最新のインタビューで「このタイトルには、再生や再創造といった意味合いがあるけれど、ホイットニーへの追悼の意も込めているの。」と語ったブランディー。実は、ホイットニーが亡くなる数日前のこと、ブランディーはホイットニーからこんな言葉をかけられたという。

「あなたは、あなたらしくいなさい。自分を貫くことは時にリスキーで、挑戦し続けなければいけないけれど、あなたらしくいることを怖がらないで。」

　90年代を代表するヒットメーカー“ダークチャイルド”ことロドニー・ジャーキンスとの盟友タッグで贈った前作『ヒューマン』以来、約4年ぶりのリリースとなる『トゥ・イレヴン』は、このホイットニーの最後の言葉をなぞるように、ブランディーのルーツに戻る“R&B回帰”の作品になっていると彼女は語る。これまでは一人のプロデューサーにアルバム全体を任せることが多かったが、今作ではリル・ウェインの「ア・ミリ～俺はミリオネア」やビヨンセとレディ・ガガの共演で話題となった「ビデオ・フォン」など数々のヒットを生み出した、名プロデューサーのバングラデシュをはじめ、ショーン・ギャレット、クリス・ブラウン、マリオ・ワイナンズ、デンジャ、リコ・ラヴ、ザ・ビズネス、フランク・オーシャンといった人気絶頂のプロデューサー、制作陣の力を借りて様々な形でブランディー流の“R&B”を表現している。

　アルバムからの1stシングルである「プット・イット・ダウン」は、クリス・ブラウンをラッパーとしてフィーチャリングに迎えたアーバン・キャッチなダンス・ナンバー。

　アップ・トゥ・デートな楽曲に挑戦する一方で、現在の恋人ライアン・プレスとの関係をテーマにしたことで話題の「ワイルデスト・ドリームズ」では、往年のブランディー・サウンドに乗せたっぷりとその歌声をきかせている。華やかさと強さを兼ね備えたヴォーカルは、現代的なサウンドやアレンジの上でも、またスタンダードなトラックの上でも、常にリアルな“R&B”として区別なく聴く手にすんなりと届けてくれる。

　ホイットニーからの言葉を受けて、いつまでも挑戦し続けること、最大限の努力をしていくことを心に誓ったというブランディー。このアルバムには、自身の誕生日であるこの日に奇しくもこの世を去った敬愛する大先輩ホイットニーに誓った、彼女の“決意”が詰まっているのだ。

　“原点回帰”の作品とともに再びシーンに舞い降りた“ヴォイス・オブ・R&B”。来年3月にはアルバムを引っさげ4年ぶりとなる来日公演も決定している。15歳で衝撃的なデビューを果たし、天才の名を欲しいままにしてきた彼女が、様々な困難や挫折を経て再び歩き始めた今だからこそ体現できる、リアルな“R&B”を、目に耳に焼き付けておきたい。

ブランディー：プロフィール

本名・ブランディー・ラヤナ・ノーウッド(1979年2月11日)R&Bシンガー、モデル、女優や映画プロデューサーとしても活躍している。オマリオンやマーカス・ヒューストンを育てたことでも知られるクリス・ストロークによって、ミシシッピー州出身のブランディーはガールズ・グループのメンバーとして発掘された。1994年、弱冠15歳でデビュー・アルバム『ブランディー』をリリース。その後モニカとのシングル”ザ・ボーイ・イズ・マイン”が13週連続全米１位を記録し、同年のグラミーも受賞。セカンド・アルバム『ネヴァー・セイ・ネヴァー』(1998)は全世界で1,500万枚以上を売り上げ、彼女は90年代後半最も成功をした新人女性ヴォーカリストの一人となる。『フルムーン』(2002)に続き、『アフロディジアック』(2004)をリリースしたブランディーは計4作のアルバムで全米1,000万枚以上、全世界2,000万枚以上のセールスを記録し、米音楽史に残るベスト・セーリング・フィーメール・アーティストの一人となる。
そして2008年、長年在籍したアトランティック・レコードを離れ、エピックと契約。通算５作目となるニュー・アルバム『ヒューマン』はブランディーの完全復帰を飾った。そして2011年、さらにRCAに移籍。“ザ・ボーイ・イズ・マイン”以来14年振りにモニカとコラボを果たしたことが話題になったばかり。