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<インタビュー>INTO1 RIKIMARU 振付師とプレイヤー、両方の活動を経て気づいた“無限の可能性”を表現した新曲「UP and DOWN」

インタビューバナー

Interview & Text:高橋梓


 『創造営2021』から誕生したボーイズグループ・INTO1として、グローバルな活躍を見せるINTO1 RIKIMARU。レベルの高いパフォーマンスも然ることながら、彼の持つ世界観やキャラクターにも注目が集まっている。そんなINTO1 RIKIMARUが2月17日に新曲「UP and DOWN」をリリースした。同曲は人生における「UP」と「DOWN」を、彼なりの哲学で表現したダンスチューン。自ら作詞、作曲に参加、コレオグラフを担当しており、セルフプロデュース力を改めて示すことにも繋がっている。そこには一体どんな意味が込められているのだろうか。本人にその思いを語ってもらった。

“闇の殻”を破ってほしい

――まずは、「UP and DOWN」を制作しようと思った経緯から教えてください。

INTO1 RIKIMARU:僕、しゃべるのが下手で伝えたいことがあまり伝わらないことが多かったんです。だからダンスでストレス発散をしていたんですけど、自分の人生をもうちょっと色んな人に語りたいなと思って。今は歌もやっているので、言いたいことを歌詞に書いてみようかなと思ったのがきっかけです。


――というと、作詞をするうえでまずおこなったのは、言いたいことをピックアップするということだったのですか?

INTO1 RIKIMARU:そうですね。ストーリーを作って、細かく書いていきました。その中から、特に言いたいところをまとめて作っていきました。たとえば、ブリッジの〈黑暗夺走光芒〉(日本語訳:闇が光を奪う)からの部分。僕は「闇」って表現しましたけど、ストレスを感じたり、みんなそういうネガティブになる時ってあるじゃないですか。でも諦めずにその闇の殻を破ってほしいという思いを込めています。


――確かに「UP and DOWN」には「人生はいつも順調ではなく、好調な時もあれば、谷に落ちるほどの不調な時もあるが、これら全ての体験はどちらも人生の一部であり、経験することで人は成長する」という無限の可能性が込められています。この思いを書こうと思ったきっかけがあったのでしょうか。

INTO1 RIKIMARU:ありました。僕は振付師を始めてからずっといい感じで活動をしていたんですけど、ある時何も出てこなくなってしまって。ちょうどその時はひとつのコンサートで使う13曲の振りを1週間で作らないといけなかったのですが、約20秒のダンスブレイク部分だけが全然できなかったんです。1週間で47回くらいその部分の振りを作り直していました。他にも色々重なって、「もう何もできないなぁ」と気持ちが落ち込んでしまったんです。「もう、どうでもいいや」って状態になったんですけど、とりあえずもう1回だけ振りを作ってみようって作ったら、それが意外と良くて。諦めてもいいんですけど、ちょっと休憩してからやってみると意外と気持ちを上げられるんだなって思ったことがありました。


――INTO1 RIKIMARUさんのレベルでも、振りが出てこなくなる状態になるのですね。

INTO1 RIKIMARU:僕レベルがどのレベルかはわからないですけど(笑)、全然ありますよ。前までは何でもできるって思っていたのに、何かに突っかかった途端何もできなくなっちゃうんです。身体がそうなっちゃってるのかもしれません。


――今回作詞するにあたって、突っかかりはなかったですか?

INTO1 RIKIMARU:言葉遣いとか文字数とかは難しかったです。リズムやメロディの中に自分の言葉を入れないといけなくて。最初は思ったことを全部メモして、そこからどう縮めていくかを考えました。それに今回は中国語で書いているので、どういう言い回しがかっこいいのかが、僕まだわからないんですよ。なのでとりあえず中国語で書いてメロディを埋めてから1回歌ってみて、響きが悪いなと思ったら変えて。中国の友達にも「この言葉ってかっこいい?」「意味合ってる?」って聞いたりもしていました。


――日本語と中国語だと、発音の仕方も全然違いますもんね。

INTO1 RIKIMARU:そうですね。日本語は(これまで)ずっと喋っているからパッと違う言い回しが出てくるんですけど、中国語だと知らない言葉があったり、他の言い回しがわからなかったりします。大変なこともありましたが、新しい挑戦って感じで楽しかったです。


――加えて、作曲にも参加されています。

INTO1 RIKIMARU:主に音楽プロデューサーのKoshinさんとNONEさんが作ってくれた曲に対して、「こういうダンスをしたいから、こういう音を入れてほしいです」という感じで参加させてもらいました。僕は作曲に関しては素人なので、まだどうしたらかっこいいかがわからないんですよ。なので、「こうしたらどう思いますか?」という風な言い方をしていましたね。


――曲を作っている段階で、すでにダンスの振りも考えていたのですね。

INTO1 RIKIMARU:KoshinさんとNONEさんが作ってくれたメロディに合わせて僕が振りを付けてみたんですけど、あまりハマらなくて。1回自分の好きなように振りを作ってみたら、「こういう音が入ったらもっとハマるかも」というアイデアが出てきたので、それを加えていった感じです。たとえば、2コーラス目のラップの部分。はじめはビートが一緒だったんです。でもそれだとダンスも激しすぎるし、ちょっと疲れるかなと思ってビートを落としました。印象が結構変わったと思います。


――そういった緩急も意識されていた、と。

INTO1 RIKIMARU:僕、飽き性なので「この辺から飽きる」って思ったら変えます(笑)。あとは、言語に合わせるということもしました。中国語が元のメロディにあまり合わなかったんですよね。なのでメロディも若干変えて、ビートも変えて……とやっていたら、かなりブラッシュアップされました。


――振りの中ではどこがポイントになっているのでしょうか。

INTO1 RIKIMARU:僕は歌詞やメロディと動きをマッチさせたいんです。今回は中国語の曲で、曲調も中国っぽいメロディにしているので手の動きを龍、ドラゴンっぽくしています。僕、自分の飼っている犬にも「ロン」って名付けるくらいドラゴンが好きなんです。あとは、万里の長城も龍に見えるのでめちゃくちゃ好き。万里の長城の、上がったり下がったりしている感じも「UP and DOWN」に通ずるところがあるのかなって思っています。しかも無限に続いているじゃないですか。歌詞の中にも〈无限想象〉(日本語訳:無限の想像)という部分があったりして。そういった意味でも龍が振りのポイントになっているかもしれません。


――INTO1 RIKIMARUさんは今回のようにご自身の曲を振り付けするのはもちろん、他のアーティストにも振りを提供されていますよね。自分で踊る場合と、提供する場合、どんなことが異なるのでしょうか。

INTO1 RIKIMARU:正直、他のアーティストの振り付けをするのはそこまで難しくないんです。なぜかと言うと、イメージがあるから。この人はこういうスタイル、こういうカラーっていうのがわかるから、アーティスト側からの要望に僕のスタイルをミックスしていくと良いものができる。でも、自分には何がいちばん合うのか、イメージがわからないんです。しかも自分の振りなので自由に作れるから、ごちゃごちゃ混ぜすぎちゃって。「ちょっとうるさく見えるな」と思って減らすんですけど、減らすと「なんか寂しいな」ってなったりして。そのバランスが難しいです。


――人間、自分のことのほうがわからないものですもんね。

INTO1 RIKIMARU:そう。僕、自分の振りを作る時にダンサーさんを雇うんですよ。自分が参加しながら作るとわからなくなるので、僕の代わりに踊ってくれる人を探してビジョンを見てから良し悪しを決めています。


――なるほど。

INTO1 RIKIMARU:今回MVに出演してくれたダンサーさんも大変だったと思います。というのも、僕はいつも急に「あれがやりたい」「これがやりたい」ってなるタイプで。今回、ダンサーさんたちに会ったのは撮影前日だったんですね。妹がダンサー用にレクチャー動画を作ってくれたので、それを見て振り入れをしてもらって、当日撮影するという流れでした。でも、前日に急に振りが気に入らなくなっちゃって(笑)。7割くらい急に変えました。時間もなかったので、頭の中で振りと構成を考えておいて、当日撮影現場でトライして。だからダンサーさんたちは7時間くらいで全部覚えていることになると思います。


――7割!? INTO1 RIKIMARUさんのそのやり方がもはや天才ですし、それに対応したダンサーさんたちもすごい……。

INTO1 RIKIMARU:ダンサーさんたち、めっちゃ焦ってました。申し訳なかったです(笑)。そのMVも公開されるので楽しみにしていてほしいです。しかも、3パターン衣装があって全部踊り方を変えているんですよ。病んでいる人の設定のところではちょっと弱めに踊ったり、闇を表現しているところでは強めに踊ったり、自信に満ち溢れている設定ではオラオラ系で踊ったり。その違いが見ている方に伝わったら嬉しいです。



「UP and DOWN」Music Video / INTO1 RIKIMARU


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アメリカでの活動を経て、アジアを拠点に選んだ理由

――そして、INTO1 RIKIMARUさんご自身についても質問をさせてください。ダンスをやっていくうえで、いちばん最初に関わられた海外はアメリカですが、なぜ今、拠点をアジアにしたのでしょうか。

INTO1 RIKIMARU:まず、日本で先生からダンスを教えてもらっていた時、あまりしっくりこなかったんです。それでYouTubeでアメリカのダンス動画を見るようになってアメリカに行ったのですが、もうすごくて! ダンスに人生かけている人たちばかりで、食事よりダンス、服を買うよりもダンス、みたいな。その中で努力をしてきた僕の周りのダンサーたちは、今では世界で活躍しています。僕もそうなりたいと思ったんですけど、僕はアジア人なのでアメリカンドリームではなくアジアンドリームがいいな、とアジアでの活動を選びました。それに自分の作った曲、自分の歌う曲で踊りたいという夢が昔からあったので、歌の練習もしました。カラオケに行ってエコーを全部消して歌ったのを録音しながら練習したり、ボイトレに行ったり、それでも物足りなくて家でも練習したり。それである程度歌えるかなという感じになってきて、今に至ります。


――素晴らしいパフォーマンスの裏にはそんな努力が隠されていたのですね。

INTO1 RIKIMARU:自分では努力しているってあまり感じていないんですけどね。好きだからやっているだけ。遊びの延長みたいな感覚です。


アーティスト、振付師として大事にしていること

――今ではアーティスト、そしてこれまでは振付師としても活躍されてきました。それぞれの活動において、どんなことを大切にしていますか?

INTO1 RIKIMARU:振付師だと、新しい発想とお客さんへのサプライズ。視覚的にお客さんが驚くようなものを作るのが振付師の仕事だと思っています。でもプレイヤーになると、サプライズする振り付けがあっても「どう見せるか」が大事。見せ方によってサプライズがなくなっちゃうこともありますし。振付師の時は韓国人アーティストの方々に「もっとこうしてほしいです」って言ってきたんですよ。でも、いざ自分がやるとなるとできない(笑)。僕、ただかっこいいだけのダンスって好きじゃないんです。もっと「自分のダンスから曲が流れている」って感じでやりたくって。それを表現するのがプレイヤーとして大事なことだし、いちばん難しいことです。それを学んだのはマイケル・ジャクソンから。マイケルって今の時代と違って、録音もオートチューンなしなのに音程がぴったりだし、しかも感情も声に入っている。パフォーマンスもただ立っている、指を指しているだけなのに人を失神させちゃう。彼が普通に歌っているのにめっちゃ感動しますよね。


――マイケル・ジャクソンから影響を受けたとおっしゃるアーティストの方はすごく多いですよね。

INTO1 RIKIMARU:そう。服装だって、普通に考えたらタンクトップにちょっと丈の短い黒いパンツ、シャツって、そこまでかっこよくないじゃないですか。でもマイケルが着るとめっちゃかっこいい。独自のスタイルというか、他のものに影響されない感じがすごいんです。


「自分のダンスから曲が流れている」状態にするために

――先程おっしゃった「自分のダンスから曲が流れている」状態にするために、INTO1 RIKIMARUさんはどんなことを意識されているんですか?

INTO1 RIKIMARU:音にどれだけ自分のダンスがハマっているかを意識して練習する。でも音にハメるだけじゃなくて……。言葉での説明が難しいな。たとえば今、僕お腹が空いているんですけど、そのお腹が空いたという感情を動きに込めて踊るって感じ。でもそうやって踊った姿をビデオに撮って観てみると、大体やりすぎなんですよ。だからもうちょっと抑えようかなって調整していきながら作っていきます。


――自分を客観視する。

INTO1 RIKIMARU:振りを作るときからMVの撮影現場を頭の中で想定して、「今こっちから撮られている」って考えながらやっています。そうすると変わってくるんですよ。なんかね、世界で活躍している最近のダンサーって、みんな同じレベルで上手いんです。でもそれを超えるには表現力必要で。たまにいません? そんなにダンスは上手くないのに見せ方が上手くて、ダンスが上手い人よりも目が行っちゃう人。そういう人に話を聞くと、自分ひとりの世界に入って練習しているらしんです。そういう表現力を持って前に出られる人がいいプレイヤーになるのかなと思います。


――なるほど。そして、様々な活動をされているINTO1 RIKIMARUさんですが、この先世界の音楽シーンとどう関わっていきたいと考えていますか?

INTO1 RIKIMARU:僕はいろんなジャンルにチャレンジしたいタイプの人間で、まだ自分が定まっていないんですよね。だからまずは自分のスタイルを見つけようかなって思っています。BLACKPINKはこう、ビリー・アイリッシュはこう、ビヨンセはこうってあるじゃないですか。そういうスタイルを作って、世界の人に自分の存在を知ってもらえたらいいなと思っています。


――どんなスタイルになっていくのか、楽しみです。では最後にファンの方へメッセージをお願いします。

INTO1 RIKIMARU:新曲「UP and DOWN」は僕のストーリーの一部に過ぎないですが、ぜひ聴いてみてほしいです。もし人生に悩んでいる人がいたら、歌詞の意味も含めて聴いてもらって、すっきりしてくれたら嬉しいです。2022年にすでにYouTubeにムービーを上げているんですが、新しく工夫をしたり、サプライズを入れたりしているので、飽きずに楽しんでもらえると思います。そして、この曲は“エピソード1”なので、続きにも期待してください。


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