2026/03/31 10:00
彼は自らを多く語らない。どう考えるべきかを指示するバイオグラフィーもなければ、誰を見るべきかを示すプレス写真も存在しない。彼の名はJet Le Parti(ジェット・ル・パルティ)。そのレコード制作の手法は、プロダクションというよりもフィールド・レコーディングに近い。信号傍受から直接抽出されたサンプル、無線通信から傍受されたテクスチャーが、リズミカルな要素、あるいは非リズミカルな要素として再調整される。彼は音楽を“演奏”しているのではない。状況を“記録”しているのである。
この手法が最初に明白になったのは、1年以上前に自身のレーベル<Base 36>からリリースされた『Surface to Air』であった。このレコードは、一つの運用言語を確立した。作曲の素材としての無線通信、音響的テクスチャーとしての地政学的な空気感、そしてスタジオでの制作物ではなく“傍受された放送”としてのアルバムである。それ以降のすべての作品は、この前提を拡張し、複雑化させてきた。テクノのリリースは、プロモーションの周期に合わせてではなく、直感的に、まるで作品自体が独自のタイムラインを要求しているかのように、適切なタイミングで届けられる。ヒプノティックでありながらミニマルなドライヴィング・テクノである「I Endure」は、ウェアハウスの環境にこれらと同じ空間的処理を施し、彼のカタログを定義する干渉パターンに飽和した四つ打ちのパルスを響かせる。「Bossa Nova Civilian」は、飽和状態の処理が施されたドライヴィング・パルスと絶え間ないリフを提供し、それが徐々にビルドアップされ、ついには解放へと至る。それはカタルシスというよりも、“圧力の均等化”に近い。テンポやジャンルに関わらず、すべてのリリースには同じ刻印が押されている。ノイズ、静電気、信号の劣化といったこれらの条件を、この時代を反映する唯一の手段とした者のサウンドである。
<THE METHOD/メソッド>
Jet Le Partiが属する伝統には、独自の系譜がある。Scanner(スキャナー)は、傍受した民間ラジオの周波数から自身の表現を構築した。William Basinskiは、磁気テープの物理的な劣化の中に、制度的記憶が溶解していく音を見出した。その音は本来の媒体を超えて存在し続けた録音から放たれ、劣化の中に失われゆくものの地政学的な重みが刻まれていた。Tim Heckerは、ディストーションから大聖堂を築き上げた。信号を可読性の限界を超えて押し上げ、音楽の形をとどめながらも解決を持たない何かへと変えた。その荒涼さにおいて祈りのようであり、信念体系が設計上の限界を超えた圧力にさらされる音であった。
Jet Le Partiのバージョンは、彼自身の地理的環境と条件によって形成されているが、その論理は本質的にグローバルなものである。私たちは、冷戦後の秩序が長い時間をかけて上書きされていく時代を生きている。パックス・アメリカーナは、不適切な環境に長く放置された磁気テープのようにゆっくりと劣化し、美しくも同時に狂った何かを発している。ドローン音楽とドローン戦争は、同じ時代の、同じ技術的・政治的条件の、そして維持されるはずだったルールのゆっくりとした崩壊の産物である。このレコードは、その議論を提示しているわけではない。レコードそのものが、周波数と時間によってレンダリングされた議論そのものなのである。
<THE RECORD/レコード>
タイトルは、「Listening Post」(リスニング・ポスト:傍受所/前哨通信基地)として機能する。本隊が到着する前に信号を傍受するために配置された前方観測地点、前進部隊。同時にそれは、ロング・プレイ(LP)、最終位置(Last Position)、そしてLe Parti自身のイニシャルとしても読み取れる。この名称は意図的に固定されておらず、注ぎ込まれるあらゆる文脈を保持するための容器となっている。内部の音楽もまた、同じように機能する。
「Dedollarization」(脱ドル化)は、電波干渉の状態からレコードの幕を開ける。底のどこかにはテクノのパルスが存在しているが、ノイズがすでにそこに侵入している。信号を腐食させ、周波数をジャミングし、リズムは足で追うものではなく、胸の奥で感じるものへと変貌する。この曲は経済的破裂の言語を借用し、その音響的等価物を作り出している。コンセンサスが溶解していく音である。
「Patriot Act」(愛国者新法)は、その精神的な伴侶であり、グローバルな舞台からアメリカの内面への回帰である。ゆっくりとビルドアップするピアノのスコアで幕を開け、アスファルト上の陽炎のように、フランジングされた緊張感が背景に蓄積していく。サウンドはシネマティックだが、映画のサウンドトラック的なそれではなく、戦争映像が流れる前のローディング画面のようなシネマティックさである。砂漠のドローン・テクスチャーと、サーチライトのようにステレオ・フィールドを掃引するパンニング音の中に、プロパガンダ的な暗騒音が流れている。ストリングスなのかホルンなのか判別できない、ペダル群を通された楽器の音がトラックの中心に向けて構築され、そこで宙吊りになる。背景のドラムはライブ録音されたかのように流動的で、グリッドに完全に固定されることなく、動きながらその形を変えていく。「Dedollarization」が世界の周波数をジャミングするのに対し、「Patriot Act」はその送信機を建設した国の内側からの視点である。地上レベルから観測された、共犯関係の周波数だ。
「The Colors You Were」は、周囲のすべてと対極にある。柔らかなピアノの音が、水の中に沈められていくような忍耐強さで、ドローンの底へと減衰していく。アンビエントであり、ネオクラシカルでもある。このレコードの中で最も繊細なものでありながら、どういうわけか最も重い。そこには喪失があるが、決して演じられたものではない。その深い悲しみは構造的なものだ。音と音の狭間、減衰が残した沈黙の中に息づいている。
そして「Sunflower」がそれを破壊する。過酷に変調されたノイズ。非和声的でポリリズム的なパラドックスへと層をなすループ要素。耳が捉えられるいかなる形への解決も拒絶する、ねじ切るようなサウンドである。まだ見えないものを探知するために設計された軍事用のOTH(超水平線)レーダー・システムから名付けられたこのトラック――弾道ミサイルの発射、地球の曲率の彼方にある航空機、到着する前の影――は、音としてレンダリングされた「先制的なシグナル」である。何かがやって来る。システムはそれを探知したが、まだ特定できない。リスニング・ポストは圧倒される。前方観測者の位置が暗転する。
その暗闇から、「Voronezh」(ヴォロネジ)が再構築を始める。軍産複合体の拠点であり、同時に高周波無線送信センターとしても機能するロシアの都市から名付けられたこのトラックは、骨格だけになるまで解体されたヒップホップの抑揚を持っている。反復的なパターンのない、重みと配置。ダンスというよりもスピーチに近い。アルバム全体を貫く持続するドローンの上に重なる。これは本作で最もフィジカルなトラックであり、最も不穏なトラックでもある。何かが所定の位置に押さえつけられている。そして、別の何かが動こうとしている。
「Cherenkov / Factory Reset」がレコードを締めくくる。ペダルの飽和による絶え間ない進行に突き動かされる、解体されたテクノ。音は進むにつれて濃密になり、歪み、決して安定せず、常により密度の高い領域へと押し進められる。その色調は反射的で、染み込むような——過酷というのではなく飽和している。本来通過するはずのなかった何かを通り抜けた光がそう見えるように。チェレンコフ放射とは、荷電粒子が周囲の媒質中で光の速度を超えたときに発生する青い発光現象である。それは美しい。封じ込めが破られたことを意味する。このトラックは、その破綻がもたらす感覚を構築していく。設計上の限界を超えて暴走し、もはや止まることができないと気づくシステム。Factory Reset。システムは消去された。送信は完了した。レコードの最後の2つの言葉は、指示であり、約束である。これまでに存在したすべてのものはクリアされ、次に到着するものはすべて無から始まる。
<THE INFRASTRUCTURE/インフラストラクチャー>
『Listening Post』は、ブルックリンを拠点とする文化的エコシステム「Base 36」のレーベル兼ギャラリー部門であるRP.1から届けられる。このエコシステムには「121.radio」や、アートマーケット、文化的周縁、地政学的対立、グローバルな物語、アンダーグラウンド・シーンの狭間をカバーするマガジン「Converting Culture」も含まれている。このレコードは真空状態から生まれたのではない。制度的摩擦を回避するために特化して構築されたインフラストラクチャーから生まれたのである。
「121.radio」は、このシステムにおける送信機である。そこにはDommune(ドミューン)のモデルの精神が宿っている。制度としての放送、作品そのものとしてのストリーム、独自の内部論理に従うプログラミング。それは変化し続けるサブドメインやスキンを横断して運用され、それぞれの都市に特化したコンテンツと共に様々な都市で表面化する。この一時性は制限ではない。それが彼らのポジションなのだ。
これらすべての中には、特定の系譜に対する誠実な承認が存在する。Shinichi Atobeのアーカイブ的な厳格さ、Takaaki Itohの妥協なきウェアハウスへの意識、Wata Igarashiのサイケデリックなシンセシス、Merzbowのハーモニック・ノイズの極致、そしてSusumu Yokotaのディープでサンプラデリックな没入感。それらすべてがここで共鳴している。Le Partiは彼らを“影響元”として名前を挙げることはない。むしろ彼は、欧米がそれに気づくずっと前に彼らが習得していた共通の理解――実践と、その実践を支えるインフラストラクチャーは不可分である――という同じ現実の中で活動しているのである。
<インタビュー>
――タイトルは地政学的な地図の座標のように読めます。私たちはこれをどれくらい文字通りに受け取るべきでしょうか?
Jet Le Parti:好きに受け取ってくれて構わない。
――あなたは無線周波数からサンプルを抽出しています。そのプロセスはどのようなものですか?
Jet Le Parti:いくつかの信号傍受、様々な機材。シグナル分析だ。つかみ取れるものは外に無数にある。ただ、私はノイズに対して奇妙な関係性を持っているんだ。たとえそうでなくても、常にハーモニックに感じてしまう。すべてはノイズだ。そのすべての中に“音”を聴き取ってしまうのは、どうしようもないことなんだ。
――『The Colors You Were』というタイトルには何が込められているのでしょうか?
Jet Le Parti:重い喪失感。かつてそこにあったものへの承認だ。
――インディペンデントであることは、目標ですか、それとも唯一の選択肢ですか?
Jet Le Parti:私はノイズは好きだが、摩擦は本当に嫌いなんだ。
<THE POSITION/ポジション>
『Listening Post』はコンセンサスを求めてはおらず、許可を乞うこともない。即座の可読性とアルゴリズム的なキャンペーンに憑りつかれた現代の風景の中で、Jet Le Partiはまったく異なる姿勢で活動している。彼はインフラストラクチャーを構築し、受信機のチューニングを合わせ、崩壊を記録した。送信は、現在ライブで行われている。
◎リリース情報
アルバム『Listening Post』
配信中
RP.1 / Base 36.
Photo: Jet Le Parti
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