2026/03/27 19:00
アルバムと同じく1曲目に披露された「プレイリスト」から素晴らしかった。メロディアスなバンドの演奏。背後のスクリーンには街の景色が映し出され、その景色は、昼から夕方、そして夜へと空の色を変えていく。光の変化。しかし、まるですべての光が消えてしまったかのような暗闇にも光は灯る。きっと多くの人々が家の中で寝静まる夜。そんな夜に物語は始まる。微かに聞こえる車のエンジン音。走り出した車は、そのまま空へ、そして地球を飛び出して宇宙へと向かっていく。僕の体は本当に浮遊していくような感覚になる。バンドの演奏は次第に熱を帯びていく。高揚感というものが、体の下のほうから上のほうへ昇るように感じるものだということを、僕は思い出す。この夜、僕らは日常の外側へと飛び出す。
ハンブレッダーズが最新アルバム『GALAXY DRIVE』を引っ提げて全国10か所を回った初の全国ホールツアー【ハンブレッダーズ ワンマンツアー “2026年 銀河の旅”】。その千秋楽となる、東京・東京ガーデンシアター公演が3月18日に開催された。『GALAXY DRIVE』は「地球から銀河系をドライブし、帰ってくるまでの車内で流れるプレイリスト」というテーマを持ったコンセプトアルバムだが、ライブもまた、そのアルバムの世界観を再現するような深い没入感をもたらすものだった。しかし、ハンブレッダーズは正真正銘のロックバンドである。コンセプトがあるからと言って、繰り広げられるのは深く椅子にお尻を沈めていくようなライブではない。ムツムロ アキラ(Vo. / Gt.)、でらし(Ba.)、木島(Dr.)、ukicaster(Gt.)の4人はステージの上から激しく熱情を放っていく。冒頭に書いた「プレイリスト」での幕開けから、間髪入れずに始まった「ビリビリ(※) 」のダイナミズム、それに続く「フェイバリットソング」で巻き起こった観客たちの大合唱――。そこには空間全体を突き刺し巻き込んでいくような熱狂があり、バンドと観客の関係性をただ“演る側”と“観る側”の関係に収めない、超密度のコミュニケーションがそこには生まれていた。
アルバム『GALAXY DRIVE』は、シンプルなロックに収まらないバンドの音楽的な自由さと、生活とロマンを結びつけていく豊かなリリシズムが魅力的な、結成から15年を超えるバンドだからこその威風堂々としたフルアルバムだが、そんな今のハンブレッダーズの表現力の豊かさをライブの現場においても強く体感することができた。エネルギッシュなバンドサウンドに、懐かしさすら感じさせる親密なメロディが重なる「オカルティック・ラブ」や「スローモーション」、それに「わっか」のような歌心あふれる楽曲たち。ダンサブルなロックサウンドを響かせる「ワールドイズマイン」、バンドのフィジカルの強さを強烈に感じさせる鋭利でファンキーな「アイズワイドシャット」――色鮮やかな音楽性が4人から放たれていく。“しなやかなヘヴィネス”と言うべき「SUPER TOMODACHI」の迫力も凄まじかったし、続く「MUSIC」や「DANCING IN THE ROOM」のシーケンスを駆使したエレクトロニックなポップサウンドも、ライブに華やかさを加えていた。ロックの衝動に、フォークやヒップホップを通過した歌と言葉への鋭敏な感性、それに、確固としたハードコアな芯を持ちながらもポップスへと心を開いていく自由さ。ハンブレッダーズは心から音楽を愛するバンドで、だから僕らは安心して彼らの楽曲に心を重ねることができるのだと実感する。
去年、バンドの地元である大阪で主催フェス【GALAXY PARK】が初開催された際に同フェスのテーマソングのような形でリリースされた「ちょっとロンリー」でも、バンドの演奏に観客たちの合唱が重なった。この曲では自身もボーカルを務めるでらしは、曲中に自らのマイクを観客席に向けて合唱を煽った。〈誰もが皆 ちょっとロンリー 集団的 ひとりぼっち〉……そんな歌詞を、何千人という人々が声を合わせて歌うカタルシス。ハンブレッダーズはあなたの孤独を守るが、あなたを孤立させない。そんなバンドなのだ。
ライブ終盤、アルバム『GALAXY DRIVE』と同様に、ムツムロのポエトリー調の歌唱が作品に刻まれた切実なメッセージを伝える「着陸」が演奏された後、銀河の旅を終えて再び日常に戻ってきた僕らが再び新たな1歩目を踏み出す、その瞬間を祝福するように「恋の段落」「ピース」という2曲のラブソングが披露された。「ピース」の演奏が始まる前にムツムロは、「この混迷する時代で、最後のひとりになっても、俺たちは純愛を歌い続けます」と力強く告げた。そして、ライブ本編の最後を飾ったのは、2020年のアルバム『ユースレスマシン』収録曲ではあるが、新作『GALAXY DRIVE』の世界観そのものをすでに歌っていたとも言えるような楽曲「逃飛行」。それはまるで「いつでも、ここに帰ってこい」というハンブレッダーズからメッセージのようだった。「いつでも帰ってこい。現実とロマンが重なる場所に、いつでもハンブレッダーズはいるから」と、そう伝える声がこの日の「逃飛行」の演奏からは聞こえた気がした。
アンコールで、本編では流れなかったお馴染みの入場SEであるKenoの「おはよう」が流れる中、ステージに登場した4人。「銀河高速」と「ギター」の2曲が披露され、ハンブレッダーズらしいエネルギッシュなライブの締めくくりとなった。きっとこの日この場所に集まった多くの人が、その人だけの死ぬまで生きる人生に、「何度でも夢を見る力」を持ち帰ったことだろう。
(※)曲名は稲妻の絵文字ひとつが正式表記
Text:天野史彬
Photo:マスダ レンゾ
◎公演情報
【ハンブレッダーズ ワンマンツアー “2026年 銀河の旅”】
2026年3月18日(水) 東京・東京ガーデンシアター
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