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<インタビュー>井上紗矢香、メジャーデビュー曲がドラマ主題歌に「音楽のパワーが届くようなことをずっと続けて行けたら」



 福岡出身のシンガーソングライター・井上紗矢香が、ドラマパラビ『ふろがーる!』の主題歌に起用されている配信シングル『無重力飛行士』で2020年7月29日にavexからメジャーデビューを果たす。これまで、自身の音楽活動の傍らで藤田ニコル、伊藤千晃、Kis-My-Ft2、King & Princeら有名アーティストの楽曲へ詞を提供するなど、デビュー前から作家として実績を積んできた彼女。「無重力飛行士」では、ドラマの世界観に寄り添った温もりと透明感のある歌声を聴かせている。アーティストとして初めてのインタビューということで、生まれ育った環境の話から、音楽で生きていく道を選んだ理由まで語ってもらった。

音楽の熱だけがなぜか続いた

――今回が初インタビューということで、井上紗矢香さんがどんな人、どんなアーティストなのかを紹介したいと思います。よろしくおねがいします。

井上:はい、よろしくおねがいします!

――ご出身は福岡県ということですが、どんな環境で育ったんですか?

井上:高校卒業まで住んでいたのは、福岡県八女市というところです。お茶どころで、田園風景が広がっていて、でも結構白壁の町並みもあったり。蛍がいるような、田舎の街で育ちました。

――ビルみたいな高い建物があんまりない感じ?

井上:ええ、まったく。当時、一番近くのコンビニまで車で10分ぐらいありましたから(笑)。

――車で10分は結構ありますね(笑)。どんな子ども時代でしたか。

井上:小学生の頃に少し空手をやっていたんですけどいったんやめて、中学生の頃に音楽の道に行きたいと思ったんです。ただ、空手をやめてしまったことが思いのほか自分の中で心残りだったので、高校では空手をやり遂げてからじゃないと、気持ち的にスッキリ音楽に進めないなと思って、もう一度空手に打ち込みました。

――小学生の頃からやっていたということは、結構なところまでいってますよね。

井上:はい、黒帯です。

――すごいですね。空手を始めたのは家族の方がやっていたとか?

井上:いや、近所に何人かやっている人がいて、自分もやってみたいと思って始めました。

――自分から始めたんですね。じゃあ、活発に動き回っているような子どもだったんですか。

井上:今思うと、そうだったかもしれないです。みんなで草の葉っぱで「ポンッ」ってやるやつとか……わかります?(笑)。

――草の葉っぱで「ポンッ」。自分も田舎育ちなんですけどわからないです(笑)。

井上:そういう遊びがあるんですよ、大きい葉っぱを手で丸めて上から「ポンッ」ってやると大きい音がして破れるんです。それとか、帰りにキイチゴを獲って食べたりとか。そんなことをやってました。

――なるほど、自然に囲まれた環境ならではの幼少期を過ごしたんですね。ところで、小学生の頃に空手をいったんやめちゃったのはどうしてですか。

井上:空手道場が、すごく厳しかったんです。自分でやりたいと行って通い出したのに、毎回行く前にお腹が痛くなっちゃうぐらい、本当に厳しくて。すごく憂鬱ではあったんですけど、その後の達成感が好きで行ってたところもあって。「私、修行してる」みたいな(笑)。

――小学生にして修行に目覚めた(笑)。

井上:それが楽しくて通っていたはずなんですけど、ある日行くのを憂鬱に思っている私を見て母が「別にやめてもいいんだよ」って言ってくれて。それで「そうか、そういえばそんな選択肢もあったな」と思って。あんまり考えずにやめちゃったんです。でも、やめた直後からすっごく後悔したんです。やっぱり、あの達成感のために私はやっていたし、なんだか頑張ってない自分になった気がして。

――1回ことを始めると一直線に突き進んで止まらなくなっちゃう性格なんでしょうか。

井上:ああ~、確かにやめどきはわからないかもしれないです。空手に関しては、その後高校3年間でやり遂げようと思っていたから良かったんですけど、音楽に関してはやりたいと思ったもののずっと芽が出ない日々が続いていたときに、「これはやめどきがないぞ」って思ったことはありました(笑)。

――なるほど。音楽をやりたいと思ったきっかけは?

井上:音楽はずっと好きで、言葉や文章を書いたり読んだりするのも好きだったんですけど、中2のときに『絶対彼氏』というドラマの主題歌で絢香さんの「おかえり」という曲がテレビから流れてきたときに、「音楽を仕事にするっていいかも」ってなんとなく思ったのがきっかけです。そこから今に至る感じです。


▲絢香「おかえり」

――それまでは、漠然と将来どんな職業に就こうか思っていた感じだったんですか。

井上:それまでは、ドラマを観る度に将来の夢が変わってました。「ああ、やっぱりキャビンアテンダントになりたい」とか「やっぱり学者になろうかな」とか(笑)。

――ふり幅がすごい(笑)。

井上:そうなんですよ(笑)。だけど他は続かなくて、音楽の熱だけがなぜか続いた感じです。

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だけど私は東京に行ってみたいと思っていた

――なるほど、じゃあ今回ドラマパラビ『ふろがーる!』の主題歌でメジャーデビューというのは相当感慨深いですよね。

井上:そうですね、はい。

――音楽の道に進もうと思ってから、作詞作曲はどうやって身に付けたんですか。

井上:高校では3年間空手をやろうと決めていたので、その傍ら言葉はずっと書き溜めていて。それにメロディをつけて曲にするということはできないまま、言葉だけを書き溜める日々が続いていました。ちゃんと作詞作曲するようになったのは、高校卒業後に福岡の専門学校に通い出してからですね。でも、歌は教えてもらったんですけど、曲に関しては教えてもらえることがあんまりなくて。「作ってみたらできるから」って言われたんですよ。そんなものなのかな?と思って作ったらできたから、「あっこうやって作るんだな」と思って書きためて行った感じです。

――それは、ピアノを弾きながらとか? 楽器ってそもそもやっていたんですか。

井上:楽器はまったくやっていなかったんですけど、専門学校のとき発声をやるためにピアノはなんとなく触ってたんです。だから、なんとなくコードがわかるようになって曲に付けられた感じです。それから色んな作り方をしているんですけど、最近は歌詞から作ることが多いですね。

――もともと言葉を書くことが好きなんですね。例えば、絢香さんの曲からの影響ってどんなところにありますか。

井上:絢香さんのすごいところは、あんまり難しい言葉を使っている感じではなくて、単純な「負けるな」とか「諦めずに」とかっていう言葉でも、あの声、歌唱力を含めて、絢香さんが言うから入ってくるところがすごいなって。そういうストレートな言葉が、中高生の頃には特に響きました。

――井上さんご自身が最初に書いたのはどんな内容の曲だったんですか?

井上:頑張ってるけど、楽しそうじゃなくて、「頑張らなきゃ頑張らなきゃ」って思ってる友だちを見て、「頑張ってるのは知ってるから、たまにはドライブでも行こうよ」みたいな曲を書きました。

――へえ~、それってさっき話していた小学生の頃に空手道場に通っていた井上さんにお母さんが向けてるのと同じ視点ですよね。

井上:ああ~、確かにそうですね。思ったことなかった(笑)。

――曲を作る上で、「自分はこういうことを歌っていきたい」というものはあるんですか。

井上:ジャンルに限定してこれを、ということはないんですけど……でも曲を作りたいと思うときって、心が動くときじゃないですか?自分の日常生活の中だったり、本を読んだとき、映画を観たときかもしれないし、きっかけは色々だと思うんですけど、なんにしろ心が動いた瞬間に書き留めたいと思った雰囲気とか、そういうのを忘れたくなくて書いている意識が強いです。

――それがやがて曲になるんですね。

井上:たいていは、先に言葉が出てくるので、後からその言葉を持っている雰囲気のメロを探す感じですね。メロから作ることもあるんですけど、歌詞から作ることが多いですね。

――専門学校で曲を作り出してから、どんな活動をしていたんですか。

井上:専門学校を卒業した年にavexの「声だけオーディション」というオーディションで声をかけていただいて、それからちょくちょく東京に顔を出していたんです。別に呼ばれるわけじゃないんですけど、忘れられないように、自主的に(笑)。

――自主的に顔を出してたってどういうことですか(笑)。

井上:見つけてくださった担当の方に連絡をとって、押しかけてたんです(笑)。とりあえず何もしなかったら忘れられちゃうと思って。「声だけオーディション」というのは、avex内のある部署で実施された、見た目とか年齢とか性別とか、プロフィールを取っ払って曲だけを送ってくださいというオーディションで。それまでも、「声がいいね」と言われることがあったので、「これだ!」と思って応募しました。そのときは育成契約だったんですけど、曲を送ったりたまに押しかけたりして活動してました。

――上京したのはどんなタイミングだったのでしょうか。

井上:最近は地方でも活動できるという考えの方もいると思うんですけど、だけど私は東京に行ってみたいと思っていたし、年齢を重ねたらどんどん行くタイミングがなくなるなと思って。そういう気持ちがたまってきて、いよいよ上京することに決めたんです。別に呼ばれたわけじゃなくて(笑)。

――勝手に出て来ちゃったんですか(笑)。行動力がすごいですよね。プロフィールを拝見すると、以前から藤田ニコルさん、伊藤千晃さん、Kis-My-Ft2、King & Princeら有名アーティストの曲を作詞していますよね?



井上:これは、「声だけオーディション」で声をかけていただいた方に、「詞が良い」って評価していただいて、作詞のコンペに出すようになったんです。それで何人かのアーティストの方に詞を提供させてもらいました。運が良かったんだと思います。作詞家になろうと思ったことがなかったので、何か不思議な感じです。でもやってみると面白いし、今はどっちもできていて良かったなと思っています。

――そうした活動の一方で、ライヴ活動もしていたんですか? 会場限定で『シンデレラ』という音源を出していますよね。

井上:そうですね。『シンデレラ』は福岡時代にライヴのときに手売りしていました。ライヴはピアノ弾き語りが多かったんですけど、たまにギターのサポートを頼んだりしてやっていました。


▲井上紗矢香「シンデレラ」

――以前の曲を聴くと「シンデレラ」はストリングスが入っていたり、「Fly」はアップテンポなギターロックでエモい曲だったり、結構色んな曲調を書いているんですね。



井上:どっちも好きなんですよ。静かな曲も、ワーッと叫ぶような曲も。

――花王『ビオレ さらさらパウダーシート』のプロジェクト『がんばれ!隠れ汗プロジェクト』のアニメーションWEB CMソング「I can」では、爽やかな青春ポップスを作詞作曲して歌ってますよね。

井上:もともと、「がんばれ!隠れ汗プロジェクト」が女子高生の青春を応援するというコンセプトのものだったので、高校の頃を思い出しつつ、背中を押せるようにって思って書いたんです。高校卒業後の進路を友だちに「音楽の専門学校に行くよ」って言ったとき、友だちが「音楽の世界のことはよくわからないけど、頑張り屋さんなあなたならなんだってできると思うよ」って手紙を書いてくれたんです。普通に「頑張ってね」とか「応援してるね」って言われることは多かったんですけど、“あなたなら大丈夫”って言われたことがすごく心強くて。そのことをすごく覚えていたので、その思いを込めて書きました。サビは結構、そのまんまですね。

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人生の中で仕事をしている時間が一番長い

――そうしたステップを重ねて、「無重力飛行士」でメジャーデビューを果たすことになったわけですね。

井上:ありがとうございます。でも本当に、この声も両親にもらったものだし、このチャンスも周りのみなさんにもらったものなので。「恵まれてるな」っていうのが、素直な気持ちです。

――それは、チャンスをものにする実力と行動力があったからだと思いますよ。「無重力飛行士」はドラマパラビ『ふろがーる!』ありきで書かれた曲だと思うんですけど、お風呂と「無重力飛行士」という言葉って一瞬結びつかないですよね? どんな発想で書いた曲ですか。

井上:原作漫画の中で、主人公がお風呂に浸かって、お湯の浮力であんまり重力を感じなくて気持ちいい、というシーンが結構何回か出てくるんですよ。それで、こういうワードが出てきました。


▲井上紗矢香「無重力飛行士」

――やっぱり詞からできたんですか?

井上:そうですね、はい。

――最初に聴いたときに、冒頭の「たぶんね」という歌いまわしからして、メロディから作って歌詞を付けたのかと思ってました。変わったイントネーションになっているというか。

井上:本当ですか。何か新鮮な感想です(笑)。これは、頭から歌詞を一気に書いた感じです。

――アレンジはCube Juiceさんが手掛けていますが、浮遊感のある音が歌の世界観にすごく合ってますね。これはイメージを伝えたりしたんですか?

井上:浮遊感とかキラキラしたイメージだったので、それをお伝えして作ってもらいました。出来上がりを聴いたときは、キラキラしていてすごくいいなって思いました。水面が光に反射したらキラキラってなるじゃないですか? あの感じをイメージして書いていたので。

――ドラマは先日(7月15日)第一話が放送されましたけど、ご覧になっていかがでしたか。

井上:原作の漫画も素敵だったんですけど、ドラマに出てくるお二人(桜井日奈子と小西桜子)もすごく可愛いし、色んな工夫があるから勉強にもなるし、クスっと笑えるし、癒されるというか。時間帯的にも結構深いんですけど(テレビ東京ほかで毎週水曜0時58分から放送中)、寝る前に見るのにピッタリだと思いました。

――お風呂に入る前と後、どっちで見た方がいいですか?

井上:ええ~と(笑)、私は入ってから見ました。

――劇中で「無重力飛行士」がどこで流れるのかは事前に知ってました?

井上:いや、私はその日初めてわかるのが良いなと思って、楽しみにしていました。

――実際にご自分の声がテレビから流れてきたとき、どう思いましたか。

井上:嘘みたいだなって思いました。自分の曲が主題歌で流れるっていう状況が、嘘みたいというか夢みたいな感じでした。……夢じゃないといいですね(笑)。

――夢じゃないと思います(笑)。曲が流れたあとの反響ってネット上でご覧になりましたか。

井上:「癒される」っていう声があって嬉しかったですね。一日の終わりにピッタリな作品だと思うので、良い夢が見れる曲になれたらなって思っています。

――井上さんはどんなアーティストになりたいですか。

井上:音楽って嬉しい曲も悲しい曲も色々あると思うんですけど、なんにせよパワーを受け取り合っているというか。例えば、私が『ふろがーる!』を見て曲を作って、それが誰かに届いて、また何かの感情が生まれてという、そういうループが好きなので。曲を聴いてどんな感情を抱いてもらってもいいんですけど、音楽のパワーが届くようなことをずっと続けて行けたらいいなと思っています。

――音楽って、小さな子どもからお年寄りまで、みんなが聴いたり歌うのが好きなものじゃないですか? でもほとんどの人は趣味でカラオケを歌ったりするわけで、それを職業する人ってほんの一握りですよね。井上さんはどうして歌を歌って生きて行きたいんですか。言ってしまえば、趣味で気楽に歌っていても良いわけですけど。

井上:そうですね。中学生の頃に一番将来のことを考えたんですけど、人生の中で仕事をしている時間が一番長いじゃないですか? 趣味でやるとなると、自分の本業があって、それ以外の時間でやることになるわけですけど、歌を仕事にしたら1日中やれるし、歌うことでよりたくさん、いろんな素敵な方々と会うことができると思うんです。そういうところが、仕事としてずっと続けていきたいって思うところです。

――アーティストとして目標にしていることや夢はありますか?

井上:大きなライヴ会場とかCMとか、思い当たることは全部夢なんですけど、でもやっぱりそうやっていく過程で、ミュージシャンでもスタッフさんでも色んな人と出会って、一緒に仕事をしていくことが一番の楽しみであり夢ですね。

――では、改めてメジャーデビューに際してひと言お願いします。

井上:『ふろがーる!』という作品に携わることが出来て幸せだと思いますし、原作を読んで一番感じたのが、主人公の早夜子はお風呂が「また明日も頑張れる」っていうスイッチになっていると思うんですけど、そういうものってお風呂じゃなくてもみんなそれぞれにあると思っていて。「無重力飛行士」も、聴くことで明日も頑張れるっていう曲になってくれたら嬉しいですし、ドラマ自体を見てもらってグッスリ眠って、「また明日も頑張ろう」って思ってもらえるようなものになったら、幸せだなって思います。

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