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倖田來未 『恋しくて』インタビュー

倖田來未 『恋しくて』 インタビュー

 私は10年ぐらいで“倖田來未という人生”を終えるのかなと勝手に思っていたんですよ―――。それでもセカンドステージへと踏み出した理由に、倖田來未の本質がある。
 彼女が音楽シーンやファッションシーンに革命を起こせた理由も、夢や恋の大切さを永久的にメッセージし続ける理由も、日本の音楽を海外に負けないものにしたいと願う理由も、多くの人々に愛される理由も、すべてはその本質が起因となっている。では、その本質とは何なのか。1人でも多くの人に知ってもらいたく、このインタビューを敢行した。

10年ぐらいで辞めた方が格好良いんじゃないかと

--先日、自分も日本武道館公演に伺わせて頂きましたが、復帰後初のライブはやってみていかがでした?

倖田來未:1年に1回はツアーやライブを組んでいて、今回も1年ぶりだからペースは崩してないんですよ。でも今回はわたしの都合で急遽お休みをいただいてしまったので、家族ができた幸せを抱えつつも「休んでいていいのか? このまま立ち止まっていていいのか?」ってずっと感じていて。例えば、山下達郎さんのライブを観に行ったり、色んなジャンルの良い音楽に触れる度に焦りがありました。そうした時期を経てのライブだったので、開演前の「組長!」コールからもう涙してしまって。裏でスタンバイしながら「感動しすぎて歌えなかったらどうしよう?」っていう(笑)。

--開演前から凄まじい歓声でしたからね。

倖田來未:お客さんあってのライブなんだなと心から実感しましたね。特に今回はファンのみんなの投票結果がセットリストに反映されていたので、改めて「あ、私はファンのみんなの為にもっと歌っていきたいんだな」って感じる事が出来るライブでしたし、今回は演出よりも歌を褒めてもらえる事が多かったので、歌手として観てもらえたライブだったのかなーって思うと嬉しかったですね。……まぁ「Rain」は何回も歌い直しましたけど(苦笑)!

(※今まで幾度となく歌唱してきた名曲「Rain」だが、11月14日の日本武道館公演では歌い出しが上手くいかず、3回歌い直すという自身もビックリのハプニングで笑いを誘った)

倖田來未:あれは「ヤッバイなぁ~!」と思って(苦笑)。ハマってしまって、NG連発。テレビでよく観るやつですね(笑)。でもお客さんが1回1回、歓声をやり直してくれて! あったかいなーと思いました。チームワーク抜群!

--ちなみに倖田さん。ファッション誌『ViVi』の撮影もあり、ライブ直前までの3か月で13~15キロも体重を落としたんですよね?

倖田來未:野菜ばっかり食べてました(笑)。スタッフ一同の“倖田來未、復帰”に懸ける想いが半端なかったので! 倖田組、playroomのファンクラブのみんなや、ツイッター、Facebook等を通して沢山のメッセージをくれたファンはもちろんなんですけど、レコーディングとか打ち合わせでちょくちょく現場来る度に、スタッフの熱も凄まじかったんですよ。だから「この期待に絶対に応えないといけない」という一心で頑張れたなって。

--そうして出産後初となるニューシングル『Go to the top』をリリースし、テレビ出演もあり、ライブもありで、再び精力的に活動していますが、再び走り出した今の心境を聞かせて下さい。

倖田來未:もしかしたらデビューしてから12年間で一番忙しいかもしれない! でもみんながそういう環境を与えてくれているというか、私が戻る場所を作って待っていてくれたことは、めちゃくちゃ大きい。「そのまま帰ってこなくていいよ」みたいな感じになっていたら、これだけ頑張ることもできなかった訳ですから。待ってくれている人がいるというのは、本当に幸せですね。

--たしかに「復帰するからには……」といった状況がたくさん用意されていましたもんね。

倖田來未:選択肢としては、このまま“妻として、母として”だけの道を選んでいてもおかしくないタイミングだったんですけどね。自分も30歳なんで……というかその前に、私は10年ぐらいで“倖田來未という人生”を終えるのかなと勝手に思っていたんですよ。

--引退的なイメージ?

倖田來未:うん。流行りもあるし、そこについていけるのかっていう不安もあったので。だったら、10年ぐらいで辞めた方が格好良いんじゃないかと。なので“結婚”や“出産”はそれを選択してもおかしくないタイミングだったんですよ。だけど、家族は「倖田來未としてこれからも走り続けるべきなんじゃないか?」って言ってくれて。周りのバックアップがすごく大きくて、それによって私自身も「2ndステージのスタートを輝かしく切れたらいいな」って思えたんですよね。

--その結果、自身で仰っていた「子供を抱えながら「キューティハニー」歌いたい」という夢も叶う可能性が出てきました。

倖田來未:そうなの、そうなの(笑)。男の子だったので、これは担いでも問題ないなと思って。ただ、もう重たくなってきているので、早めに担ぎたいなと思ってるんです。気付いたらどんどん大きくなっちゃうので!

--また、そちらの夢実現も心待ちにしているであろうファンの存在。ライブ会場における「おかえりなさい」感は、解散したバンドが復活した瞬間同様のレベルでした。

倖田來未:ね! 本当に嬉しかったです。私が休んでいた1年間、ファンのみんなは私以上に長く感じていたのかなって思うと、なんだかとっても愛おしく思えて。「All for you」の歌詞じゃないですけど、デビュー前から「倖田來未なしでは生きられない」って言われるくらいの存在になりたい!って思っていたので、その倖田來未像に私が負けていたらダメだと思うし、もっとみんなに喜びや感動を伝えることが出来るアーティストに成長しなければならない、輝いていなければならない。って思いましたね。

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私には恵まれたビジュアルも何もなかったけど……

倖田來未 / 恋しくて
▲倖田來未 / 恋しくて

--そんなファンの支えもあり、倖田來未の新章がスタートしている訳ですけど、以前と比べて自分の中で変化してるなと感じる部分って何かあります?

倖田來未:以前は「嫌われたくない」とか「非難されたくない」という気持ちが強くて。例えば、セクシーな「キューティーハニー」を発売した頃とかは、露出度の高い衣装でテレビに出たり、ぶっちゃけたトークをするアーティストさんが少なかったので、結構非難もされたんですね。だから無難な方へ行こうとする自分がいて、途中「これはやりすぎじゃないかな?」って路線を変更しようと思った時期もあったんです。でも「倖田來未だからできるんじゃない?」って言ってくれるファンのみんなやスタッフが居てくれたからトライできて、それをやり続けることによって“くぅちゃんファッション”とか“エロかっこいい”みたいな形で取り上げていただけるようになった。

--あれは完全に倖田來未が生んだ波ですからね。

倖田來未:そう言って頂けると本当に嬉しいですけど、当時はあの路線に踏み込んでいくには勇気が必要で、背中を押されてようやくトライすることができた。でも今は“誰も踏み出していない第一歩”を自ら踏み出したくなるというか、挑戦したい!というモードに変わっています。今まで以上に攻めていくスタイルでやりたいです。何年かは。

--何年かは、というのは?

倖田來未:今のところそう思っているんですけど、もう何年かしたら心境の変化もあると思うんです。新しいことを常にやっていきたいという意味で。

--続いて、変わっていない部分について。武道館2日目の最後。急遽再登場して新曲「恋しくて」を歌った後、恋愛について語りつつ「これからも前を向いて歩いて、笑顔で、綺麗なみんなで、可愛いみんなでいてほしい」とファンに向けてメッセージしました。あれって倖田來未がずっと言い続けていることですけど、それを復帰の場でまた言ってくれたから、あの大歓声は起きたと……

倖田來未:いや~、私、さっきから泣きそうなんですけど……

一同:(笑)

--あの瞬間、倖田來未だなって思ったんですよね。そこって今も昔も変わらないところですよね。

倖田來未:……嬉しいです。

--恋愛すること、夢を持つことの素晴らしさをとにかく真剣に伝え続けてきたんですよね。倖田來未は。普通だったら「同じこと何回言ってもなぁ……」って思うところを。

倖田來未:いや、私も思うんですよ。いっつも同じこと言ってるなぁって。

--でもそれを伝え続けることは、倖田來未が音楽をやっている理由でもありますよね?

倖田來未:そうですね。年々感じるんですけど、夢を持っていない子が多いなぁって。「貯金しよう」とか言っている子供もいるくらいですから。私は子供の頃にそんなことを思ったこともなかったですし、夢を持たないっていう状況はちょっと……。そこには環境や教育の影響もあるとは思うんですけど。運動会は全員1位とか、順位をつけないとかね。でもやっぱり「人に負けたくない」っていう気持ちを持っていないとダメだって私は思っちゃうし、夢を見ることはすごく大事なことだと思ってるんですよ。

--倖田來未はそう生きてきた訳ですから、なおさらですよね。

倖田來未:あと、復帰ライブのファン投票で「walk」が3位で。夢を語っている曲なんですけどね、1stアルバムの収録曲で、ライブがある度に歌っている曲なんです。なのに「やっぱり聴きたい」って思ってもらえるのは、人生に躓いて悩んだり、夢に当たって砕けたり、そういう人たちが勇気付けられているからなのかなって。自分もオーディション上がりなので、実際「諦めないでほしい」と思うんです。私には恵まれたビジュアルも何もなかったけど、愛を伝えたいとか、夢を信じてほしいとか、そういうことを思ってアーティストになったので、その倖田來未のルーツであるところは伝え続けていきたいなって。

--そう思っているからこそ「walk」はどんどん成長していくんですよね。あの曲は倖田來未の生き様そのものですから。

倖田來未:発表した当時は全く売れなかったんですけど、良い楽曲と良い歌詞を残せば、そうやって伝わっていって、みんなに愛してもらえるんだなって思います。結果がすぐ出なくても、良い曲を生んでいかなきゃいけないんですよ。だから、今、頑張っている人。これはどんなお仕事されている方にも言えることだと思うんですけど、コツコツやっていれば何年後かに評価されて、後輩から「先輩も頑張ってきたんですよね」って言われたりする瞬間があるんですよね。私もまだまだこれからですけど、それでも自分の歩いてきた道を見ていると、信じることもまんざら間違いじゃない。「信じる者は馬鹿を見る」なんていう言葉もあるけど、信念を持ってやり続ければ、それはちゃんと身になる気がします。

--これまで倖田來未は、レコード大賞受賞や東京ドームでのコンサート。子供が生まれても歌い続けること等、多くの夢を叶えてきてますが、これだけいろんなことを実現できた要因って何だと思います?

倖田來未:なんだろう!? ……やっぱり自分は二の次って考え方かな? 今回ダイエットを頑張れたのもファンのみんなやスタッフが待っていてくれたからだし、あんまり「売れたい!」とか「お金が稼ぎたい」とか思って活動してこなかったんですよね。どちらかと言うと「この曲を聴いて、みんなが感動してくれたらいいな」とか。『奇跡』(2004年9月発表のシングル)以降、そういう気持ちが強くなりましたね。それまでは自分が何をやりたいか分からないし、歌えてたらそれでいいと思えるところもあったんですけど、『奇跡』で初めてTOP10に入ったことによって、良い曲を作っていけば結果は出ると知ったんです。「あ、こういう気持ちで音楽って作らなきゃいけないんだな」って。だからライブも、初めて来た人も楽しめるものにしたいんです。

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日本の音楽の良さを海外に発信していきたい

--すべては「喜ばせたい」大前提で活動していた結果であると。では、そんな倖田來未の今の夢や目標って何だったりするんでしょう?

倖田來未:基本的に「格好良くパワフルな女性でいたい。」という思いは変わらないんですけど、母になって、子供を愛おしいと思う。そういう新しい愛の形を知ったので、今後は同じ愛は愛でも違った愛のかたちも表現して行ければと思っています。あと、誰とも違う魅力というか、結婚して出産しても変わらず、パワフルに輝き続ける女性像をわたしなりにみせていければいいなって思っています。それで「私も早く結婚したいな」とか「早く家庭を持ってみたいな」って思ってもらえたら嬉しいですね。

--そんな新生・倖田來未がシーンにどんな影響をもたらすかも興味深いんですが、倖田さんはアートワーク含むCDで作品を発表していきたい人ですよね?

倖田來未:ビジュアルやミュージックビデオも拘って、トータルで倖田來未を見せていきたいので、ちゃんとCDをリリースしたいと思うタイプなんです。

--その“トータル”に含まれると思うんですけど、倖田來未って生き様でも人を魅了できるタイプだと思っていて。そもそも僕も、2005年の、年のはじまりには誰も「倖田來未が日本レコード大賞を獲る」なんて思っていなかったのに、人生懸けた快進撃でもって獲ってみせた生き様に惚れ込んだんです。「まだまだこの世界は夢を見せてくれる」って思わせてもらえた。

倖田來未:アーティスト冥利に尽きるというか、そんなに褒めてもらったら「私、頑張らないと!」って思いますよ! 大事ですね、こういうインタビューって。そういう風に直接言ってもらえると、テンション上がります!

--そんな倖田來未らしさは、今回のニューシングル『恋しくて』にも詰まっていると思います。これぞ、倖田來未が歌うべくして生まれたバラードですよね。

倖田來未:すごく良い曲が生まれたなと思ってるんです。インタビューとかで「恋愛が無くなった今、どう?」って聴かれても、「いやいや、恋はしてる!」と。恋愛が無くなったなんて少しも思ったことがなかったので、逆に「世間はそういう風に見るんだ?」っていう感じだったんです。でも私は切ない恋の歌もうたっていきたいし、結婚してからも大波乱は山ほどある訳で! そういう意味では、これからもいろんな歌をうたっていくだろうし、「恋しくて」も私らしい曲なんですよね。あと、未だに「愛のうた」がカラオケランキング上位に入っているんですけど、「恋しくて」も同じように頭の中でぐるぐる回ってくれれば良いなって思っています。

--先日、武道館でも聴きましたけど、あの日歌ったバラードで一番良い曲だと感じました。あの曲だけ生演奏じゃなかったですけど。

倖田來未:嘘っ!? 来た! 生演奏じゃなくてそれって凄くないですか?

--すごく合ってると思いました。倖田來未の声の最も気持ち良いところがちゃんと出せるバラード。

倖田來未:よくお分かりで! その通りなんですよ。メロディーライン、キー、切ないムード、すべてが歌ってても気持ち良いんです。あと、最後は前向きに踏み出していく感じも、今の私らしくて良いなと。

--新曲の反応も楽しみなところですが、怒濤の2012年を経ての2013年はどんなことをやっていきたいですか?

倖田來未:来年3月からは全国ツアーもありますけど、日本だけじゃなく、海外でもライブをしたいですし、カルチャーにも触れてみたいですね。今以上に日本の音楽の良さを海外に発信していきたいです。なので、セカンドステージの倖田來未も楽しみにしてて下さい!

倖田來未インフォメーション

倖田來未、カバーアルバムプロジェクト遂に始動!キューティーハニーを初め、これまでも数々のカバー曲を送り出してきた倖田來未だからこそなし得る、究極のエンタテインメントカバーアルバム!

時代を受け継がれても輝き続ける名曲を残したいという想い。
12月6日にデビュー13年目に突入した倖田來未。そのアニバーサリーを記念して、再びカバーアルバムを発売。デビュー当初は中々表舞台に出る機会にも恵まれず、深夜のクラブで歌う日々が続いた彼女。いつか自分もあのステージに立ちたいという想いとは裏腹に中々ヒットにも恵まれず辛く辛抱の時期が続いた中、彼女の転機となる「キューティーハニー」との出会いが訪れた。このカバー曲から、彼女の持つビジョンが確固たるものとなり、その一環したファッション性が多くの人の目にとまり「エロかっこいい」という流行語大賞まで生み出すほどのムーブメントとが巻き起こった。その後も、Butterfry、恋のつぼみ、愛のうた等、様々なジャンルで数々のヒット曲を生み出した彼女が2010年に10周年を記念してカバーアルバムを発売し、そして再び、来年13周年目を記念してカバーアルバムを発売する。

詳しくはオフィシャルサイトにて >>

Music Video

倖田來未「恋しくて」

恋しくて

2012/12/26 RELEASE
RZCD-59252 ¥ 1,320(税込)

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