2026/09/30 18:00
U2によるニュー・シングル「シレンシオ」の日本語字幕付きMVが公開となった。
また、バンド結成からちょうど50周年を迎えた2026年9月25日に、故郷ダブリンで2度のサプライズ・ライブを実施。バンドを結成した母校マウント・テンプル・コンプリヘンシブ・スクールと、ダブリン中心部のグラフトン・ストリートで開催された。結成50周年を象徴する一日となったこの日の現地レポートは以下となる。
メンバー・チェンジも解散・再結成も一切なく、50年間をオリジナル・メンバー4人で共に走り続けてきたU2。彼らほど友情と団結で結ばれたバンドはいないだろう。1976年9月25日、“ドラマー、バンド仲間を募集”の貼り紙を見て集まった4人、ラリー・マレン・ジュニア、ポール・ヒューソン(ボノ)、デヴィッド・エヴァンス(ジ・エッジ)、そしてアダム・クレイトンが、初めてラリーの実家のキッチンで顔を合わせた。この運命の日を記念して、U2が故郷であり現在も住まうアイルランド共和国の首都ダブリンで2大イベントを行った。
あれから50年、2026年9月25日、彼らは母校である北ダブリンのマウント・テンプル・コンプリヘンシブ・スクールの校庭にて、後輩である生徒の前でライブを行った。どこからなのか情報を入手した地元の人が校門の入り口に群がり、メンバーを歓迎した。
午後2時をきっかり回ったころ、校庭の、1977年にライブを行ったのと全く同じ位置に設置されたステージに4人が姿を現した。6年制の中高校であるマウント・テンプル校の12歳から18歳の全校生徒900人弱と、ほかの教職員やバンドの関係者、親族や友人、そしてプレス関係者からなる観客の大歓声に迎えられて……。このイベントの様子はメディアやSNSを通してほぼ同時に情報発信されることになった。
1曲目は「アイ・ウィル・フォロー」。デビュー・アルバム『ボーイ』に収められた曲で、この学校に在学中14歳の時に、ボノは愛する母アイリスを脳梗塞で失った。母への思いと喪失感をこめたこの曲は、母校での帰還ライブの幕開けにふさわしいエモーショナルな1曲となった。続いて、「ヴァーティゴ」へ。2001年に他界したボノの父と彼との難しい親子関係を暗示させるテーマが根底にある『ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』(2004年)からの大ヒット曲。自らのロックのルーツを再訪しエネルギッシュなロック・サウンドと、ミレニアムを迎えた現代社会の混沌を表現したエネルギッシュなサウンドが魅力的な、U2のミレニアム時期の代表作と言える。
それに対して続く「ビューティフル・デイ」は『オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド』(2000年)からの曲で、これまた大ヒットし2001年度の【グラミー賞】3冠に輝いた名曲として世界中の人々から愛される。この後にバンドのデビュー・シングルにあたる「アウト・オブ・コントロール」が続いた。18歳の少年の焦燥感を表現したデビュー・シングルを、彼等はどんな気持ちで50年後に演奏したのか。また年齢とともに声帯や音域も変わるのが自然というもの。にもかかわらず10代の時に歌った曲をここで歌う難しさもあったのだろうか。ボノが自身を究極のハイスクール・バンドと自称してみるあたりも、実に納得がいった。U2こそ、永遠のハイスクール・バンドなのだ。
11月にリリースされる9年ぶりの新作アルバムの先行シングルにあたる「シレンシオ」が初めてここで披露された。「次は僕らの新作ロックンロール45回転シングルです。1分間で45回の革命を起こすなら、2分半で何度の革命が起こせるか?それは112回と半分、というのがその答えだ」と紹介。50年間ロックし続ける彼らにふさわしい新曲に、会場は熱く反応した。そして『アクトン・ベイビー』(1991年)からの「ワン」では、ステージに待機していたミュージック・ジェネレーション・ファンデーションという若者音楽教育組織のメンバーである10代のミュージシャンたちが、U2と共演することに。この曲はラブソングのように聞こえるが、ベルリンの壁のわきにあるハンザ・スタジオで録音されており、1989年に起こったベルリンの壁の陥落に触発された国の分裂と統一というテーマが根底にあるとされている。同様の問題をかかえるアイルランド人の、統一と平和への熱望が凝縮された美しい曲と解釈できる。そしてアンコールも同様に美しい名曲「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」。ほんの一握りの観客を対象にしたサプライズ・パフォーマンスではあったが、この曲が終わるころには、U2のライブには欠かせない一体感で会場は満たされた。
この後続いた午後のイベントは極秘で、プレス関係者にも一切内容が知らされていなかった。にもかかわらず、この母校ライブが行われ映像がSNSで発信されるやいなや市内でのライブがあるらしいという噂が浮上。メディアからの情報漏洩もあったことに加え、正午ごろからはイベント会場付近に警備用のバリケードなどが設置されはじめ、グラフトン通りのビューリーズ・カフェのバルコニーでU2がライブを行うという情報が出回り、午後2時ころから人だかりができ始めたらしい。私たちが6時を回ったころにイベントの地に到着したときには、グラフトン通りは何千人もの人でびっしり埋まっていた。辛抱強く道に立ち尽くし待つ時間は、非常に長く感じられたが、待ち時間中に群衆のなかからU2の曲を歌う人がいたりして、わくわく感いっぱいに盛り上がったりもした。
メンバーがビューリーズ・オリエンタル・カフェのバルコニーに姿を現したのは6時45分を回ったころだった。19世紀に紅茶の輸入業を始めたビューリーズが経営する1920年代にオープンしたこのカフェは、アイルランドの文豪ジョイスやベケット、イェーツなどが愛した伝統ある文化スポット。2階はミニシアターとしても愛され続けてきたという。現在ダブリンを代表するロック・バンドU2が結成50周年に感謝して市民にライブを届ける場としては最高のスポットと言えるだろう。
オープニングは「アイ・ウィル・フォロー」。「アウト・オブ・コントロール」と、初期の曲が続いた。近年米国テック企業を誘致し、経済的に急成長を遂げたダブリンは、それに伴い国際的な都市として変貌を遂げつつある。この事実を反映してか、グラフトン通りを埋め尽くした群衆には地元の人々に交じりブラジル人やスペイン人なども多く、様々な言語が聞こえてきた。ラテン系の人々の口笛を吹いたりわめいたりの肉体的な反応をみるにつけ、まるでU2南米ツアーにきているのか?という錯覚さえ…。
3曲目の「ワン」はしんみりとしたバラードだが、ここでは群衆から大合唱が起こり大カラオケ大会に。特に地元の人々が歌詞をかみしめて歌う様子が印象的だった。ここに続いたのはマウント・テンプル校ではやらなかった、アルバム『ヨシュア・トゥリー』から「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー」。そして「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」へ。群衆の大合唱は、この曲のコーラスでさらにヴォリュームを上げた。続いたのは新曲の「シレンシオ」。初めて一般観客にこの曲を披露する瞬間となった。どんなバンドにとっても新曲披露の瞬間というのは緊張の一瞬だが、この時もしっかりと集中して新曲に耳を傾ける多くの人々…。この後に最近交通事故で他界した地元のミュージシャン、グレン・ハンサードへの追悼の意を表し、彼のペンによる名曲「フォーリング・スロウリー」(映画『ワンス』の挿入歌)を披露してくれた。「オール・アイ・ウォント・イズ・ユー」、「ビューティフル・デイ」と続くころには、ゆっくりと日が暮れていき、路上灯に明かりが灯ると、ロマンチックな夕暮れの雰囲気があたりを満たしたのだった。そして締めくくりは高揚感あふれる「ヴァーティゴ」、高鳴る観客の大合唱で終わった。そのあと観衆の要望にこたえ、その場でメンバーが話し合いアンコールで「40」を披露。サード・アルバム『WAR(闘)』からの曲で、聖書からの引用による歌詞。スタジオ収録の時間切れのなか、歌詞に困ったボノが、聖書の一部をそのまま歌い上げたといういわくつきの曲。この曲をライブの最後で締めくくることで最高の気持ちになれると以前アダムが語ったそうだが、まさにこの日は数千人の地元の観客もそんな気持ちを分かち合い夜の街へと消えていったのだった。
Text: 高野裕子 / Live Photo: Rich Fury
◎リリース情報
アルバム『光の祝祭~カルナバル・デ・ルス』
2026/11/13 RELEASE
<通常盤CD>
UICY-16549 3,300円(tax incl.)
<デラックス3CD>
UICY-80819/21 5,720円(tax incl.)
<スペシャル・エディション3CD+ブルーレイ>
UICY-80822 9,350円(tax incl.)
<LP>
UIJY-75447 7,150円(tax incl.)
<Amazon.co.jp限定盤CD>
PROT-1420 3,300円(tax incl.)
https://umj.lnk.to/U2_cdl
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