっと狂気的だったり攻撃的な面をビートで表現したいと思いました。それと同時に、一応卒業ソングという意味合いもあるので、強さばかりではなくて弱い部分やリアルさ、ちょっとネガティブな気持ちも全部含めて、「ひとりの人間の気持ち、マネキンの気持ちなんだよ」っていうことを知ってもらうことで、リスナーの方の毎日に、いろんな局面で寄り添える曲にしたいなと思って作りました。


――LuLaさんはこの曲を聴いてどう感じましたか。

LuLa:すごく率直な曲だなって思います。RiRiでもあり、普通の女の子でもあるっていうのが、私にとってはいちばん近くで彼女のことを見ていたからこそわかるなっていう曲ですね。


――LuLaさんの「Butterfly to the Moon」はいかがですか。

LuLa:この曲では、歌詞に出てくる女の子がこれまでどんな音楽に影響を受けてきて、今どんな音楽を聴いているのかを表したくて。アコースティックギターやバイオリンを使いたいと、一緒に楽曲制作をしているRadical Hardcore Clique(以下:RHC)に伝えて作っていただきました。歌の内容としては、ある女の子が今に辿り着いて、これからどういうふうに生きていくのかっていうところにフォーカスしたくて、そこにLuLaの姿が見え隠れするような形になればいいなと思って歌詞を書いたんです。その中には、エージェントのみなさんへの感謝も込めているし、どうやって生きて行くかという多くの人が直面する問題――そういう壁にぶつかったときに、聴いてもらえたらなと思って作りました。


――RiRiさんは、この曲をどのように感じていますか。

RiRi:私は彼女の詞を英詞に訳したんですけど、LuLaはシンプルに月が好きなんですよ。夜歩いていて、全然来ないなと思って振り返ると、月の写真を撮っていたり、ボーッと月を見上げてたりとかして(笑)。FEMMは「太陽と月みたいなキャラクターだね」って言ってもらえることが多いんですけど、LuLaが“月”担当なので、「月」っていうワードと夜のイメージがピッタリなんじゃないかと思いました。それプラス、「Butterfly」っていうワードなんですけど、これはLuLaがモチーフとして提案してくれたもので。ずっと蝶のように踊っているところと、すべては儚いものであるということ、私がファイトしまくってエンストを起こしたときに、癒してくれるLuLaの存在の心地良さも含んでいる。本当にLuLaにぴったりな曲だと思いました。


――「SUN」は、エージェントのみなさんに向けて、FEMMの2人がいなくなった世界に希望の光を置いていくような曲に聴こえます。

RiRi:本当にそうですね。エージェントのみなさんへのプレゼントのような気持ちです。5曲しか入ってないEPなんですけど、終わりの方に向かって光が差し込むようなイメージです。コロナ禍というすごくつらい時代をみなさん経験したうえで、今やイベントができるようになって、明るい時代が戻ってきたので、「SUN」というタイトル通り、日の光が降ってきて元気になるような曲っていうことで、今のタイミングにぴったりだなって思いました。卒業でしんみり悲しいんじゃないよ、希望の光があるよっていう曲です。

LuLa:「SUN」は、2018年に表参道でおこなわれたイベント【ADIRECTOR Vol.1『DOLLHOUSE』】で、RHCと一緒に作った未発表曲なんです。タイトルも元々「SUN」で、ポジティブな印象を受ける曲なので、今回のEPに入れたいと思いました。先ほどおっしゃっていただいたような意味合いもありますし、作った時期が違うので偶然ではあるんですけど、コロナ禍でみんなが憂鬱だった時期を越えて、そこから晴れに向かっていくような表現と、FEMMはこれで終わりだけど明るい未来があるよっていうことを組み合わせられた曲になったと思います。


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初めて活動の裏側を見せた意図

――「We Flood The Night (MYLK Remix)」は、1stアルバム『Femm-Isation』の1曲目を飾っている曲ですね。今回このリミックスを最後の曲として収録したのはなぜですか?

LuLa:「We Flood The Night (MYLK Remix)」は、私たちがずっとお世話になっているミュージシャンのMYLKちゃんとのご縁ができるきっかけになった曲なんです。MYLKちゃんがこの曲のリミックスをネット上にアップしていたのを聴いて、「この子すごいね」って。以前からレコーディングは済んでいたんですけど、発表する機会がずっとなくて、今回ぜひ出したいと思っていました。

RiRi:たまたまLuLaが(リミックスを)見つけたときは、カバーとして他の方が歌っていたんです。それがあまりにも良かったので、カバーした音源で私たちが歌いなおしたっていう、行ったり来たりしてる曲なんですけど(笑)。制作自体はかなり前におこなっていたんですが、アルバムにマッチしなかったり、タイミングがつかめなかったりしてリリースしていなくて。ただ、ふたりともいちばん好きな曲で気に入っていて、「絶対出したいよね」ということで収録しました。それと、この曲は私たちのライブのオープニングで必ずやっている曲なんですよ。いちばん最初にやる曲をいちばん最後に持ってくることによって、EPを最初と最後で締めくくったという、ちょっとしたメッセージ性も含んでいます。


――初めて活動の裏側を見せたこの曲のMVも公開されましたが、これはどんな意図で制作したのでしょうか。

RiRi:今までの10年間、なるべくMV撮影やライブ、いろんな撮影の現場で、自分たちでメイキング映像を回すようにしていて。「これをいつかそのエージェントのみなさんに見せたいな」っていう気持ちで、デビューした日から思い出ビデオみたいな形で撮り溜めていたんです。でも、私たちは完璧なマネキンとして、砕けたところや疲れた姿を見せずに、みなさんに元気を与えたいというパフォーマンス・スタイルのグループだったので、マイナスになるような部分は出したくない思いもあったんです。だけど10年間経って、エージェントのみなさんとすごく距離も縮まりましたし、今ではミート&グリートで実際にお話したりハグしたり、人間的な距離の近さがすごくある。「実はこういうふうにがんばって作っていたんだよ」っていうものをようやくお伝えできるなと思って作りました。

LuLa:私の中では、レコードで言えば「CHERRY on TOP」がA面、「We Flood The Night (MYLK Remix)」がB面というような形で捉えています。表では「CHERRY on TOP」のMVみたいにバッチリ表現していて、裏では「We Flood The Night (MYLK Remix)」のMVで今まで絶対に見せることがなかった裏側を見せているので、その対比で観てもらえたら嬉しいです。



We Flood The Night (MYLK Remix) (Music Video) / FEMM


どんなパートナーだった?

――ステージでのパフォーマンス、楽曲制作も、おふたりがお互いのことを理解し合えているからこその10年間だったのではないでしょうか。RiRiさんにとってのLuLaさん、LuLaさんにとってのRiRiさんはどんなパートナーでしたか?

RiRi:そう言われると、さすがにちょっとしんみりしちゃいますけど(笑)。とにかく優しい子なので、「私が守らなければ」っていう気持ちがずっとあったし、今もあります。……(涙声で)本当に優しい子で、自分のことよりも周りを優先する子なので、大変だった部分もたくさんあると思うんです。でも内面はすごく芯が強い子なので、これからも頑張ってねっていう感じです。

LuLa:う~ん……(涙で話せず)。なんて言うんだろうな……マネキン(としての部分)と、女の子(としての部分)を含めて、その「子」だから、ここまで一緒にできたのかなって思って。たぶん、このふたりじゃなかったらできなかったなって思うんです。そんな「子」です。人じゃないです(笑)。


――12月16日には【Last FEMM-Isation】と題してロンドンで海外でのラストライブとミート&グリートが行われますが(※)、意気込みを聞かせてください。

LuLa:『CHERRY』と同じで、最初から最後まで私たちの手作りでグッズやビジュアルを含めて全部まんべんなく関わりながら、どれだけエージェントのみなさんに感謝を伝えられるか、喜んでもらえるかっていうことをすごく考えながら、一生懸命準備をしています。

RiRi:日本国内にも、もちろんエージェントの方はいらっしゃるんですけど、やっぱりいちばん曲が聞かれているのがアメリカとイギリスなんです。今までの海外のライブでもロンドンに行く機会がいちばん多かったのと、ずっと一緒にやってきた現地のレコード会社「JPU Records」との共同開催という形で、ワンマンライブをロンドンでやることになりました。時間やいろんなことの関係で全部の国へ行くことは難しいんですけど、1か所だけでもいいから最後にエージェントのみなさんに感謝を伝えて楽曲を楽しんでもらう場を作りたかったので、ちょっと遠い人は申し訳ないんですけれど、ロンドンまで飛んで観に来ていただきたいです。


――日本国内では、12月24日に東京・BAIAでファイナル・ライブ【HIMM & FEMM】が行われることも発表されました(※)。どんなイベントにしたいですか?

RiRi:ロンドンでラストライブをやることはもう1年ぐらい前から決めていて、着々と準備していたんですけど、日本国内ではどういうふうに開催しようか最後まで悩んでいて。デビュー当時から私たちを呼んでくださっている【fancyHIM】というイベントがあるんですが、ありがたいことに私たちの音楽への愛がすごく大きくて、「最後、一緒にやりましょう」と共同開催できることになったんです。パーティーで楽しく終わっていきたくて、クリスマスイブの開催になりました。私たちに関連するゲストの方も出てくれるので、お祭り的な雰囲気が出るんじゃないかなと思います。

LuLa:イベントタイトルが【HIMM & FEMM】と私たちの名前も入れていただいていて、本当に光栄なことだと思います。日本のエージェントのみなさんとも会えるので本当に楽しみにしています。これがオフィシャルでお会いできる最後の機会だと思っているので、是非みなさんと一緒に過ごしたいと思います。


――では最後に、エージェントのみなさん、音楽リスナーのみなさんに向けて、ひと言ずついただけますか。

RiRi:10年間のサポート、本当にありがとうございました。エージェントのみなさんがいつも温かい言葉をSNSやいろんなところでかけてくださるので、本当に楽しく毎日を過ごすことができました。いつもみなさんが私たちに「ありがとう」って言ってくれるんですけど、いろんな国に行けたのも、私たちの曲を聴き続けてくれたおかげだと思いますので、こちらが「ありがとう」って、いつも思っています。FEMMの曲はずっと残るので、これからも楽しく聴いてもらいたいなと思います。

LuLa:この1年を通して常にエージェントのみなさんにたくさんの言葉で愛を届けていただいて、自分がこれまでやってきたことも意味があったのかなって思えたので、そう思わせてくれたエージェントのみなさんに感謝しています。本当にありがとうございました。


(※)取材は両公演前、12月頭に実施。ライブはすべて終了していますが、当時のコメントとしてそのまま残しています。

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