2015/01/01 12:00
余りにも唐突なリリースだった。2014 年末にポップ・ミュージック・ファンを震撼させた、ディアンジェロのニュー・アルバムである。『Black Messiah』は彼の約14年振りとなる3作目のフル・アルバムであり(紛れも無い、ディアンジェロの新作として歓迎すべき内容なのは多くの人がご存知だろう)、同時にディアンジェロ&ザ・ヴァンガード名義のデビュー・アルバムでもある。
今日に至るまで、ほとんど呪いのような21世紀型ソウル・ミュージックのフォーミュラを築いてしまった前作『Voodoo』以降、その傑作が引き起こした狂騒に、ディアンジェロは疲弊していた。RHファクター、スヌープ・ドッグ、J・ディラらへの数えるほどの客演仕事を除けば新作のリリースもなく、稀にニュースに触れてみれば地元リッチモンドでの飲酒運転/薬物所持による逮捕騒動など明るい話題も少なかった。近年になってたびたび、とりわけディアンジェロとは盟友であるザ・ルーツのクエストラヴ経由で新作制作状況が伝えられることになり、次第に新作発表が現実味を帯びて来た、というところだった。
12/15のダウンロード・リリース(12/23にフィジカル盤)に合わせて、Billboard JAPANにおいても声明文の和訳が公開されていたが、そちらによればファーガソン事件や2011年エジプト革命、「ウォール街を占拠せよ」といった市井の人々の行動が、本作の発表、ひいては『Black Messiah(黒い救世主)』というタイトルを導き出したと、ディアンジェロは語っている。
ブルージーなギター・リフと、ズレていくリズム、そして沸き上がるようなコーラスがディアンジェロらしい新境地を切り開き、“君は俺から離れられない。簡単なことじゃないさ”と歌われる「Ain’t It Easy」。“臆病者は1000回死ぬと言うが、勇者だって一度死んだらそれっきりじゃないか”と生死の狭間で苛まれる悲痛な兵士の歌「1000 Deaths」。そして、混乱の時代の最中にもコミュニケーションの可能性を手探りしようとするメロウ・チューン「The Charade」といったふうに、本作では序盤からポリティカルなメッセージが織り込まれている。
もちろん、セックス・シンボルとしてのディアンジェロも健在であり、ストリングスの重厚なアレンジと情感溢れるフラメンコ・ギターに彩られたラヴ・ソング「Really Love」は素晴らしくロマンチックだ。また、本作で鍵を握るナンバーと思えるのは「Back to the Future (Part I)」。時空をぐにゃりと捩じ曲げてしまう、このスウィング感に満ちたサイケデリック・ソウルには、記憶と予言が交差するようなスピリチュアルな歌が吹き込まれている。ソウルクエリアンズの『Voodoo』からザ・ヴァンガードの『Black Messiah』へと至る道筋には、優れた才能たちの化学反応がもたらした現象さえも血肉化し、普遍化するという意志が透かし見えて来るのだ。
優れた音楽はいつでも、時間という制約に縛られた精神を解放する。普遍的な肉体性、そして普遍的な反骨精神を手掛かりにブラック・ミュージックを更新した本作の最重要テーマは、そこにこそあるのではないか。『Black Messiah』の日本盤は、2/4にリリース予定。ぜひ体験してみて欲しい。
Text:小池宏和
◎リリース情報
『ブラック・メサイア』
iTunes:http://bit.ly/1IS8kbD
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