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マンハッタンズ featuring ジェラルド・アルストン来日記念特集 ~全米屈指の名門ソウル・ヴォーカル・グループの軌跡~



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 70年代を中心にヒットを連発した全米屈指の名門ソウル・ヴォーカル・グループ、マンハッタンズ。サム・クック直系のシンガーとしても名高いジェラルド・アルストンを看板リードにしてからの快進撃は凄まじく、とりわけ「涙の口づけ」(76年)と「夢のシャイニング・スター」(80年)はグループの2大バラードとして知られている。60年代前半に結成された彼らは活動歴55年以上。2014年に他界した低音ヴォイスのブルー・ラヴェットを含めオリジナル・メンバーは今や全員鬼籍に入ってしまったが、ジェラルドを中心に現在も活動を続けている。2018年10月には新曲“Get It Ready”も出したばかりだ。そんな彼らが約6年半ぶりに行う来日公演を前に、ライヴへの期待も込めながら、マンハッタンズの結成から現在までをざっくりと振り返ってみたい。

CD
▲『Forever By Your Side』

 ビルボードライブ東京のステージ後方に見える六本木/赤坂の夜景。マンハッタンズのライヴを観に行くたびに、そのアーバンな夜景が彼らの81年作『Black Tie』(の日本盤。邦題『ミッドナイト・ドリーム』)や83年作『Forever By Your Side』のアルバム・ジャケットとダブって見える。かようにマンハッタンズは、絵に描いたような“アーバン”を魅惑的なコーラス・ワークと洗練されたサウンドで体現してきたソウル・ヴォーカル・グループである。名曲は多いが、ライヴでもひときわ大きな歓声が上がるのは、76年の全米No.1ヒット“Kiss And Say Goodbye”(邦題「涙の口づけ」)とグラミー受賞の栄誉に浴した80年の“Shining Star”(邦題「夢のシャイニング・スター」)の2曲。前者がフィラデルフィア、後者がシカゴでの録音。70~80年代の都会派ソウル・ミュージックを代表するふたつの都市で、それらのヒット曲は誕生した。



▲The Manhattans - Kiss and Say Goodbye

 結成地はニュージャージー州ジャージー・シティ。フォー・シーズンズ同様、彼らもジャージー・ボーイズだった。“ソウル版ジャージー・ボーイズ”とでも言えばいいだろうか。しかし名前はマンハッタンズ。そんな彼らのどこが“マンハッタン”なのか。実は彼らの故郷ジャージー・シティは、ハドソン川を挟んでNYマンハッタン島の向かいに位置し、摩天楼を一望できる場所にある。マンハッタンの景色を眺めながら音楽業界での成功を夢見ていたのではないか?というロマンティックなストーリーを想像したくもなるが、グループ名はカクテルの“マンハッタン”(これ自体がマンハッタン島に由来する)にちなんで命名されたとも言われている。とくれば、カクテルを片手に都会の夜景を眺めながらマンハッタンズのライヴを観ることは、正しい鑑賞法と言えるのかもしれない。

 テンプテーションズ、スタイリスティックス、ドラマティックス、シャイ・ライツなどと並ぶ名門ソウル・ヴォーカル・グループとして活躍し、現在も活動を続けるマンハッタンズ。彼らの黄金期は70年代初期から80年代中期にかけてのコロンビア時代ということに異論を唱える人はいないだろう。この時期にリード・シンガーを務めていたのがジェラルド・アルストンだった。メンバーによる洗練されたハーモニーに加えて、サム・クックを彷彿させるジェラルドのシルキーで情熱的なヴォーカルがグループのトレードマークとなっていく。

 ただ、ジェラルドは初めからグループにいたわけではなかった。結成の経緯については諸説あるが、徴兵でドイツに駐留していたリチャード・テイラー(バリトン)とエドワード“ソニー”ビヴィンズ(テナー)が意気投合し、帰国後の63年に3人の仲間とダルシッツを組んだことがグループの始まりとされる。ダルシッツはすぐに解散するが、その後ふたりはハイスクール時代の仲間だというジョージ“スミッティ”スミス(テナー)、ウィンフレッド“ブルー”ラヴェット(ベース)、ケネス“ウォーリー”ケリー(テナー)を呼び寄せ、マンハッタンズとして活動を開始。地元ニュージャージーから橋を渡ってNYのハーレムに向かい、クラブなどで歌っていた彼らは、アポロ・シアターのタレント・コンテストで入賞したことがキッカケとなってカーニヴァル・レコーズと契約した。カーニヴァルでは64年からシングルを出し始め、R&Bチャート20位台を中心とするヒットが続いた。同社ではアルバムも『Dedicated To You』(65年)と『Sing For You And Yours』(68年)の2枚をリリース。ドゥーワップからソウルに切り変わる時代の変化を映し出していたが、キング傘下のデラックスから放った最初のアルバム『With These Hands』(70年)ではジョージ・カーによるニュージャージー流儀のスウィート・ソウルやポピュラー~ポップスの名曲カヴァーを披露し、多面的なヴォーカル・グループとしての魅力を見せ始めている。


 当時リード・シンガーとしてフロントに立っていたのはジョージ・スミス。無骨なテナー・ヴォイスを持ち味とするシンガーだが、デラックスに移籍した頃から健康状態が悪化していた彼は70年12月に脳腫瘍で他界。そこで新たなリードとして迎え入れられたのが、当時19歳のジェラルド・アルストンだったのだ。マンハッタンズがライヴで訪れたノース・キャロライナのコンサート会場でサウンドチェックのために歌っていたジェラルドを気に入り、スカウトしたという話は有名だ。ジェラルドが加入した新生マンハッタンズは低音ヴォイスのブルー・ラヴェットとの二枚看板となり、デラックスから南部録音を含む『A Million To One』(72年)を発表。後の作品でも積極的に取り上げるテディ・ランダッツォのペンによるナンバーを含む同アルバムからは“One Life To Live”が過去最高のR&Bチャート3位を記録し、これが注目を集めて大手のコロンビアから契約の話が舞い込んだ。一般的に知られているマンハッタンズの歴史はこれ以降のことだろう。


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 73年のコロンビア入社によってスタートした黄金時代。当時上り調子にあったフィラデルフィア・ソウルの音を浴びにシグマ・サウンド・スタジオへ向かい、ボビー・マーティン率いるMFSBのバック演奏によってさらなる洗練を身につけたマンハッタンズは、70年代いっぱいまでバート・デ・コトーやテディ・ランダッツォとも組みつつ、“Don’t Take Your Love”(74年)、“Hurt”(76年)、“Kiss And Say Goodbye”(76年)、“It Feels So Good To Be Loved So Bad”(77年)といった美麗なバラードを中心にヒットを連発していく。もちろん“Searching For Love”(76年)のようなダンサーにも名曲は多い。ブレイク・イヤーとなった76年にはリチャード・テイラー(87年に他界)が抜けて4人編成となるも、既に完成していたマンハッタンズ流儀のヴォーカル&ハーモニーが揺らぐことはなかった。80年代に入るとシカゴ・ソウルの名匠レオ・グラハムが手掛けた優美なスロウ“Shining Star”がR&Bチャート4位/ポップ・チャート5位を記録するヒットとなり、これで彼らはグラミー賞「最優秀R&B・デュオ/グループ・ボーカル・パフォーマンス」も獲得している。



▲The Manhattans - Shining Star ft. Gerald Alston, Blue Lovett (Official Music Video)

 以降、ヒット・チャート上では“Shining Star”をピークに下降線をたどるも、ジョン“スキップ”アンダーソンらと組んで新境地を切り拓き、83年には“Crazy”がR&Bチャート4位を記録。この時期のNYファンクにも通じるブギー系のナンバーは今最も評価される類の曲かもしれない。レオ・グラハムとも再会した表題通りの原点回帰作『Back To Basics』(86年)ではプロデュースなどにボビー・ウーマックを招いたことも話題に。レジーナ・ベルと共演したクワイエット・ストーム路線の“Where Did We Go Wrong?”はレジーナの出世曲としても語り草となっている。ただ、レジーナとのデュエットも含め、この頃からマンハッタンズはジェラルドのソロ的な性格が強まっていき、同アルバムを最後にマンハッタンズはコロンビアを退社。案の定ジェラルドはモータウンからソロ・デビューを飾り、バラディアーとして“Take Me Where You Want To”(88年)や“Slow Motion”(90年)といったヒットを飛ばしていく。後にジェラルドはマンハッタンズに復帰するが、グループに籍を置きつつ、ウータン・クランの2007年作『8 Diagrams』収録曲“Stick Me For My Riches”にてヴォーカルを披露したり、2008年には彼の最大のアイドルであるサム・クックのカヴァー集『Gerald Alston sings Sam Cooke』を出していたことも申し添えておきたい。



▲The Manhattans - Crazy

 一方、コロンビアを離れた後のマンハッタンズは新リードに元マントラ(キャミオ一派)のロジャー・ハリスを迎え、89年に西海岸のバレー・ヴューからアルバム『Sweet Talk』で再出発している。その後の歴史は複雑で、ブルー・ラヴェットが健康上の理由で脱退し、メンバー交代を繰り返しているうちに分裂。ふたつのマンハッタンズが存在することになり、後にスタイリスティックスのリードとなるイーバン・ブラウンも一時期メンバーに名を連ねていた。が、やがて二枚看板だったジェラルドとブルーが再会。2001年作『...Even Now...』もこのふたりを中心とした名義でリリースされた。そして、その拡張盤となる『Men Cry Too』(2008年)を最新アルバムとしながら、デイヴィッド・タイソン(兄弟は現テンプテーションズのロン・タイソン)やトロイ・メイを従えてライヴを中心とした活動を行なってきた。2014年12月にはブルー・ラヴェットが旧メンバーのソニー・ビヴィンズと同時期に他界し、2015年2月に亡くなったケネス・ケリーを最後にオリジナル・メンバーは全員鬼籍に入ってしまったが、現在はジェラルドがマンハッタンズを率いて活動中だ。

 2018年10月にマンハッタンズfeat.ジェラルド・アルストン名義によるステッピン調の新曲“Get It Ready”が発表されたことを知る人も多いだろう。曲の後半でブルー・ラヴェットを思わせる低音の語りが入るのが彼ららしいが、何よりもジェラルドが往時と変わらぬサム・クック・スタイルのヴォーカルで歌っていることに長年のファンは安心感を覚えるはずだ。この流れでいけば近いうちにアルバムも届くのではないか。そして6年半ぶりとなる今回の来日公演は、ジェラルドとトロイにデービッド・ハーヴェイが名を連ねてのステージ。ブルー・ラヴェット他界後としては初の来日公演となるが、新曲を聴けばブルー不在もなんのその。セットリストの大半を占めるであろうコロンビア時代のスウィートでロマンティックな名曲群を歌う彼らは、3人でもマンハッタンズの看板を守り続けてくれているに違いない。


 

マンハッタンズ「アイ・カインダ・ミス・ユー」

アイ・カインダ・ミス・ユー

2017/02/02 RELEASE
CDSOL-70021 ¥ 2,700(税込)

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