Billboard JAPAN


Special

井上芳雄 インタビュー

井上芳雄インタビュー

 2000年にミュージカル「エリザベート」のルドルフ役でデビュー以降、ミュージカル俳優、歌手、役者など幅広く活躍する井上芳雄。2014年7月にビルボードライブ東京で開催される『井上芳雄  -Come Fly With Me -Birthday Special Week』を目前に控え、コンサートへの想いについてインタビューを行った。

久しぶりのソロコンサート
コンサートは、自分を主人公にした1つのストーリー

??主にミュージカルの舞台で活躍されている井上さんですが、今回は初のビルボードライブ東京でのコンサートです。井上さんにとってミュージカルの中で歌うのと、コンサートで歌うのとでは、違いはありますか?

井上芳雄:ミュージカルで歌う時は、基本的には物語の中で感情が高まって、セリフが歌になるというイメージで歌っています。ドラマを伝える表現方法の一つとして、歌がある感じ。でもコンサートで歌う時は、楽譜に書かれているものを表現するのと同時に、自分の心の中にあるものを表現するような作業だと思っています。そういう意味では、歌手としてコンサートするのと、役を演じながら歌うのとでは全く別の楽しみ方があります。特に今回は、久々のソロコンサートなので、とっても楽しみです。

コンサートは自分の近況報告をしているような感じで、組み立てています。「最近こんなことがあったので、この曲を歌います。」とか、「こんな曲が好きなんですが、皆さんはどうですか?」というように。そしてお客様も、僕と自分を重ね合わせながら聴いてくださっているんじゃないかな。だからコンサートでは、お客様と会話しているような気分がしますね。お客様が返事を下さるわけではないですが、反応は舞台上からでも感じられます。そういう意味では、コンサートは自分を主人公にした1つのストーリーだと言えるのかもしれません。

??ミュージカルと違って、コンサートでの歌には相手がいませんが、誰かを思い浮かべながら歌うことはありますか?

井上芳雄:全ての曲ではないですが、具体的に誰かを思い浮かべたり、自分の人生が歌に反映されたりする時もあります。例えば、大切な人をなくした時に聴いていた曲を歌う時には、その人のことを思い出します。音楽って心が弱くなっている時に寄り添ったり、元気づけたりするものであれば良いなと思っているんです。実際に、僕にとって音楽は そんな存在なので。

??井上さんは、この曲のおかげで救われたという経験があるんですか?

井上芳雄:ナット・キング・コールの「ア・サウザンド・ソーツ・オブ・ユー」。たしか、小曽根真さんと舞台でご一緒した時に教えてもらったのかな。すごく有名な曲というわけではないんですが、「あなたについて、何千ものことを思い出す」っていう歌詞なんです。その後、とても近しい人が亡くなった時に何度も聴いていて、とても支えになってくれましたし、自分自身でもずっと歌っています。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. 去年1年間で一番、思い出に残っているのは
    StarSの武道館公演
  3. Next >
去年1年間で一番、思い出に残っているのは
StarSの武道館公演

??井上さんは順風満帆にキャリアを積み重ねてらっしゃるように見えますが、今まで迷ったり、悩んだりされたことは、ありますか?

井上芳雄:しょっちゅうあります。迷うっていうか、辞めさせられるんじゃないか、役から降ろされるんじゃないかって、いつも思っていました。運良く学生時代にデビューさせてもらって、歌や踊りの勉強はしていましたが、お芝居なんてやったことなかった。「やってみたら、できるんじゃないか」って思って始めましたが、経験を積めば積むほど、要求されることって大きくなるんですよね。それで、どんどんできないことも増えてきて。「この公演が終わったら、次の仕事はないだろうな。」とか、「今日、降ろされるかもな。」って思いながら稽古場に向かったことは何度もあります。

あと、僕ってデビューしてしばらく王子様役が多かったんですよね。“ミュージカル界のプリンス”って呼ばれることは、とても嬉しいし、ありがたいんですが、いつまでもプリンスだけで良いのかなとも思いました。もっと色んな面を見せる方が、飽きられずに興味を持ち続けてもらえるんじゃないかなって。だから、どうやったら色々な自分を出せるのかを考えることはあります。

だから、いつも新しいことに挑戦するようにしているんです。今、ドラマの撮影をやっているんですが、舞台じゃなく映像の中で芝居をすることは、僕にとっては挑戦です。もちろん、ホームグラウンドであるミュージカルは、居心地は良いですけどね。10年以上やっているから、知っている人たちも多いし。本当は転校とか引っ越しとか大嫌いなんですよ(笑)。でも、その気持ちを乗り越えてでもチャレンジすることで、「新しい世界に、何かがあるんじゃないか。」って日々思っています。

??ドラマやお芝居など、新しい世界で感じたことが、音楽に活かされる場合もありますもんね。

井上芳雄:そうそう。大変だったこともいっぱいありますが、無駄だったと思ったことは1つもない。だから、やっぱり やるべきだったんだと信じながら挑戦し続けています。

??ドラマや映画や声優など、既に幅広く活躍なさっていますが、さらに挑戦したいことはありますか?

井上芳雄:そうだなあ。人の話を聞くって、すごく難しいですよね。例えば今日みたいなインタビューだって、僕は普段からインタビューをされる側だし、自分のことを話せば良いから全然難しくない。でも、人の話を聞くのって、すごく難しいと思う。必ずしも興味がある人ばかりじゃないし、思うように話してくれない人もいるだろうし。だから人の話を聞ける人って、素晴らしいなって思いますし、興味があります。以前、司会をやらせていただいたことがあるんですが、すごく大変で。書かれていることを喋るのに精一杯だから、相手の答えが全然耳に入らなくて、「次の質問にいかなきゃ。あー、時間なくなってきちゃった。」の繰り返し(笑)。以前、うまくできなかったから克服したいです。

あとは、プロデュースすることに興味があります。去年、浦井健治君と山崎育三郎君と3人で結成したStarSは、僕が声をかけて集まってもらいました。彼ら2人は僕の後輩なんですが、「ミュージカル界を盛り上げよう!」って、熱い想いで集まりました。シアターオーブを皮切りに全国ツアーをして、11月には武道館公演をやったんです。それは、去年1年間で一番、思い出深いですね。1日限りだったから、今でも、「あれは夢だったんじゃないかな」って思います。 武道館公演の時は、全員 別の舞台の真っ最中だったんです。でも、無理矢理 全員11月11日のスケジュールを空けてもらって。舞台をやりながら、武道館のリハーサルもやって、武道館公演の翌日の昼には、また舞台に戻っていました。今から思うと、かなり無茶なスケジュールで、確かにきつかったですが、ミュージカル俳優が武道館でコンサートするって、あまり聞かないじゃないですか? すごく達成感があったし、去年の中でも特に印象的だったステージの1つですね。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. 初めてのビルボードライブでのコンサートは
    ジャズナンバーを中心に
  3. Next >
初めてのビルボードライブでのコンサートは
ジャズナンバーを中心に

??今回開催されるビルボードライブでのコンサートの内容について、少し教えていただけますか?

井上芳雄:今回は、ジャズを中心に選びました。タイトルに付けている「Come Fry with me」は10周年コンサートの時に初めて歌った曲なんです。その時の音楽監督は島健さんだったんですが、島健さんのピアノのアレンジが毎回違うんですよ。島健さんに少しでも追いつきたくて、自分でもちょっとアドリブを入れてみたり、日々工夫して歌っていました。だから、とても思い入れのある曲なので、まず この曲をプログラムに入れようって決めました。今回は、ブラスとかも含めて9人のバンド編成でやるんです。控えめなビッグバンドみたいな感じですね。だからビッグバンドが映えそうな曲も入れています。あとはミュージカルを通じて、僕を知ってくださっているお客様が多いので、ミュージカルナンバーも入れたり。良いナンバーって世の中にたくさんあるので、とても迷いました。

今回は、普段の劇場と違って、お客様との距離がすごく近いじゃないですか。僕の好きなマイケル・ブーブレや、ジャズシンガーの方って、肩の力を抜いてリラックスして歌っているように見えるので、今回は 僕も力を抜いて歌えればなと思っています。ミュージカルは全身で歌い上げるようなナンバーが多いのですが、ビルボードの時は、できるだけ会話をしているようなテンションで歌いたいですね。

??コンサート最終日の7月6日は井上さんの誕生日ですね。35歳は、どんな年にしたいですか?

井上芳雄:20代からミュージカル『モーツァルト』で主役をやらせていただいているんですが、昔から「モーツァルトが死んだ35歳まではやりたい」って言っていて、今年で35歳になるので最後にしようと思っています。もちろん、モーツァルトの時代の35歳と、今の35歳は全然違うけど、モーツァルトは35年以上生きていなくて、それ以上のことを知らないわけだから。

劇中でも最後のシーンで死ぬんですが、彼が死ぬときに感じた“今まで生きてきた実感”って、どんなのだったんだろう、ステージで自分は どう感じるんだろうって、興味があります。モーツァルトと同じ歳の自分が演じた時に「早かったな」って思うのか、「長かったな」って思うのか。そういう意味では、35歳って自分にとって大きい区切りですね。

20代の頃は分からないことも、できないことも多かったけど、30歳になったら、少しずつ色んなことが分かってきて、知っている人も増えてきて、とても気持ちが楽になりました。でも、それをもう一回捨てて、知らない世界に飛び込んでみるのも良いのかなって、最近思っています。何かを成し得るには、まだまだですが、今回 モーツァルトを卒業することで、また新しい何かに出会えたら良いですね。

??今までで、印象的なお誕生日ってありますか?

井上芳雄:30歳になった時のことは、すごく覚えています。20代から30代になるって、すごく世界が変わる気がしていたんです。周りの人からも「全然違うよ。30代は楽しいよ。」って言われてたし。たしか 30歳の誕生日は名古屋でミュージカルの公演をやっていて、当日は誕生日スペシャルカーテンコールをしたんです。ミュージカル『モーツァルト』の劇中歌「僕こそミュージック」の歌詞を、「今日から30歳だけど、30歳の自分も愛して欲しい」みたいに替え歌にして歌いました(笑)。だから、やっぱり30歳になった時はスペシャルだったなあ。次、40歳になるときは、どんな気持ちになるんでしょうね。

??40歳の自分って、想像できますか?

井上芳雄:髪の毛のことだけが心配です。今は、まだ大丈夫だけど、40歳になったら…とか。 こればっかりは、自分の力でどうしようもできないですからね(笑)

??最後に、ビルボードライブでの公演、どんなコンサートにしたいですか?

井上芳雄:ビルボードライブは、今まで何度も観客として行ったことがあって大好きな場所です。ピザが、おいしいですよね。僕はジャンルが違うし、まさか あのステージに立てるなんて思っていなかったので、今からとても楽しみです。ライブハウスって会場によって空気が全然違って、しかも客席で聴いているのと自分が立つのじゃ全然違う。実際ステージに立ったら、客席が どう見えるのか楽しみです。

ビルボードライブは、僕にとっても初めてだけどファンの方にとっても初めてなので、一緒に初めての空気を楽しみたいと思っています。このコンサートをきっかけに、素敵な空間で、美味しいものを食べて、リラックスしながら音楽を聴くって良いなって知っていただけたら嬉しいです。あとは、普段からライブハウスで歌っているわけでも、ジャズを歌っているわけでもありませんが、コンサート当日は“今日のステージが最高だ”って思えるような時間にしたいですね。楽しみにしていてください。

関連キーワード

TAG

関連商品

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥2,828(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥2,828(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥1,885(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥2,828(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥2,828(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥3,981(税込)

ソット・ヴォーチェ
井上芳雄「ソット・ヴォーチェ」

2002/10/02

[CD]

¥3,190(税込)

幸せのピース
井上芳雄「幸せのピース」

2018/07/25

[CD]

¥3,056(税込)

幸せのピース
井上芳雄「幸せのピース」

2018/07/25

[CD]

¥4,888(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥2,828(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥2,828(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥1,885(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥2,828(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥2,828(税込)

スターズ
スターズ「スターズ」

2013/05/08

[CD]

¥3,981(税込)

空に星があるように
井上芳雄「空に星があるように」

2004/08/11

[CD]

¥2,934(税込)

空に星があるように
井上芳雄「空に星があるように」

2004/08/11

[CD]

¥3,353(税込)

ソット・ヴォーチェ
井上芳雄「ソット・ヴォーチェ」

2002/10/02

[CD]

¥3,190(税込)