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マーカス・キング 初ソロAL『エル・ドラド』発売記念インタビュー「歌うのは僕なわけだから、実体験に基づいたリアルなストーリーを語りたい。」



マーカス・キング インタビュー

 2017年7月のフジロック、2019年4月のビルボードライブに続いて、マーカス・キング・バンドが4月に3度目の来日公演を行なう。天才的なギター・プレイと情熱的な歌唱で人々を魅了する若きフロントマン、マーカス・キングを中心としたこのバンドは、デビュー当初からとにかく熱いライブに定評があり、観たひと誰もが絶賛する。

 バンドはこれまで3枚のアルバムを発表しているが、今年1月に届いたのがマーカス・キングの初のソロ・アルバム『エル・ドラド』だ。マーカス・キングはサウスカロライナ州グリーンヴィルの出身だが、数年前にナッシュヴィルに移り住み、そこで出会ったブラック・キーズのダン・オーバックと意気投合。一緒に曲を書かないかと誘いを受け、初めて共作した曲(「ハウ・ロング」)はマーカス・キング・バンドの3作目『カロライナ・コンフェッションズ』(2018年)に収録されたが、そこでの相性のよさもあって再び共作。ダンの持つイージー・アイ・サウンドで地元のソングライターと伝説的なミュージシャンからなる制作チームと共にその初ソロ作を完成させた。それは、心の底からリアルに物語を歌えるマーカスのシンガーとしての魅力、ソングライターとしての個性と実力が遺憾なく発揮された傑作であり、70年代に生まれていまも聴き継がれているソウル・クラシックやロック・クラシックのような堂々たる佇まいとモダンな輝きがある。

 4月の日本公演では、その初ソロ作の世界観をマーカス・キング・バンドでどのように表現するのか。それを楽しみにしながら、インタビューを読んでいたただきたい。

「どれもが “coming of age = 大人になる” ことを表わしたストーリーだったんだ。」

−−ソロ・アルバムを作ることは、前々から考えていたのですか?

マーカス・キング(以下:マーカス):いや、降って湧いたような話だったんだ。ダン・オーバックとふたりで、アイデアを形にしてみようかってことになってね。美しくて素晴らしい結果になり、僕としては大満足だ。

−−マーカス・キング・バンドではやれないことをソロ・アルバムでやろうと前から計画していた、というわけではないんですね。

マーカス:うん、そうじゃない。というか、もともとマーカス・キング・バンドは僕のソロみたいなものだったから。改めてソロ作を作ろうと思ったことなんか全くなかった。ただ、たまたまチャンスが巡ってきて、これを断るのは惜しいと思ったからやったんだ。

−−そのチャンスとは?

マーカス:ダン・オーバックさ。彼のスタジオ(*イージー・アイ・サウンド)のハウスバンドは、セッション・ミュージシャンの世界で名の知れたベテラン揃いなんだ。ダスティ・スプリングフィールドからエルヴィス・プレスリー、ジェリー・リードまでのバックを務めてきた一流が揃ってるんだよ。ロイ・オービソンと一緒にやってたミュージシャン(*ビリー・サンフォード)もいる。そんな最高のハウスバンドと一緒に、キミのアルバムをレコーディングしたいとダンが言ってくれたんだ。で、そうすることにしたわけ。



▲Marcus King - The Well (Official Music Video)


−−ダン・オーバックとは、あなたがナッシュヴィルに住むようになってから知り合ったんですか?

マーカス:ああ、もう2年くらいかな。彼の持つイージー・アイ・サウンドは本当にいいヴァイブが流れているスタジオで、ポジティブなエネルギーに満ちている。だからツアーから帰ったら必ず顔を出すんだ。いつ行ってもフレンドリーで家族的。一度その家族の一員になったら、ずっと本当の家族のようにみんなが接してくれるんだよ。

−−そんなメンバーたちと、マーカス・キング・バンドとは異なる作品作りをしようと意識して取り組んだところも多少はあったりしますか?

マーカス:そういう意識は特になかった。本当にすごく自然なプロセスだったんだ。オーガニックという言い方が正しいかな。何かを強いるようなことはなくて、スタジオのなかで全てが自然に流れるように形になっていく感じだった。

−−プロデューサーとしてのダン・オーバックは、ほかのプロデューサーの仕事の進め方と、どういったところが違っていましたか?

マーカス:その場で起きていることに対して、すごく広い目で見て捉えることができる点かな。ダンは何マイルも先まで見て、その結果をイメージすることができるんだ。例えばセッションが終わったら、そのテイクがどうだったかということだけでなく、レコードとしてリリースしたときやその1年後にその曲がラジオでかかったらどんなふうに聴こえるかっていうところまで読める能力がある。そういう先見の妙こそが、彼のプロデューサーとしての才能であり価値でもあると思う。

−−レコーディングは短い期間で終わったそうですね。

マーカス:うん。3日間で18曲レコーディングした。そのうちの12曲をアルバムに入れたんだ。

−−曲作りにはどのくらいかけたんですか?

マーカス:数週間ってところかな。

−−そのプロセスを教えてください。まずあなたがベーシックな部分を作り、それをもとにダン・オーバックらと形にしていくというやり方だったんですか?

マーカス:「今日は曲を書こうぜ!」っていう日にはダンがパット(・マクラフリン)だったりロニー(・ボウマン)だったりを呼んでくれて、僕とダンと呼ばれた誰かの3人で曲作りに取り掛かる。何もない状態から書き始めるというよりは、たいがい僕かダンがアイデアを持っていて、それを合わせながら仕上げる感じだったね。3人のチームで曲を仕上げるんだ。個別に書いた曲であっても、セッションを通してできあがった曲には共通項があった。どれもが “coming of age = 大人になる” ことを表わしたストーリーだったんだ。



▲Marcus King & Dan Auerbach - Beautiful Stranger (Acoustic at Easy Eye Sound)


−−それは、あなた自身の物語、あなたの成長の物語と言っていいものですよね。

マーカス:そうだね。曲を書くときには、必ず自分にとってのリアルな場所からアイデアを引っ張ってくるようにしている。自分は何者なのか、どういうところから出てきたのかといった背景を含め、僕という人間をリスナーにわかってもらえるようでありたいから。“ヤング・マンズ・ドリーム”はそれが表れたいい例だと思うよ。実際に学校をやめ、家を出たのは17のときだった。そこから僕の旅が始まった。あの歌詞はまさしく実体験なんだ。ほかのどの曲も僕自身の経験がなんらかの形で反映されている。歌うのは僕なわけだから、実体験に基づいたリアルなストーリーを語りたい。そういうやり方が好きなんだよ。今回に限らず、どんなときもね。

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「傷心、喪失、痛み、悲しみ……。 これまでに僕が抱えてきたいろんな感情がそこに込められている。」

−−「ヤング・マンズ・ドリーム」は、あなたとダンとパット・マクラフリンの共作です。彼を始め、経験豊かなソングライターたちの貢献もかなり高かったのでしょうね。

マーカス・キング(以下:マーカス):ああ、パットは素晴らしい人だ。ずっと年上なのに、謙虚で、僕に対して大きな心で接してくれた。本当にすごいソングライターだよ。ほかのひとたちもダンが選んで呼んでくれたんだけど、みんなとんでもない熟練者で。ボビー・ウッドもポール・オヴァストリートもロニー・ボウマンも、素晴らしい曲を書いて素晴らしい演奏をする。何よりみんな、ひととして素晴らしいんだ。



▲Anderson .Paak Wins Best R&B Album | 2020 GRAMMYs Acceptance Speech


−−そういうひとたちと組みながら、あなた自身、ソングライターとして今までよりも高みへと上ることができたという実感を持てているのでは?

マーカス:うん。今回書いた18曲……そのうちレコーディングしたのは13曲で、アルバムに入れたのは12曲だけど、どの曲にも強い思い入れがあるし、ソングライターとしていままでよりレベルを上げることができたんじゃないかと思う。それを次のプロジェクトにも活かしたいと思ってるよ。

−−収められた12曲にはタイムレスな輝きがあり、まるで70年代に生まれていまも聴き継がれているソウル・クラシックやロック・クラシックのように堂々としている。そのように、流行に流されず残っていく曲を書こうと努力したところもあったんですか?

マーカス:タイムレスにしようと思ってアプローチした曲というのは、たいがい、そうならない。目論んで作ったもの、作りすぎたものというのは、結局意図したことの逆になってしまうと僕は思うんだ。音楽に限らずね。

−−では、シンガーとしてはどうですか? ダンは「彼の歌にぶっとんだ。心の奥底から歌うことに感動したよ」とコメントしてましたし、以前よりも感情豊かな表現になっているように感じたのですが、特に意識したところはありましたか?

マーカス:弱さとか傷つきやすさといった部分をこれまでよりもっと出していいかなと思ってアプローチした。聴いてくれるひとには、歌詞の一語一語の奥に込めた意味を感じてもらえたらいいなと思っていたんだ。そのために少しだけソフトに、しっとり歌うというか。

−−なるほど。テーマとしては、魂、心、愛、痛みについて歌っている曲が多いように感じましたが、そうしたテーマを予め想定して作っていったところもあるんですか?

マーカス:むしろ、テーマが僕を見つけてくれた、という感じだね。つまり、あるとき気づいたら “coming of age” に関するストーリーの曲が多く書けていたということ。僕自身が人生のどういう道を辿ってきたか。自然とそういう曲ばかり書いてしまっていたんだ。確かに全体で大きなストーリーを語っているアルバムであることは間違いない。傷心、喪失、痛み、悲しみ……。これまでに僕が抱えてきたいろんな感情がそこに込められている。聴き終えたときに「このストーリーの続きはどうなるんだろう?」と思わずにいられなくなる、そんなアルバムになったような気もするし、近い将来にもっとそう思わせる作品ができることを自分でも期待しているところだよ。



▲Marcus King - One Day She's Here (Official Audio)


−−『エル・ドラド』というアルバム・タイトルにはどんな意味を込めているのか、教えてください。

マーカス:まず、エル・ドラドは伝説上の“黄金郷”のことで、現実に存在する場所ではない。海中に沈んだとされるアトランティスと一緒でね。で、僕の考えるエル・ドラドは“いつか辿り着こうとしている黄金の街”であるわけだけど、でも本当の目的はそこに向かう旅路そのものなんだよ。わかる? ひとはみな、心のどこかではわかっているんだ。そこには決して辿り着けないってね。だけど、そこに行くまでの旅そのものを楽しもうぜ! ってことなんだよ。ただ、僕にとってはナッシュヴィルが、ある意味で黄金郷のようでもあった。ナッシュヴィルには秘められたエネルギーとものすごくクリエイティヴなパワーがあるのを感じる。引っ越してよかったよ。で、ナッシュヴィルに引っ越して最初に買ったクルマがキャデラックのエル・ドラドだった。アルバムのジャケットに写ってるやつさ。それともうひとつ、子供の頃に弾いていたギターと久々に再会したんだけど、それがエピフォンのエル・ドラドだった。そのように全部が繋がったんだ。

−−さて、現在はマーカス・キング・バンドでツアーをしている真っ最中ですが、もちろん『エル・ドラド』の曲も演奏しているんですよね。

マーカス:全曲やってるよ。マーカス・キング・バンドの前作の曲も演奏している。僕らのライブは、セットリストは毎晩ちょっとずつ変わっているんだ。



▲Marcus King – The Well


−−4月に3度目の日本公演が控えていますが……。

マーカス:そこで何が聴けるかは、来てからのお楽しみって感じだね(笑)。

−−ソロ作『エル・ドラド』の曲をマーカス・キング・バンドで演奏するのは、どんな感じですか?

マーカス:バンドメンバーはみんな、すごく楽しんで演奏してくれてるよ。楽曲が本来のよさを発揮するのに、これ以上のバンドはないと思う。世界中のあらゆるバンドのなかで、もっとも『エル・ドラド』の世界を表現するのに相応しいバンドは僕のバンドだ。演奏も曲も最高だよ!


マーカス・キング「エル・ドラド」

エル・ドラド

2020/01/17 RELEASE
UCCO-1218 ¥ 2,750(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ヤング・マンズ・ドリーム
  2. 02.ザ・ウェル
  3. 03.ワイルドフラワーズ&ワイン
  4. 04.ワン・デイ・シーズ・ヒア
  5. 05.スウィート・マリオナ
  6. 06.ビューティフル・ストレンジャー
  7. 07.ブレイク
  8. 08.セイ・ユー・ウィル
  9. 09.ターン・イット・アップ
  10. 10.トゥー・マッチ・ウィスキー
  11. 11.ラヴ・ソング
  12. 12.ノー・ペイン
  13. 13.ブレイク (ライヴ・ヴァージョン) (日本盤ボーナス・トラック)

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