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<インタビュー>TikTokでも人気、トーンズ・アンド・アイが語る「ダンス・モンキー」の大ヒットについて



インタビュー

 オーストラリアはモーニントン半島出身のシンガー、トーンズ・アンド・アイが旋風を巻き起こしている。彼女が路上ライブの拠点とするため、バイロンベイに移り住んだのが2018年初頭のこと。そこで早くも手応えを感じた彼女は、務めていた小売業の仕事を辞め、1年間ワゴン車で生活しながらバスキングを続けていたという。

 そして2019年、デビュー・シングル「ジョニー・ラン・アウェイ」が、2週連続でオーストラリアのラジオ番組で「最も多く再生された曲」としての記録を樹立。続く2ndシングル「ダンス・モンキー」は、オーストラリアのシングル・チャートで24週1位を獲得し、歴代記録を塗り替えたうえ、その人気は本国から世界中へ飛び火。米ビルボードのソング・チャート“HOT 100”では、最高5位にまで到達してみせ、日本でもTikTokを中心に若者たちから大きな認知度を誇っている。

 今回はそんなトーンズ・アンド・アイのインタビュー記事を公開。「ダンス・モンキー」の大ヒットについて、盟友ともいえるプロデューサー、Konstantine Kerstingについて、そして先日、オーストラリアを襲った悲劇的な大災害を受け、彼女が先導したチャリティ・イベントについて、語ってもらった。

この曲は独自の世界を持つ存在になった

――シングル「ダンス・モンキー」が世界中で大ヒットしていますね。この楽曲はどのようにして生まれたのでしょうか?

この曲は、路上ライブをしていた頃、観客から次から次へと「曲をかけて!」って要望されたことから生まれたの。携帯の画面をスクロールして、次から次へと楽しいものが出てくるようなことに、みんな慣れてしまってるから、現実の世界でも次から次へ「早く楽しませて!」ってね。歌詞にも路上ライブで観客から言われた言葉を取り入れてるんだ。でも、<Dance just one more time(もう一度踊って)>は、実際には「Sing(歌って)」って言われたのを「Dance(踊って)」と置き換えた。そうすれば曲の意味が分かりやすくなるでしょ?

――この曲が世界中でヒットしている理由は何だと思いますか?

すごく難しい質問だけど、きっと私の歌声かなと思う。ベース・ドロップが効いたコーラスの曲は他にもあるし。世界でも著名なソング・ライターたちが私の歌を分析して、ヒットした理由を解明しようとしてるみたいなんだけど、私の声はすごく高くて、少し変わってるからね。みんな、こんな声は予想してなかったんだと思う。多くの人がボーカル・エフェクトをかけてると思っていたみたいだけど、実はエフェクトはまったく入ってないんだ。

――「ダンス・モンキー」を通じて世の中の人々へ伝えたいメッセージはありますか?

正直に言うと、この曲を書いた時、世間の反応について少しイライラしていたの。期待して待ってるだけでじゃなく、携帯から目を離して、もう少し視野を広げて、そしてもう少し辛抱強くなったらどう?って。でも今となっては、この曲は独自の世界を持つ存在になったと思う。伝え方が難しいけれど、子供たちやお年寄りも大好きな曲になって、若者もドロップのあるバイブ(音感)を気に入ってくれてる。だから、今はあまりメッセージ性のない曲になってる感じがするわ。曲の意味を深く考えようとしてくれるなら別だけど、中にはただビートが好きだという人もいるし。「この曲を聴いてすごく泣いた」って言ってくれる人もいてびっくりした。EPには他にも本当に泣ける曲があるのに。この曲については…本当に分からない。人によってこの曲に対する感情が違うみたい。もう私の手の届かない世界に、捕まえられないくらい遠くに行ってしまった。だからこの曲に関しては、みんなに自由に捉えてもらえればいいと思ってる。



TONES AND I - DANCE MONKEY (OFFICIAL VIDEO)

――もともとオーストラリアで路上ライブをしていたんですよね。何かきっかけがあったのですか?

バーク・ストリート(メルボルン中心部にある買い物客でにぎわう通り)にあるお店で働いていた頃、お店の前で路上ライブをする人たちをいつも見ていたの。バーク・ストリートは路上ライブをする人がたくさんいて、彼らを見ていると「お店の中から見ているだけじゃなく、私も路上ライブをしたい。毎日路上で音楽をかけていられる人になりたい」って思うようになって。応募してから路上ライブをできる許可が降りるまで、1年ぐらいかかったわ。オーディションを受けたり、長いあいだ待たないといけなかったの。ついに許可が降りて、路上ライブをするようになったら、今度は「バイロンベイで路上ライブをやってみないか?」って言われた。あの時バイロンベイへ行って本当に良かったと思う。もし行っていなかったら、今起こっている全てのことが現実にならなかったから。

――自分の歌の才能に気がついたのはいつ頃?

私はいつも歌を歌いながら育ったんだけど、ボーカル・トレーニングを受けたことは一度もなかったから、ある日、歌のレッスンを受けて、どんなことを教われるか試してみたの。先生と音階の発声をしたんだけど、私は先生が発した音を出すことができなくて、「あまり広い音域を持ち合わせていないわね」って言われちゃった。でも、その後「1曲歌ってみて」って言われたから、ピアノと一緒に歌ってみせたら、今度は「さっきできていなかった発声が全てできているわ。たぶん高いオクターブを使っているからだね。“この音を出してみて”と言っても、あなたはその音を出すことはできなかったけど、自分で歌いたいように歌っていた時は、声質が変わって、音程も全て合っていたわ」って。だから、普段使ってる声のままで「ダンス・モンキー」を歌っても音程が合わないの。

――あなたが影響を受けたミュージシャンについて教えてください。

私の音楽のルーツにはもちろんマックルモアがいるし、若い頃はクリスティーナ・アギレラが大好きだった。まだ大好きだよ。彼女はきっと、これからも私が知る中で一番素晴らしくて、力強い歌声を持った存在のままだと思う。あと、R&Bやヒップホップが昔から大好きで、きっとこれからもずっと好きだと思うな。ずっとバスケットボールをして育ってきたからね。でも、バラードも大好き。去年はプログレ・フェスに行ったし、スクリーモなんかも聴く。基本的にライブはどのジャンルでも感動するな。自分がどんなムードかにもよるし、その時どんな曲を聴いているかにもよるんだけど。


人間は一つになれるということを実感できて良かった

――デビューEP『ザ・キッズ・アー・カミング』で最もチャレンジングだった曲を教えてください。

「ザ・キッズ・アー・カミング」が難しかったかな。自分で100%プロデュースした初めての曲だったから。自分の音楽は全部自分で書くけれど、プロデュースからラジオで流れるまで、全く他の人がタッチしないという意味で、完全自己プロデュースだったの。しかもあの曲、400ドルのキーボードで作ったんだよ。ドラムとかベースの効果音も、直接AUXケーブルをミキサーに繋いで。あり得ないでしょ。いつもステージで使っているRolandのGO-KEYSっていうキーボードだけだよ。だから、この曲のことはすごく誇りに思うし、私にとってすごく意味があると思ってる。あの曲をリリースすることは、自分にとって新しい特別の経験だった。ESPN(スポーツ専門チャンネル)で、レブロン・ジェームスがスラムダンクしてる時にこの曲がかかったの。私の曲がだよ。信じられなくて。たった20秒だけど、それでもあり得ない。これはあの曲で成し遂げた一番大きなことかな。

――プロデューサーとして参加しているKonstantine Kerstingについて教えてください。彼との作業はいかがですか? ワーク・フローは彼のおかげで変わったのでしょうか?

うん、コン(Konstantine)はすごい。ほぼ完成していた「ザ・キッズ・アー・カミング」のデモを彼に送って、「もうちょっと肉付けして、プロっぽくして。特にドラムのクオリティを良くして欲しい」みたいに頼んだの。私はただループして、曲を作って、録音するだけ。それをコンが綺麗にしてくれる。コンとはそういう感じで仕事するの。彼は本当にすごいし、アイディアも豊富だし、そして何より最新の事情をちゃんと分かってる。デビュー前に何人かのプロデューサーと仕事したけれど、「昔はこうやったんだよ」って言う年上の人も多くて。だから、新人の若いアーティストとしての今の私の世代を理解してくれる人が必要だと思ったんだ。そういう意味でもコンと私はすごく合うし、友達としてもすごくいい関係。だから最高。

――彼と一緒に音楽作りをするうえで、特別な相乗効果が生まれていると感じますか?

うん、絶対に生まれていると思う。私とコンは一緒に歩いてきたようなものなの。「ダンス・モンキー」を作るまで、私は何もやったことがなかったし、コンもあまり経験がなかった。だから、一緒に経験を積んできた感じ。彼はARIA(The Australian Recording Industry Association Music Awards)で<最優秀プロデューサー>にノミネートされたし、私は「ダンス・モンキー」で受賞したから、彼もそれを受賞したということ。私が1位を獲得したということは彼も1位、みたいな。私の後ろにあるトロフィーは全部、彼も持っている。一緒に成長して、チームとしてやってきた感じだね。

――先日オーストラリアのアーティストたちと森林火災のチャリティ・イベントを行いましたよね。どんな経緯があったのですか?

すごく、すごく酷い災害だったからね。まず最初にしたことは、絶対にみんながライブを観たがると思う、オーストラリアのアーティスト仲間に連絡したの。みんな二つ返事で100%完全に賛同してくれて、すぐに集まってくれた。それからすぐに会場に連絡したら、「無料で会場提供することを約束します。素晴らしい目的だと思います」って言ってくれて。で、その後はチケットを買えて、継続的にみんなが寄付できるウェブ・リンクを作ったの。そしたら、YouTubeが「コンサートをライブで放送したい」って言ってくれて、それもすごく素晴らしいと思ったわ。あとはチケットを売って、当日会場に集まって、みんな最高のパフォーマンスができた。本当にすごいスピードだった。ていうか、1日で全部オーガナイズしたのよね。「これやりたい」「じゃあ実現させよう」みたいな。

――すごいですね。あのイベントを経験して、自分に影響を与えたと感じることはありますか?

支えてくれる人が周りにたくさんいて、みんなで力を合わせればできることがたくさんある、ていうのが分かったこと。今回の森林火災から学んだことの中でそれが一番大きかったわ。オーストラリア中が一丸となっている感じがしたの。いや、オーストラリアっていうか世界中だね。世界のあちこちから届く支援の規模はすごかった。そう、それが分かったのはすごく大きい。本当に困難な状況、危機的な状況の下で、人間は一つになれるということを実感できて良かった。だって、今後援助が必要になる国はオーストラリアじゃなく、どこか他の国かもしれないでしょ。未来のため、より良い世界を作る必要があるの。



TONES AND I - NEVER SEEN THE RAIN (LIVE FROM THE BUSHFIRE BENEFIT)

――現代社会において、音楽が果たすべき役割とはどんなものだと考えますか?

音楽は“全て”だと思う。おじいちゃん、おばあちゃんがレコードで聴いている古い音楽から、若者がTikTokで聴いている新しい音楽まで、どんなことについても必ず曲があるということを知っておくといいと思う。好みのジャンルは違うかもしれないけど、音楽は誰でも聴くよね。みんなが服を着るみたいに。私たちはみんな、お気に入りで着心地のいい服を着る。でも、みんなそれぞれ好みのスタイルを持っていて、それで心地よく感じたり、自信を持てたり、気分が良くなったりする。音楽もそれと同じで、それぞれ好きな音楽とかジャンルがあって、他の人とは違うかもしれないけど、音楽で他の人と繋がることもある。一人ひとりに聴く音楽があって、着る服があって、つまりそれは生活の一部。人生の色々な場面のサウンド・トラックみたいなものだよね。

――あなたは将来、自分がどういったアーティストになっていると想像しますか?

そうね、自分に正直で、リアルで、タフで、心が強くて、でも優しくて、同情心のある人間として尊敬されるようなアーティストになりたい。それから、ファンのみんなに対する感謝の気持ちを忘れないで、それを伝えることも常に忘れないでいたい。人々が私の音楽から力をもらうことができたり、強くなれるきっかけになればいい。あと、いじめには絶対に屈しない。いじめ撲滅を推進する人として、長く覚えてもらいたい。私にとってそれはすごく大事。


すぐに日本に行くからね

――日本についてはどんな印象を持っていますか?

まだ一度も行ったことがないんだけど……、今持っている印象はすごく明るくてカラフルで、そしてすごくスマイリーでハッピーな感じ。きっとオーストラリアに来たことがない人が、あちこちでカンガルーが飛び回っている国だと思うのと同じかもしれないけど……。うーん、すごく色んなことがぎゅっと詰まっていそう。聞いた話だけど、マリオカートみたいなもので街を乗り回すことができるって? きっと見たことのないものがたくさんありそうな気がする。

――日本に『ムラサキ』という人気コミックがあるのですが、これが「ダンス・モンキー」とコラボした日本版ビデオがあります。見ていただけますか?



Tones and I「ダンス・モンキー」& 厳男子「ムラサキ」コラボ・ビデオ

わぁ! これ、すごく特別な感じがする! きっと実際のミュージック・クリップを作った時の時間よりも長くかかるでしょうね。ハハハハ! 本当にありがとう! こういうのはオーストラリアでは絶対にないから。きっとあなたたちの文化の一部なんでしょうね。本当に素敵なものをありがとう! 信じられない。この作品、本当に素敵!

――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

アリガトウ、ジャパン! トーンズ・アンド・アイです。私のEP『ザ・キッズ・アー・カミング』、そして私の曲「ダンス・モンキー」を聴いてくれてありがとう。みんなに会いに、すぐに日本に行くからね。それまで楽しみにしています。本当にありがとう!

Billboard JAPANのTikTokアカウントにてメッセージ映像公開!
@billboard_japan

「Dance Monkey」が大ヒット中の#TonesAndI からメッセージ🙈💖 Billboard JAPANで彼女のインタビューが公開中なので、ぜひチェックしてくださいね🤙

♬ Dance Monkey - Tones and I

トーンズ・アンド・アイ「ザ・キッズ・アー・カミング」

ザ・キッズ・アー・カミング

2020/02/05 RELEASE
WPCR-18316 ¥ 1,650(税込)

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Disc01
  1. 01.ザ・キッズ・アー・カミング
  2. 02.ダンス・モンキー
  3. 03.カラーブラインド
  4. 04.ジョニー・ラン・アウェイ
  5. 05.ジミー
  6. 06.ネヴァー・シーン・ザ・レイン
  7. 07.ダンス・モンキー(ストリップド・バック) (日本盤ボーナス・トラック)

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