2026/03/05 17:00
m-flo「come again」がリリースされた2001年、筆者はまだ6歳だった。
〈金曜日のスカラ〉がなにを指すのか、知ったのは23歳の頃。2026年現在、渋谷公園通りのディズニーストアがある位置に存在していたのが、“スカラ”の略称で親しまれたディスコクラブ=LA.SCALA。1990年代前半にその役目を終えたとのことだが、一方で同じ渋谷でも、筆者が20代を捧げたのは道玄坂にあったContact Tokyoや、SOUND MUSEUM VISIONの方(どちらも2022年9月、一帯の再開発に伴い閉館)。そんな世代感ながら、筆者にとっても今回の“リミナル期間”に関する発表は決して他人事とは思えなかった。
それは「come again」をはじめ、m-floの楽曲はクラブやカーステレオでたびたび流れていたし、ここ数年間は特に、筆者と同世代の若い才能を次々とフックアップしていたから。活動をリアルタイムで追ってきた諸先輩方にはもちろん敵わないものの、だからこそ彼らを見かけるたびに“いつも面白いことに前向きな3人組”という新鮮な目線から見つめることができていたと自覚しているし、自らの青春の一部だったことに変わりはない。
2月19日、東京ガーデンシアターにて開催された【m-flo 25th ANNIVERSARY LIVE "SUPERLIMINAL"】。同ライブをもってm-floは“リミナル期間”と名付けた、次なるステージへの準備タームに突入した。そんな彼らは多くのファン、それと同じく“loves”アーティストたちの人生に間違いなく影響を与え、その青春を彩ってきたと確信する一夜だった。
ライブ冒頭、まずは3名揃って「MARS DRIVE」で客席の“出欠確認”をすると、LISAが一度下がってVERBAL&☆Takuのメンズ陣で「gET oN!」を披露。終始、垂直ジャンプを煽り続け、一気にボルテージを跳ね上げていく。
特に☆Takuは、自身のポジションからフロントに上がってきてラップもするし、なんならVERBALのラップにもアドリブを挟む場面も。m-floが誇るオールラウンダーだと言わんばかりの活躍だったことに加えて、今回は後述する流れからアーティスト名を出して例えてもよいかと思われるが、VERBALとの相対比で低音のサイドキックを担うスタイルは、さながらSU(RIP SLYME)のよう。それにしても、ふたりの軽やかなステップに、客席全体の小刻みな垂直ジャンプ……俯瞰で見ると、フィットネスジムにも見間違う光景すぎる。
すると4曲目の時点で、早くも“m-flo loves Who?”楽曲を発動。まずは、2020年3月にlovesシリーズの封印を解いた「tell me tell me (feat. Sik-K, eill & 向井太一)」から。原曲よりもBPMを気持ちややアゲめに、かつVERBALのバースはドラムマシンがトライバルな組まれ方に進化していた気がする。惜しくも不在のSik-Kバースは、向井が代理で全歌唱。なおかつ、“パイセン”たちとの夢のような邂逅がよほど楽しくてに違いない。eill、向井とも、見たことがないくらいにはしゃぎ、物理的に跳び跳ねており、彼らのm-floに対する愛情が溢れ出て仕方がなくなっていた。
もうひとつだけ私ごとを語らせてもらうと、筆者がm-floの楽曲により入れ込むきっかけとなったのが、コロナ禍に突入し、“おうち時間”を余儀なくされた頃、狂ったようにリピートしていたこの楽曲にほかならない。すべてがよき思い出ではなかったが、あれもまた青春のひとつの形だったといまでは言えるくらいにはなった。
全24曲を披露したライブのうち、前半戦のハイライトとなったのが、7曲目「Come Back To Me」。LISAがソロ歌唱するミドルテンポのR&Bは、活動初期のまさにクラシック。1コーラス目を歌い終えたところで客席から自然と歓声が湧き上がり、それに呼応するかのように彼女がサングラスを外すと、その後は頬に大粒の涙が。長年を共にしてきた楽曲で、かつしみじみとした曲調や、歌詞に対する感情移入もあってに違いない。途中、口元からマイクを離す瞬間があったほど、LISAの想いが揺さぶられる瞬間を目撃してしまった。
とはいえ、これが先に控えるリミナル期間にまつわる涙とは言い難いと考える。理由は直前、LISA本人から「やっぱりウチらは愛し合ってるってことで、30年も35年もやらなきゃダメだよね」と、“なんだかんだ”でのメンバー愛と、早くも今後の展望について期待感が述べられていたから。しかも用意したものではなく、本当に自然な話の流れからこの言葉が出ていたのだ。あの時点で、今回のステージが湿っぽさとは程遠いものだとは察していたが、本当にその予感通りとなった。
続いてLISAからバトンを受け取ったのが、BONNIE PINK。フックでのVERBALとのマイクパスと、その後に彼が珍しくユニゾンで入れるメロディが聴かせどころの「Love Song」は、歌詞にある通り〈One On One 重なるLip Sync〉状態。自身の本心をカセットの〈b-side〉に例えるところになんとも時代を感じるが、時代を問わないトラックや衰えを知らないふたりのボーカルは、いつ味わっても色褪せないものだと実感される。
また、当日出演したlovesアーティストのなかで、数少ないラッパー枠だったのが、JP THE WAVY。2019年当時、活動に脂がのりまくった彼をフックアップしたのが、スティールパンのサウンドが夏を色めかせる「Toxic Sweet feat. JP THE WAVY」だ。それにしても、さすがは1曲でもしっかりと結果を残す男。メロディアスなフックを当時よりも熱量高い2026年のバイブスで歌い上げると、同業者であるVERBALの声も自ずと火力を上げ……最後には、JP THE WAVYがm-flo全員の名前を一人ずつシャウトし、最後までブチ上げていった。
後半戦で印象的だったのが「been so long」「How You Like Me Now?」。どちらも活動初期にリリースされた似た毛色の楽曲ながら、特に前者に感じたのが、“懐かしいけど新しい”という、まさにm-floを象徴するかのような特有の質感。いつ聴いてもサウンドから“未来”の景色が見えてくるようだし、単純に癒しにもなるし、ゆったり肩を揺らせるし、それでいて踊れる――音のなかでコミュニケーションを取るような、ダンスフロアで鳴っていてほしいこうした良曲の多さこそ、m-floが築いてきた財産だと強く感じている。
と同時に、この2曲を見事にアップデートしたような感覚となったのが、2025年末に発表した次曲「You Got This」。ここまでの流れも、もはやこの曲を歌うためにあったのでは、と思えるくらいに肩を揺らしやすく、空間に対して音が最も綺麗に鳴る……というと、説明が抽象的すぎるか。
そのほか“アップデート”の流れで歌詞にも触れておくと、〈出前館〉や〈宇宙語〉など、いかにも令和なワードが使用されていることに加えて、ぱっと見でもわかるのが全体比で占める日本語の多さ。ほとんど英語が用いられておらず、いわゆる“言いたいこと”がシンプルな言葉でまとまっている点でも、表現者としての進化を感じられる。ちなみに、曲名の意味は“あなたなら大丈夫”。リミナル期間を目前に、なんだか我々に残してくれるエールのようにも受け取れてしまった。
そこからはもう、loves楽曲の畳み掛けに。まるで水を得た魚のように、バックバンドが明らかに演奏の熱量を上げたのが、しのだりょうすけ(トップシークレットマン)を迎えてのハイパーポップソング「GateWay」。「加藤ミリヤです。今夜、m-floの一部になれて本当に幸せです」と歌唱前から気合十分で、実際にあまりにも“口から音源”なクオリティに脱帽させられた「ONE DAY」。
あるいは、マイクを持たせたら百人力。もはや歌で呼吸しているかのような。ブラックミュージック感、ほかにもラガのフロウなどを取り入れた、Crystal Kayとの「REEWIND!」「Love Don’t Cry」など。人選面において、その時々で時代が求めるものを切り取るのが、本当に上手すぎる。冒頭に記した通り、m-floは本ライブをもってリミナル期間に突入したわけだが、どんな時代においても“いまいちばん聴きたい音”を鳴らし続けてくれる彼ら。本人らから「いや、だからリミナル期間なんですけど……」とツッコミが飛んできそうと震えつつ、次のloves楽曲に向けて勝手な期待が膨らんで仕方がない。
本編最後の楽曲は、自身らと同じ活動25周年をこれまた同時期に迎えるRIP SLYMEとのコラボチューンだ。DJ FUMIYAのスクラッチにSUのクラップ煽りが合わされば、「ARIGATTO」が始まる合図。6名のボーカリストが揃い踏みする光景は、なんとも壮観でしかない。感謝を伝える高らかなブラスが鳴り響くなか、特にLISAは自身のバース直前、「LISA! LISA!」とステージ上の全員から煽られる場面も。
思えばこの間、彼女がラップをするに止まらず、自身でリリックを紡ぐまでになった。そんな時の流れを経て、境遇こそ違えどどこか似ている2組が集まり、いまなお音楽に愛情を捧げ続けていると、こんなにも特別な景色が見られる日もやってくるのか。あまりにも常套句すぎるが、長く生きていればそれだけいいことに出会えるし、年齢に合わせて、そこで育める青春の形もその時々で変わっていく。SUの放つ極上のパンチライン〈若さは武器 経験は鎧 行動は矛 知識は盾〉も、それを物語ってくれていそうだし。
アンコールでは、melody.&山本領平とともに「miss you」を歌唱。冒頭、〈DJ play that music louder お願い〉の名フレーズでエンジンを再び掛け直したところから、この日最後の曲はもちろん「come again」。同曲はもはや、“歌を歌う”というより、あの3人からの“気持ちの投げかけ”がなされている気がした。その想いに客席もまた歌詞を“ほぼ全被せ”にして応えつつ、筆者はというと、クラブで初めてこの曲を聴いた日の原体験を密かに懐かしむなど。きっと、誰しもにそんな夜があったに違いない。
歌詞をアレンジしての「帰りたくないでしょー?」というLISAの問いかけがあまりに我々側の“お気持ち”すぎたわけではあるが、とはいえ終わらないパーティに価値はない。「まぁ、その意味だとm-floには終わりはなく、リミナル期間を経ても活動が続いてくれるんですけどね」と、心のなかで呟きながら芽生えてきたのは、やはり彼らへの感謝の想い。m-floが、m-floでいてくれてありがとう。
本稿では名前の紹介のみに留まってしまうAdee A.、YOSHIKA、Mayaを含めて、全13組のlovesアーティストとともに、誰か――いや、この日に集まった誰しもの青春を現在進行形で彩ってくれているm-flo。“m-flo loves Who?”ではなく、我々にとって "love”すぎるのが、m-floという親愛なるトライポッドにほかならないのだ。
Text by whole lotta styles
Photo by TOMOYA "TANY" TANIGUCHI、HIROYA TAKADA、YUSUKE KITAMURA、YUKITAKA AMEMIYA、Ray Otabe
◎公演情報
【m-flo 25th ANNIVERSARY LIVE "SUPERLIMINAL"】
2026年2月19日(木)東京・東京ガーデンシアター
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